ウルトラマン 短編集   作:渚 龍騎

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ジードの章 運命
GEEDの意味


 

 

 

 かつて、宇宙を恐怖の深淵に突き落としたウルトラマンがいた。

 

 戦友に嫉妬し、力を求めて闇を抱いた。

 宇宙の全てを支配する銀河皇帝として君臨。

 野望砕かれても尚、憎しみの果てに蘇り、宇宙を消滅させては人類だけでなく、ウルトラマン達をも恐怖させた。

 

 その名は、ウルトラマンベリアル。

 

 その実力は、一人で光の国を壊滅にまで追い込むほど。幾度となくその野望を最悪の宿敵(ウルトラマンゼロ)に叩き潰されても、何度も蘇り、更には力を強化させて挑み続けた。

 

 そんな彼の終焉は、あまりにも儚いものだった。

 

 自分が最強の力を手に入れる為、ベリアルは自らの遺伝子で模造品──息子と呼べる存在を生み出した。

 それこそベリアルの野望を砕き、憎悪諸共消滅させた《運命を変える者》となる。

 

 子供の頃から憧れたヒーローを目指した。

 闇に堕ちた戦士(ウルトラマンベリアル)の息子という運命を抱き、全てを乗り越えて、人々を守ると誓った我らのヒーロー。

 

 伝説の超人(ウルトラマンキング)に認められ、ウルトラの父(ウルトラマンケン)から崇高な戦士だと称えられた。

 

 その名こそ、ウルトラマンジード。

 

 

 

 

 とある星。

 星降る安寧の夜に紅き閃光が幾度も瞬き、衝突しては弾ける轟音を撒き散らして、戦い合う二人の巨人がいた。

 一人は赤と黒の戦士。覚悟を決めた姿(プリミティブ)の力を宿し、蒼き瞳は他のウルトラ戦士とは異なって、吊り上がって歪んでいる。

 だが、そんな恐怖させる瞳でありながらも、その心は『光』であり、希望を信じて戦い抜くれっきとした一人の戦士だ。

 彼こそ、ウルトラマンジードである。

 

『レッキングリッパーッ!』

 

 叫びと同時に両腕を広げると、紅き光の刃が岩石を切り裂いて突貫する。狙いは眼前に立つ闇の巨人ただ一人。

 ジードと似て非なる姿の巨人。

 吊り上がった瞳は真っ赤に染まり、漆黒と紅蓮に身を包んだジードにしてジードではない暗黒の巨人。

 

 いったいどこから現れたのか、かつて戦った()()()よりも遥かに強い。

 

『ぐわっ!』

 

 レッキングリッパーが弾き飛ばされ、逆に突き進んで来た刃がジードを削り吹き飛ばす。

 暗黒の巨人は首を回し、肩を回しながらゆっくりと歩む。

 その巨人はジードを元に、暗黒の力で生み出した闇のジード──ウルトラマンジードダークネス。

 

『く、どうして……! ダークキラーはもう倒したのに!』

 

 ウルトラの一族を根絶やしにする為、倒されてきた怪獣や宇宙人たちの怨念によって誕生した暗黒超邪──ウルトラダークキラー。

 ダークキラーは怨念の力によるキラープラズマで闇の戦士を作っては、使役しており、ジードダークネスもその一人だった。

 だがウルトラダークキラーは倒された。

 ジードは仲間と共に倒したのをこの目で見た。

 

『このままじゃ……!』

 

 この劣勢を覆す為にリクはカプセルを取り出し、構えを取った。

 ジードを応援する少年の熱き魂の紅蓮。

 

     ユー() ゴー()!」

             『ダァッ!』

 

 ウルトラカプセルを起動させると、眩い光が螺旋を描き、その姿を『ウルトラセブン』へと変化させる。

 リクはウルトラカプセルをナックルにセットし、更にもう一つのカプセルを取り出して起動させた。

 

     アイ(I) ゴー(go)!」

             『イヤァッ!』

 

 その赤き光はセブンと同様に螺旋を描き、リクの隣で『ウルトラマンレオ』へと変化。

 

     ヒア(Here) ウィー(we) ゴー(go)!」

 

 カプセルをナックルへと装填。リクはジードライザーでセットしたウルトラカプセルをスキャン。そして、ライザーから音声が鳴り響き、その熱き魂の限りを──叫んだ。

 

《 フュージョンライズ! 》

 

「燃やすぜ、勇気ッ!」

 

 ジードライザーを天に掲げ、気合の声を叫ぶのと同時、その名を全てに轟かせる。

 

「ジィィィィィドッ!」

 

《 ウルトラセブン! 》

《 ウルトラマンレオ! 》

 

 最強の父と最強の師匠たる二人の赤き焔を纏い、ジードの姿が焔に包み込まれてその姿を変化させる。

 勇気を燃やす堅牢の紅蓮。

 その名は────、

 

《 ウルトラマンジード! 》

      《 ソリッドバーニング! 》

 

 紅蓮の焔を振り払い、ジードは堅牢たる紅蓮(ソリッドバーニング)となってジードダークネスの前に降り立った。

 噴射口から白煙を吐き、炎を吹きながら素早くジードダークネスの眼前まで近寄ると拳を握り締める。

 

