IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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プリズンブレイカー(他力本願)

「あー痛い。」

「我慢しろ、これでも急ピッチで直してるわ。」

 

俺らは逃げていた。

 

「あらかたの修理は完了、完全復活にはまだだ。だがISを展開するぐらいの力は取り戻せた。」

 

エネの頼もしい言葉がよく脳に響く。幻の振動は、脳を冴え渡らせた。腕取れたのも何とかなりませんかね?なりませんか。

 

「それじゃ、穀潰し共にも働いてもらいましょうかね。」

「用意は上々、いつでもいけるよ。」

 

あの場所、あのところに行けば何とかなる。

そして、その場所へ俺は足を向けていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園の守りの要となる、地下の最奥。緊急時たるこの時には全ての人間がここにいる。生徒、先生IS学園にかかわる全ての人間がそこにいた。

もちろん戦闘において、この学校の頂点に立っている織斑千冬もここにいる。

大多数のものとは違い、戦闘指揮官の役割を負って。

 

「……………あいつを敵に回すと、かくも厄介なものか。」

 

獅子身中の虫が反乱を起こしたとかいう表現のほうがいい、と千冬は頭の中で付け加えた。追い詰める、どれほどの飛車だろうがどれほどの角だろうが、どれほどの指し手だろうが、詰めば終わりだ。ドイツ仕込の戦略指南書を頭に思い浮かべたが、それを十分に吹き飛ばすように事態は動いた。

 

「織斑先生!」

「何だ?」

「敵性反応が1つ増えました!」

 

と言った。それは篠ノ乃束の作った一品。コンタクトレンズを配布しているが、それは視認情報をマスターに受送信する、いってみれば超高性能なビーコンみたいなものだ。それ以外にも機能はあるが割愛。

 

「生徒がっ!?」

「!?」

 

モニターに突如現れたのは凰 鈴音。最初に死んだと思っていた、その人が生き返っていた。

 

「もうひとつ……二つ…………増えていきます!」

「相…………澤ァ!」

 

それはまるで、あざ笑っているかのように忽然と現れた。死を超越してみせると、生を冒涜して見せるとも高笑いしながら言ってのけるかのごとく。

 

「C隊作戦行動中止!4隊に分けて対応しろ。」

 

あわせて三人。セシリア・オルコット、更識楯無。が新たに現れた。ISを装備しているし、ISの反応も出ている。絶望的にもほどがある。

人の出現、もしかしたら一個軍隊の人間を息をするかのごとく顕現出来るのかも知れない。いかなる手段がやつらはの手の中にあるのかも知れないがIS学園側は手札が限られている。

 

「慌てないでください。」

「更識妹…………。持ち場に戻れ、確か後方支援だったはずだろう?」

 

いきなり入り口から現れた更識簪は、ゆっくりと千冬に歩みを進める。

 

「人は、予想外のことが起こると一度考えます。経験から知識から、技術から。似たような現象を呼び覚まし対策を取ろうとします。」

「だから……………言ってみろ。」

 

千冬はこの忠言、この状況にひとつデジャヴを感じた。危険かそれとも救いか。千冬はわからなかったが、信じてやろうぐらいには思っていた。

 

「この状況も彼が作り出した状況だと思います。…………私ならもっとも最適な、最悪な陽動をした後。大将首を取りにいきます」

 

「そのとおり!」

 

排気口の格子を蹴破って出てきた。康一はにやりと笑って簪に拳大の何かを投げ、それに気をとられている刹那ISのパワーアシストによってブーストされた速度と体重で簪のあごを打ち抜いた。

 

「っく!?」

 

だが、近くにいた織斑千冬の手が簪を引き寄せて更なる追撃を阻んだ。

 

「まあいいや、っとわい!?」

 

その場にいた二十もの人間がいっせいに銃を抜いて同士討ちしないように撃った。

 

「あぶなっ!?」

 

といって、飛びずさった。そしてかつての担任を見た。その目は燃え滾る鉄のように怒っていた。

 

「まあ、いいやもらうもん貰ったし」

 

そういいながらクリスタル状の色合いをした指輪を弄んでいた。眼中にないとでもいいたげにしげしげとそれを見つめてこう言い放った。

 

「ものは相談なんだけどさ、IS貸してくれないか?」

 

その場に緊張が走る。それを敏感に感じ取った康一は、「まあ、そうなるわな」といわんばかりに深いため息をついた。

 

「冷静に考えてみろ、ISの軍事力で世界をどうこうしようと思っているのならとっくにやっているだろ?」

 

結局のところそれだ、なぜ彼女らは困惑し康一に対し有効な手段をとれずにいるのか。ISをほぼすべてを手中に収めているのにもかかわらず、なぜ行動を起こさないのか、なぜ収集癖のようにISのみを集めているのか。

人間と言う物は謎がひとつでもあると自由に動けないものだ。

 

「一瞬で姿を現せる能力、三桁にも昇るIS数。本気出せば世界狙えるぜ?」

 

まともに考えればそうだ、それしか考えられない。正解のような何かを目の前に突きつけられて、その理屈に飲み込まれた。

 

「だからさ、IS貸してくれよ。」

 

どこか、懇願するような顔でそういっていた。

 

「知らない」

 

