アフタースクール・ラビュリントス   作:潮井イタチ

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第13層「あなたは、自殺産道に足を踏み入れた」

 幽体離脱をした体験はあるだろうか。俺は無い。

 だが、入眠中に自分の体から何かが『抜け出た』ようなこの感触はきっとそれに近いと思う。

 自分が身体から剥がれてしまう錯覚に怯えた。眠りから覚醒し、冷や汗をかきながら勢いよく起き上がる。

 

「――っ、が!?」

 

 肘をつき体を起こそうとして、右の二の腕から先が無いことに気がついた。

 そうだ。あの義手を付けたままでは重いからと、寝る前に義手を外していたのだった。

 

 枕元を見て、ぎょっとする。置いておいたはずの金属義手でなく、生身と見分けのつかない右の義手が転がっていた。

 少し驚いたがすぐに気を取り直し、部屋の中を見渡す。

 

「あ、」

 

 ――金属義手を持ったアンセスタが、窓から外に飛び出そうとしていた。

 

「……。おはよう」

「……。(はい)。おはようございます、クウマ」

 

 見なかったことにすべきかと思い、とりあえず挨拶をした。

 が、やっぱり気になったので聞いてみる。

 

「どこ行く気だったんだ?」

「……迷宮へ。再街左希さんの迷宮は脅威度的に無害(ホワイト)です。攻略ならば弊機だけで十分だと判断しました」

 

 目を伏せつつアンセスタが言った。無表情のくせに、気まずそうにしているのがわかり易すぎる。

 

「あくまで予測なんだろ? それに、そうだからって黙って出ていくことはないだろ」

「……クウマが居ても大して役に立ちませんし」

「あ? 言ったなテメェ表に出ろ」

 

 いや違う。そうではない。

 

「大体それなら何のために昨日武器集めしたんだ。俺が居なきゃ再街を元に戻すことだって出来ないのに」

「なら、再街さんは拘束してクウマの元に連れてくればいいだけでしょう。無為に危険を侵す義務はありません」

「それを言うならお前が危険を侵す義理だってねえよ。義務だの義理だので言うなら、本当は俺が一人でやらなきゃいけないことじゃないか」

「そんなことはありません。クウマは何も悪くないのに――」

「アンセスタだって何も悪くないだろ。何も悪くないのに、俺たちを助けてくれてる」

「…………」

 

 俯いた顔。だが、青い瞳がちらとこちらを向いている。

 

「大体この辺の下りもう昨日やったようなもんだろ。何も悪くないんだから、辛い目に合わずに勝ちたいだろうって。だから俺のことは遠慮なく巻き込めって」

「……()()()()()()、ですか」

 

 まだアンセスタの顔は上がらない。

 俺は面倒になって、そこで話を打ち切る。何より、これ以上憂鬱な様子の彼女を見ていたくなかった。

 

「少し準備したら行こう。適当に何か朝食用意してくるから待っててくれ」

「あ、」

 

 アンセスタが手に持っていた金属義手を強引に奪い取り、自分の二の腕に取り付けた。振り返って部屋を出る。

 

「……むぅ」

 

 背後で渋々と窓を閉める音。

 俺は、気づかれないように小さく安堵の息を吐いていた。

 

 


 

 

 朝の六時だった。

 まだ肌寒い空気の中を、自転車に乗って駆けていく。

 当然ながら、向かう先は学校ではない。朝練に向かう学生とすれ違いつつ、目指すのはこの街の中央病院。

 

 最初は病院の可能性は低いと言っていたアンセスタだが、調べ直した結果、やはりここだと判断したらしい。

 

「で、着いたはいいけど……」

 

 まだ玄関は空いていない。診療受付の開始はまだまだ先だ。

 つまりは昨夜に引き続き不法侵入である。アンセスタを白亜回廊から出し、透明化を使ってもらう。

 そのまま、適当な窓のガラスを『収納』し、忍び込んで元に戻した。

 

