前回のあらすじー
亡国企業は電波ジャックとほぼ同時に行われていた要所の破壊工作も功を奏し、CMにしてはいささか暴力的だが効果は十分で、多くの人の目に付いたことだろう。
全世界から敵意を向けられるとは、これほどまでに高揚する物なのかと驚いた。
そして、俺の所属している所は目まぐるしく働いているが、俺には待機命令が出ているぜやった!。ということだ。
「とも、喜べないいんだよねぇ。」
俺には、個人的なオシゴトがあるから。ISの個人所有そのために強盗にならなければ。狙うのは手薄で軍などではなく向こうから強硬な手段を取らないような所が望ましい。俺の知っている限り一つしかない。
◆ ◆ ◆
IS学園のアリーナで、セシリア・オルコットがISを展開した。ただただ、自身の鍛錬のためにそれに彼女の中で目覚めた新たな技術、名をフレキシブル、彼女の待つISのビーム兵装の弾道を変え、曲げれる力。その練習に来たのだ。
「…………っ!」
脳が一点に凝縮されるような感覚、これ以上無いまでに集中した。セシリアのビットがそれぞれ独立し、銃口をホログラムの的の真反対に向けて発射した。その攻撃は飴細工のように変化し的を掠めた。すべての的が出現し終わり、集中を解いた。
「早く実戦に生かせるようになりませんと。」
練習の結果は掠めているのもあれば、とんと見当違いな所にビームが伸びたりと、命中率として話にならない物になった。ただの棒立ちでその結果だ、実戦では比べるまでも無い。
「ならやってみるか?」
「!?」
いきなり後ろから一夏では無い男の声を掛けられた。右手にインターセプターを呼び出し、振り向きざまにISを付けた男の攻撃を防いだ。男の手に持っているのは、細いレイピアのような粘土のようなものだった。
「よくも!!」
セシリアの胸に敵討ちの怨みが熱した鉄に水を掛けたように飛び上がってきた。いやな気分で死にそうで、無理やり押さえつけて冷静に敵を見た。
セシリアはその場からビットを置いて飛び退き主兵装「スターライトmkⅢ」合わせて七門の銃口を向けて一斉発射、それは狂いなく康一を襲う。
「実弾煙っぽい!?」
相澤康一という男は剣を向けても何も反応せず、虎視眈々と獲物の振りをして相手を油断させる奴だったとセシリアは思い出した。一切の慢心も奢りもなく効率がいいビーム兵器に切り替え、距離を取って主兵装を撃ち続けた。
「セシリア、焦っているように見えるぞ。」
「くっ!」
さっきから、IS学園に応援要請を送っているのだが何度やっても繋がらない、それにアリーナは監視カメラがありそれで異常は察知できるはず、つまり教師部隊が妨害されている可能性があることを意味していた。
「これは、上司には勿論お前らの誰かに絶対ばれちゃ行けないからな。もっと楽しもうぜ?二人っきりだ。」
「反吐が出ますわ。」
意図的に口汚い言葉をいって申し訳程度の挑発をしたが乗ってこない。むしろニッコリと笑った。
「それじゃ、回収させて頂きます。」
全十五個のビットを散り散りに飛ばした。康一の能力では飛ばし一機ずつもしくは一斉に撃つのが精一杯だ、正確さは無いが数がそれを補っている。
それを理解しているのか、セシリアは逆に正確な射撃を心がけて撃っているように感じる。一回タメを作った。一斉発射するためにビットをクーリングしているのだ。そして居場所を少しでも無くすようにビットをすべて撃った。
「相澤さん、貴方強いと思ってましたけど、化けの皮が剝がれた狐はこんなにも脆い物でしたのね。」
二機のビットがセシリアによって落とされた。勝ち誇るように、再びビットに照準を合わせた。
「なんせ、化かしてすら居ないからな。正真正銘俺の実力だぜ?……………これ以降は違うがな。」
康一は物理剣を呼び出す、銘はハイダーブレードそれ単体は特殊な能力を持っていない鉄の塊に過ぎない。それはセシリアもISを介した情報でそれを知った。それを持ち康一は奇策、驚くべきところが無い、ただただ異質な行動に出た。彼我の距離は優に30Mは離れている、人間離れな機動力を持ったISを言えども一瞬では距離を詰められない。それなのに一息入れてただ動かず正眼に構えた状態から左に体を捻った。
「?」
またおかしな行動で虚を作り出してその隙を突こうと言う魂胆だと思ったが、確証がない。「もし」が積み重なって、一瞬動きを止めた。その一瞬で康一はビットの距離を詰めながら、剣を振った。セシリアは剣から何かが放出されると思ったのか、剣線をよけるように移動した。ビットの近くに行ったのが間違いだった。
「な!?」
「後ろからこんにちわ」
