仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ 作:大ちゃんネオ
知らない天井。
なんて、ベタ。
起き上がると、少しばかり痛みが走る。
腕に巻かれた包帯などを見るに手当てはされているようだ。
『起きましたか、黒神恵理也』
「うおっ」
どこからか聞き覚えのある女の声が響いた。
……恐らく、このベッド横に立て掛けられた鏡の中から。
『特に異常は無さそうですね』
「鏡女……お前が……?」
『治癒は特別にしてあげました……って、誰が鏡女ですか! 今すぐこっちに引き摺りこんであげてもいいんですよ!』
「やめとく。二度目はごめんだ。それよりここは……」
どこだと言いかけて、扉が開いた。
章太郎とかいうライダーオタクの少年だ。
ということはここはあの喫茶店か。
「あ、起きたんだ恵理也兄ちゃん!」
「あ、ああ……。そういえば、その、無事か?」
段々と色々思い出してきた。
この子はあいつらに捕まっていた。
なんとか逃げ出したようだが、なにもされていないだろうか。
「うん! 恵理也兄ちゃんと燐兄ちゃんが助けてくれたから!」
「助けたって、俺は別に……」
俺は完全に私情で戦っていた。
この子を助けるためなんかではないし、助かったのは結果論だ。
「結果的に章太郎くんを、捕まってた人達を助けた。それでいいじゃないですか」
「御剣……」
続いて部屋に入ってきた御剣が章太郎の両肩に手を乗せ、「ね?」なんて章太郎と言い合った。
「あ、章太郎くん。おやっさんが呼んでたよ」
「はーい」
章太郎は部屋を去り、残ったのは二人。いや、三人。
まず、口火を切らなければいけないのは僕だった。
そうせずにはいられなかった。
「すまない御剣……。俺があいつらに利用されたばかりにお前は……」
『そうですよ~。どう落とし前つけてくれるんですか~?』
「キョウカさん」
鏡女を制して御剣は改めて俺と向き合い、笑顔を見せた。
「僕は気にしてません。今、こうして生きてるじゃないですか」
「それは、そうだけど……。いや、なんで、どうして生きてるんだお前」
肝心なことを忘れていた。
こいつ、あんな腹に風穴空いてなんで生きてるんだ。
戻ってきちゃったなんて言っていたが、あり得ない。
人間、なのか……?
『私も知りたいです。傷は私が癒しました。けど確かにあの時、燐くんは死んで……』
「時代が、世界が望む時、仮面ライダーは何度でも甦る……だそうです。それが答えです」
「は……?」
「恵理也さんも聞きましたよね? 助けて、仮面ライダーって声を」
「あ、ああ……」
確かに、聞いた。
この世界に飛ばされる直前に。
それが、なんだというんだ。
「けど、俺は……」
「僕も、恵理也さんもこの世界に求められたから、この世界にやって来た。だから……恵理也さんも仮面ライダーで僕の仲間です」
どくんと、胸が高鳴った。
「仲間……? 俺は、お前みたいな……!」
「はい。僕も恵理也さんみたいなライダーではありません」
きっぱりと、そう言い切られた。
それは、そうなのだが。こいつから言われると何故か釈然としない自分がいる。
「僕と恵理也さんは違います。けど、共通の敵と共に戦うことが出来ました。だから、僕と恵理也さんは仲間です」
共通の敵……。
ドーパント。そして、カンナ……。
「ヴァンダル・リーグと、名乗っていました。まだ何も掴めていません。そしてこれからもあいつらはこの世界で暗躍を続ける……」
「……ああ、だろうな」
「この世界には仮面ライダーはいません。だから……恵理也さん。一緒に、戦ってください」
真っ直ぐな目をしていた。
眩し過ぎて、いけない。
俺は、こいつと共になんて……。
「……俺は、あいつらに利用された。そしてお前の死に加担した。俺に、お前と一緒に戦うなんて真似……」
「もう一緒に戦ったじゃないですか」
ムッとした顔で御剣は言う。
ああ、こいつもこんな顔をするんだと少しばかり安心してしまった自分がいる。
「……まあ、その、一緒に戦うなんて俺自身が許せない。けど、あいつらも許せない……。だから、俺は俺で戦う。それでいいか」
「恵理也さん……」
それが、妥協点というか限界というか。
少なくとも今は御剣に見せる顔がない。
だから、今しばらくは……いつものように、一人で戦おう。
「分かりました。じゃあ、よろしくお願いします恵理也さん。……仮面ライダーシェリフ」
差し出された右手。
俺は一度、悪魔の手を取ってしまった。
だが、この手は……。
「……よろしく頼む。御剣燐、仮面ライダーツルギ……!」
この手は取ってもいい手だ。
暗い水底に差した光のように─────。
ひとまず、この世界におけるガイアメモリ事件は終止符を打たれた。
あまり自分の世界を留守にするのは良くないと、一度帰ることにした。
小高い丘の上の公園で御剣と二人、平和な街を眺める。
「……ヴァンダル・リーグか」
「……はい。お互いの世界のこともありますけど、この世界もほっとけない……」
穏やかな世界の影で暗躍する何者かがいる。
よりにもよって、仮面ライダーのいない世界で。
自分も戦うなんて言った手前あれだが、面倒なことになった。
