仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ外伝 仮面ライダーツルギVS仮面ライダーシェリフ   作:大ちゃんネオ

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白夜

 雨に、打たれる。

 泥を這う。

 もう、立ち上がるなんて思考はなかった。 

 自身の犯した罪は、重い。

 俺が御剣を殺したようなものだ。

 騙された、操られたなんて関係ない。

 俺はあいつを殺してしまった……。

 

 この世界を守るために戦っていたあいつを……。

 

 ぴちゃ、ぴちゃとこちらに近付く足音。

 目の前に立つ白百合は、カンナさん────。

 雨を遮る白い和傘が、百合の花に見えた。

 

「カンナ、さん……!」  

「私に、ドーパントに殺された家族なんていない」 

「は……?」

「あなたは、利用するのにちょうどよかった。復讐に囚われているあなたは」

「貴様……!」

 

 カンナさん……。いや、カンナは変わらず無表情のまま俺を見下ろす。

 

「仮面ライダーは私達の敵なの……。だから、ね……? ああ、でも……。あなたは、仮面ライダーじゃない……」

「なに……?」

「復讐という欲望に囚われ、己が欲望のままに殺戮を繰り返す……。貴方とドーパント、なにが違うの?」 

「━━ッ!?」

 

 抑揚のない、感情の籠らぬ声で。

 こちらを見ているようで俺のことなど見ていない瞳で。

 彼女は、縛る。

 

 反論したい。

 だけど、言葉が出ない。

 口が動かない。

 頭が働かない。

 

 まるで、溶けて、いくかの、よう……。

 

 ああ、まるで、この泥と、同じように……。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

 

「……」

 

 見下ろすその瞳は虚無を帯びていた。  

 なにも、なにも感じない。

 カンナの瞳が映すものは黒神恵理也ではなく、使い捨てた駒。

 もはや、彼女にとって無価値なもの。

 気に留める必要もなく、ただ立ち去るのみ────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めるとたくさんの人達と共に暗い部屋の中にいた。

 ここは、檻の中……?

 コツン、コツンと響く足音が近付いてくる。

 おじさんと同年代ぐらいの男の人が闇の中から現れると、胡散臭い笑顔を僕達に向けて浮かべた。

 

「どうも皆さん。不自由を強いてすまないが、我々の言う通りにしていれば悪いようにはしない」

「な、なんだよお前は!? ここから出せよ!!!」

 

 若い男の人が怒鳴る。

 それに続いて、他の人達も騒ぎ出す。だが、男は意にも返さずスーツの懐から……ガイアメモリを取り出した。

 

《AQUARIUM》

 

 男の姿が、水槽を何個も積み重ねたかのようなドーパントへと姿を変える。

 そして、最初に声を上げた男の人の身体を何かが貫いた。

 力なく倒れる男の人は……死んでいた。

 檻の中の人々はパニックを起こし、悲鳴や助けてくれといった声で満たされる。

 

「言ったでしょう。言う通りにすれば悪いようにはしないと」

「な、なにをすればいいんだ……!」

「この地球の、地球の本棚にアクセス出来る人間を生み出すこと」

 

 地球の本棚。

 仮面ライダーWに登場する地球のデータベース。

 この世界のことを全て記録しておりガイアメモリの製造には欠かせない。

 他の人達は意味が分からないようだけど、僕には理解出来た。

 

 地球の本棚にアクセス出来るようになるってことはつまり、仮面ライダーWのフィリップ同様にデータ人間になるってこと……!

 

 けど大丈夫だ。

 この世界には燐兄ちゃんと恵理也兄ちゃんが来ているから。きっと二人が助けてくれる!