 ガラスの比重はおよそ2.5。一メートル平方で厚さ一センチの窓ガラスなら25kgになる。俺の『収納』は10kg以上から必要時間が跳ね上がるが、これぐらいならまだ数分で『収納』可能だ。

 

 そろそろ病院も起床時間だった。看護師や医師が慌ただしくしているが、行き交う声の中に気になるものがあった。

 

「先生が、」「――さんも」「一体、どこに――」

 

 ……人が姿を消している。それも、再街だけでなく、複数名の病院関係者が。

 

 既に、被害が出ている。

 焦る気持ちを抑え込んだ。他の人間に見つからないよう、再街の病室へ。

 

 だが、病室の傍まで来た瞬間、アンセスタがぐいと俺の手を引いて物陰へと隠れ潜んだ。

 

「急に何――」

「……静かに。弊機の迷宮が()()()()()ました」

 

 体が固まる。廊下を歩いていた看護師が通り過ぎるのを待って、物陰から出た。

 

「迷宮主が生み出す迷宮には二種類あります。昨日のプレハブ小屋のような、特定のエリアを基点に常時開廷される『基底迷宮』。対し、昨日の副担任や、弊機が今しがた使っていた、迷宮主の意思によって任意のエリアに開廷できる『疑似迷宮』。そして――」

「『基底迷宮』と『疑似迷宮』がぶつかると、『疑似迷宮』が一方的にかき消される?」

 

 アンセスタがこくりと頷く。

 ならば、今回の探索では使えないが……それでも有用な能力だ。俺も早い内に『疑似迷宮』を使えるようになっておいた方が良いだろうか。

 

「やり方さえ覚えれば、クウマは既に『疑似迷宮』を開廷出来ます。ですが、当分はやめておいた方がいいでしょう」

「? どうして?」

「『基底迷宮』と違い、『疑似迷宮』は能力に合わせてある程度自由に特性を設定できます。ですが、一度効果を設定してしまえば、その後に変更することはできません。最も難易度が高いアインソフとの戦闘までは、温存して……。…………」

 

 なるほどと納得し、警戒しながら病室へと近づいていく。

 

「っていうか、『基底迷宮』の特性の方は自由に設定できないのか? 室久は地面を砂鉄にしてたけど」

「……無意識的な部分の反映が大きいというのもありますが、そもそも迷宮自体が迷宮主に対する試練ですから。外敵を問答無用で排除するような特性(ルール)を設定すれば、まず迷宮主自身がその被害を受けます。『疑似迷宮』ならば融通が効きますが、こちらは出力に制限があるためあまり強い特性(ルール)を設定できません」

 

 彼女の言葉に少し安心する。それなら、入った瞬間デストラップで即死、なんてことにはならないだろう。

 

 周囲に人目は無い。アンセスタが扉に手をかけた。

 彼女がこちらへと目で合図する――頷き返した。

 

「……っ」

 

 死臭。何より最初に、血と灰の匂いが混じる濃厚な病院臭が嗅覚を刺激する。

 

 広く、暗い。小さな病室の中にあったのは、長い長い廊下だった。

 外はもうとっくに日が出ているのに、窓から覗く景色は朧月夜に変わっている。照明がついているのに薄暗い。闇の濃さに光が完全に敗北していた。遠くに輝く非常口のランプだけが眩しく、緑の光を周囲に満たす。

 

「…………」

 

 ……それでも、見た目自体はただの病院だ。室久の時のようなあからさまな「異界感」は薄い。

 

 銃を取り出し、構えた。迷宮の中に一歩を踏み込む。

 同時に、月にかかった雲が僅かに晴れる。()ィ、とストロボライトのような凄まじい月光。一瞬だけ廊下が異常に照らし上げられた。

 後ろから、続く足音――しかし、それが二歩目で止まる。

 