まあ、面倒は取り払うだけだ。
『それでは、二人とも帰りましょうか』
御剣の持つ、折り畳み式の手鏡の中から鏡女が言葉を発する。
「うん。よろしくキョウカさん。あ、そういえば死んだこと皆には秘密で……。お願い!」
『もう、仕方ありませんね~。二人だけの秘密ということで手を打ってあげます』
「ありがとう!」
御剣に感謝され、ドヤ顔でえっへんなんて言う鏡女。
今時こんな分かりやすい奴がいるのかと思っていると、なにやら急に鏡女はニヤニヤとした顔を浮かべた。
俺のことを見て。
嫌な予感しかしない。
『そういえば~。元の世界に帰ったらまたドーパントを殺すんですか~?』
「そうだ。駄目ですよ殺すなんて!」
あー、やっぱり。
面倒なことになった。
「いいだろ、僕はお前とは違うんだから」
「駄目です。それだけは、ダメ、絶対!」
どこぞの標語ポスターのようなことを言う。
しかしこればかりは譲れない。
ドーパントは俺の仇なのだから。
『そうだ! 良いこと思い付いたんですけど~。二人が戦ってぇ、負けた方は勝った方の言うこと聞くとかどうです?』
「なるほど……。いいぜ、そういうことなら。黙らせてやる」
「キョウカさん……。仕方ない、乗るよこの話。それで、恵理也さんが殺しをしなくなるというなら」
俺はロストドライバーとメモリを取り出し、御剣はデッキを手鏡に映し、鏡から現れたベルトが腰に巻かれた。
「「変身ッ!」」
向かい合う白と黒。
仮面ライダーツルギと仮面ライダーシェリフ。
剣と拳を構え、二人のライダーがぶつかり合った────。
数日後。
ツルギの世界。
「痛た……」
燐はそう言いながら左頬に貼られた湿布を撫でた。
「まだ痛むの、それ」
「は、はい……。いいのもらっちゃって……」
公園の東屋で駄弁る燐、美玲、射澄、美也。
テーブルの上には手鏡が置かれ、アリスもまた同席していた。
「燐くんがそんな手傷を負うなんて珍しい」
『まあ、相手も仮面ライダーでしたし』
「また別の世界の仮面ライダーか~。いいな~私も会ってみたいな~」
「そうだね。私も興味津々だよ」
『いや、あれと会うのはやめておいた方がいいですよ~。今回出会った奴のせいで燐くん一回死にましたから最悪な奴ですよ。死神です死神。……あっ』
「は?」
場が、静まり返った。
「ちょっ、キョ……アリス!」
「どういうこと!? え!? 燐くん死んだって、じゃあここにいるのは幽霊!?」
「落ち着きたまえお団子君。ちゃんと肉体はある。……それはそれとしてだお団子君。私達は避難しよう」
「え、避難って……。ひっ……し、失礼しまーす!」
そそくさと射澄と美也は逃げ出した。
そして残るは燐と美玲のみ。
「い、射澄さん美也さんどこに行くんですか!」
「燐」
「ひっ」
これまで聞いたことのないような、背筋が凍りつくような声だったという。
「み、美玲先輩……」
「死んだって、どういうこと」
「えーっと、それは、その……アリス!」
手鏡の中のアリスに助けを求める燐であったが、そこにアリスはいなかった。
とっくの昔に逃げ出していたのだ。
「ひぃ……そのー、あのー、確かに死んじゃったんですけど今はこうして生きてるので大丈夫かな~って……あはは……」
「────燐ッ!!!」
美玲の怒りが爆発。
燐はしばらく、単独行動を禁じられるのであった。
シェリフの世界。
雨がアスファルトを濡らし、特有の匂いが辺りを包んでいた。
《Hazard!!Maximum Drive!!》
「おらぁぁぁぁ!!!!」
シェリフの拳が異形、コックローチドーパントの顔面を殴りつけた。
地面を転げたコックローチドーパントはトンネルの闇の中へ。
ドーパントの身体からメモリが排出され砕け散る。
「ひっ……」
ドーパントであった男に歩み寄るシェリフの黒は闇に染まり、瞳だけが血溜まりのように妖しく輝きを放っていた。
シェリフは男の首を掴む。
いつものように、その首の骨を折ろうと。
男は死への恐怖に気を失い、失禁。
そんな男からシェリフは……手を放した。
力なく倒れる男を背にシェリフから黒神恵理也へと戻ると携帯電話を取り出し110番。
「あの、すいません怪物と仮面ライダーが戦ってて……はい。その、怪物だった人が転がってるので逮捕してください。場所は……」
警察への通報を終え、暗いトンネルの中を行く。
仕方ない。
まったくもって納得いかないが、仕方ない。
だが本当のド外道相手には容赦をするつもりはない。
それに、だ。
あいつのような奴があいつらしくヒーローでいられるように俺はこの暗闇の中で戦い続ける……。
日の当たる道を歩くつもりはない。
真っ当な人達が真っ当でいられるように俺は闇の中を往く。
トンネルを抜ける。
雨が止み、雲間から眩しい陽の光が風都の街を照らしつつあった。
「眩し……」
暗所から出てきたばかりには眩しすぎる。
けれど、どこか心地いい。
雨に濡れた身体を暖めるのにちょうどいいだろうと、光射しつつある道を歩き始めた────。
仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ 完
次の物語で会いましょう。