 

「お前の言う通りになんかなるか! 仮面ライダーがいるんだぞ!」

「仮面、ライダー? ふふ……はっはっはっ!!!」

「な、なにがおかしいんだよ!」

「残念だが少年。……仮面ライダーは、既に始末した」

 

 胸を貫かれたかのようだった。

 始末した。

 そんな、そんな……。

 

「嘘だ! 燐兄ちゃんと恵理也兄ちゃんが負けるもんか!」

「事実だよ。黒神恵理也は直に死に……御剣燐はこの手で確かに殺してやった。腹に風穴が開いて血をドバドバと流して……血の池に沈んだよ!」

「そんなの嘘だ! 燐兄ちゃんがお前なんかにやられるか!」

「活きのいいガキだ……。よし、まずお前から泉に放り込んでやる」

 

 ドーパントから青い光が放たれる。

 そして気が付いたら檻の外にいた。

 ドーパントの部下の男に羽交い締めされ、連れ出される。

 

「離せ! 離せよ!」

 

 ジタバタと暴れまわっても無駄。

 そのまま無理矢理どこかへと連れて行かれ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白く、白く、溶けていく。

 雪のよう。

 自分が、雪になったかのよう。

 このまま溶けて、冷たく、消えていく。

 静かに、誰にも知られず、終えていく。

 自己というものが曖昧となり、あたかも浮いているかのよう。

 

 最早、名前すらも思い出せない。

 自身が何者であったのか。

 何を成すものであったのか。

 

『────け────イダー』

 

 声が聞こえた気がした。

 けれど、この白い闇の中でそんなものが聞こえるはずはない。

 幻だろうと、結論づけた。

 

『助けて、仮面ライダー……』

 

 仮面、ライダー……。

 違う。

 僕は、俺は仮面ライダーなんて高尚なものではなかった。

 仮面ライダーという名を騙り、己の欲望を満たしていただけだ。

 だから、誰かを助けることなんて……。

 

「あとは、任せました。仮面ライダー、シェリフ……」

 

 頭に響いたこの声は……。

 そうだ、御剣燐の最期の言葉……。

 俺を庇う直前に、囁いた……。

 

 御剣燐。

 自分が殺してしまった……。

 俺の、せいで……!

 あいつは人を守るということを貫いていた。

 あそこで死ぬべきは俺で、あいつこそ生きるべきだった。

 だが……。

 

「恵理也さん……貴方は、仮面ライダーだろッ!!!」

 

「恵理也さん! 貴方はドーパントを憎み、ドーパントを殺してきたんですよね。貴方の行いを僕は認められない。けど、貴方の行いが誰かを救ってきたはず! 貴方は仮面ライダーシェリフ! ドーパントではない! 僕の、僕達仮面ライダーの仲間だ!」

 

 御剣の言葉が俺を切り裂いていく。

 あいつは、こんな俺を最初から仮面ライダーだと認めていたのだ。

 お互いの思想は相容れずとも、仮面ライダーと……。

 

 御剣燐。

 あいつはとにかく甘い奴だ。 

 現実というものが見えていない。そう、思っていた。

 けれどそれは間違いであいつは常に現実と向き合い戦ってきたのだろうと今なら分かる。

 現実を知るからこそ、理想を目指していたのだと。

 こんな残酷な世界だからこそ、戦っていたのだと。

 

『助けて、仮面ライダー……』

 

 ……俺は、御剣燐のようにはなれない。

 ドーパントが憎い。

 だからこれからも殺し続けるのだろう。

 それはきっと、御剣燐とは正反対の闇の中。

 孤独に、暗い闇の中を歩き続ける運命。

 だが、それでいい。

 日の当たる場所にいる必要はない。

 光は、御剣燐のような者達に任せればいい。

 だから俺は……。

 

 

 泥を這い、雨に打たれながらも立ち上がっていた。

 覚束ない足を一歩ずつ前へと動かす。

 少しずつ、少しずつ体に力が漲り、その歩みも力強いものへとなっていく。

 内に響く、助けを求める声に導かれ。

 そして、走り出す────。

 

 

 俺は、託されたのだ。

 罪無き人々を守ることを。

 そして俺は、御剣燐のような奴がずっと光の中を歩めるようにこの闇の中で戦い続ける……!

 

 

 白き闇が黒に塗り潰される。

 そうだ、それでいい。

 それこそが、俺の色。

 仮面ライダーシェリフの歩む道!

