仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ 作:大ちゃんネオ
カンナさんについて歩く。
夜の大都会、摩天楼がいくつも建ち並ぶ。
その中の一つにカンナさんは入っていく。
さも、当然のように。
ロビーには警備員とコンシェルジュ?なんかもいて、これが高級マンションかと緊張する。こんなところに住んでいるなんて、カンナさんはお金持ちらしい。
なんともな場違い感。
自分がこんなところにいていいのかなんてことを考えてしまう。
エレベーターで二人。
無言。
気まずさを感じるがそれは恐らく自分だけでカンナさんはなんとも思っていないようだった。
まるで、波ひとつ立たない水面のような人だ。
そして辿り着いた部屋は、広く、綺麗で、いや……。
綺麗というよりこれは生活感が……なさすぎる……。
「家族がいなくなってから、色々と整理したので……」
心を読まれたとしか思えぬ言葉に内心ビクッときたが、そんなことはどうでもいい。
きっと顔に出ていたのであろう。
「好きに使っていいので……」
「え」
「行くところ、ないのでしょう……。野宿よりかは、マシかと……」
野宿とタワマンの部屋なんてそれこそ月とスッポン。比べるまでもない。
ありがたく部屋をしばらくお借りすることにして、この街に巣食うドーパントを殺していこう……。
「あ、燐兄ちゃんおかえり! ……って、ずぶ濡れじゃん!」
「早く拭かないと風邪ひくぞ。タオルタオル……」
喫茶Hamelnに戻ると章太郎君とおやっさんが出迎えてくれた。
おやっさんが店の奥からタオルを取ってきて力強く僕の頭を拭き始めたので一旦止めてもらった。
「もう、自分で拭けますって~」
「こりゃ失敬。ついお節介を焼きたくなるもんでね。よし、熱いコーヒー淹れるから待ってなさい」
「ありがとうございます、おやっさん」
お礼を言って、一番奥のテーブル席に腰をかける。
いつの間にか、ここが僕の定位置となっていた。
鏡が近いからだろうか。
『わざわざ私と話しやすい位置に座ってくれてありがとうございま~す』
「アリス……」
背後の大きな鏡から、アリスの楽しげな声が響く。
『それで、黒神恵理也のことで意気消沈中、ですか。まったく、人を殺すライダーなんて私達の世界にごまんといるじゃないですか』
「……君がそう仕向けているんだろう。あれは」
『人聞きの悪い。私は選択肢を与えているだけです。戦うか、戦わないか、命をかけるかかけないか、願いを現実とするか夢のままで終わらせるか。そう、彼女達は選んでライダーとなっているのですよ』
言い返したい気持ちでいっぱいであるが今はそれどころではない。
「アリスは、恵理也さんのこと……」
『ええ、知っていました。というか、気付いていたと言った方が正確ですね。だって、人殺しの臭いがぷんぷんなんですもん』
人殺しの、臭い……。
恵理也さん……。
「……ムゲンさんみたいに、一緒に戦えると思ったのに……」
かつて、この世界で出会い共に戦った仮面ライダーデュオル・ムゲンさん。
頼もしく、勇ましい人であった……。
『いない人間のことを思っても仕方ないでしょう。それに、黒神恵理也と双連寺ムゲンは違う人間。同じことを期待なんて、馬鹿げています』
「そりゃ、そうだけどさ……」
『にしても、あれではいずれまた戦うことになりますね。どうするんです? 斬ります?』
「斬るなんて、そんなこと……!」
『……やはり、燐くんは戦うべき人ではありませんね。デッキを返してください』
「なんだよ、それ。今までだって僕は戦ってきた、戦ってきたんだ……!」
アリスを一瞥することもなく席を立ち、店を出る。
雨は既に止んでいたので傘は必要ない。
ただ、今は……頭を冷やしたかった。
店を出る燐はコーヒーを持ってきた権兵衛とすれ違った。
「お、おい! コーヒー! コーヒー飲んでけ!」
「燐兄ちゃん! 僕も行く!」
店を出た燐のあとを追い、章太郎が走る。
権兵衛は淹れたコーヒーを仕方ないと自分で飲み、カウンターへと戻る。
そんな権兵衛に気付かれることのない鏡の中のアリスは一人、ため息をつく。
『……私は、心配して言ってるんですよ。燐くん……。貴方に戦ってほしくないから……』
鏡面が波打ち、アリスは消える。
Hameln店内には、権兵衛一人だけとなった。
垂れる枝を切り裂く。
剣を舞わせ、心を研ぎ澄ませていく。
この手の枝を斬るのは意外にも難しい。普通の剣とは違う、このスラッシュバイザーであってもだ。
力が入っていない自然体、重力に身を任せる枝は柔よく剛を制すを体現している。力任せに剣を振るうのでは、斬れないのだ。
「────ッ!」
最後の一振。
枝は……落ちなかった。
それで一気に集中は途切れる。
「かっけー! やっぱ燐兄ちゃんの剣はすごいや!」
「ありがと。けど、まだまだなんだ……。まだまだ……」
以前、ムゲンさんと手合わせということで特訓してから自主的にこうした特訓を行うようにはなった。