 この姿は鎧を纏っているかの如き、堅牢の肉体を持っている。パワー系統の姿でありながら、噴射口から吹き出るブースターによって速度を補っており、素早い動きも可能とする。

 

 肘の辺りから吹き出る炎を利用して、腕の引いた反動を一気に殺す。更にはそのブースターによって拳の威力を高める。

 

『──ハァッ!』

 

 叩き付けた拳によってジードダークネスがよろけ、ジードは奴の肩を掴む。拳をジードダークネスの胸に密着させ、腕部のアーマーを展開。

 

『──ストライクブーストォォッ!』

 

 ゼロ距離によって放たれる七十二万度の光線はジードダークネスを吹き飛ばし、ジードは頭部のスラッガーを手に取って投げ飛ばす。

 万物を切り裂くスラッガーは目にも止まらぬ速さでジードダークネスを切り刻んだ。

 

 そして──リクはウルトラカプセルを手に取った。

 

 悲しき過去を持つ強くも蒼きウルトラマン。

 過去を乗り越える意思の発現。

 過去を乗り越えし勇者(ウルトラマンヒカリ)と、慈愛の勇者(ウルトラマンコスモス)のカプセルをナックルでスキャンしてリクは叫んだ。

 

《 フュージョンライズ! 》

 

「見せるぜ、衝撃ッ!」

 

 リクがジードの名を叫ぶと同時に、ウルトラマンヒカリとウルトラマンコスモスが顕現してリクと重なり合う。

 

「ジィィィィィドッ!」

 

《 ウルトラマンヒカリ! 》

《 ウルトラマンコスモス! 》

 

 二人の勇者が魅せた奇跡。

 神秘なる極光に身を包み、ウルトラマンジードの姿が一気に紺碧へと変化する。

 至高の鋭きを以て打ち破る者。

 

《 ウルトラマンジード! 》

      《 アクロスマッシャー! 》

 

 ソリッドバーニングとは打って変わり、驚異的な破壊力はない。しかしその素早い動きはまさに瞬間移動と言っても過言ではない。

 破壊力を補うものは──その手に宿す光の刃。

 

 ソリッドバーニングの攻撃を受けても倒れぬダークネスに追撃を背後から仕掛け、ジードはその刃を振り翳した。

 鋭く素早い動きでジードダークネスを翻弄。全ての方向から切り刻み、更にはジードダークネスの攻撃全てをいなし、掌打を以て吹き飛ばす。

 そしてジードはその手にジードクローを握り締めた。

 

《 シフト・イントゥ・マキシマム! 》

 

 ジードクローを天に掲げた瞬間、眩い光がジードダークネスの頭上を覆った。瞬間──、

 

『──ディフュージョンシャワーッ!』

 

 ジードの叫びの直後、空から鋭き光が一気に降り注ぐ。そこに逃げる隙はなく、息をする一瞬すらもない。雨の如く降り注いだ光はジードダークネスを撃ち抜いた。

 

『これで決める!』

 

 カプセルを取り出す。

 全てを守り抜く覚悟の姿。

 若き最強の戦士(ウルトラマンゼロ)ウルトラの父(ウルトラマンケン)の二人のカプセルをナックルに装填。ジードライザーでスキャンして叫ぶ。

 

《 フュージョンライズ! 》

 

「守るぜ、希望ッ!」

 

 リクがジードの名を叫ぶと同時に、ウルトラマンゼロとウルトラの父が横に顕現しリクと重なり合ってその姿を変化させる。

 

「ジィィィィィドッ!」

 

《 ウルトラマンゼロ! 》

《 ウルトラの父! 》

 

 全てを守り抜く覚悟を決める。

 眩い光が辺りを照らし出し、その輝きから強烈なパンチが放たれてジードダークネスを吹き飛ばした。

 崇高なる覚悟の戦士。

 

《 ウルトラマンジード! 》

      《 マグニフィセント! 》

 

 かつて宇宙の危機を救った戦士。

 かつて光の国を守り抜いた戦士。

 二人の強大にして強力な覚悟(チカラ)を身に纏ったマグニフィセント。その強大な力は単純な戦闘能力でジードの最強形態にも並ぶ。

 

 エネルギーを集中させ、ジードは翡翠の光を手裏剣のような形に変化。メガスライサークロスをジードダークネスに投げ飛ばした。

 強固な肉体すら持つペダニウムゼットンですらも蹌踉めく一撃だが、ジードダークネスはレッキングリッパーとレッキングロアーの技を連続で当てて相殺。

 

 爆発を巻き起こし、岩石を巻き上げ、その中からジードダークネスが駆け抜ける。

 やはり過去に戦ったキラープラズマの化身よりも遥かに強い。

 

『これで終わらせるッ!』

 

 ジードは両拳を打ち合わせ、その身体に流れる膨大なエネルギーが火花を撒き散らす。

 強力過ぎる力故に、光線同士の余波でブラックホールすら生み出す最強の光線。

 

『──ビッグバスタウェイッ!』

 

