堕ちる白。目覚める黒。   作:蒼京 龍騎

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闇堕ちモノが書きたくなったので投稿。
七巻の最初の辺りから始まるので、そこまで読んでる人向けです。
それでも良ければ……どうぞ(っ´∀`)っ


Break down Phese0
負ーはじまりー


堕ちる白。目覚める黒。

 

第一話 負ーはじまりー

 

 

一夏side

「紅茶とぶどうジュース、どっちがいい?」

「………………」

暗い、鉄で覆われた部屋。

そこの入口で、俺は目の前の少女……特徴的な髪飾りを付けている眼鏡の少女、更識簪へ飲み物を渡そうとする。

正直、俺自身この子との接点は少ないから、飲み物でも飲みながら話を聞かせてくれるかな、と期待を持って二つの缶を差し出す。

だが、簪は俺の方を見ずに、部屋から出ていく。

俺は慌ててその後を追いつつ、頭の中で密かに本音を漏らす。

(……いかん。意外とキツイかもなこれ……)

事の発端は先日。

俺に様々な事を教えてくれている先輩……簪の姉である生徒会長、更識楯無から、「妹とタッグマッチに出て欲しい」と頼まれたことが始まりだ。

ネガティブな妹をポジティブにして欲しいと、土下座をしかねない勢いで頼まれたものだから思わず了承してしまった俺だが……ここまで嫌われているとは思わなかった。

俺は嫌われている原因の一端である右手首のブレスレットにチラリと目線をやる。

(白式、お前にも原因あるらしいから……少しくらい手伝ってくれてもいいんだぜ?)

ブレスレットに向けてボソリと呟くも、返事はない。

そうこうしているうちに、簪へ追いついた俺はその目の前に回り込み、後ろ歩きをして一定の距離を保ちながら話しかける。

「なぁ、ちょっと待ってくれよ簪さん」

「………………」

俯いたままで、簪は返事をしない。

「なぁって」

「………………」

「簪さーん?」

ピタリと、簪の足が止まる。

「名前で、呼ばないで……」

不愉快だと言わんばかりの表情で、俺に言い放つ簪。

「えーと、じゃあ、更識さん?」

「名前でも、呼ばないで」

「じゃあ──」

「私に……構わないで」

俺を押しのけ、歩き始める簪。

その後を、先程より半歩ほど距離を置きつつ歩く俺。

「とりあえず、ジュースだけでももらってくれよ。俺二本も要らないし」

「…………」

「どっちがいい?」

「……じゃあ、ぶどうの方……」

「了解」

俺は軽く返事を返し、簪へぶどうジュースを手渡そうと手を伸ばすが、ジュースを受け取るためか手を伸ばしてきた簪と一瞬手が触れ合う。

「っ……!!!」

余程驚いたのか、ビクッと体を震えさせ、簪が手を引く。

なぜ手を引いたのか不思議に思いながら簪を見ていると、そんな俺の態度が気に入らないのか僅かに顔を膨らませ、缶ジュースを奪い取る。

「……」

貰ったということは、話してくれるのかな?と思った俺だったが、簪は俺から距離をとるように歩き始める。

「えーと……そこの少女!!!!」

呼び方が気に食わなかったのかと思い、半ばヤケクソになりながら簪に向かい叫ぶ。

「…………」

「こらこらこら、お前のことだって!!!」

「……何の、つもり?」

「お前が名前で呼ぶなって言うからだろ」

「……そんな呼び方されるくらいなら、名前の方がまだいい……」

「そうか。じゃあ簪」

ぎろり、と簪から睨まれる。

「……さん」

そう付け加えると、簪はふぅ、とため息をついて、再び俺から離れるように足を早める。

「なぁなぁ、簪さん。俺と組んでくれよ」

「イヤ……」

「そう言わずにさー」

「……だいたい、どうして私と組みたいの……?」

「え?えーと……」

楯無から名前を出すことを伏せられているので、俺は返答に困る。

(えーと……どう言う?……あ、そうだ専用機!!!確か完成してないとか何とか……!!!!)

数秒考えた俺の頭に、電光石火のごとき案が思いつく。

「簪さんの専用機を見てみたいから!!!そして……」

その完成を手伝いたいから、と言おうとする前に。

「っ!!!」

バシッ!!と、何かを叩く音が響く。

それと同時に、俺の右頬に……衝撃と、痛みが走る。

「……え」

「…………」

簪は俺を睨みながら去ってゆく。

俺はその背を追う気になれなかった。

────いや……追えなかった。

叩かれたはずの頬より、何故か胸がズキズキと痛み始めてきた。

 

 

 

 

 

────どうして?(・・・・・)

 

 

 

 

 

 

その思考が、俺を支配し始める。

簪の専用機が完成しないのは、倉持技研が俺の白式の開発に移ったからだ。

故に、俺が恨まれても仕方ないと思った。いや、思っていた。

(……本当に、俺のせいか?)