「……アンセスタ?」

(いえ)……何でもありません」

 

 ……二人、長い廊下を歩いていく。

 調べたところ、側面に並ぶ扉の先は、何か部屋があるというわけでもないらしい。

 ほとんどの扉は締め切られており、破壊も出来ない。だが、さっきのように月が異常に輝く瞬間だけ、現実空間にある病院内のランダムな扉へ繋がるようだ。

 行方不明になった病室関係者は、この繋がったタイミングで迷宮へ誘い込まれたのだろう。

 

 十数分かけて、廊下の奥へと突き当たる。ここから更に、右と左へつながる廊下。

 

「どっち行く?」

「階段のある方でしょう。大抵は迷宮の下層に繋がっています。どちらが階段かは……信憑性は不明ですが、ここに来るまでに『見取り図』がありました」

 

 空中に投影される表示枠(ウィンドウ)。所々が黒く塗りつぶされた歪な病院見取り図が表示される。

 ここから先は、左右どちらもかなり入り組んでいた。エレベーターはここに来る途中にあったが、動いてはいなかった。そして、階段があるのは右の通路のみ。

 左の通路も探索すれば何かあるのかもしれないが、今は――

 

「……?」

 

 左に一つだけ、扉が開いたままの病室があった。しかもどうやら現実空間に繋がっているわけではない、迷宮の一部としての病室。

 見る限りでは普通の部屋だが、何か違和感がある。少しだけ、足を止めた――瞬間、カチ、カチ、カチと時間を刻む針の音。

 指しているのは『六時三十三分』……いや、待て。普通は病室に時計なんて――、

 

「――破損体(エラー)です」

「っ、」

 

 左の通路。向かって右側にある横道から、アンセスタと同じくらいの小柄な破損体(エラー)が顔を出す。加えて、追いつくように走ってくる中背の破損体(エラー)がもう一体。

 

「〝第二形態:支持〟」

 

 だが、それらが攻撃行動に移るより早くアンセスタが動いていた。

 光の銃より展開が早い光の剣を生み出し、小柄な破損体(エラー)を一閃。相手がギリギリで躱すものの、しかし左腕を斬り飛ばす。

 

 追撃を入れようとするアンセスタだが、相手の反応が良い。

 飛び退って回避され――そのまま、二体とも元いた横道へと戻っていった。

 

「……逃げた?」

「……そのようですね」

 

 というか……逃げることもあるのか、アイツら。

 

破損体(エラー)は知能が低いですが、撤退を選ぶ程度の判断ができる個体は存在します。初手で逃走を選択するタイプは珍しいですが」

 

 アンセスタが光の剣を仕舞う。無理に追う必要は無いと考えたようだ。

 

「背後にだけ注意を。行きましょう」

 

 右へ進む。入り組んでいる通路は警戒箇所が多い。破損体(エラー)は一度も出てこなかったものの、しかし神経がすり減る気がした。

 室久の時に比べると随分破損体(エラー)の数が少ないが……これは室久の迷宮が多いのか、再街の迷宮が少ないのか。迷宮探索二回目の俺には分からない。

 

 階段を降りる。二層目。

 こちらもまた入り組んでいた。その上、点滴スタンドや種々の薬品、カルテらしき書類等がリノリウムの床へ乱雑に散らばっている。

 

 アンセスタがビンの一つを拾い上げ、見つめる。彼女の眼球から微かにチチ、と、機械の動作する音。

 

「……通常の薬品ではありませんね」

「そうなのか?」

(はい)。相当に発展した医学・化学技術の産物(アーティファクト)です。中には万能薬と言っていいレベルのものもいくつか。適切に扱えば、弊機の治療用ナノマシンよりも効能は高いでしょう」

 

 手渡された薬品達を『収納』する。

 

 そのまま数分ほど進んだ。

 頭上から物音。天井から飛び降りるように落ちてきた、一体の小柄な破損体(エラー)

