仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ   作:大ちゃんネオ

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離別と逢瀬

 雨が降り出し、二人の仮面ライダーを濡らす。

 二度目の雷鳴が鳴り響き、それがゴングとなる。

 最初に動いたのはシェリフの方だった。

 躊躇のない拳がツルギを狙う。

 ツルギは冷静にシェリフの拳をスラッシュバイザーの籠柄で受け止める。

 

「チッ!」

「……」

 

 シェリフの複眼とツルギの鋭いバイザー状の瞳が至近距離で睨みあう。

 突き出した拳を引いて、バックステップで距離を取るのと同時にシェリフはツルギの頭部目掛けて蹴りを放つ。

 だが、それより早くツルギの足がシェリフの軸足を崩した。

 背中から倒れたシェリフ。

 即座に立ち上がろうとするも目の前に切先が置かれ身動きは取れず、ツルギを睨み付け吼える。

 

「なにしやがる!」

「それはこっちの台詞です! 人を……人を殺そうとするなんて!」 

「人だと……違う! あいつはドーパントだ! 一回ドーパントになっちまった奴はもう人間じゃねえんだ!」

 

 切先を払い、ツルギの腹部を蹴りつけ立ち上がったシェリフはドーパントである男を狙う。

 

「ひっ……」

 

 男は逃げ出そうとするも足が縺れて転んでしまう。

 恵理也はそんな男を鼻で笑った。

 

「やめろッ!」

 

 ツルギがシェリフの前に両手を広げて立ち塞がる。

 人を守るためにライダーとなった燐にとって、シェリフの行いは到底看過出来るものではない。

 

「邪魔をするなッ!」

 

 シェリフが背中に携えた棒を引き抜くと、刃が展開し鎌となる。

 上段から振り下ろしツルギを切り裂こうとする。

 

「……ッ!?」

 

 だが、シェリフは鎌を振り下ろせなかった。

 シェリフは眼前に突き付けられたものに圧倒される。

 いつの間に、ツルギは剣を抜いたのかと。

 ツルギのスラッシュバイザーの剣先が再びシェリフの鼻先に突き付けられる。

 鎌を手にしたのはこちらが先だった。

 だが、神速と言っても違わぬ抜刀で、ツルギはシェリフの行動を抑止したのだ。

 

「やめろと、言った……!」

 

 ツルギの鋭い緑光放つ眼がシェリフを射抜く。

 メドゥーサの目を見たものが石となるかのように、シェリフは鎌を振り上げたまま硬直。

 ツルギが一歩進むごとに、シェリフは一歩後退する。

 それしか、出来なかった。

 

「へへ……よくもやってくれたな……!」

 

《Shark!》

 

 男は再びガイアメモリを挿入しシャークドーパントへと変貌する。

 自身を痛め付けたシェリフに仕返ししてやろうと飛び掛かる。

 

「くっ……!」

 

 眼前のツルギと飛び掛かるシャークドーパントに窮地となるシェリフ。

 シャークドーパントにとってはこれ以上とない好機、であったが。

 

「ぐぎゃあぁぁぁぁ!?!?」

 

 シャークドーパントに刻まれる無数の斬。

 勇んで跳んでいたシャークドーパントは地に堕ち、斬を放ったツルギへと怨嗟の声を上げる。

 

「な、なんでだよぉ……俺を守ってくれるんじゃなかったのかよぉ!!!」

「人は守ります。ですが、今の貴方はドーパントで、恵理也さんを襲おうとした」

「は、はぁ? 意味が分からねぇよ! 俺だって人だろうが!」

「そうですね。ガイアメモリさえ無ければ、ですが。おとなしく僕にガイアメモリを渡してください」

 

 ガイアメモリを回収しようと手を差し出すツルギ。

 シャークドーパントは……男の姿へと戻り、ガイアメモリをツルギに手渡すと一目散に逃げ出した。

 

「待ちやがれッ!」

 

 男を追いかけようとするシェリフをツルギが剣で制止する。

 

「邪魔をするなッ!」

「あの人を殺そうとするなら、僕は全力で止めます」

「……チッ」

 

 シェリフはドライバーからメモリを抜いて恵理也の姿へと戻った。

 ツルギもまた、バックルからデッキを外して変身を解除する。

 

「恵理也さん貴方は……」

「ああ、そうだよ。ずっとドーパントを殺してきた」

「どうして……!」

「ドーパントになった奴はもう人間じゃない。あの男だってきっとまた罪を犯す。だから殺すんだ! 御剣、あいつを逃がしたことでまた被害が出たらどうする。それで死んだ人が出たら? お前は責任を取れるのか?」

 

 恵理也の言葉に燐は息を飲んだ。

 ただ、それでも燐は真っ直ぐ恵理也を見つめて言い放った。

 

「その時はまた、僕が止めます。何度だって止めます。それに……人を殺すのは間違っています! あなただって罪を重ねているんですよ!」

「俺はドーパントの罪を処断し、罰を執行している。だから俺はシェリフなんだ。これ以上は話しても無駄だ。俺は俺でやらせてもらう」

 

 そう言って立ち去る恵理也を燐は雨に濡れながらただ見つめることしか出来なかった。

 かけるべき言葉が上手く、見つからなくて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人で行動すると言ったがどうしたものかと恵理也は頭を悩ませていた。

