仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ   作:大ちゃんネオ

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黒点

 黒く、黒く、沈んでいく。

 黒の中に、ぽつんと一人。

 異物として混ざってしまったかのよう。

 

 どこへ向かうかは分かっている。

 この感覚を僕は知っている。

 これは、かつて経験したことがある。

 

 死だ。

 これは、死。

 死に堕ちていく今になって全ての戦いを思い出した。

 何度も、何度も繰り返された戦いを。

 

 自己を保ったまま暗闇へと沈みゆく。

 行き先が天国か地獄かと言ったら、まず天国はあり得ない。

 大罪を犯したからだ。

 多くの人命が僕のせいで奪われた。

 ミラーワールドを開いてしまったから……。

 

『だから、戦ってきたのだろう』

 

 闇から響く声には覚えがあった。

 

「ああ。けど、もう終わりだ。僕は死んでしまった」

 

 この御剣燐という魂はやがて闇の底へと辿り着く。

 そこは地獄だろうか。

 はたまた虚無?

 いや、どうか地獄であってほしい。

 地獄の方がまだマシだろう。

 誰かしらは、いるだろうから。

 

『死を受け入れるには早い。お前はまだ、戦わなければならない』

 

「まだ……? いつまで、戦えばいいのさ……。僕はずっと一人で戦ってきた。もう充分だろう……」

 

『お前は、全てを終わらせるまで死ぬことは許されない』

 

 ずいぶんと、勝手を言う。

 

『それはお前自身が理解しているはずだ。今お前が言ったことは本心だろうが、それだけではないはずだ』

 

 本心……。

 戦いはもう嫌だ。

 これは紛れもない本心だ。

 では、もうひとつの本心は……?

 

『立て。双連寺ムゲンは、立ち上がっていただろう』 

 

 ムゲンさん……。

 かつて、共に戦った別世界の仲間……。

 そうだ、彼は諦めかけても立ち上がった。

 けれど、彼は彼だ。

 彼は仮面ライダーだからだ。

 

『藤堂章太郎、双連寺ムゲンとの出会いにより、数多の仮面ライダーがいることを知った御剣燐は仮面ライダーに憧れた。同じ名を冠しながらも己が意志で悪と戦い続ける仮面ライダーに憧れた』

 

 ……そうだ。

 僕は、仮面ライダーに憧れた。

 僕は、僕自身の罪を削ぎ落とすために仮面ライダーとなった。

 世界のためだとか、正義だとか、そんな大それたもののためではない。

 だから……憧れた。

 だから、そんな仮面ライダーになろうとした。

 己の意志で、世界を守ろうとした。

 

 ついぞ、誰にも言えなかったことだけれど……。

 

『お前の戦いは終わらない。全てを終わらせるまで』

 

「……そうだね」

 

『お前の戦う理由は贖罪であったかもしれない。だが、その後から生まれた思いもあったはずだ』

 

 後から生まれた思い……。

 人を……。

 人を、守りたい……。

 大切な人達を……。

 守りたい人達がいて、救いたい友達がいた。

 ああ、記憶を思い出したはずなのに忘れていた────。

 

『問うぞ。ここで、死ぬつもりか?』

 

「……いいや。やっぱり、死んでなんかいられない」

 

『ならば、目を開け。そして、お前を求める声を聞け』

 

『助けて、仮面ライダー……!』

 

 ああ、この声は……。

 

『時代が、世界が望む時、仮面ライダーは何度でも甦る。それが、お前の運命だ────』

 

 目を開く。

 黒い闇は眩い白い光が照らしていく。

 眩しすぎる。

 僕自身をも焼き焦がしてしまいそうな光。

 だけど……。

 この光はきっと、僕が歩むべき道だ────。

 

 

 

 

 

 

 

 目を開く。

 ぽつり、ぽつりと頬に落ちる何か。

 それは、僕を膝に寝かせたキョウカさんの涙であった。

 力なく、虚を映し続ける瞳からずっと涙が流れ続けているようで目元は赤くなっていた。

 だから、僕は涙を拭う。

 頬に触れた手に驚いたアリス……じゃない。キョウカさんは、大きな瞳を更に大きくしていた。

 

『燐、くん……』

 

「ごめん。君に、そんな顔をさせてしまった」

 

『燐くん!!!』

 

 抱き締める力がぎゅっと強くなる。

 友達にこんな顔をさせるなんて、駄目だな僕は。

 

『本当に、死んじゃったかと思って……私……私……!』

 

「本当にごめん。もう、こんな思いさせないようにするからさ。だから、ちゃんと終わらせてくる。この戦いを」

 

 立ち上がり、デッキを手にした。

 その純白に変わりないが、その強さが増しているような気がする。

 新たなカードが、新たな力が追加されていた。

 

『まだ、戦う気なんですか……? 燐くんが戦う必要なんてない! 燐くんは戦うような人じゃ……』

 

「ありがとう。僕も戦うのは嫌だけど、他の人にこんな思いさせたくないからさ……。それに、彼に背負わせて一人のうのうと死ぬなんて、やっぱり出来ないや」

 

 最期の時、僕は恵理也さんに章太郎くんの世界のことを任せて死んでしまった。

 彼ならばきっと大丈夫だとは思ったけど……。

 

「一人より、二人だよね」

 

 僕達仮面ライダーという存在の多くは孤独なものかもしれない。

 けれど、他の世界にこうして同じ仮面ライダーという名を持つ人達がいる。

 そんな彼等はきっと、仲間だろう。

 それに今の僕には……大勢の仲間がいる。

 美玲先輩、射澄さん、美也さん、ムゲンさん……。

 もしかしたら、今後もたくさんの他の世界のライダー達と出会うかもしれない。

 だから、恵理也さんもその仲間にしたい。

 考え方は違っても、平和を願う仲間であることに違いはないはずだ。

 

 

『ライダーッ!!!!』

 

 

 響く叫び。

 章太郎くんの声だ……!

 

「行ってくる」

「……分かりました。ちゃんと、無事に帰ってきてくださいね……?」

「うん、約束」

 

 キョウカさんにそう笑顔で返し、走り出す。

 御剣燐として、仮面ライダーツルギとして────!

 

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