胸の痛みと連動するように、頭まで痛み始め、俺は頭と胸を抑えてその場に蹲る。

……そうだ。

(なんで俺が悪いことにされてる?開発を移したのは倉持技研と政府だ。俺は専用機を作ってほしいなんて頼んでいない。データ収集ならラファールとか打鉄でできるじゃないか。恨まれるべきは倉持と政府。俺を恨むのはお門違いだろ……?)

今まで、一瞬たりとも感じていなかった違和感に気付き始める。

まるで……抑えられていた思考が、一気に解放されるように……

(ふざけんな……楯無も俺のせいにしやがって……遠回しに恨み言を俺に吐きやがって……)

解放された思考が……恨みが、簪以外の別の人物に食らいつき始める。

(……そうだ。箒も……いっつも俺に暴力を振るってきたのに、なんで俺はいつも許せた?今思い返すと……)

今までの、幼馴染であり、大切な人の一人である……あったはずの篠ノ之箒の行動を思い返す。

前の俺なら「まぁ仕方ない」の一言で済ませられたが、今の俺は……

(……ムカつく)

腹が立って、仕方がなかった。

幼馴染がしてきた、理由の分からない理不尽な行動に。

(鈴から、セシリアから、シャルロットから、ラウラから……酷い目に遭っていたはずなのに、なんで……俺は……そんなクソ女共を許していた?)

「うっ……」

急に、自分が得体の知れないナニカになったように感じてしまい、吐き気を覚える。

胃の内容物が、外に出ようと暴れ回っているようだ。

(前までの俺は……なんだ?────────俺じゃないなら……誰だ?)

ぐるぐると、視界と思考が回り始める。

前までの優しい俺は……本当の俺なのか?

今の俺は……皆に酷い事を言う俺は……それを当たり前だと思う俺は……誰だ?

訳が分からなくなり、俺はあてもなくその場から駆け出す。

その間にも、思考は続く。

永遠に答えが出ない……問答を。

校舎から出て、寮に帰りたくなかった俺は……校舎の端に寄りかかり、力なくペタンと座り込む。

そのまま膝を抱えて……

「……ううっ……ああっ……」

誰にも気付かれないように、静かに泣き始める。

どうしたらいいのか分からない。

自分が誰だか分からない。

胸に燻るこの感情をどう発露すればいいか……分からない。

分からないから、泣くことしか出来なかった。

────俺は……どうすればいい……

どうすれば……前の俺に……戻れるんだ……

……戻りたい……前の俺に……

 

 

 

 

「あれ?おりむー?こんなところでなにしてるの~?」

 

 

 

 

 

「ッ!?……のほほん、さん」

いきなり響いた声に、思わず俺は反射的に顔を上げてしまう。

……そこには。

のほほんとした雰囲気を纏った少女である、布仏本音……のほほんさんが、俺の事を不思議そうに見ている。

「……あれ?おりむー、目が赤いよ~?もしかしてだけど……泣いてたの?」

心配そうに、俺の顔を覗くのほほんさん。

「っ、いや、これは……違うんだ……俺は……泣いてない……ただ……」

咄嗟に、俺は目を擦りバレバレな嘘をついてしまう。

だが……のほほんさんは俺の嘘が分かっているようで、優しい笑顔を浮かべながら、俺の肩に優しく手を置く。

「どうしたの?私で良かったら聞くよ~」

その、優しく、暖かい言葉に、自然と口が開いてゆく。

まるで、のほほんさんは信用出来る、というように。

「……俺……急に分かんなくなったんだ……今までの俺って……俺なのかな……」

「……?」

俺の言っていることが分からない様子で、首を傾げるのほほんさん。

だが、俺は構わず言葉を続ける。

「……今まで許せていたことが……突然許せなくなったんだ……箒も、鈴も、セシリアも、シャルロットも、ラウラも……みんな優しいのはわかってる。

だけど……今までされてきたことに……急にイラついて……どうしたらいいか……分からないんだ……」

感情のまま、泣いて掠れた声で言葉を吐き出す。

そんな俺を……のほほんさんは、抱きしめてきた。

こういった形で人の温もりを味わったことの無い俺は一瞬驚くも……

(……暖かい)

