仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ   作:大ちゃんネオ

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動と静

「黒いライダー……」

 

 俺の姿を見てそう呟いた白いライダーに、俺は顎で命令する。

 

「ほら早く退けって。メモリブレイク出来ないんならどれだけ強かろうが足手まといなんだよ」

「そんなこと出来ません。早くあの人を助けなくちゃ……そうじゃないと」

 

 真っ直ぐに見つめられ、そこからは何があっても退かない強い意志を感じる。俺は助けるという言葉に少し疑問が浮かんだが、それを口にすると恐らくめんどくさいことになるだろう。浮かんだ疑問を喉の奥に押し留めて、代わりにゆっくりと彼に近付き言った。

 

「知ってるか、お前? 日本にはこんな言葉がある」

 

 俺は彼の肩を叩き、

 

「餅は餅屋、適材適所ってな!! いいから退けってんだよ!!」

「ッ!」

 

 彼を突き飛ばそうとしたが、向こうも気付いていたようで間一髪、白いライダーは背後からの奇襲を回避した。空を斬り、よろけたドーパントを鎌で斬る。

 

「そんな程度の不意打ちが通用するわけねえだろこのバカが!!」

 

 よろめいたドーパントに追撃を加えようと鎌を持つ手を返してそれを振り上げた。腕の剣で防がれ鍔迫り合いに入り、ドーパントを押し返していく。

 

「言っとくが俺はあの白いのと違って説得してなんて生ぬるいことはしねえからな……覚悟しろ」

「どいつもこいつも私の復讐の邪魔をして……!! 鬱陶しいのよ!!」

 

 苛立ちを隠さずに言ってもう一方の手を突き出し高圧水流を発射しようとしたドーパント。流石にこの至近距離で食らったらマズイ。

 

「てめえの事情なんざ知るかっての!!」

 

 叫んで鎌を力任せに振り抜き、相手の体勢を崩させ砲口をずらすことでそれを回避した。追撃だとばかりに鎌をもう一度振りかざしたが、振り下ろす直前に引かれてしまった。どうもすばしっこいらしい。

 取り回しの悪い鎌では分が悪いかもしれないな。

 

「ちょっとこいつ借りるぜ」

 

 そう判断した俺は持っていた鎌をその辺に放り投げ、地面に突き刺さる白いライダーの大剣を引き抜いて……。

 引き、抜いて……。

 

「は? なんだこれ抜けねえぞ!」

 

 馬鹿みたいに地面から抜けない。

 ぐらぐらと動く気配もなく大剣の腹を蹴るが逆に痛みが足に響いた。

 

「まあ、それは僕でも扱いが難しい剣なので……。それにさっき、強く踏み込んだので多分抜けませんねそれ」

「ざっけんな!!!」

 

 どうにもならないことへの怒り、わけの分からない世界に来て多少なりともストレスを感じていたのだろう。それらが一気に爆発した。

 ドーパントに向き直り地面を蹴る。

 

「く、来るな!!」

 

 恐怖を感じたのか、高圧水流を乱射するドーパント。しかし狙いが定まっておらず当たることはない。恐れるものではないとそのままタックルを仕掛けた。全体重を乗せたそれを防ぐ術はなく、ぶつかったところからはゴッという鈍い音がした。

 

「グゥッ……!! このままじゃ負ける……!!」

 

 タックルをモロに食らったドーパントは数回地面を転がったが、すぐに立ち上がってそう悪態をつく。目が回っているのか足元はフラフラしていて、今にも転けてしまいそうになっている。またとない好機だ。

 

「セアァ!!」

 

 気合と共に拳を突き出す。ドーパントは腕についた剣で拳を逸らし直撃を回避するが、俺は即座に身を屈め、足を突き出してドーパントの足を引っ掛けた。

 

「金魚のくせに二本足で立ってんじゃねえ!!」

「うわっ!?」

 