 傘を差す人混みにまみれて街を歩いていく。

 誰も自分のことなど気にしないで過ぎ去っていく。

 ここは別世界で、黒神恵理也という人間を知っているような人物はいない。つまり、頼るべき人がいないので自力でなんとか生き抜くしかない。

 だが、未成年ではそれも難しい。

 お金もないし、夜中に徘徊しようものなら警察に補導されてしまうだろう。

 警察に補導なんてされたら、この世界の住人でない自分は戸籍なんてものもないわけで確実に怪しまれる。

 

「にしてもどうしような。せめて雨風凌げるところを……」

 

 独り言を呟いた時、いつの間にか道行く人々は消えていた。

 気が付いた時には通りには自分だけで、妙な気配に包まれていた。

 

「……ドーパント、か?」

 

 ドライバーをいつでも取り出せるように身構え、周囲を警戒する。

 襲われる気配はない。

 それでも警戒を解かずにいたが、鼻についた匂いに思わず釣られた。

 これは何か、花の匂いだ。

 そうして、僕は出会った。

 

「貴方……」

 

 和傘を差す、白い着物に身を包んだ美女。

 そうとしか形容出来なかった。

 肌も雪のように白く、美しい黒髪がよく映えている。

 

「貴方は……仮面、ライダー……。なのでしょう……?」

「え……、どうして、そのことを……」

「先程の戦いを、見ていましたから……」

 

 見られてしまった。

 だからといってどうすることも出来ない。

 そもそもこの女はさっきの戦いを見て、僕に接触してきたとは一体どういう了見なのか。

 それが、分からなかった。

 

「貴方は、ドーパントを、殺すのでしょう……?」

「そう、だけど……」

「私は、ドーパントに……家族を殺されました……」

「ッ!?」

 

 彼女も、僕と同じ境遇……。

 はじめて、出会った。

 僕と同じ境遇の人に。

 僕と同じ傷みを味わってしまった人に。

 

「私は、私の家族を殺したドーパントが憎いのです……。私は……ドーパントを、殺したいのです……」

「ドーパントを……」

「お願いいたします。私の復讐のために、力を貸してはいただけませんか……?」

 

 あぁ……この人は、僕と同じなんだ。

 この人の傷みは僕にしか分からない。

 他の誰も共感出来ない。

 共感出来るのは、僕だけなんだ。

 

「……分かりました。貴女の家族を殺したドーパント、僕が殺します」

「ありがとう、ございます……。あの、貴方のお名前は?」

「黒神、恵理也です」

「黒神恵理也さん……。私は、カンナと、申します……」

 

 カンナさん……。

 儚げな、雪のような女性。

 ふと目を離したら消えてしまいそうな印象を持った。

 別世界でのこの出会いに僕は、どこか心の中で躍っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……クソが! なんなんだ奴等は!」

 

 シャークドーパントだった男は暗い路地で一人怒りを吐いていた。

 せっかく手に入れたメモリを失ってしまい、ただ逃げるのみであったが今はあの二人……ツルギとシェリフへの怒りに猛っていた。

 

「またアイツからメモリを買って奴等をぶっ殺してやる!」

 

『アイツって、誰のことですか~?』

 

 自分だけしかいないはずの路地にもう一人、女の声が響いたことに男は驚いた。

 周囲を見渡しても女の姿などはなく戸惑う男。

 そんな男の足下、水溜まりから緑色の触手のようなもの、正確には蔦が現れ男の足を絡めとる。

 

「ひぃっ!? な、なんだよこれ!?」

 

 蔦は足を絡めとると他にも数本が水面から現れ男の四肢を拘束した。

 男には見えないが、水面からアリスが覗き込むように男を視ていた。

 

『別に警察とかではないので貴方を逮捕しちゃうぞ☆ みたいな感じではないんです。貴方が知っていることさえ話してくれれば解放してあげます』

 

「な、なんだよ……なにを話せばいいんだよ!」

 

『貴方にメモリを売った人物のことです。何処で出会い、どんな名前で何処にいるのか。それだけです』

 

「お、男だ! 酒飲んで歩いてたら声を掛けられて、奴が経営してるっつうバーに連れてかれて、そしたらメモリを売ってや……」

 

 突然、青い光に包まれた男の姿が消えた。

 アリスはすぐに自身の契約モンスターの蔦をミラーワールドへと戻す。

 そして、この現象の原因をアリスは探ろうとしたが向こうから現れてくれた。

 無数の透明な立方体が人型を形成しており、立方体の中には液体が満たされているようで、全身にパイプのようなものが走っている。

 ドーパントである。

 

「水溜まり……いえ、ミラーワールドからですか」

 

『ミラーワールドのことを……!』

 

「私ではそちらに手出し出来ないのでもう立ち去ることにするが、これ以上の詮索はやめたまえ。私の癒しを邪魔しないでもらいたい」

 

『癒し……?』

 

「そう。癒し。私は癒されている。至福の時間だ。この癒しを邪魔しなければ私は君達と敵対することはしない。ゆえに、これ以上関わらないでもらいたい。それでは、レディー」

 

 ドーパントはそう言って立ち去る。

 ドーパントの「癒し」という言葉が引っかかるアリスであったがもうここに用はないとアリスもまた路地を後にした。

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