その温もりに、安心感のようなものを覚え、段々と落ち着き、パニック状態に陥っていた頭が冷静になってゆく。

「……どう~?少しは落ち着いた~?」

「……ごめん……落ち着いた」

「わかったー。それじゃあ一旦離れるね~」

そう言いながら、俺から手を離そうとするのほほんさん。

だが、俺は手を離そうとするのほほんさんを、逆に抱き寄せる。

……今は、その温もりから、離れたくなかった。

「え?おりむー?」

そんな俺の行動に、困惑したのか素っ頓狂な声を出すのほほんさん。

「……ごめん。しばらく……こうさせて欲しい」

小さな声で呟きながら、俺はのほほんさんを強く抱きしめる。

のほほんさんはそんな俺を拒絶せず、むしろ俺の背に手を回し、赤子をあやす様に背中をとんとんと叩き始める。

「……あったかい」

「えへへー、でしょ~。私、体温高いから寒い日よくお姉ちゃんに抱き枕にされてたり~」

「……虚さん、そんな一面あったのか……」

「小さい頃だからね~」

ありふれた日常会話を俺とのほほんさんで交わす。

その時間は、とても暖かく、心が満たされてゆく。

……泣いてしまったせいか、眠くなってきた。

抱きついたまま寝るのは不味い、と思った俺は一旦離れようとするが……

のほほんさんから離れる前に。

────視界が、真っ暗になった。

 

 

 

「自分を偽って楽しいかい?一夏」

 

 

 

どこかで聞き覚えのある、女の子の声を、最後に聞いて。

 

 

三人称side

「……あれ?おりむー?」

本音が、自身に抱きついている少年……織斑一夏へ声をかけるも、返答がない。

不思議に思い、一夏の顔を覗く本音だが、返事が来ない意味を知った。

「すぅ……すぅ……」

「……寝ちゃってる」

一夏は、本音に抱きつきながら寝ていたのだ。

安らかな顔で寝ているその様子は、まるで赤ん坊だ。

本音の顔から、自然と笑みが浮かぶ。

だが、その直後に本音は重大な問題に気付く。

「……どうしよ~……」

……動けないのだ。

一夏にしっかりと抱きつかれているため、抜け出そうにも抜け出せない。

助けを呼ぼうにも、スマホが入っているポケットに手が届かない。

身動きが取れず、困惑する本音。

だが、そんな彼女に救いの手が伸びる。

「……ったく。あのバカと布仏はどこで油を売っているんだ……」

「……!!!織斑先生!!!」

校舎入口から聞こえたその声は、本音と一夏のクラス担任にして教師であり、一夏の姉である織斑千冬のものだった。

……好機。

「おーりーむーらーせーんーせーい!!!!たーすーけーて~!!!!」

「ッ!?布仏か!?どこだ!?」

本音が大声をあげると、すぐさま千冬が反応し大声をあげる。

「こーこーでーすー!!!!おりむーもいまーす~!!!!」

「……そこか!!!!」

本音の耳に、誰かが走ってくる音が入り、それは次第に大きくなる。

そして……

「見つけたぞ!!!まったく何をしていたんだ!?とっくに門限……は……」

本音の視界に、スーツ姿の千冬の姿が入るが……その顔は青ざめていた。

「……布仏……一つ聞きたい……今お前に抱きついているその腕の主は……まさか……」

震えた指で、千冬は一夏の腕を指さす。

「おりむーです~……ここで泣いていたので事情を聞いたらかくかくしかじか~」

抱きついている一夏の弁護を含め、本音が事情を説明し終えると、千冬は未だに信じられないといった表情になる。

「……そうか。一夏が……なら門限のことは不問とする。一夏は……ふんっ!!!!」

千冬は本音に抱きついている一夏の腕を力づくで引き剥がし、だらんと垂れた一夏を肩に担ぎ上げる。

「私が一夏を部屋へ運んでおこう。いや……やはり今日は私の部屋に泊めることにする。先程の話を聞いた限りでは……会わせるのは危険かもしれん」

深刻そうな顔をして、一夏に視線を向ける千冬。

本音も、千冬と同じように一夏を見る。

「それでは、明日の準備をしっかりしてから寝ろよ、布仏」

「は~い」

返事を返し、本音は一夏の事を心配しながら寮へ駆け足で向かう。

千冬はそんな本音を見送った後、千冬は一夏の顔を見て、渋面を浮かべる。

「一夏……お前は……何を悩んでいるんだ……?」

そう呟き、千冬も寮へ向かい歩き始める。

 

 

 

この時、誰もその違和感に気付いていなかった。

一夏の右手首にある、白式の待機形態である白のブレスレットが……

 

 

 

 

────僅かに、黒ずんでいることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

break down phese……0




初の闇堕ちモノなので、感想、評価どしどし送って貰えると嬉しいです。
お待ちしておりますm(_ _)m
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