魔族違いです、魔王様 作:一発ネタ落とすよ!
とある岩山、その洞窟の奥深く、薄暗い実験室に1人の老人の叫び声が響いていた。
「つ、ついに成功じゃ!この方法であれば人間と魔族を融合し、知能をあげつつ、副作用による寿命の低下を抑えられる!!」
実験室の主である彼の周囲には様々な生物の死体や肉片が怪しげな液体に浸けられ保存されていた。
液体から出されたものは実験に利用されたのだろうか、もはや用済みとでも言うかのように打ち捨てられ、腐敗し、実験室には死の匂いが立ち込めている。
かろうじて形を保っている実験に使われたであろう鳥や魚、虫や動物、実に様々な種類の生物の肉片や死体が散らばっているが、そのなかでも特に多いのが
「まさか人間も魔族も胎児の段階で融合させるのが一番安定するとは思わんかったわい。しかし、これならば今までの数時間や長くて数日の寿命だった、知恵のある魔族が少なくとも20年程度は生きられるじゃろう。韋駄天どもにバレないために大きくは動けんが、今までの
彼がこの地で実験を初めてからすでに数百年が経過している。
本来、まともな知性の存在しない魔族に知性を与えただけでも十分に偉業である。
しかし、知性を与えられた魔族はその反動か恐ろしく短命であった。
もともと脳は成人で消費するカロリーの約20%を使用すると言われており、ほとんどが本能やまるで機械のように反射的に韋駄天を攻撃するなどという、プログラムのように活動していた魔族には、知性というものを運用するために必要な器官が存在していなかったのである。
その結果、知性を与えられた魔族は自転車にロケットエンジンを積んだかのように一瞬で命を燃やし尽くしていった。
今回、成功したという実験では人間の胎児に生後間もない幼体の魔族を融合させることによって行われていた。
正確には人間は胎児となる前、胎芽と呼ばれる身体の器官を生成している段階で幼体の魔族を取り込ませるのである。
受精卵という1つの細胞から分岐し、身体の各器官を生成この段階では分裂して増えていく細胞1つ1つがありとあらゆる器官になれる可能性を秘めており、極体確率ではあるが、同じように魔族も、幼体のころは不定形の存在であり、生後2週間ほどで、それぞれの細胞がある程度どのような器官になるかが決まり、成体になると手足などを得る。
その人間と魔族の無数の分岐を残した細胞同士が、奇跡的に噛み合うことで人間に限りなく近い姿と知性を持った魔族が誕生するのである。
「まだ成功率も低いが、いい加減これ以上の研究はここでは無理じゃろうな。ある程度戦力が整い次第、どこかの国でも乗っ取ってまともな設備で魔族を増やすとするかの」
実験に成功した
しかし、彼は気付いていなかった。
数百年の彼の実験により死んでいった人間や、様々な生物、そして
そして、これから数年は実験に成功した魔族の子育てに負われることに…
オオバミが泣きわめく赤子にてんやわんやしている頃。
実験室から数キロ離れた地点である現象が起こっていた。
空中に、いや、空間に不自然に小さな銀河のような闇と光が混ざり合うどこか神秘的な
韋駄天の発生条件は3つ、大量の生物の思念、永い年月、そして
本来、発生する韋駄天の外見、性別、名前や性格は条件が揃ったときに最も強い思念を発していた人物が元となる。
しかし、この場には人間の思念を、救いを求める心を遥かに上回る、無数の魔族の死にたくないという感情、そして
それらは、世界を飛び越え、
現象が収まると、そこには1人の青年が立っていた。
銀の長髪、赤い瞳、そしてまるで
「…ここは?」
小さく疑問の声をこぼすと、青年はさも
端正な容姿はみるみるうちに凶悪な怪物のそれへと変貌していく。
恐ろしい三つ目に裂けた口、頭部からは左右に巨大な白い角が生え、手足には凶悪な爪が生える。
まるで鎧を纏うかのように広がる甲殻に、何よりも特徴的な胴体にあるもう1つの顔。
「ぐはあああ……!私は…デスピサロ…、魔族の王。うぐおおお……!私には何も思い出せぬ……。しかし何をやるべきかはわかっている。人間どもを根絶やしにしてくれるわっ!」
数百年前、韋駄天達が自らを犠牲に平和な世界を作り出した際の小さな綻びは、怪物を産み出してしまった。
いや、それは怪物などではない。
魔族の救いを求める心と、他者を滅ぼそうとする本能により、それに近い願いを持っていた魔族の王、強大な力を持つ魔王であった。