 翡翠の閃光が瞬き、腕をᒪ字に組んだ直後、宇宙開闢(ビッグバン)の如き爆発と共に光線が一気に猛進。

 辺りの地面を削り、大気を吹き飛ばして直進したビッグバスタウェイは寸分狂わずにジードダークネスに直撃する。

 覚悟を決めた姿(プリミティブ)堅牢たる紅蓮(ソリッドバーニング)鋭く打ち破る刃(アクロスマッシャー)、いずれも強力な力をやどした姿ではあるが、この崇高なる戦士(マグニフィセント)の放つ光線の威力は群を抜いている。

 

 直撃を受けて無事で済んだ敵はいない。

 ペダニウムゼットンの持つバリアでさえも一瞬で破壊し、そのまま敵を吹き飛ばす。

 

 

 ────だが、今回は()()()()()()()

 

 

 眩い閃光の後、辺りを吹き飛ばす爆発が巻き起こり、ジードは勝利を確信していた。

 巻き上がる粉塵の中、薄っすらと見えたのは漆黒の稲妻が閃いた瞬間だった。

 一瞬で危険を察知するが、ジードは『ビッグバスタウェイ』を塞がれた事に驚愕して回避行動を取れなかった。

 粉塵を穿ち、暗黒の光線がジードを吹き飛ばす。

 

『く……! そんな、攻撃が効かない……』

 

 それだけではない。

 ゼロ距離で放ったストライクブーストや、ディフュージョンシャワー等の攻撃も全て──ジードダークネスには全く通用していない。

 ジードダークネスはゆっくりと歩み、そしてジードを指差す。

 

『君はボクで、ボクは君だって聞いて強いのかと思ったけど、そうでもないんだね』

 

 キラープラズマの化身たるダークネスが意思を持って話す事などない。しかし目の前にいるジードダークネスは、リクと全く同じ声で、全く同じ喋り方でジードに話し掛けていた。

 

『君は、いったい……』

 

 ジードの問い掛けに、ジードダークネスは肩を震わせて『ク、クク』と不気味な笑いを漏らす。そして頭を抑えて、高らかに笑った。

 

『ハハハハハ! いったいだって? ボクは君だ。何者でもない君なんだよ』

『君は……僕?』

『そうだよ。だけどボクは君であって君じゃない』

 

 そして、ジードダークネスは睥睨する。

 瞬間。

 ジードダークネスの肩から暗黒が伸びる。それは形を成し、風に揺られて紅蓮へと染まる。

 ────それは、真紅のマントだった。

 血のように真っ赤に染まり、橙色の宝玉が装飾された一つのマント。ジードダークネスはそれを靡かせて悠然と語る。

 

『ボクは、皇帝(カイザー)ジード。この全宇宙を支配……いや、全宇宙を破壊する者だ』

 

 父親(ベリアル)との最終決戦で、彼の壮絶な人生(記憶)を見て来たジードは一瞬で理解した。

 皇帝(カイザー)──それは、かつてジードの父(ベリアル)も名乗った名前。そしてそのマントもベリアルがかつて羽織っていたものだった。

 

 ジードダークネス──否、カイザージードはマントを靡かせる。

 

『昔ボクの父さんもこのマントを羽織っていたらしい。けど、父さんはいつも口だけだ。大層でかい野望だけ抱いて、いつも負ける』

 

 あーあ、と落ち込むように声を漏らし、更にはため息を溢してからカイザージードは訥々と話す。

 

『ホント、()()として恥ずかしいよ』

 

 その声を聞いた直後、リクの身体は考えるよりも早く動いていた。

 黄金の極光が辺りを照らし尽くし、リクは伝説の超人のチカラを解放する。

 

     ユー() ゴー()!」

             『フゥアッ!』

 

 ウルトラカプセルを起動させると、眩い光が螺旋を描き、その姿をジードの父『ウルトラマンベリアル』へと変化させる。

 リクはウルトラカプセルをナックルにセットし、更にもう一つのカプセルを取り出して起動させた。

 

     アイ(I) ゴー(go)!」

             『ダァッ!』

 

 その極光はセブンと同様に螺旋を描き、リクの隣で伝説にして最強の超人『ウルトラマンキング』へと変化。

 

     ヒア(Here) ウィー(we) ゴー(go)!」

 

 

 カプセルをナックルへと装填。リクはジードライザーでセットしたウルトラカプセルをスキャン。そして、ライザーのトリガーを引き絞ると黄金の輝きが一つの剣を生み出す。

 

《 ウルトラマンベリアル! 》

《 ウルトラマンキング! 》

 

《 我、王の名の下に! 》

 

 黄金の輝きによって生み出された王の剣──キングソードにウルトラマンキングのカプセルを挿入。ウルトラマンキングの名を轟かせた直後に、リクが()()を叫ぶ。

 

「変えるぜ、運命ッ!」

 

 キングソードに手を翳し、突き出した瞬間にリクの身体が黄金の光に包み込まれる。

 

「ジィィィィィドッ!」

 

 それは、運命を変える王の姿。

 席巻する暗黒の中で、黄金は鐘の音を照らし、精悍な輝きを以て眩く光り輝いた。

 それこそ運命を変えるジードに相応しい。

 その名は────、

 

《 ウルトラマンジード! 》

      《 ロイヤルメガマスター! 》

 

