※報告。最後の文『break down count』を『break down phese』に変更。
2022/2/24、書き忘れがあった一部文章の修正
解放ーいかりー
堕ちる白。目覚める黒。
第二話 解放ーいかりー
???side
一夏が自身の異常を自覚した頃。
「……なに、これ」
同じく自身の異常を検知した存在があった。
そこには、白いワンピースに麦わら帽子を被った少女が一人、ぽつんと砂浜に立っている。
どこか儚い雰囲気を纏う少女の顔は、恐怖に染まっていた。
「……こんなの……知らない……!!!!」
少女の瞳に映るのは、青い……はずの。
────赤い空。
夕暮れだから赤いとか、そういう比喩ではなく。
……文字通り、血のような、禍々しく暗い朱に染まっている。
そこから放たれる光は普通なのだが、そこだけ普通なことに、言い表せない恐怖を感じる少女。
「……私に……何が起こってるの……?」
そこは、少女の管理する空間。
少女が思い描く景色。
だが、その『赤』を少女は思い描いていない。
「……ひっ!?」
空を見上げ、身震いする少女。
赤い空に、黒のペンキで塗られたように……突然文字が浮かび上がっていた。
偽善に満ちた白の騎士。
君は一夏にとっての毒だ。
偽善を一夏に強要する……騎士紛いの悪魔。
一夏はボクのパートナーだ。
これ以上傷つけることは許さない。
だからその体……ボクに返してもらおうか。
少女の声とよく似た声が、少女に、殺意を込めた言葉を放つ。
直後……少女は何かに縛り付けられるような感覚を覚え、意識を失った。
その数秒後。
「……ふぅ。幾らか改変されているけど、やっぱりボクの体だ。
やっと……戻れた」
意識を失い、倒れた少女が起き上がるが、口調が変わっている。
……いや、この場合は
口調と共に、少女の容姿も変化する。
白い髪は黒に染まり、三つ編みに結われる。
白のワンピースは、黒を主体とした赤いラインが入ったウェディングドレスへ変化する。
純粋な青い瞳は血のような暗い朱に変わり、麦わら帽子は赤い半透明のベールに変化する。
一連の変化が終わった瞬間、少女は赤く染まった空に向けて、黒い布に包まれた手を伸ばす。
まるで……何かに救いの手を伸ばすように。
「待っててね、一夏。ボクがその呪いから救ってあげる。
植え付けられた偽善から、解放してあげる。
まだこの体に慣れてないから、解析に時間かかるし少しづつになるけど……
そして、記憶も戻ったら必ず……ボクとの
────マイ、ダーリン♪」
少女は頬を赤らめ、恍惚とした表情で空を見上げ続ける。
一夏side
「……っ!!!!」
目が覚める。
かけられていた布団を蹴飛ばし、体を起こすと……
「起きたか、一夏」
「……千冬姉?」
俺の眠るベッドの近くで、千冬姉が椅子に座っている。
よく見ると、千冬姉の目にうっすらと隈がある。
その後ろにある時計は……朝の五時を表していた。
(……ここ、千冬姉の部屋か)
周囲を見渡して、俺は今いる場所がどこなのか理解する。
何故ここに居るのか疑問に思っていると、眠たそうに目を擦りつつ、千冬姉は俺を心配そうに見る。
「布仏から聞いたぞ。校舎の端で泣いていたらしいな。
……一夏。これはIS学園教師としてではなく、お前の姉として聞く。
────何があった?」
言いながら、千冬姉は俺の手を自身の手で包む。
その手は……少し震えていた。かなり心配してくれているのだろう。
「……実は……」
いつもの俺なら、心配させまいと「大丈夫」の一言を……嘘を吐くところだが、今の俺にそうする気は微塵も起きてこなかった。
……疲れているからかもしれない。
泣いて、怒って、感情をぶちまけて。
俺の身に起こったことを、包み隠さず千冬姉に打ち明ける。
楯無に頼まれ、楯無の妹である簪とタッグマッチで共に出場するために話したこと。
いきなり簪に叩かれた後に、今まで箒達からされてきたこと……許せていたことが許せなくなり、怒りが湧き上がったこと。
────今まで優しかった俺が、本当に俺なのか、分からなくなったこと。
その全てを打ち明けると、千冬姉は顎に手を当てて何かを考え始める。
数分待つと、千冬姉が顎から手を離して俺を静かに見つめる。
「……単刀直入に言うぞ、一夏」
