仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ 作:大ちゃんネオ
喫茶店の営業が終わる頃に御剣は帰ってきた。調査の結果は乏しく、無駄足に終わってしまったようだった。
「燐兄ちゃん、晩ごはん食べよう」
「お、ちょうどいい時に帰ってきたね。恵理也さんも食べましょ……。なんか、すごく疲れてません……?」
「なんの説明もないまま働かされたらこうなるよ……」
あれから女性客の相手を続けてきたのだ。
普段、女性と関わりの少ない僕にはあまりにも体力を消耗してしまう行動でドーパントと戦うより疲れてしまった。
「……働いた分、食べましょう!」
「……そうだね」
そんなわけで夕飯はカレー。
店主(おやっさんと呼ばれている)はまだ仕事が残っているらしく僕と御剣、章太郎の三人での夕食となった。
章太郎が御剣に調査のことなどをあれこれ尋ねていたので自然と会話の流れがライダーの話となったので思いきって聞いてみた。
「御剣はさ、自分の世界で何と戦ってるわけ?」
「モンスターだよ!」
御剣への質問に章太郎が答えた。
それに御剣がモンスターの詳細を補足する。
曰く、鏡の中に潜む人間を捕食する名前通りのモンスター。
そんなのがウジャウジャいては恐ろしい。
鏡の中から突然襲われたらまず普通の人なら逃れる術はない。
「あと燐兄ちゃんは他の仮面ライダーとも戦ってるんだよ」
「……他の、仮面ライダー?」
その話題が出た途端、御剣の顔に影が差した。
……悲しそうな、顔をする。
「……僕の世界では仮面ライダー同士が殺し合っているんです。願いを叶えるために」
「殺し合う……? 願いのために……?」
まるで意味が分からない。
願いのために殺し合う?
なにも繋がらない。
『はーい! ライダーバトルのことは運営である私から説明させていただきます♪』
どこからともなく甘ったるい女の声が響いた。
一体どこからと部屋を見回す。
女などいない。
ここにいるのは僕達三人だけだ。
いや、待て。
いた。
点けていなかったテレビに女が映っている。
まさか……。
『私を見つけるまで10秒もかかるなんて目と脳が節穴ですか~? 戦場だったら死んでましたよ~』
その女は人を見下し、嘲笑うような瞳で僕を見ていた。
そしてこんなことを言うのだ、見下す以外の何物でもない。
『はじめまして別世界の
……なんだこいつ。
自分で自分のことを有能とか言ってるし、あとなんだろう。
馬鹿にされた気がする。
『ライダーバトルのことが気になるんですか? けど残念、貴方には参加資格はありません。男の子ですから。私のライダーバトルは女の子だけで行われる神聖で穢れた殺し合い。最後に生き残った女の子の願いが叶うゲームですから』
勝手に説明してくれたが、疑問は尽きない。
何故、女だけなのか。
何故、女だけの戦いに御剣が参加しているのか。
そして何故、自分がこの話にここまで興味関心を寄せているのか。
「アリス……。まだこっちにいたの?」
『まだいたのとは失礼ですね。これでも私なりに調査してきたんですよ』
「調査って、アリス姉ちゃんが?」
『ええそうですよ。ある程度、ガイアメモリのバイヤーの情報は掴めました』
その言葉に意識が向いた。
向かざるを得なかった。
「本当なのか!」
『まあ、まだ完璧な情報というわけではありませんし向こうも馬鹿ではないでしょうから対策はしていると思いますが……』
アリスがどこからともなくカードを取り出し、投げつけてくる。
鏡をすり抜けこちら側に飛んできたそれをなんとか受け取るとそこには「AQUARIUM BAR RED SEA」と書かれていた。
バーの店名のようだ。
『今日の女はバイヤーの男に街で声をかけられてついていった先がそこだったと言っていました』
「それじゃあここにいる可能性が高いってことか……」
「乗り込みましょう! 早い方がいいです!」
御剣の意見に賛同し同時に立ち上がる。
だが……。
『ちょっと血気が盛ん過ぎますよ。たったこれだけの情報しかないのに敵の根城に突撃とか馬鹿がやることです。それに燐君は一旦私達の世界に帰投です』