 暗黒を照らす金色は増幅。油断していたジードダークネスを吹き飛ばす。

 ウルトラ六兄弟の一人──宇宙警備隊隊長ゾフィーのカプセルを取り出して起動。そしてキングソードに装填。

 

《 ゾフィー! 》

 

 キングソードに一度腕を翳し、突き出すと同時に『ゾフィー』のチカラを解放する。

 惑星をも破壊するM87光線の片鱗。

 ジードはキングソードを突き出して叫んだ。

 

『──87(エイティセブン)フラッシャーッ!』

 

 超至近距離で放った。

 稲妻のような美しい閃光を撒き散らしながら突き進む。だがカイザージードは回避行動を取る訳でもなく、ただ──ただ()()()()()()()()

 

『──そんな!』

 

 カイザージードの手から暗黒が舞う。それは螺旋を描き、細長く変化していくと一本の剣へと姿を変えた。

 見覚えのある剣。だがそれはジードが知っている物とは明らかに違う──黄金に染まった部分は闇に、刀身は燃え盛る紅蓮の如し紅。

 それは──()()()()()()とそっくりの剣だった。

 

 運命を変える王の剣──キングソード。

 だがカイザージードの持つ剣は、全てを破壊する皇帝の剣。それこそ名付けるならば、()()()()()()()

 

『やっぱり弱いね、キミ(ボク)

 

 振り翳される闇の剣。ジードは一瞬の判断でキングソードを盾にして受け止める。

 一気に力を込めて押し返し、たたらを踏んだカイザージードにキングソードを中段で振り払った。

 しかし皇帝の剣が行く先を阻み、カイザージードが至近距離でレッキングロアーを使用。慌てて防御(ガード)するが、間に合わず吹き飛ばされる。

 

『ぐあッ!』

 

 痛みに声を荒げ、ジードは身体を抑えながら立ち上がる。キングソードを構え直し正面を睨めば、胸のカラータイマーが青から赤へと点滅を開始した。

 力が抜けていくのを感じながらも、ジードは駆け出しキングソードを振るう。

 

 光の斬撃に対して闇の斬撃。

 眩い閃光を散らし、火花を撒いてぶつかり合う毎に剣戟音が響き渡る。

 ジードは足を狙い下段で薙ぎ払うが、カイザージードはバックステップで回避。大地を踏み抜いて距離を詰めた。

 カラータイマー目掛けて突き出された皇帝の剣を弾き、がら空きになった胴体へ王の剣を振り下ろした。

 

『……ガッカリだよ』

 

 ふとそんな声が聞こえた。

 音を耳から聞き、脳へと伝達して理解する直前──ジードの身体が一瞬にして切り刻まれ、光を撒き散らした。

 

『うぁッ!』

 

 がむしゃらにキングソードを振り払えば、カイザージードの華麗な剣捌きによってキングソードが弾き飛ばされて大地に突き刺さる。

 視線をキングソードに向けた瞬間、カイザージードは光の速さで剣を振り払った。

 

『く……あ……』

 

 身体が崩れ落ちる。だがその寸前でカイザージードは前蹴りでジードを吹き飛ばした。

 

『はあ……本当に弱い。父さんと同じで()()()()()。これがボクだなんてあまりにもヒドイ』

 

 カイザージードはそんなことを嘯き、両腕を地面に向けて交差させる。

 暗黒の稲妻が身体を巡り、両腕を頭上に向けて広げると全身が眩い限りの闇が包み込んだ。

 

『くッ!』

 

 その予備動作から放たれる光線は、ジードが良く知っている。故に、突き刺さったキングソードのもとへ素早く転がって握り締めた。

 ウルトラカプセルを取り出してキングソードに装填。

 

《 ウルトラ六兄弟! 》

 

 キングソードに手を翳して突き出すと、ウルトラ六兄弟の声が轟く。

 

『──ブラザーズシールドッ!』

 

 瞬間、伝説に負けず劣らずの最強の六兄弟が目の前で顕現。全員が両腕を伸ばして円型のバリアを生み出す。

 そして同時に、カイザージードの光子エネルギーが充填。両腕を十字に組んだ直後──闇が爆発してカイザーレッキングバーストが撃ち放たれた。

 

 突き進む闇の光線と光のバリアが衝突。

 弾ける闇のエネルギーが辺りの岩肌を削り、ブラザーズシールドにヒビを入れる。

 

『く……! まだだ!』

 

 だが、そんな根性も無駄となる。

 ブラザーズシールドは呆気なく破壊され、カイザーレッキングバーストはジードを撃ち抜き、大爆発を巻き起こす。

 ジードの悲鳴にならない悲鳴が響き、昇る紅蓮が消えると同時にロイヤルメガマスターの力が消し去られて、プリミティブへと姿が戻る。そしてジードは力なくその場で膝から崩れ落ちた。

 

『力が……入らな、い……』

 

 強い、あまりにも桁が違う。

 誰かに負けるのは良い……けど、自分に負けるのだけは嫌だ。

 僕を貶すのは構わない。だけど、()()()を愚弄するのは許さない。

 

『所詮、君もボクもあのベリアルの息子。どれだけ君が英雄(ヒーロー)面していても、その運命だけは覆せない。()()()()()()になるなんてできないんだ』

『はあ……はあ、違う……』

『違う? いったいなにが? お前はベリアルの息子じゃないってことか?』

 