 どんな残虐も、どんな残酷も、どんな絶望も……。

 

「俺が……殺すッ……!」

 

 もう、自分と同じ悲しみを抱く者が現れぬように。

 その正義は苛烈に、燃え上がる。

 彼の名は仮面ライダーシェリフ。

 罪を犯し、悲しみを生み出す者に罰を下す執行者である────。

 

 

 

 

 

 

 輝く泉の前に立たされた少年、章太郎。

 地球の記憶が満ちるこの泉に落ちて、無事でいられる保証はない。

 

「いやぁ、驚きましたねぇ。この世界にも泉があるなんて」

「……あなた達の世界にあったものとは厳密には違う。けれど、ガイアメモリの製造には利用出来る……」

「ええ、ええ。量産の暁にはひとつの都市だけなんてケチ臭いことは言わずに世界中にばらまきましょう。世の権力者達はこぞって求めるはずだ。そうすれば、この世界はジ・エンド……」

 

 禍々しい笑みを浮かべる滝藤から語られた計画を聞いた章太郎は驚きに目を見開いた。

 

「そんなこと仮面ライダーがさせないぞ!」

「仮面ライダー? もう殺したって言ってるだろ? それとも他の奴等でもまだいるのかぁ?」

 

 章太郎の脳裏に浮かぶもう一人の仮面ライダー、デュオル。

 だが、デュオルはいまこの世界にはいない。

 こことは違う世界で戦っているのだ。

 

「何人来ようと殺すがね、仮面ライダーは。既に二人は討ち取ったのだからなぁ!!! さあ少年。大好きな仮面ライダー達のところに送ってあげるよ」

 

 滝藤が指示を出し、章太郎を羽交い締めにしていた男が前へと進む。

 泉へと近付けられる章太郎は目を閉じる……。

 終わりの時を受け入れたくない。

 だが、仮面ライダーがいないのであれば……。

 

「勝手に死んだことにされちゃ困るな」

 

 声と共に銃声。

 章太郎を捕らえていた男の腕から力が抜けて、章太郎は拘束から抜け出し、逃げる。近くの階段からとにかく上へ、上へと。

 男は、眉間を撃ち抜かれていた。

 しかし男は死者蘇生兵士NEVER。

 ほんの少し意識を失っただけですぐに目覚めた。

 

「誰だ!?」

 

 暗闇の通路の向こうに滝藤は叫ぶ。

 闇の中からの返答は足音。

 コツン、コツンと歩み寄る。

 そして姿を現すは……。

 

「お前は……!」

 

 闇より出でるは仮面ライダーシェリフディスペアー。

 紫の体躯に迷彩柄の布切れを纏うガンマン。 

 

「さっきぶりだなァ、滝藤!」

 

 シェリフディスペアーは銃を乱射しこの場で始末出来そうな者達は始末しようと目論むが敵はNEVERとドーパント、そして謎の女カンナ。

 NEVER達に銃弾は効かず、滝藤はアクアリウムドーパントに変貌、カンナは雪の花のような障壁で銃弾を防いだ。

 

『GOLDFISH』

 

 NEVER4人はゴールドフィッシュドーパントへと姿を変え、シェリフディスペアーに接近。

 銃という武器を手にしたことでパワーなどが落ちているシェリフディスペアーは接近戦が不得手。

 舌打ちを一つしてからメモリをハザードメモリへと変え、シェリフへと変身。ゴールドフィッシュドーパント達との格闘戦に挑む。

 

「うおおお!!!!!」

 

 壮絶な肉弾戦。

 数を物ともせず、気迫で勝る。

 

「カンナさんあいつは死んだんじゃないのか!?」

「……私の術に嵌まっていたはずなのに、どうして……」

「ええい!」

 

 アクアリウムドーパントも戦列へと参加し5対1という更に不利な状況へ。

 だが、仮面ライダーシェリフは一歩も退かない。

 ここにいる悪を殲滅するまでは、下がらない。

 

「黒神恵理也……なぜ……」

「なんでここにいるかってか? んなもん知ったこっちゃねえな。オラァッ!!!!!」

 