「え!? なんでさアリス!?」
『魔人教団がまた襲来してきました。今度はそれなりに数を揃えているようですから。優先すべきがどちらか、分かりますよね?』
しばし黙り込んだ御剣であったがやはり自分の世界の当座の危機に対処すべきと判断し御剣は戻ることを選択した。
「……僕も行こうか? そのなんたら教団ってのが結構なら数なら僕も……」
「いえ、恵理也さんはこの世界に残っていてください。ドーパントがいつまた現れるか分かりませんから」
「そうだね、分かった。こっちの世界にいるよ」
「お願いします。出来るだけ早く戻ってきますから。そうしたら一緒にこの世界を救いましょう!」
眩しい笑顔を向け、御剣はアリスと共に自分の世界へと戻っていった。
……ご武運を、なんて心の中で呟いて別世界での一日は過ぎ去っていった。
この世界に来て二日目の朝。
いまこの世界にいる仮面ライダーが僕だけだからということで喫茶店での業務はなしにしてくれた。
だが、ドーパントが出なければ暇である。
敵の本拠地に乗り込みたくもあるが昨日のアリスの言葉がもっともなので動けないでいた。
早く、この世界の事件を解決して元の世界に帰らなければ。
この世界でも、僕の世界でも。
ただ殺す。
殺し尽くす。
ドーパントは、尽く。
『なぁに怖い顔してるんですかぁ?』
「ッ!? ……あんた、いつの間に」
姿見の中から僕に向かって話しかけてきたアリスは見ていてムカつくニヤニヤとした笑い顔であった。
……正直、苦手なタイプの女である。
「御剣と一緒に帰ったんじゃないの?」
『そうですが、少し今のこの世界の状況が気になりまして先に来ていたんです。あのガイアメモリとかいうアイテムも気になりますし……。ところで、あなた』
「なに」
『
心臓を、氷の杭で貫かれたかのようだった。
「お前……なんで……」
『なんでって、これまで私が何人の殺人者を見てきたと思ってるんです? 私が何者なのか、申し上げましたよね?』
こいつは、そうだ……。
御剣の世界でライダー達に殺し合いをさせてる奴だったか……。
「だとしてなんだよ。そもそも、殺人? 違うね、
『殺人の解釈はこの際どうでもいいです。私はただ、どうして貴方なのかと思っているだけですよ』
「どういう意味だ?」
『燐くんは人を守るために戦っています。前に燐くんとこの世界で共に戦った双連寺ムゲンという男も人を守るために戦う者でした。それでは貴方は?』
「俺だって人を守るために戦っている」
『本当に?』
ああ、本当だと力強く返す。
嘘偽りのない言葉。
これまでだってそうしてきたのだから。
だが、アリスの人を見透かしているかのような瞳が自信を奪ってくるかのよう。
『……言いたいことはありますが、私は黙っておいてあげます。けどいずれ貴方にこの言葉を贈る者は現れる。その時、貴方がどうなるか……ま、私には関係ありませんね』
そう言い残してアリスは背を向け歩き出す。
気付けば、姿見にはアリスの背ではなく僕が映し出されていた。
「……ひでー顔」
顔は強張り、険しくなっていた。
……気分転換に外に出よう。
調査ってほどではないが街に出てみれば何かあるかもしれないし。
別に外に出るなとも言われてないし。
それに外出するには絶好の天気だ、家の中にいる方がもったいないだろう。
ツルギの世界。
聖山市郊外の廃工場。
三人のライダーが異世界からの侵略者メタローを相手取っていた。
「むふー。君、私の相棒と同じゴリラでしょー。もっと気合入れなよッ!!!」
煌めくグリーンの剛腕がゴリラメタローの顔面を歪め、それがトドメとなり爆発。
仮面ライダーレイダー、喜多村遊はゴリラメタローへの落胆のため息をつくもすぐさま別のメタローに狙いを定めて駆け出した。
「喜多村遊! 敵だと厄介だけれどこういう時は頼もしい味方だね! 私も負けてられないな!」
ヘラクレスオオカブトの頭部を模した手甲でメタロー達を薙ぎ払い、高笑いをするのは仮面ライダーリーリエ、北津喜。
重厚な鎧でメタローの攻撃をものともせず戦場を駆ける姿は戦車のよう。
「あーこいつらの相手つまんないなぁ。やっぱりライダーと戦うのがいいかも。ちょっとそこの金ぴかカブトムシさん、相手してくれない?」