 カラータイマーは不安定に鳴り響く。

 力はどんどん抜けて行き、力を込める度に身体中が悲鳴を上げて痛みが全身を駆け巡る。それでもジードは、ゆっくりと立ち上がる。

 カイザージードの言う事に首を振り、そしてその矜持を叫んだ。

 

『僕は朝倉リクで、ベリアルの息子で、ウルトラマンジードなんだ!』

 

 その叫びに、カイザージードは呆れたように首を振った。

 

『そっか。ベリアルの息子であってウルトラマンであるなんて、そんな事できない。それじゃあ──さようなら、ボク』

 

 再度カイザーレッキングバーストの予備動作が始まる。漆黒の稲妻が奔り、闇の奔流が眼前まで席巻する。

 もうジードにはレッキングバーストを放つ力すら残っていない。それでもジードは諦めずに前を見た。

 

 アイツは僕なんかじゃない。

 僕はアイツなんかじゃない。

 

『僕は、何者でもない僕なんだッ!』

 

 刹那──カイザージードを闇の光線が撃ち抜いた。

 光線の巻き起こす大爆発は辺りを滅茶苦茶に呑み込み、ジードは紅蓮の中で顔を覆った。

 何が起こったのか理解できない。ただ第三者がこの戦いに介入して来たのだけは理解できた。

 

 

 ──だが、まさか彼だとは思っても見なかった。

 

 

 舞い上がる粉塵と巻き上がる紅蓮が空に昇って溶けていく。その中でジードの目に最初に映ったのは漆黒と真紅に包まれた身体だった。

 巨大で鋭利な爪を両手に携え、その手に握り締められた棍棒のような暗黒の武器を肩に担いだ闇の巨人。

 振り返ったその瞳は吊り上がり、不気味な笑い声を漏らしながらジードを見下ろした。

 

『おい、いつまであんな奴に苦戦してるつもりだ』

 

 その声はジードを蔑む。

 聞いたことのある声。見たことのある姿。その有り得べからざる現実に、ジードはただそれを直視できなかった。

 その姿は、かつてジード自身が倒した彼そのもの。

 

『…………父、さん?』

 

 そこに立っていたのはジードの父──ウルトラマンベリアルその人だった。

 ベリアルはジードを見下ろしてから、目の前にいるカイザージードの姿を睥睨し鼻で笑った。

 

『昔の俺の真似か? ハッ、笑えるな』

『……なぜアナタがここにいる?』

『我が息子を救いに来た──っていうのでどうだ?』

『──ふざけるなッ!』

 

 カイザージードが剣を振り払う。だがベリアルはその手に握り締めた()()()()()()()()()で受け止め、弾き飛ばす。

 その荒々しくも最強の領域へと達した戦闘の技術は、カイザージードを圧倒。

 

 決して、偽物なんかじゃない。

 あの戦い方も喋り方も──いるだけで辺りをビリビリとさせる威圧感も、何もかもがかつて戦ったベリアルそのもの。だがベリアルはもうこの世にはいない。

 いったいなぜ?

 

『オイ! いつまでボサッとしてるつもりだ』

 

 眼前に直撃する現実が理解できずにいると、ベリアルがジードに向けてそう叫ぶ。

 カイザージードを弾き飛ばし、ベリアルジェノサンダーが岩盤へと叩き付けた。

 カイザージードが倒れたのを一瞥。ベリアルはギガバトルナイザーを担いでジードのもとまで歩み寄る。そしてその巨大な爪でジードを指差した。

 

『お前のそのチカラはなんの為にある?』

『…………え?』

 

 ベリアルはため息を漏らし、無雑作に頭を掻いた。

 このチカラがなんの為に存在するのか。そんな事は考えたこと無い。このチカラを、皆を守る為に活用しようとはした。

 だが、ベリアルの問い掛けは《なんの為に存在するのか?》だ。

 

『そのチカラは、全てに抗う為にある』

『全てに、抗う……』

『さあ立て、我が息子よ。俺の息子であると決めたのならば、その運命を超え、どんな脅威にも最後まで抗って見せろ』

 

 差し出された手を見つめ、ジードは顔を上げる。するとベリアルが『さっさとしろ』と急かした。

 ジードは思わず吹き出すように笑ってしまう。そしてベリアルの手を取ると、強い豪腕で無理やり起こされた。

 

『ふざけるな……』

 

 崩れ落ちた岩石の中からカイザージードがゆっくりと立ち上がる。訥々と何かを呟きながら、カイザーソードを握り締めてベリアルを睨んだ。

 

『なんでそいつの味方をするんだ! そんなヤツなんかよりも、ボクの方が強い!』

 

 剣の切っ先を向けて激昂するカイザージードに対し、ベリアルはギガバトルナイザーを地面に立てて『お前は馬鹿か?』と鼻で笑った。

 

『お前のような()()よりも、圧倒的に息子(コイツ)の方が強い。息子(コイツ)はどんな運命にも抗い、何度も立ち上がってきた強さがある。お前のようなガキと一緒にするな』

『──ウルサイッ!』

 