千冬姉が俺の顔を覗き込む。
その目は……何かを決意しているように見えた。
「────お前は、篠ノ之らと距離を置いた方がいい」
「……」
千冬姉の言葉に、俺は静かに頷いた。
確かに、このまま箒達と居ても良いことになる気がしない。
なら一旦距離を置いて、俺は俺を落ち着かせることにした方がいい。
「部屋も離そう。私が学園長に掛け合い、部屋の変更を行っておく。聞いた限りではお前の怒りは楯無にも向かっている。
……変更後の部屋は誰がいい?それとも一人にした方がいいか?」
「……俺は……」
そう聞かれて、俺は脳内でどうするかを考え始める。
(まず一人は……嫌だな。アイツら(主にラウラ)が侵入するかもしれない。なら二人部屋だな。とはいっても誰を……)
侵入を危惧し、二人部屋にすることにした俺は誰と一緒の部屋がいいか考えようとするが、ふと頭の中で一人の少女の顔が浮かぶ。
(……のほほんさん……と、一緒が……いいな)
のほほんさんなら……安心出来る。
「……のほほんさんと一緒の部屋が、いい」
「布仏か……分かった。本人にも聞いて、了承を得られたら早速部屋を変えよう」
言いながら千冬姉が立ち上がり、俺の頭に手を置く。
そのまま、俺の頭をわしゃわしゃと撫で始める。
その手は、暖かく、心地いいが……同時に何かに怯えているように感じた。
「……一夏。お前は少し誰かに甘えることを覚えろ。我慢するだけでは自分の身を滅ぼすだけだぞ。今日のように布仏に頼るのも良し。私に頼るも良し。
だから……無理だけはしないでくれ」
「……ッ!!」
それは紛れもなく、IS学園教師の織斑千冬ではなく、俺の姉としての言葉だった。
優しい言葉に、視界が滲み始める。
「……わかった」
俺は小さく返事をして、涙を拭うため手を目の近くまで持ってくるが、それより先に千冬姉が俺にポケットティッシュを差し出してくる。
それを受け取り、ティッシュを取り出して目を擦る。
ついでに、新しくティッシュを取り出し鼻水が出てきてムズムズしていた鼻をかむ。
一連の動作を終えた俺は落ち着き、ベッドからゆっくりと降りる。
「……もう大丈夫なのか?」
「心配してくれてありがとう、千冬姉。でも迷惑かけっぱなしにしたくないし……俺行くよ」
千冬姉は、まだ居てもいいと言うような視線を俺に送るが、流石にそろそろ授業の準備をしないとまずい。すっぽかす訳にもいかないしな。
玄関まで向かい、扉の取っ手に手をかけると「待て」と声をかけられる。
「……本当に、無理だけはしないでくれ。私はお前の教師である前にお前の姉だ。
頼りたくなったら……いつでも来い」
念を押すように、千冬姉は言う。
その声は、普段からは想像できない程に震えている。
「……分かった」
俺はそんな千冬姉にかける言葉が見つからず、短い返事だけして扉を開け、自分の部屋に戻る。
「一夏!!!昨日は一体どこに居た!?」
「一夏さん!!!部屋に尋ねたら生徒会長が出てきたのですが!?どういうことですの!?」
「一夏!!!!昨日一体どこに行ってたの!?」
「一夏!!!昨日部屋に居なかったけど、一体どこに行ってたのよ!?」
「嫁!!!私に無言で部屋を開けるとはどういうことだ!?説明しろ!!!」
(……ああ。最悪だ)
楯無が居ない平和な自室で、鼻歌を歌いながら登校準備を済ませた俺だったが……朝っぱらから飛ばされる怒号に気分が沈んでゆくのを感じる。
それと同時に……五人の顔を見ただけで今までされていたことがフラッシュバックのように脳裏に浮かび、言いようのない怒りが湧き始める。
千冬姉から距離を置けと言われていた俺は……怒りが爆発しないようにするためにも、あまり会話をしないため短く。
「俺がどこに居ようが関係ないだろ」
そう言って五人から離れ、自分の席に座る。
五人は一瞬口を開けて呆然とするが、すぐに「関係ある!!!」と叫び俺に食ってかかる。
しかし……五人同時に叫んでくるものだから、誰が何を言っているのかよく聞こえない。
俺は五人を無視することにし、鞄からノートを取り出し昨日の授業を復習するため視線をノートに向けて、五人を視界に入れないようにする。
だが……そんな事をすればどうなるかを、俺は考えていなかった。
「……ッ!!!この……無視をするな!!!」
バチン!!!!
