仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ 作:大ちゃんネオ
鏡の世界、ミラーワールドを抜けると人のいない路地に出た。バイクは止まり、運転していた白いライダーがバイクから降りた。なので自分もバイクから降りると白いバイクが鏡の中へと吸い込まれた。
その光景に内心驚いていると、白いライダーの鎧が割れるかのように散り、変身者が露となる。
歳は自分と同じくらいだと思う。
童顔で、中性的な顔付き。にこりと微笑むこの人物と、あの白いライダーが同一人物であるのかと一瞬疑ってしまった。
「ようやく落ち着いて自己紹介出来ますね。僕は御剣燐。仮面ライダーとしてはツルギって名前です」
御剣燐。
仮面ライダー、ツルギ……。
はじめて、ちゃんと自分以外のライダーと出会ったが彼は敵意はないようだ。なのでこちらも変身を解除する。
黒が剥がれ落ち、素面を晒す。
「……僕は、黒神恵理也。仮面ライダーシェリフをやってます……?」
何故か疑問系になってしまったが仕方ない。
自己紹介というものはいまいち慣れない。
下手な自己紹介をしてしまったと悔いていると、御剣燐はなにやら驚いた顔をしていた。
「その、なにか?」
「あ、ああいや、その、なんでもないですあはは……。ムゲンさんみたいな人を想像してたけど全然違ったな……」
最後の方は小声だったので聞き取れなかったが、どうやら互いに想像と違い、ギャップがあったということか。
「ひとまず、こんなところにいるのもなんですから僕がお世話になってる喫茶店に行きましょう。込み入った話になるので立って話してたら疲れちゃいます」
込み入った話というと、確かに自分が置かれているこの状況を改めて整理して理解しなければならない。
風都から何故か、いつの間にか東京に来ていて、自分がいた時代とも違う。
彼、御剣燐は少なくとも自分よりはこの世界のことを知っているのだろうし彼から話を聞くのが一番だろう。
御剣燐について歩くことほんの数分でその喫茶店についた。
テーブル席につくと少年がコーヒーを出してカウンターに戻っていった。
カウンターにいるのは中年のくたびれたマスターとマスターの息子だろうか、少年はやけにキラキラとした目で僕を見つめてくる。
だが、そんな視線が気にならなくなるほどの事実を告げられ僕は焦った。
まとめるとこうだ。
・この世界は自分がいた世界とは別の世界
・そしてこの世界は『仮面ライダー』がテレビ番組であり仮面ライダーも怪人も存在しない世界だった
・怪人が存在しないはずの世界であったが謎の怪人が出現した
・謎の怪人の正体などを探るため御剣燐は度々この世界を訪れて調査していた
・調査を進めていく中でドーパント、ガイアメモリといったものと遭遇し少しずつガイアメモリが流通しつつある
「僕の世界のものが何故かこの世界に……」
一体どうして。
なんのために。
疑問は尽きず卓上の黒い水面に視線を落とすのみ。
「僕にはガイアメモリを破壊することが出来ません。なので、黒神さんはそのために呼ばれたのかもしれません」
「そのため?」
「はい。はじめて、この世界に来た時に聞いたんです。誰かの、『助けて』って声を。だからきっと僕達仮面ライダーがこの世界に来るということは何か意味があることだと思うんです」
助けて、という声────!
「僕も聞いた、その声。電話がかかってきて、気が付いたら全然知らない場所にいて……」
「やっぱり、黒神さんも……。黒神さんの世界の怪人が現れたからそのカウンターとして黒神さんがこの世界に喚ばれたのかもしれませんね」
カウンター……。
よし、大体決まった。
やることは変わらない。
別の世界だろうとドーパントは殺す。
この世界が喚んだというならこの世界の期待に応えて、ドーパントは
「分かった。ドーパントは僕に任せてほしい。それで、ええっと……御剣君は謎の怪人の方の調査に集中出来るって感じでしょ?」
「そうですね……僕ではメモリを破壊出来ないので向こうが投降するまで戦わないといけないのが大変で……。あと、燐でいいですよ。僕も恵理也さんって呼ぶので」
眩しい笑顔を浮かべ、「よろしくお願いします恵理也さん」と言われたが、慣れない。
恵理也さんなんて呼び方する人が自分の周りにいないからだ。
そして燐……御剣は高1で僕は高2。
後輩、もとい年下とあまり関わりがないのでいまいちどう接すればいいか分からない。
「それじゃあ僕は調査に出ます。恵理也さんはここでゆっくりしててください」
「え、出かけるの?」
「はい。少しでも早く奴等の手掛かりを掴みたいですからね。恵理也さんはこっちに来たばかりで疲れてるでしょうしゆっくり休んでてください」
それじゃあ!