 即座にアンセスタが切り捨てようとして――仕留め損なう。回避された。

 

「っ、」

 

 俺は即座に破損体(エラー)を銃撃する。しかし、数発当てても倒れない。頑丈な個体だ。

 だが、怯んだ隙をついてアンセスタが破損体(エラー)に斬撃を浴びせ、吹き飛ばす。

 

『レェイルオォォルゥウウ――』

 

 それでもまだ動いていた破損体(エラー)に対し、『取り出し』たスレッジハンマーを振り下ろす。ごしゃり。粉砕される頭部と、虚空に消える黒い(もや)

 

「……すいません、クウマ」

「いや、お前なら油断しててもあんなのにやられないだろ。……だけど」

 

 何とも言えず苦い表情になる。今のアンセスタは、明らかに精彩を欠いていた。

 

「……やっぱり、何かあったのか?」

「……『何か』の意味が不明です。返答出来ません」

「急にロボるな。出来の悪い音声アシスタントみたいなこと言いやがって」

「放っておいてください。……クウマ達のことはちゃんと助けます。それでいいでしょう」

「はあ? お前、まさかまた、自分だけ痛い目に合えばいいみたいに――」

 

 俺の言葉に背を向けるように、アンセスタが進む足を早める。慌てて駆け足で追いかけた。

 あんな状態で、また奇襲を受けたらどうなるか分からない。

 向かいの通路には、一層目と同じ扉が開いたままの病室もある。あそこから破損体(エラー)が大量に出て来でもしたら――

 

「――あ?」

 

 待て。あの病室、()()()()()()()……。

 いや……。そもそもここまで通ってきた通路自体、思えば何か()()()()()()()……?

 もちろん、ここにあるものは全て初めて見る景色だ。初めて見る景色なのは間違いない。だがそうじゃない。そんな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

 立ち止まって考え込む――瞬間、()()()()()()、と。

 

 扉の開いた病室の中から、()()()()()()()()

 指し示す時刻は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』。

 

「ま――」

 

 そうだ――第一階層で見た『見取り図』。

 左右で悩んで、行かなかった左側の通路。あの時二体の破損体(エラー)がやってきた左側の通路の構造と、第二階層に入ってきてからの構造が――()()()()()()()

 

「まずい――」

 

 顔を上げた。アンセスタは通路の先に顔を出す寸前。

 そしてその左奥には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――!

 

「まずいッ! 逃げろアンセスタァッ!」

「待ってください、あそこに破損体(エラー)が――、」

「あれは『第一階層の俺達』だッ! ここは『過去』だ、すぐに『お前(アンセスタ)』が迫ってくる! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!」

「な、」

 

 走り寄り、肩を掴むが、遅い。

 小柄な破損体(エラー)がこちらを向いて――()()()()()()()()()()()()()()

 光の剣を持って、『現在』のアンセスタへと襲いかかってくる。どうする? このまま『過去』を()()()()、アンセスタは左腕を切断されるッ!

 

「くっ――!」

「ダメだ、迎撃するな! アレが『過去のアンセスタ』なら、下手に倒せば現在のお前が消えかねない!」

 

 それ以上の余裕はなかった。アンセスタが俺の体内に手を突っ込む。

 直後に、アンセスタの左義手が吹き飛ぶ――いや違う。吹き飛んだのは、左義手の代わりに、瞬時に白亜回廊から『取り出し』取り付けた丸めた雑誌!