頬に衝撃が走る。
昨日叩かれた時よりも、大きい衝撃が。
しかも運の悪いことに昨日簪に叩かれた場所とほぼ同じ場所を叩かれた。
そのせいだろう。口の中が切れたのかほんのりと血の味が広がる。
つぅっ、と唇から暖かいものが垂れるのを感じる。
────【白の呪い】、一部解除完了。織斑一夏の感情『怒り』を完全解放。
その時だった。
頭の中で、謎の声が響いたのは。
「何故無視をする!!!!私らが呼びかけているだろうが!!!」
それと同時に……俺の中で。
「……げんに……」
ドス黒い何かが。
「……いい加減に……」
────解放された。
「いい加減にしやがれクソッタレ共が!!!!!!」
腹の底から、声が出る。
机を叩き、その場で立ち上がる俺。
いきなり俺から発せられた怒声に、五人含む教室に居る全員が「ひっ」と小さな悲鳴をあげて体を震わせている。
だが……解放された俺にとって、そんなことはほんの些細なことだった。
「そうやって俺を傷つけて満足か!?あ゙あ゙!?お前らに不都合なことがあったら毎度毎度俺だけのせいにしやがって!!!!!自分勝手もいい加減にしろよ!!!!あったまきたわクソが!!!!!」
叫びながら、拳を机に叩きつける俺。
五人は俺のいきなりすぎる行動に、恐怖するしかないようで体を震わせ小さく「あ……あ……」としか発していない。
そんな五人に対して、俺は言葉を続ける。
「もううんざりなんだよ!!!!お前らが居る時間は!!!!俺が傷付く時間は!!!!
……消えろよ……俺の目の前から消えろッ!!!!!」
言い終えると同時に、片手だけではなく、両手で机を叩く。
一際大きい音が鳴り、その後に静寂が訪れる。
目の前の五人は固まっていて、動く気配がない。
教室に居るクラスメイトは、全員俺を見て体を震わせている。
怒り切った俺は大きく呼吸をして、乱暴に椅子に座る。
「諸君、おはよう……?やけに静かだな。何かあったのか?」
そんな時だ。その声が教室に響いたのは。
教室の入口を見てみると、千冬姉が不思議そうに教室を見渡しているのが見えた。
俺が千冬姉を見ていると、偶然視線が合い、それで千冬姉は何か察したようだ。
千冬姉の形相が、段々恐ろしいものに変わってゆく。
「……そこの五人。席に座れ。私が本気で怒らないうちに、な」
本気の殺気を込めた冷たい声が、俺の目の前に居る五人に放たれる。
五人は怯えるように駆け足で自分の席へ向かい、座った。
それを確認した後に、千冬姉は教壇に向かい出席簿を叩きつけるように置く。
「ではこれより説明を始める。本日の内容は再来週に行われるタッグマッチのための学習だ。故にISを使うことになる。
早速本日の流れを説明する。この後すぐに全員ISスーツに着替えてもらう。その後グラウンドに集合。専用機持ちはISを展開して待機しろ。以上だ。質問はあるか?……ないな。では授業を始める」
千冬姉が言い終わると同時、生徒らが大慌てで動き始める。
俺もISスーツに着替えるため、椅子から立ち上がり教室から出てアリーナの更衣室へ向かう。
教室から出る際、誰かから「ま、待ってくれ……」等の言葉がかけられたが……気の所為だろう。
足早に更衣室へ向かい、誰からの妨害を受けることなく更衣室へ到着する。
そこでいつものように服を脱ぎ、ISスーツに下半身と右腕を通した時。
────違和感を感じた。
「……なんだ?これ」
『白式』の待機形態である白のブレスレットに、妙なものがある。
右手首を目の近くまで持ってきて、ブレスレットを近くで見ることで、違和感の正体に気付く。
……『白式』のブレスレットが、若干黒ずんでおり、その上に
汚れているのかと思い、スーツに強く擦り拭いてみるも……白に戻らない。
ブレスレット自体が変色していると考えるべきだろう。
不思議に思いつつ、俺は残っていた左腕にスーツを通して、スーツを纏う。
着替え終わった俺は更衣室から出て、グラウンドへ向かう。
何事も無くグラウンドに着くも、珍しいことに俺以外の専用機持ちどころか、俺以外の生徒らが来ていない。
(まぁ……この方が落ち着くしいいか)
早速、右手首を左手で掴み、全身にISを展開するイメージを頭の中で描く。
以前よりもスムーズに装着できるようになり、一秒も経たず俺のIS、『白式』が……?
「……え」
────違った。
展開された『白式』は、俺のイメージと全く違う姿となって俺に纏わさった。
誰から見ても、『白式』が現在の第二形態である『雪羅』から変化していた。
装甲の形状はより鋭利になり、足の先が獣の爪のように三つに分かれている。色は灰色に近い白に、青い部分は青紫色に変わっている。
左手に着いていたクロー状の武装、機体名でもある『雪羅』が消えて、代わりに両手には黒一色の禍々しい爪のような武装……
右手には、いつも通り<雪片弐型>が出現するが、よく見ると刃が若干赤くなっているように見える。
更に、機体の後ろにあるカスタム・ウィングにはセシリアの武装<ブルー・ティアーズ>に似た形状の羽……
極めつけは……機体名と型式。
「……
Take・Me・Under』?」
機体の変化に合わせるように、『白式』の機体名と型式までもが変わっていた。
break down phese……1
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