いい笑顔でそう言い放ち、御剣は店を出ていった。
ぽつんと一人、取り残される。
「休んでてっていうか、一人にされる方が今は辛いというか……」
見知らぬ世界で、せめて仮面ライダーという共通点のある同類とは一緒にいたかった。
「まあ、休んでろって言われたから休んでてやりますか」
背もたれに背を任せて目を閉じる。
コーヒーを口にしたわりにはすぐに眠れてしまいそうだ。自分が思っている以上に疲れていたらしい。
ドーパント退治が俺の役割なら、ドーパントが現れていない今は休み時間。次の
……。
…………。
………………。
「ねえねえねえねえ!!!」
「うわあッ!?!?」
突然、耳を襲った大きな声。それも耳元で大声だ。
鼓膜が破れるどころか心臓まで破れそうだった。
「ねえ、お兄ちゃんも仮面ライダーなんでしょ! おれの知らない!」
「そうだけど! まず落ち着け!」
なんなんだこの小学生は。
さっきから熱のある視線を感じていたけれど。
ここの人達の説明も御剣にはやってもらいたかった。
だがなんとなく分かる。この少年に関しては。
この感じは謂わば『オタク』という人種のそれではないだろうか。
「ベルト見せてよベルト!」
「分かった! 分かったから!」
ああもう面倒。
しかしこういうタイプは要求に応えておけば落ち着くので大丈夫だろう。
御剣が厄介になっているからドライバーぐらい見せてあげても問題はないと思う……が、即座に取り出そうとしていたドライバーを懐に戻した。
カランカランとベルが鳴り、30代ぐらいのOLが二人ご来店なさったがなにやら様子がおかしい。
おかしいというとあれなのだが、喫茶店に入ってくるにしては闘志に溢れているというかなんというか。
正直、端から見てても圧倒される。
そして女性二人組はマスターに詰め寄って質問責めにしたのだ。
「燐くんは!? 燐くん来てるんでしょう!? 私聞いたんだから! 燐くんがいるって!!!」
「マスター、ムゲンくんは!? ムゲンくんは来てないの!?」
「お、落ち着いてお客さん! あの二人は……そう、短期のバイトなんだよ。だからね、もううちでは働いてないの」
「「ウソでしょ……」」
落胆する二人を前にバツの悪い顔を浮かべるマスター。しかし、すぐに何か閃いたようで笑顔を浮かべて女性二人に語りかけた。
「まあでもたまぁ~~~に来てくれるみたいなこと言ってたからね二人とも。毎日通ってたら会えるかもしれないねぇ」
「ほ、本当ですか……?」
「毎日通えば……」
「それにほら、この店が忙しくなれば短期じゃなくて長期のバイトってことで雇えるんだよ。儲けが出ればあの二人にも給料払っていけるからね」
「私がここに通うことが推しへ貢ぐことに繋がる……」
「毎日通えばいつかは会える……。ガチャと一緒よ、当てるまで引くのよ……」
お、恐ろしい……。
商売上手というよりほとんど詐欺ではないだろうか?
「よっしゃお得意様二人ゲットだぜ!」
いやいや少年これはいけないことだよ。
法に触れてはないかもしれないけれど人としてはちょっとあれだよ。
「あ~っと、今日はあの二人はいないけどお試し入店してる子がそこにいるんだけどどう?」
お試し入店してる子?
そんな奴もいたのか。
「そこの髪が長くてまとめてる男の子」
え。
ぼ、僕!?
「ちょ、ちょっと!?」
「あらあら貴方もかわいい系ね。髪をそんなに伸ばしちゃって……ぐへへ」
「私の
「ま、待ってください! 僕はここのバイトなんかじゃあ……」
「うちの厄介になるんだ。その分は働いてもらうからな」
いつの間に背後に回っていたのか、マスターが僕の肩に手を乗せそう囁いた。
御剣は僕に休んでてと言ったがここの人達は僕を働かせる気満々。
頼むから御剣、僕を今からでも一緒に連れていってくれぇ!!!!!