 

「退きます! タイムパラドックスを防ぐなら、今は『先ほどの状況』をなぞるしかない!」

 

 即座に撤退する。

 アレが『過去』の通りなら、これ以上追ってくることはないだろう。が、油断は出来ない。すぐには追いつけないだけの距離を取ろうと、全力で元の道を戻っていく。

 

「クソ――というかヤバいぞ、さっき俺たちこの階層で倒したよな、()()()()()()()()()()()()()()()()! この第二階層で起こったことが、次の第三階層でも再現されるとしたら!」

 

 タイムパラドックスを起こさない限り、()()()()()()()()()()()

 

「冗談だろ――既に詰んでるじゃねえか!」

「……落ち着いてください。まだ本当に過去逆行しているとは限りません。白亜回廊のような時間逆転の超常がこうも続けて現れるはずは……何かしらのトリックかギミックの可能性もあります。一旦、ここまで来た道を戻って情報収集を、」

 

 だが、その提案が最後まで言い切られることはなかった。

 

右弥(うみ)――落として』

 

 (ベキ)、と。

 どこからか響いた声と共に、アンセスタの足元から、破砕音。

 

 飛び退く時間は無かった。

 第二階層にぽっかりと開いた大きな穴。

 第三階層への落とし穴へ、アンセスタが足場を失い落ちていく。

 

 ――マズい。マズいマズいマズ過ぎるッ! さっきの破損体(エラー)! アレも、確か天井から飛び降りるみたいに落ちてきたはず――!

 

『さあ、どうぞ……。()()()()()()

 

 眼下には、待ち受けるように二人の俺達が歩いていた。

 

「っ!」

 

 『過去のアンセスタ』から放たれる斬撃を、現在のアンセスタがギリギリで回避する。

 

「がッ、」

 

 だが、回避の余韻に合わせるように『過去の俺』からの銃撃。

 現在のアンセスタが黄金光で迎撃しようとして、俺そっくりの姿に手を止めた。四発の弾丸がアンセスタの躯体を打ち据える。

 

「やめろ」

 

 怯んだアンセスタへ、『過去のアンセスタ』が強烈な斬撃を浴びせる。ギリギリで防御するが、防ぎ切れていない。『過去の俺』の足元へと吹き飛ぶ彼女。

 

 容赦など『俺』がするはずもない。数分前の通りに、『過去の俺』が『取り出し』たスレッジハンマーをアンセスタの頭部へと――

 

「だからやめろっつってんだよボケがァアアアアア!!!」

「ダメですッ、クウマ――!」

 

 ――気が付いた時には、『俺』の脇腹を槍でぶち抜いていた。

 

「『()()()()()()()()()()()()()()?』」

 

 声の先。

 振り返った先に、白衣の再街。

 そして、再街とよく似た見知らぬ子供。

 

 ふらふらと、焦点の定まっていない目でこちらを見ながら、再街が静かに呟く。

 

「……村雨君には、効きが悪いだろうから……だからちゃんと……ちゃんと『自分を殺させた』……」

 

 (ジュウ)、と。

 俺の脇腹から――『過去の俺』を刺したのと同じ、脇腹から。急激に溢れ出す黒い(もや)。真っ黒に、破損体(エラー)のように。黒色へと俺の体が覆われていく。

 そしてそれと同時に、真っ黒だった『過去の俺』の姿が色づいて……()()()()()()()()()()()

 

「クウマっ」

「……右弥(うみ)

『うん』

 

 謎の少女が、無重力を感じさせる動きで跳ねた。そのままアンセスタへと近づき、あり得ない脚力で彼女の体を蹴り飛ばす。

 

()()()()()()()()()()()。遊んでくるね……お姉ちゃん』

 

 少女が床を爪で引っ掻いた。直後、床のリノリウムが溶けて()()()()()、壁となって通路を塞ぐ。

 

「『あなた』が出血死するまで、残り百六十七秒」

 

 コツリ。白衣のポケットに手を突っ込みながら、再街が近づいてくる。

 

「百六十七秒の『余命』を過ぎた時……あなたは『囚われる』。この冥界(めいきゅう)を彷徨い惑う、死した探索者(オルフェウス)に成り果てる」

 

 変わり果てた同級生の口から、死神のような宣告が放たれた。

 

「――ようこそ、自殺産道へ」

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