 自分でも訳のわからないことを言って足を思いっきり振り抜いた。文字通り足を掬われたドーパントはバランスを崩し再び地面に倒れ込む。

 

「これ以上長引かせるわけにはいかないんでな!!」

 

 バックルのメモリを引き抜き、腰のスロットに差し込んで跳躍する。下では早くもドーパントが立ち上がり俺から逃げようと背中を見せているが、そんなことさせるわけがない。

 スロットのボタンを怒りに任せ、乱暴に押す。

 

《Hazard!!Maximum Drive!!》

 

 辺りに響く音声。足に黒いオーラのような何かが集まってくる。

 

「これで仕留めさせてもらう!!」

 

 叫び、それをドーパントに向かって突き出した。ドーパントは振り返って高圧水流を乱射したが、完全に焼け石に水だった。少しも勢いは弱まらず、ドーパントの腹に直撃しそれを爆発させる。

 

「まだ……。まだ私の復讐は終わってなんか…」

 

 地面に横たわった女性が呟く。おそらくドーパントの中身だろう。排出され地面に転がったメモリへと手を伸ばす。しかし、それに手が届くことはなく粉々に砕け散ってしまった。

 あっ……と声を出して放心する女性に近寄りながら俺は口を開く。

 

「いいや終わりだ。メモリブレイクされた時点であんたは誰の手にも負えないバケモンからただの一般人に成り下がったんだ。どうせまだ来ないだろうが、そのうち警察がすっ飛んできて捕まるさ。それにな……」

 

 首に手を伸ばし、いつものように絞め殺そうとした時だった。

 

「危ないから待ってください!」

 

 白いライダーの誰かを制止する声が聞こえた。なんだなんだと言いながら振り向くと、黒い服を着た人間が盾や銃を片手にわらわらとこちらに向かって走ってきていた。

 

「本当になんだお前ら!?」

 

 唐突な第三勢力の登場に思わず叫んで女性から手を離し両手を上げた。瞬く間に俺や白いライダーを包囲したそいつらは銃口をこちらに向け、動けば殺すとでも言いたげな鋭い眼光で俺を見つめてくる。

 

「警察だ!! お前たちの身柄を確保させてもらう!! 無駄な抵抗はするなよ!!」

 

 後ろにいた隊長格の男がそう叫んだ。警察か……あまり関わりたくはないな。できれば逃げたいところだが。

 冷静になり周りを見渡したが、どうもやすやすと逃がすつもりはないらしい。どこを見ても機動隊が立っている。なんとかここから抜け出せても、向かった先にいる奴らに確保されるのがオチだ。

 

「逃げられないのは俺も一緒ってことかよこの野郎」

 

 悪態をついて必死に逃げる方法を考える。戸籍が存在してない奴なんて怪しまれるに決まってる。もし捕まろうものならあることないこと噂されてここで生活しづらくなってしまう。本当にどうすればいいんだ……。

 はぁ、とため息をつき頭を抱えていると白いライダーが叫んだ。

 

「あなたもこっちに来てください。逃げますよ」

「はぁ!? この状況でどうやって逃げるんだ!?」

 

 思わず叫び返した。機動隊も逃すものかと急に距離を詰めてくる。

 

「ああもうどうにでもなれってんだクソッタレェ!!」

 

 焦った俺は機動隊に向かって女性を投げつけ、そいつらがそれに気を取られている間に地面を蹴って白いライダーの元に着地した。

 

「で、どうやって逃げるんだよ」

 

 静かに立っている白いライダーにそう問い質す。まさか機動隊の連中を片っ端から斬って逃げ道を確保するとか、バイクで跳ね飛ばしながらなんて物騒なことは言わないと思うが、俺の頭じゃそれくらいしかアイデアが浮かばない。いくらなんでもそれは抵抗があるが……。

 

「あれで逃げます」

「あれ?」

 

 あれとは何かと問い掛けようとしたが、あれの方からこっちへやってきた。

 白いバイク。

 白いバイクが一人でに走り、機動隊の隊列を分断して俺達の前で停車した。

 