「駄目ですよ喜多村さんこんな時に!」
レイダーの言葉をツルギが切り捨てると同時にメタローも切り捨てられた。
「はいはいっと。さて、飽きてきたしここらで幕引きと行こうか」
【FINAL VENT】
「私も!」
【FINAL VENT】
「終わらせるッ!」
【FINAL VENT】
三人のライダーがそれぞれの最大火力を解き放つ。
レイダーは契約モンスターであるゴリラ型モンスターガッツフォルテに投げ飛ばされた勢いを利用したパンチでメタローの集団を一網打尽にする。
リーリエはヘラクレスオオカブト型のモンスター、プラチナムヘラクレスがその巨大な角でメタロー達を捕縛しリーリエへと向かい巨体を走らせる。
リーリエの手甲の角が赤く輝きを放ち、プラチナムヘラクレスが連れてきたメタローを串刺しにする。
ツルギは剣舞し跳躍。
ドラグスラッシャーの放ったバツ字の斬撃を纏い、仮面ライダーの象徴たるライダーキックを放った。
三つの巨大な爆炎が三人を彩る。
周囲に敵影はなし、戦いは終わったと変身を解いた三人であったが燐だけはすぐさま一度切った戦闘のスイッチを入れ直した。
「もう向こうの世界とやらに行くのかい?」
「はい。向こうにも困ってる人達がいますから。すいませんがこっちの世界をお願いします!」
「ああ私に任せたまえ燐ちゃん! この北津喜に! あ、でも君がこの世界にいない時の咲洲さんの愚痴に付き合うのは流石にそろそろあれだからほどほどにしてくれるかな!」
「もう行っちゃったよ、燐くん」
「なんだって!?」
燐は既にこの世界から旅立っていた。
ドラグスラッシャーの案内でミラーワールドを通り抜け、再び章太郎達の世界へ……。
散歩に出かけていたら、まさかまさかのドーパントと遭遇。
サメが海面から姿を現したかのような、サメの頭部が上半身となっているようなドーパント。
さしずめ、シャークドーパントといったところか。モチーフが分かりやすくて助かる。
「まさかこんな頻繁にドーパントに出くわすことになるなんてな…。思ってたよりも流通範囲が広いのか? 面倒ったらありゃしない」
ボヤいて懐からドライバーとメモリを取り出し、すぐさま腰にセットする。
「どうもこの世界はかなり俺に期待しているらしい」
《Hazard!!》
まあドーパントを減らせるのだから悪い気はしないが。御剣の言っていた通り僕がこの世界に呼ばれた理由がガイアメモリに対抗するため、というのなら殺したところで誰も悪く言わないだろう。悪く言われたところで辞める気などさらさら無いが。
「変身!」
《Hazard!!》
黒の装甲が身を包み、頭のスイッチが切り替わる。
「面倒だからテメェは手っ取り早く仕留めさせてもらう!」
苛立ちを隠さずに右手を握り締め、挨拶代わりにそれをドーパントの腹に向けて打ち込んだ。
相手はただのゴロツキ。とはいえ喧嘩慣れはしているらしかった。それを受け止め、俺を嘲るように鼻で笑い飛ばす。
「こんなんで俺を仕留めるってかぁ!? 笑わせんな!!」
「生憎とお前みてえな大馬鹿野郎を笑わせてる暇なんざないんでね!!」
大声で返し、その途中に左手でドーパントの顎に向け掌底を放つ。もろにそれを食らったドーパントは大きく体勢を崩した。解放された右手を再び握り直し、ガラ空きになっている鳩尾に繰り出す。
「グウッ!?」
痛みに耐えようとしているのかうめき声を出す。不思議なことに可哀想とか申し訳ないとかいう気持ちが微塵も湧いてこない。
勢いのままに左手で頬に向かってストレートを放った。辺りに鈍い音を響かせ、言葉にならない悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。うめき声を上げて悶えている。
「そんなんで降参するつもりじゃねえだろうなァ!! さっさとかかってこいよ!!」
呻いているばかりのサメ野郎に向けて挑発した。ゴロツキなのだから挑発には乗りやすいだろう。
頭に血が上って冷静な判断がつかなくなったらそれはもう俺の勝ちみたいなものだ。攻撃は単調になるはずだし、反応速度も下がるはず。