孤独に剣を振るう。
この時間を存外に僕は気に入っていた。
たった一人になれるから。今は章太郎君がいるけど。
「そういえば、恵理也兄ちゃんは?」
章太郎君の言葉に、胸がざわついた。
なんて、説明しようか……。
恵理也さんのこと。章太郎君に彼は殺人を犯す人だったとは言えない。
それも、自覚的に。
「……」
「燐兄ちゃん?」
「あ、ああ……恵理也さんは、別行動、取ることになって……。二人で手分けして敵を探そうってなったんだよ」
「そうなんだ。早く解決するといいね、今度の事件もさ」
「そうだね……」
……なんとか、しないといけない。
それも、早く。
時間がかかればかかるほど、この世界に流入するガイアメモリの数は増え、被害者も増えていく。
今回の事件は特に早期解決を意識しなければならない……。
「……ッ! 章太郎君!」
章太郎君を引き寄せ、僕の背後に回す。
それとほぼ同時に暗闇から飛び掛かる黒い人影を斬った。
全身が黒く、骨のようなもので顔を象っている。
こいつは……。
「マスカレイド・ドーパント!?」
「やっぱりドーパントか……」
暗闇から次々と現れるマスカレイド・ドーパント達。
数は多いが……さっき斬った感じ、一体一体はそこまで強くはないようだ。
ただ、この
「燐兄ちゃん……」
「大丈夫。僕が守る。────変身!」
ツルギへと変身し、左手の甲にスラッシュバイザーの刃を滑らせ、構える。
マスカレイド・ドーパント達が襲いかかる。
徒手空拳による接近戦。
飛び蹴りを放つ敵を回し蹴りで迎え撃ち、背後から殴りかかる二人の間を縫うようにすり抜けると同時にスラッシュバイザーで切り裂く。
「燐兄ちゃん!」
「大丈夫だ、心配いらない」
章太郎君を庇いながらの戦闘。
だが、問題はそれよりも……。
切り裂かれたマスカレイド・ドーパントが立ち上がり、再び襲いかかる。
メモリブレイクの出来ない僕では奴等を戦闘不能にするのにどうしても時間がかかってしまう。
体力勝負となってはこちらが不利だ。こんな調子では事件の早期解決なんて夢のまた夢だぞ、御剣燐……!
章太郎君も、ドーパントとなった人も守り戦わなければいけない。
「……恵理也さん……」
思わず、その名を口にする。
いない人を、道を違えてしまった人をあてになんて……。
しかし、こんな戦い方のままでは……。
『燐くん! こいつらは人ではありません! 何者かに生み出されたもの。容赦なく切り捨てちゃってください!』
どこからともなく響いたアリスの声は気力を回復させるのに必要充分な情報を届けてくれた。
「アリス! ありがとう!」
ソードベントを使用しリュウノタチを召喚。
闇夜に煌めく白刃が仮面舞踏会の参加者達を切り裂いていく。
ある程度のダメージを与えればこいつらは消滅するようで、次々とマスカレイド・ドーパント達の数を減らしていく。
逃亡する敵を追いかけ、柳が並ぶ水路沿いに出る。
ジャンプで敵の頭上を飛び越え、行く手を阻む。
走り抜け、切り捨てる。
斬られた一体は水路に落ちて水飛沫をあげる。
そして、僕の背後にはマスカレイド・ドーパント達の消失痕。
「終わった……」
変身を解き、一息。
大した相手ではなかったが、ひどく疲れた気がする。
「こんなことで疲れてられるか……」
そんなことを口にした時、ふと気付く。こちらを見定めるような視線。
それは……昨日も出会った、白い着物姿の女性によるもの。
こんな、偶然。
いや、不自然だ。
ドーパント絡みの場所に現れる、彼女は一体。
何かこの事件の鍵を握っているかもしれない。
そう思い、彼女を追いかけようとした瞬間。
『燐くん! 私達の世界にまた魔人教団の軍勢が!』
「……ッ!? 分かった、すぐに向かう!」
着物の女性がいた場所に再び目を向ける。
そこにはもう、彼女の姿はなかった。
彼女のことも気にかかるが、今は自分の世界のことだ!
「燐兄ちゃん!」
「章太郎君。ごめん、また自分の世界に戻らなきゃだ。必ず戻る」
「……うん。頑張ってね!」
ありがとうと返事して、路駐してあったミニバンからミラーワールドに入り、自分の世界へと急いで向かった。
魚踊る水槽を観賞出来るカウンターに座る着物の女、カンナ。
将棋の歩の駒を弄ぶ彼女にカクテルを出したオールバックのマスターが彼女に話しかける。
「仮面ライダー……シェリフ、でしたか。彼はもう貴女の手に落ちたのですね」
「ええ……。もう、彼は私の駒……」
「では、あとはツルギを」
カクテルに口をつけるカンナ。
表情は変わらない。
「仮面ライダーツルギ、御剣燐……。貴方もまた、私の術中……」
「駒にはしないのです?」
「彼は……出来なかった……。だから、殺すしかない……」
カンナが手にする駒が凍りつき、砕ける。
カンナの表情は凍てついたまま。
再びカクテルに口をつけ、カンナはバーを後にした。
ツルギとシェリフ。二人に少しずつ、魔の手が伸びていた……。