「……まさか邪魔なやつみんな轢き殺して逃げるとか言わないよな?」

 

 思わず嫌な予感がしてそう聞いた。

 白いライダーは即座に首を横に振る。

 

「言いませんよ。そんな酷いことするわけないじゃないですか」

 

 そう言ってバイクに乗り込んだ。俺は流石にそうだよな、とまだ少し顔を引きつらせたままだ。俺が乗り込んだのを確認したライダーはアクセルを吹かせた。

 

「こっからどうすんだよ。どこ行っても機動隊だらけだぞ?」

 

 それをどうにかしない限り、さっき言ったように跳ね飛ばさないと逃げられないだろう。首を傾げながらそう問いかけるとライダーは少し息を吸うと、言った。

 

「突っ込みます。捕まっててくださいね」

「ちょいちょいちょい!? 何言ってんだあんた!?」

 

 思わず大声を出して制止しようとしたが、そうする前に動き出してしまった。分かたれた隊の合間を駆け抜ける。

 これで脱出完了と思いきやこの白いライダーは何を考えているのか飲み屋に衝突しようと真っ直ぐ駆けている。

 

「何やってんだおい!!」

 

 がっしりと肩を掴み言ったが、止める気配は無さそうだ。こうなったら殴ってでも……!!

 拳を握って振り上げ、それを振り下ろそうとする……。

 

 店に衝突したと思った。しかし、なんの衝撃も伝わって来ない。一体どういうことなんだ。違和感を覚えて外を見て、

 

「誰も……いない?」

 

 おかしい。さっきまで俺たちの背後にいた機動隊員が一人もいない。それだけじゃない。歩行者も、車も、鳥も何も。俺たち以外の何者も存在していなかった。

 ただひとつ、いきなりひどい耳鳴りがする。

 それにしてもこの空間、妙に既視感があるが一体……。

 そして気付いた。

 店の看板の文字が鏡に映したかのように反転していることに。その店の看板がそういうデザインというわけではなく、全ての文字が反転している。

 ここは、まさか……。

 

「ここは鏡の世界。ミラーワールドです」

 

 鏡の世界……。

 既視感の正体はかつて自分が戦ったミラードーパントのせいだと納得がいった。

 それにしても、単体で鏡の中の世界に入れるということはこの白いライダーにはミラードーパントと同じ能力が備わっているということ。わざわざそんな能力つけなくてもいいのではないかと思ったが俺には関係ないだろう。

 

「あなたも、こことは違う世界のライダーなんですよね」

「え?」

 

 こことは違う世界のライダーというのは事実であるが、何よりも「あなたも」と白いライダーが言ったことに驚いた。

 ということは、こいつも……。

 

「おい、どういう意味だよそれ」

「詳しい話は一旦置いておきましょう。もうすぐ、着きますから」

 

 着くとは一体どこに着くのか。

 そういえばどこに向かっているのか。

 何も分からないまま、俺達は鏡の中の世界をくぐり抜けた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドーパントとの戦闘が終わり、ツルギとシェリフが撤収したあとの歌舞伎町では警察による捜査が続き、一部区域は立ち入りが制限されていた。

 立ち入り禁止のテープの前には野次馬が殺到しているが、その人の群れから離れたところに女は立っていた。  

 人目をひく、白い着物に身を包んだ女は美しかった。

 人と欲望渦巻く土地に一輪咲いた百合のよう。

 穢れとは縁遠いであろう神聖な存在感。

 普段は誰彼構わず声をかける男達も彼女には声をかけるどころか近付くことすら躊躇う。

 女は異形と戦士の戦いが行われていた場所を憂いある瞳でただ見つめ続けていた。

 やがて、野次馬達も野次馬であることに飽きてその場所から立ち去り始めたのと合わせて、女は人混みの中からその姿を消したのだった。

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