今日は月曜日。
他の人であればもしかしたら憂鬱な日かもしれないが、私にとっては一番楽しみな日。
土日の休みで会えない友達や先輩に会えたりするからだ。
「兄さん、一緒にご飯……」
そんな私の月曜日の楽しみとしてあるものの一つに、兄さんと一緒に食事をすることがある。
勿論家では毎日一緒に食べているけれど、弁当を一緒に食べるという行為はまた特別なのである。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
しかし、そんな浮いていた気分も、兄さんがいる教室に足を踏み入れたとき、雰囲気に飲み込まれた。
特別喧嘩をしていたとかそういうわけではないが、たった一人に敵意の視線が向いている状況。
その変な雰囲気に私は、またか……と思う。
こういうことはこれまでも何度もあったことだ。
前は気後れもしていたが、今はもう慣れている。
「……」
兄さんが学校で三大女神と呼ばれているうちの一人、香織先輩に向かってさっきの台詞を言っていた。
いくら兄さんといえど、他人の行動に許すとか許さないとか口を挟む必要はないと思うんだけど……。
ちなみに三大女神のうち一人は不本意ながら私だ。
解せぬ。
そんなふうに軽い現実逃避をしていると、同じく三大女神の一人の雫先輩がいち早く私に気づいて、助けてと視線で訴えてきていることに気がついた。
確かに私も早く兄さんとご飯を食べたいので、仕方なく助けることにした。
「兄さん、一緒にご飯食べよー!」
意図的に大きな声を出し、さらに思いっきりドアを閉める。
そしてドンッ! という大きな音が教室に鳴り響く。
結構な大きさだったため、みんなが私を見て、さらに教室がしんと静かになる。
「ああ、月乃か。少し待ってくれ。俺はこれから──」
「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」
そんな私に兄さんがいつもどおりマイペースに私に返答しようとして、香織先輩の更にマイペースでど天然な発言が炸裂した。
そんな様子に私と雫先輩が「ブフッ」同時に吹き出す。
ま、まさか私が思っても言わなかったことをそんなに簡単に言うとは……。
香織先輩恐るべし。
「だけど香織も」
「あのー兄さん? 私のことはどうでもいいのかなぁ?」
なおも香織先輩に何かを言おうとする兄さんをいつもどおり引っ張って行こうとする。
でも、その手を引っ張ろうとして私は凍りついた。
いや、凍りついたのは私だけじゃない。
おそらくこの場所にいる全員だ。
なぜなら、地面に魔法陣のようなものが出ており、それが光り輝いていたのだから。
「皆! 教室から出て!」
しばらく凍りついていると、そんな声が聞こえる。
その声に従って、教室から出ようとするが、急激に広がる光に私達は飲み込まれて……。
今日、この日。
このクラスに現在いる生徒23人&先生+私、天之川月乃。
合計25人の生徒達と先生は、この世界から連れ去られた。