 ゴールドフィッシュドーパントを殴り飛ばし、続くはアクアリウムドーパント。

 

「今度はちゃんと殺してやるよ!」

「ほざけ! お前如きに殺されてたまるかよ!」

 

 アクアリウムドーパントとの拳の打ち合い。

 基礎スペックの高いアクアリウムドーパントの拳はシェリフの肉体を痛めつけていくが、今のシェリフには響かない。

 ついに、シェリフのアッパーがアクアリウムドーパントの顔を捉えた。

 

「ふぎぃぃぃ!?!?」

 

 天井を破壊し、雨降りしきる外へと転げるアクアリウムドーパントを追撃するシェリフ。

 シェリフとアクアリウムドーパントを見下ろす廃墟のホテル。

 廃墟のホテルの地下が彼等の基地であったのだ。

 更にシェリフを追うゴールドフィッシュドーパント達も外へ。

 水の弾丸の雨嵐がシェリフに降り注ぐ。

 

「邪魔だぁぁぁぁ!!!!!」

 

《Hazard!!Maximum Drive!!》

 

 黒いオーラを拳に纏い、飛び上がる。

 集中砲火を受けても止まらぬシェリフの拳がゴールドフィッシュドーパントへと炸裂する!

 

「あ、あぁぁ……!」

 

 吹き飛ぶゴールドフィッシュドーパントからメモリが吐き出され、粉砕。また、NEVERにとってメモリブレイクは死を意味する。

 消滅していく男など気にせず、シェリフは更なる猛攻を続ける。

 

《Hazard!!Maximum Drive!!》

 

「でやぁぁぁぁ!!!!」

  

 次なるマキシマムドライブはライダーキック。

 また一体、ゴールドフィッシュドーパントが葬られる。

 残るゴールドフィッシュドーパントは二体。この勢いで雑魚は片付けると加速していくシェリフであったが、背中に強い衝撃を受けた。

 

「ガッ!?」

 

 倒れるシェリフは変身が解除され恵理也の姿へと戻った。

 そしてその後方、アクアリウムドーパントが腕のホースから高圧水流を発射した後であった。

 

「チャージが足りなかったか。まあ、いい」

 

 地に伏す恵理也は立ち上がろうとするがゴールドフィッシュドーパントに蹴り飛ばされ、地を転がる。

 

「お前達、そいつを押さえとけよ」

 

 アクアリウムドーパントがチャージを開始する。

 仮面ライダーツルギを貫いた高圧水流を恵理也にも放とうとしているのだ。

 

「離せクソがァ……!」

 

 拘束から逃れようと踠く恵理也であるが二体のゴールドフィッシュドーパントを生身で振り払うことは出来ない。

 どうすればいいととにかく頭を働かせるが時は残酷にも刻まれていく。

 

「チャージ完了……!」

 

 今にも放たれようとしている高圧水流。

 どうすることも出来ないのかと諦めかけたその時、声が響いた。

 

「ライダーッ!!!!!」

 

 叫んだのは一人の少年、章太郎。

 逃げるために昇った階段が外へと繋がっていたのだ。

 仮面ライダーを愛する少年の呼び声が、奇跡を起こす。

 

 聳え立つ摩天楼の鏡面が揺らぐ。

 そして現れるは────。

 鏡より出でたそれは剣を構え、アクアリウムドーパントへ向かい滑空し、薙ぎ払う。

 

「ぐぁぁぁぁ!?!?」

 

 その斬を諸に食らったアクアリウムドーパントは大きく吹き飛ばされた。

 世界の空気が張り詰める。

 

「嘘だろ……」

 

 その姿に恵理也は目を見開いた。

 

「あぁ……!」

 

 その姿に章太郎は目を輝かせた。

 

「何故だ……!?」

 

 その登場にアクアリウムドーパントは目を疑った。

 

「何故生きている!? 仮面ライダーツルギィィィ!!!!!」

 

 鏡より現れた白き仮面ライダー。

 それは、紛うことなき人類の護り刀。

 仮面ライダーツルギ────。

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