何の魔法を使ったのか後ろから康一が幻のように出てきた。剣を振ればあたる距離にまで近づきそれを振る、完全に隙を突かれた形となり攻撃を食らった。攻撃をさらに加え、まったく別のところから出現。攻撃を加えてまったく別の所から出現。取ってつけた様に、かく乱させる動きを意図的に繰り返していく。
「ビットをポータルにして空間移動…………?」
セシリアには、そうとしか思えなかったが破壊もままならない、ジリ貧な状態が続いていくが、一方康一は余裕を積み重ねていくようだ。
「正解。」
「反則気味ですわね。」
康一の使っているISカゲアカシにはそういう力はない、ただそれはエネの力だ。だが、エネという反則を想定するほど余裕ができている訳じゃなかった。
康一は決定打を与えにいった、目の色がパッと変わり捕食者のようだ。すべてのビットを手元に集め「湯花」を呼び出した。
「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
瞬時加速をして、距離を詰めた。今しかないと両者は思った。多量の熱量を持った剣、一瞬の攻撃で決定できるのはコレぐらいしかなかった。
「ここですわ!」
セシリアは瞬時加速の速さを知っているが軌道を曲げられない事も知っている、そこに、全力の攻撃を叩きこんだ。ビットは周囲にない、すでにここから逃げる手段はないと錯覚したのだ。
その予想とは反してまた消えてしまった。そしてまた同じところから現れる。
「チェックメイト」
康一は瞬時に距離を詰めてセシリアのISに素手で触れた。一瞬だが康一の手がISに埋まった、幻覚かと思いそれを振り払おうとした、だが、できない。ピクリともISが動かなくなってしまった。
次第にⅠSの浮遊もままならなくなりその場から落ちた。
「私に何をしましたの!?」
「冥土の土産だ、ISのエネルギーパスを詰まらせたんだよ」
「一体どういう…………?」
「簡単に言ったらガソリンタンクとエンジンをつなぐ管をせき止めたって感じだ…………いっていることは分かるがやれる訳がないって顔をしてるな。」
無理はないと一言付け加えた、彼はエネの存在を一切に隠し通している。康一は人型の牢獄に手を伸ばした。
「あなたは、何を目的としていますの?」
ぴたりと康一の手が止まる。
おびえながらも、何かを見据えたような目で康一を見て言った。目は口ほどに物を言うが、相澤康一という人間にとって目での会話は重要な物だったらしい。
「言葉に出来ない、そのくらい壊れやすいもんだ。」
「そんなもののために鈴さんを手に掛けたのですか!?」
「正直あれはやり過ぎたと思ってる」
「っ!?……………たわけたことを!!」
セシリアとは正反対に康一の目は冷めていた。聞きたいことはそれまでかと言う様に康一は無言で手を伸ばした。
「言っているので折檻をお願いします織斑先生!!」
「なっ!?」
遥か上空にいた一つの黒光りしたIS、それは康一も見たことのある物で、現在考えられるジョーカーとして最悪だ。驚きで思考がバラけたが立て直し、最善手を考えた。
すべてのISを外して青いジャージに成り上がった康一は腕をまくりセシリアの胸と脚の付け根に手を当てた。
「グウウウウウッ!!」
手を当て呻きながら焦燥感に駆られてまじまじと上から来るISを見つめ続けた。瞬きをするたびに死のイメージが近づいてくる錯覚が康一を襲った。それはすぐに現実となった。アリーナのシールドをいともたやすくこじ開けて、康一の下へ。
「あぶねー間に合った。」
一歩遅かったようだ、セシリアはすでに消えた。千冬は一度顔を顰めたが攻撃の手を緩めない。
「オルコット!!」
「ここにゃいねーよ。」
康一は飛び退って千冬と正対した。一拍も取らずに戦局は動いた。逃げるか、追うかの戦いだったが決着はもう付いている。
「リップサービスだ!!」
康一は「ミサイル」を撃った。千冬は爆発させずにミサイルを切り捨てたが、そんな芸当も虚しく康一に呼び出された「青いビット」で爆発してしまった。何もやることが重要なのではない、見せる事が重要なのだ。爆風で視界が塞がれている隙に康一は姿を消した。
一人、取り残された千冬は、怒りに震えていた。不甲斐無さと世界の理不尽と、相澤康一に。
「くそ!!」
誰もいないアリーナで毒を吐いていた。
◆ ◆ ◆ ◆
「あーーー。つらっ」
私服に着替え脚に掛かっている足枷の鎖には、銀色のチェーン、青色のイヤーカフス、黒っぽい赤の腕輪、弾丸が連なったような腕輪、それに打鉄やラファールなどの待機状態が何個か付いている。ばれても手渡す時にヤれば問題ないだろう全部ステルス状態にしてるし。
「そろそろ本格的に計画を立てる必要があるな…………。」
それでも今はただ静観してるしかない、今日の仕事を終えて静かに眠った。