底辺高校の過剰に盛り上がっている文化祭に「くそつまらねえ」と大声で言ってのけるような冷ややかな声。すべてを投げやりにしたような、はき捨てるように行ったその言葉は少し康一の顔を顰めさせるようだった。

 

「あなたが今どんな状態で、どんな過去を背負っていて、どんな信念をもって、どんな意図があろうとも。私はあなたを殺すと決めた。」

 

その言葉は強かった。けどそれを実行するには今の姿はあまりにも無様すぎる。

 

「知ってた。」

 

笑いながら、声色を変える。諭すような低く安定した声から。道化のように甲高く不安定なこえに。動揺を隠すかのように、それともこれから起こす災禍を体現したかのように。大仰な身振り手振りはしなかったが、なぜか大変なことが起きると予感できた。

 

「さて、そこにいるお嬢さんに免じて、さ!ら!に!交渉のカードを切ることに致しましょう。」

 

耳障りなその声はすべての人間を硬直させる。

 

「さて、場にいる皆々様。モニターをご覧あれ。そしてどうしても「僕チン怖くてみられないよー」という方は目をつぶって足に意識を回してくださぁい!」

 

指を鳴らし音が妙に響いた。モニターに映しだされたものは海、周りの光景からIS学園付近だと思われる。

 

「はい!いち!に!さん!バン!」

 

爆発した、何もないところから爆発。正確には爆発物が海中に沈んでいて、それが爆発した。それは大地を揺るがし、足の裏に鋭敏に振動が伝わってくる。

 

「さて?どうします?爆弾?俺がこの中にいるってことは……………」

 

少し間を空けて、

 

「もうお分かりですよねぇ」

 

 ◆ ◆ ◆

もうお分かりですよね?はい陽動です、むしろ陽動の陽動、本当の目的は。

 

「あーうん。もう何でもできるのは知ってたけどさN2爆弾は反則じゃないか?」

「何?君が用意しろって言ったから用意したんだろ?」

 

俺は「何か爆発物あれば用意して、ここ一面を焼き尽くせるぐらいの」っていったんだが。まあ、結果オーライってやつだ。

 

さて、俺は何をしているかといいますと。

 

「早くしてくれIS学園のセキュリティをハード爆破しないと逃げられんぞ。」

「しかし、ここまで大仰なことしてこれだけとか、もっと効率的な方法があったんじゃないか?」

 

まあ、何をしているのかは一言で言うと逃げる準備だ。

今の状況は篠ノ乃束によって、エネの転移による脱出ができない状態にある。というかいつの間に逃げ出したんだ?まあいいか。

まあ、あれだいまIS学園に張られている結界は、監視カメラ兼侵入者また脱出者探知センサーだ。そしたら監視カメラを止めるにはどうしたらいいか?それは複数あるが有効な一手のひとつに、そもそも電源供給をさせてしまわなければいいのだ。

 

そしてもうひとつ、IS学園を覆っているシールド。ISを守るものであり以前シールドを破られたとは言えISの攻撃もそこそこ防御性能を出しているのだとしたら。ISコアで動くしかないだろ。

 

電源ISコアの奪取。それが俺の目的だ。

 

「念には念をって言葉があるだろ?」

 

こうでもしないとばれそうだったし。それに、もともとこいつも奪う予定だったし。てか全部のIS空に打ち上げるつもりだし。

 

「で、首尾はどうだい?」

「もうそろそろ終わる、君は時間を稼ぎすぎと思うがね。」

 

仕方ないといいたいね。こっちも気狂いの振りをするのは疲れるんだ。

 

「さて、あと一分必死こいて時間を稼いでくれたまえよ。」

「何もしなくても一分ぐらいなら時間を稼げそうだがなぁ。お帰りの際は気を使わないようにお見送りはしないで頂ければ、謙虚で小心者の俺には居たたまれなさ過ぎて爆発しそうだ。」

 

こともなさげにそういった、俺の脳内は影武者の演技に努めた。

 

「「あ」」

 

俺とエネの声が揃った。バラバラだったプリントをトントンと叩いてそろえるように。

 

 ◆ ◆ ◆

何が起こったか?それは、銃声が鳴り響いた。

 

「うそだね。」

 

銃を撃ったのはなんと簪だった。

 

「あなたにそんなことできる訳がない。」

「あら?気でも触れましたぁ?」

「そう、気でも触れたかのような盛大なことをしでかす割りに、得たものは堅実。それがあなたのやり方。今頃はシステムの掌握………いや、消滅を狙っている。」

 

康一の表情が、失われた。

というより、額に撃たれてなぜ生きているのかの疑問のほうが先だが。

 

「更識妹、少し黙れ!」

「俺は世界最高の敵を自分の手で作ってしまったのか…………てか、そもそも俺が本気出したら死ぬし」

 

俺が。てかナイフに刺されただけで機能不全に陥るISなんて…………『悪口は許さんよ』

 

「そろそろ時間か。じゃあね~」

 

場をかき回し、何もしない。コーヒーにミルクを溶け込ませるように存在が掻き消えた。

 

「…………IS学園を覆っていたバリヤー消滅しました。」

 

そして、モニターにドアップで顔が映される。

 

『それじゃ、ばいばーい』

 

のんきに手を振っていてまた消えた。さんざん馬鹿にするだけして帰って行った。

 

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