 皇帝の剣が振り払われ、膨大な闇の力が増幅して巨大な斬撃へと変わる。巨大な岩山を一瞬で真っ二つにしながら突貫。だがベリアルは避ける素振りなど一切見せず、ただ斬撃が迫る瞬間にギガバトルナイザーを振るった。

 闇は一瞬で霧散して散り巻き、カイザージードが目を見開いて驚愕する。怒りを顕にして、子供が駄々を捏ねるように地団駄を踏んで声を荒げた。

 

『なんでなんだよ! ボク(ソイツ)は何もできない! ただベリアル(アナタ)に利用されるがままの傀儡! 人形で、贋物で、ただの模造品! 光を求めるならアナタの敵だ! それなのになんでソイツを助けるんだよ!』

 

 声を荒らげる。

 憎しみを撒き散らすようにベリアルに向けて、ジードを貶し叱責する。地団駄を踏み、カイザーソードをがむしゃらに振った直後──瞬間的に眼前まで距離を詰めたベリアルが、ギガバトルナイザーをカイザージードの腹部に叩き付けた。

 並のウルトラ戦士をも一撃で倒す強力な攻撃が諸にカイザージードを叩き、奴の身体が紙のように吹き飛ぶ。

 そして暗黒の爪でカイザージードを指差した。

 

『フン、お前のようなヤツが俺の息子を語るな』

 

 カイザージードは腹部を抑えて立ち上がる。

 獣のように唸りながら、獰猛な眼差しでベリアルとジードの二人を睨む。

 

『ボクは、全宇宙を支配し破壊する者……こんな所で、こんな雑魚(弱者)に負けるなんて有り得ない』

『笑わせるな。お前のそのくだらない野望なんぞ、この俺が叩き潰してやる。力とはただ破壊するだけじゃなく、立ちはだかる障害を砕き我が物にする為にある。何も分からないお前が()を語るな』

 

 獰猛な眼差しに鋭い視線で返す。

 まるで()()のように叱るベリアルを、ジードはただ見つめていた。

 隣に立っているのが信じられず、自分(ジード)を否定せず、その矜持を認めてすらいるベリアルは──ジードから見れば、本当の父親にしか見えなかった。

 

『いつまでもボケっとしてねえで、お前のその力を見せてみろ。誰の力も借りていない()()()姿()()。』

 

 ジードの背中を叩き『あの愚か者を一緒に砕くぞ』と、不気味な笑みを浮かべる。

 

『父さん……』

 

 ジードはボソリと呟いて自分の手を見つめる。

 ずっと心の端で考えていた。

 誰でもない()()と共にいることを。父親に怒られ、褒められ、認められることを──ずっと、何度も考えていた。

 そして覚悟を決める。拳を握り締め、前を向いた。

  ──『分かった』と力強く頷いて。

 

『ジーッとしてても、ドーにもならねえ!』

 

 その叫びは合言葉の如く。

 自分を鼓舞した直後に、リクは己のチカラを解放する。光り輝いた一つのカプセルを突き出して叫んだ。

 

 

『ウルティメイトファイナルッ!』

             『シャッ!』

 

 

 ギガバトルナイザーと対をなすギガファイナライザーを手に握り締め、ジードの本当の姿たるカプセルを装填(セット)。そしてジードライザーでスキャン。

 

《 アルティメットエボリューション! 》

 

 ギガファイナライザーのスイッチを押し込み、勢い良く突き出してからその言葉を紡ぐ。

 

「繋ぐぜ、願いッ!」

 

 スイッチをスライドさせる事でギガファイナライザーに翼のような部位が生え、リクはその魂を宇宙に轟かせる。

 

「ジィィィィィドッ!」

 

 ウルトラマンジード本来の姿たる銀色の巨人が、リクと重なり合い、その身体に稲妻の如き黄金の幾何学模様が伸びる。

 それはリクの意思の強さを表すかの如く。全身に漲る輝きは全てを照らし、その手には《人の想いの強さを物理的破壊エネルギー》へと変換させる最強の赤き鋼──必勝激聖棍ギガファイナライザーを握り締める。

 願いを紡ぐ希望の巨人にして、ウルトラマンジードの究極進化形態。その名は────、

 

 

《 ウルトラマンジード! 》

    《 ウルティメイトファイナル! 》

 

 

 リクの声が轟き渡る。

 眩い光に包まれ、現れたのは赤き巨人。ウルトラマンジード ウルティメイトファイナルは、リクの闘志が燃え尽きぬ限りは制限時間など無く、『想い』が強ければ強いほど無限に強くなる。

 人々のその願いを信じて象徴した巨人。

 

 ベリアルはジードの姿を見て笑みを浮かべた。

 

『それがお前のチカラか、面白い』

『僕は、僕が信じた道を行く』

『ならば、この俺についてこれるか?』

『父さんこそ、遅れないでよ』

 

 ジードは笑みを浮かべる。

 同時に二人は最強の武器──ギガバトルナイザーとギガファイナライザーを構えて、カイザージードを見据えた。

 

『許さない。くだらない。つまらない。なにも成し遂げられない弱者が、このボクに歯向かう? 全て破壊してやる!』

『ハッ、やってみろ!』

 