そしてそんな相手に負けるほど俺は弱くない。
「強いからって調子に乗りやがってこの野郎!!」
予想通り挑発に乗って襲いかかってくるシャークドーパント。動きが単調、直線的でとても見切りやすい。扱いやすくて助かるよ。心の中でそう言って奴が突き出した拳を手の甲で弾き、お返しにと相手の腹に左足で膝蹴りを食らわせる。
「まだまだァ!!」
叫んで地面に着いた左足を軸に体をくるりと回転させ、右足で蹴り抜いた。数メートルくらい吹っ飛んでいき、数回地面を転がったシャークドーパント。苦しそうな声を漏らしながら立ち上がったものの、限界が近いのか足元はフラついている。
「だからって容赦しねえぞ!!」
距離を詰め、もう一度拳を叩き込もうとした時だった。シャークドーパントは変身を解除し出した。思わず攻撃しようとしていた手を止め、中から現れたゴロツキをじっと見つめる。
何か策があってのことかもしれないから油断ならない。そうして警戒したがどうも杞憂に終わったらしく、両手を上げて喚き出す。
「ま、待ってくれ! 降参、そう降参だ! もうメモリは使わない! だからこれ以上殴るのはやめてくれ!」
「……あ?」
何言ってんだこいつは、と思わず口にしかけて何とか押し留めた。代わりに尋常でない殺意が湧いてくる。
大きく息を吸って冷静さを保とうと努力しつつ、男に言う。
「いいやダメだ、絶対に許さん。ガイアメモリは依存性が高くてな、一度手を出しゃおしまいだ。辞めるつって辞めれる代物じゃねえのはテメェだってよくわかってんだろ」
「そんなことは……そうだ、神に誓って使わない! 絶対に使わない!」
「存在しねえやつに誓われても信憑性がねえんだよバカが。第一そんなこと言って守ったやつを俺は見たことがねえ」
そう吐き捨てて男の首を手で握り、掲げるようにして体を持ち上げる。手を引き剥がそうと何度かもがくが、ドーパントの力に普通の人間が敵うわけがないのと同じでライダーの力にただの人間が敵うわけがない。さっきまでの自分の行いが跳ね返ってきているだけだ。
「お前を世に放っておいてもいいことはねえし、刑務所に行ったところで何も変わんねえんだろ。だから……」
首を握る手にぎりぎりと力を入れていく。男の顔が恐怖に青ざめていくが罪悪感は湧いてこない。何人も殺してきたのだから当然かもしれないけど。
「俺が殺す」
静かにそう告げてぐっと力を入れて首を絞めようとした。
その時だった。
「なにを、しているんですか」
御剣が、無表情でそんな風に訊ねてきた。
帰ってきてたのか。
「なにって、こいつはドーパントだからな。殺すんだよ」
御剣の目が大きく見開いた。
だがそんなことはお構い無く、手に力を込め……。
────斬撃が、俺の腕を斬り落とそうと放たれた。
回避のため、男を離し後方へと飛び退く。
「っぶねぇ!? なにしやがる!?」
いつの間に変身していたのか。純白のライダー、ツルギに向かって叫ぶ。
間一髪、避けられたからいいものの、あれは直撃していたら腕がなくなっていてもおかしくなかった。
「それはこっちの台詞です……」
「なに……?」
「ドーパントだから、殺す? 違う! 恵理也さん、貴方が殺そうとしていたのは人間だ!」
……はぁ、こいつも甘いことを言う奴だったか、やっぱり。
「そいつはガイアメモリを使った。使っちまったらもう後戻りは出来ない。ドーパントに一度でもなっちまったらそいつはもうドーパントなんだよ。ドーパントは人間の敵だ。人間を不幸にする。だから……俺が殺す」
そうだ、ドーパントは俺の家族を奪った。
俺だけじゃない。
多くの人間を不幸にした。
だから、殺すと誓った。
ドーパントの男がツルギの背に隠れた。
ツルギは自分のことを守ってくれる存在と思ったらしい。
「おい、そいつをこっちに渡せ」
「させません。彼にはもう戦意はない、人だ。ドーパントなんかじゃない。……人は、守ります。人を守るのが、
「……ああ、そうかい。ドーパントを庇うってんならお前も容赦しない。ドーパントは殺し尽くすッ! それが、
雷が遠く、二人の仮面ライダーの間に閃いた。
ツルギとシェリフ。
二人の正義がいま、ぶつかり合う────。