「はくちっ!」
くしゃみが出た。
誰かに噂でもされただろうか?
そんなことよりも調査、調査……と言いたいところであるが。
場所は歌舞伎町。
先程、ドーパントが現れた場所である。
調査には手掛かりが重要。
そのために現場に戻ってきたというわけである。
しかし、事件が発生すれば警察が動くし事実、機動隊がドーパントへの対処にあたっていた。
ともすれば現場は既に警察に押さえられていて、規制線が張られている。
一般人の僕には立ち入ることが出来ないというわけだ。
「出来るならドーパントだった人から話を聞きたいところだけど警察に捕まってるしな……」
事情聴取とかされてるんだろうなぁなどイメージするとステレオタイプな刑事ドラマのワンシーンのような形で脳内再生された。
流石にカツ丼は出されていなかったが。
『燐くーん。真面目に調査やってますかー?』
「……いきなり街中で話しかけないでよ。驚いて変な声出そうだったよ」
小声で、背を向けたままオーダーメイドスーツ店のショーウィンドウに映るアリスにそう返す。
僕にはアリスが見えるからいいけど一般人にはアリスの姿が見えないし、声も聞こえないのでここで普通に話すようにアリスと会話したら僕がヤバい人に思われてしまう。なのでこうして一人でぼうっとするフリをしてアリスと話す。
「それで、どうしたの。わざわざアリスがこっちの世界に来るなんて」
『そりゃあもちろん愛しの燐くんに会いに来たんですよ~』
「真面目に答えて」
『……別に~? 要件がないと会いに来ちゃ駄目なんですか~?』
拗ねたような口調で話すアリスに疑問を抱くが、それよりも調査続行と足を動かすことにした。
警察に現場もドーパントだった人も押さえられてしまった中でも出来ること。警察が押収していない手掛かりを見つけるしかない。
だが、日本の警察は優秀だそうだ。
現場にそういった証拠となりそうな物が落ちている確率はとても低いだろう。
あの未知の怪人と別世界の技術であるガイアメモリの流入。
この二つが繋がっているのか、いないのか。
繋がっていようといまいと関係ないが。
人を守るために戦うのなら脅威が一つでも二つでも戦うのみ……。
────ふと、甘い香りが漂った。
これは、花の香りだ。
正直に言おう。
歌舞伎町は汚い町だ。
臭いも酷い。
そんな場所にあって、香水とも違う自然な香りを放つ存在がいるのかと周囲を見回す。
すると、いた。
考え事をしていたので視界に入らなかったが先程、すれ違った人がいた。
僕の視線に気付いたのか、彼女もまたこちらを向いて僕を眺めている。
時代劇の世界から出てきたのではないかと思う、白い着物姿の美女。
まるで、百合のような人であった。
しっとりとした長い黒髪は乱れなく、白い肌は雪のよう。憂いを帯びているような儚い瞳はいま、僕を映している────。
『────燐くん!』
「ッ!」
現実に、引き戻された。
着物姿の女性は僕を見つめてなんかいない。
その背は小さくなっている。
というか、僕はなにを……。
「どうしたんだろ、疲れてるのかな」
『……燐くん。ああいう女に騙されてはいけませんよ』
「え?」
『あれは女に嫌われるタイプの女です。男からは好かれるでしょうが、男を堕落させる一番タチの悪い女ですよ』
やけに、アリスの言葉がキツイ。
いつものことかもしれないけれど、今のはなんだか違う。
本当に、本当に、心底そう思っているという感じ。
『癪なことですがこの場に私じゃなくて美玲ちゃんがいても恐らく同じことを言ったと思います。あれは、魔性の女ってやつですから』
魔性の、女……。
「……女の人って、怖い」
『ええそうです怖いんです。特に咲洲美玲って女が一番怖いので近付くのはやめましょうね♪ ……って、おいていかないでください!』
ここで出来ることは何もなさそうなので立ち去ることにする。
未成年の僕が、あまりいていい場所じゃないし。
とりあえず、新宿駅方面に出ることにしてまた色々考えよう。
折角、アリスもいるのでアリスの意見でも聞きながら。
本来であれば、敵であるはずの彼女だけれど今は協力関係を結んでいるから力を貸してもらうことに問題はないはず……。
そう、信じてる。
『頼られるのは嬉しいですがもっと私の扱いについて考えてくださいよー!』