 三人の巨人が駆け出す。

 大地が轟いて揺れる。最強の武器たる三つの斬撃が衝突する度、大気が吹き飛び、空間が揺れ動く。

 弾き出される衝撃波が辺りの岩山を粉砕。強大なエネルギー同士の衝突は天変地異すらも巻き起こした。

 

『──フッ!』

 

 ベリアルが上段でギガバトルナイザーを振り払う。だがカイザージードが剣で防ぎ切る。その瞬間を、がら空きになった下段から上段へ向けてジードがギガファイナライザーを振り上げた。

 だがカイザージードは背中を反らし紙一重で回避。その態勢から両腕を地面に付けてバク転。ベリアルのギガバトルナイザーを蹴り上げて距離を取った。

 

 距離が離れた直後に、ジードがギガファイナライザーのスライドスイッチを一度下げる。そしてベリアルがギガバトルナイザーで狙いを定めた。

 

『──ギガスラストッ!』

『──吹き飛べ!』

 

 まともに受ければ一瞬で決着の付く一撃。放たれた二つの膨大なエネルギーの塊は直進する。だがカイザージードは剣を振るいて二つの攻撃を両断。

 そこでカイザージードは《邪悪なる暗黒破壊神》の怪獣カプセルをカイザーソードに装填(セット)した。

 

《 ダークザギ! 》

 

 カイザーソードに腕を垂直に添えた瞬間、空間に光が奔り、暗黒稲妻光線が放たれる。

 

『──ライトニング・カイザー!』

 

 突き進む暗黒に対して、ジードが一歩前に踏み出た。

 スイッチを二回スライドさせ、立てたギガファイナライザーをライトニング・カイザーに向ける。そしてベリアルはギガバトルナイザーを地面に突き刺し、空いた両腕に暗黒のエネルギーを溜めた。

 

『──ライザーレイビームッ!』

『──ハァァァッ!』

 

 ジードの五形態全員が光線を放つ『GEEDの証(ジードプルーフ)』すら凌駕するライザーレイビームと、ベリアルのデスシウム光線が螺旋を描いて直進。ライトニング・カイザーを相殺する。

 

『フザケルなよ!』

 

《 ガタノゾーア! 》

 

 《邪神》のカプセルを装填(セット)

 カイザーソードを振るい、そこに生まれた暗黒の斬撃が無数になって飛翔する。

 

『──シャドウ・カイザー!』

 

 突き進む暗黒の斬撃に対して、ベリアルがギガバトルナイザーを勢い良く振るった。

 暗黒に似た紫の三日月型の斬撃がシャドウ・カイザーを相殺。爆裂した紅蓮の中を、ジードが飛び出てカイザージードにギガファイナライザーを振り下ろした。

 

 その巨大な激聖棍を皇帝の剣で受け止め、息が掛かるほど近くまで顔が近寄ると、カイザージードは声を荒げた。

 

ボク(キミ)はベリアルの息子! 光の戦士になんて決してなれない! 所詮ウルトラマンの模造品でしかないんだ!』

 

 ギガファイナライザーが押し返され、カイザーソードがジードの身体を切り裂き、光が撒き散る。だがジードは歯を食いしばってギガファイナライザーを振り下ろした。

 

『──違う! 模造品なんかじゃない! 僕はこれからもウルトラマンで有り続けて、ベリアル(父さん)を父さんだと呼び続ける!』

『──そんなことッ、できるはずがないッ!』

『──いや、できるッ!』

 

 リクの感情が昂ぶり、想いが更に強くなる。

 際限なく上昇し続けるエネルギーは、かつてギルバリスと戦った時をも遥かに凌駕。それで進化は止まらず、更に上へと無限に上昇する。

 

『僕は運命をひっくり返すッ!』

 

 想いが更に強くなる。

 ジードの瞳に(ヒカリ)が灯る。それは稲妻のように駆け、尾を引いた。

 

 想い──それは全ての生命の持つ輝き。

 全ての生命は心の感じるままに動く。誰かを守りたい、誰よりも強くありたい、誰かと共にいたい、ジードの場合はその感情の強さこそ『想い』の一つ。

 想いに形はない。無限の可能性を持ち、どんなものにでも形を変えることができ、彩りすらも変えられる。そんな曖昧で、不確実で、意味不明で、道理すらない。

 

 ────それでいて、この世のどんなものよりも強く、明るく、大きい存在。そして真っ暗な空を燃やし尽くし、より彼方へと光を届ける希望。

 

 ジードはそれによって無限の強さを持つ。

 闘志が燃え尽きなければ制限時間もない。最強にして、ウルトラマンの真の力を極限まで象徴した姿こその究極進化形態(ウルティメイトファイナル)

 

『く……! このボクが、こんな弱い奴に!』

 

 徐々に押されつつあるカイザージードは、自分(ジード)を否定する。弱くて不完全な模造品に負けるなんて有り得ない。

 ただカイザージードは父さん(ベリアル)に認められたい。生まれた時からその一心で闇を抱き、破壊の為にその力の限りを尽くした。

 だがベリアルは、(リク)を選んだ。

 

『──カハッ!』

 

 意思疎通すらないジードとベリアルの息の合った連携(コンビネーション)に、カイザージードは押される。

 ジードは光を求めた。

 ベリアルは闇を求めた。

 交わることのない光と闇が、強大な皇帝を前に互いを認めて戦っている。

 

『なんでなんでナンデ! ボクはあなたと同じ闇なのに! なんでボクの敵になるんだよ!』

 

 拳に纏われた暗黒の闇が一気に放たれる。

 ストライクブーストに酷似したその技はジードを吹き飛ばす。そして視線はベリアルに向けられ、獰猛な姿勢から飛び掛り、カイザーソードを振り払った。

 

『なんでボクを認めてくれないんだ! ボクだって父さんの息子なのに!』

 

 その心からの叫びに、ジードはなにも言えない。

 ベリアルに掴みかかるカイザージードは声を荒げ続け、ひたすらに訴える。

 そんなカイザージードを、ベリアルは()()()()()

 

 かつて、ジードがベリアルを解放した時のように。

 

『確かにお前は強い。だが、お前が持っていないものをジード(アイツ)は持っている。それは、俺がかつて捨てたものだ』

『それは……?』

『いずれお前にも分かる。()()()()()()とは何かをな。──さあ、これで終わりだ』

 

 ベリアルがカイザージードを突き放す。

 隣に並んだベリアルは呆然としていたジードを一瞥して問い掛けた。

 

『フン、次は何をするか分かってるな?』

 

 言わずとも父親の考えることなんて、誰よりも分かっていた。

 ジードは『うん』と頷く。

 二人がその身体に駆け巡るエネルギーを増幅。漆黒と紅蓮の如き稲妻が全身を包み込み、二人の雄叫びが呼応する。

 そしてカイザージードもまた、カイザーソードにエネルギーを溜め込んだ。

 

『──レッキングノバッ!』

『──デスシウム光線ッ!』

『──インペリアル・エンドッ!』

 

 三つの稲妻の彩り。レッキングノバとデスシウム光線は弾かれることなく交わり、暗黒の光線に向かって突き進む。

 衝突すれば大気が吹き飛び、辺りのものが全て消し飛ぶ。互いに更にエネルギーを込め、弾けた光線が大地を削り、空を割いた。

 互角かと思われた光線同士の衝突は、カイザージードの放つインペリアル・エンドが徐々に押し始めた。

 

 そしてジードとベリアル──二人の光線が一気に押し返され、瞬間に大爆発を起こす。

 大気が成す絶叫は耳を聾する轟音となり、眩い閃光を撒き散らしては紅蓮が空へと昇っていく。

 そこで──()が焔を縫った。

 

《 覚醒めよ、最強の遺伝子! 》

 

 焔が消えたその先には、ベリアルがギガバトルナイザーを盾にしてジードを守っている姿。

 焔を振り払い、『く……!』と片膝立ちに崩れるベリアルは指を指して叫んだ。

 

『行け息子(ジード)ッ! お前の手で終わらせて来い!』

 

 その叫びに、その想いの全てを乗せてジードが一歩を踏み込んだ。

 超光速の踏み込み。瞬きをも遅く感じさせる速さで接近したジードは、身体にデスシウムの閃光纏わせ、その必勝激聖棍を全身全霊で振るう。

 ウルトラマンジード ウルティメイトファイナルが放つ最強の技。しかし今回の()()()、父であるウルトラマンベリアルの因子が強大かつ強烈に輝く──今回限りの究極技。

 

 その名は────、

 

 

『デスシウムファイナルジードッ!』

 

 

 ギガファイナライザーに全ての『想い(エネルギー)』を溜め込み、カイザージードとすれ違う寸前で一気に振り払った。

 暗黒に煌めく三日月型の斬撃がカイザージードを切り裂く。光にして闇の刃──皇帝を野望もろとも破壊して、人々の煌めきとなる。

 

『ボクが、負けたんだ……』

 

 ボソリと呟いたカイザージードは、最後にジードとベリアルを一瞥する。

 く、と笑いを溢してからカイザージードが倒れる。

 瞬間──大気の声なき絶叫。轟という音が強烈な地響きと共に、凄まじい衝撃波が爆発して惑星を駆け巡った。

 

『────』

 

 ゆっくりとギガファイナライザーを下ろし、ジードは爆心地を見つめる。

 慈悲、嘆き、ジードが向けたのはそんなものではない。拳を握り締めて瞳を閉じる。

 

『僕は、君の分までウルトラマンで有り続ける』

 

 振り返ったその先、求めていた人の姿はなかった。

 本当にあの人は本物だったのか、今思えば分からない。けれど、あの暖かな感覚は確かに本物だった。

 そして、耳の奥に聞こえた言葉は幻聴にも思えた。どこからともなく聞こえた言葉に、ジード(リク)は笑みを溢していた。

 

 その言葉とは────、

 

 

『強くなったな、我が息子(ジード)

 

 

 ジードは天を見上げる。

 握り締めた拳が語るものはジードだけが知る。

 父さん(ベリアル)は最悪としても語り続けられ、その名はジードが一生背負い続けるものとなる。

 だがジードはそれでも────、

 

『僕は、皆を守るウルトラマンでありながら、あなたを父さんと呼び続ける』

 

 ベリアルは、そのチカラは全てに抗う為にあると言った。だからこそジードは運命に抗い、皆を守り続ける為に振るうと覚悟を決める。




次回はメビウスです
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