堕ちる白。目覚める黒。   作:蒼京 龍騎

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今回ちょっと色んな点が無理やりかもしれない……


堕天翅ーひしょうー

堕ちる白。目覚める黒。

 

第三話 堕天翅ーひしょうー

 

 

一夏side

「……どうなってんだよ……」

見た目が一変した『白式』改め『雪灰』を見ながら、俺はボソリと呟く。

────明らかに異常だ。

最近楯無と模擬戦を繰り返したから、それでISが進化したのかと思ったが……それにしては色々な点がおかしい。

まず視界に映る機体のパラメータ。

始めに出力値を見るが、ただでさえ最高クラスの高出力機体であった『雪羅』より二倍ほどの数値を表している。

次にエネルギー量。これは『雪羅』の五倍ほどの数値を示しており、もし本当ならば……単純に考えて【零落白夜】をいつもより五倍長く使えるようになるということ。

その他もろもろも覗いて見たが、全体的に機体の性能が……異常なほど向上していた。

『白式』から『雪羅』に変わる際は、機体出力と武装のみが増加、向上して燃費が悪すぎる機体になり、ある意味弱体化していたのだが……

(……すげぇ)

『これこそ正しい強化だ』、と言わんばかりに強化された性能に、大きく息を呑んでしまう。

しかしおかしい点はまだある。

追加された武装である<禍爪>と<堕天翅>。武装説明欄を読んでみるが……

『使い方と詳細なら、一夏は既に知ってるよ(・・・・・・・)

……とだけ書かれている。

「……ハァッ!?」

思わずその場で叫んだ。

見たことも使ったことも無い、新しく追加された武装の詳細を、俺は一体どこで教わったというのだ。それともあれか、どこかの金色みたくアン〇ートーカーの能力で知れと?ふざけんな。

『雪灰』の事を調べ、理不尽な箇所に地団駄を踏んでいると、ザッザッと砂を蹴る音が聞こえてくる。

「今日は早いな一夏……!?お前!?その機体は!?」

「おー、早いですね織斑くん……!?その機体は!?」

声の方向に向くと、目をカッと開き、後ずさっている千冬姉と『ラファール』を装着している山田先生の姿が見えた。

俺はありのままの事を簡潔に話そうと、『雪灰』を指さしてから口を開く。

「これ……『白式』改め『雪灰』です」

「……は?」

「……はい?」

……案の定というべきか、二人は目を丸くして固まった。

「さっき展開したらいきなりこうなってて……俺もよく分からないです……」

「……展開したら、何の前触れもなく『白式』が三次移行(サードシフト)していた、と?」

「はい……」

信じられないといった様子で、千冬姉が『雪灰』を睨むように見る。

と、そうこうしているうちにグラウンドに生徒らが入ってくる。

なお、生徒らの一部は俺の機体を見て、「あれ?織斑くんまた機体変わった?」「三次移行か……初耳」「なんか全体的に暗くなってない?」など様々な感想を述べる。

よく見ると、歩いてくる生徒らの中に、専用機を展開しているものの視線を下に向けてトボトボ歩く五人の姿も見えた。

「よし、では出席番号順に並べ!!!」

千冬姉の号令と共に、俺含む生徒らが駆け足で並び、列を作る。

「……並んだな。それでは、これよりタッグマッチ対策授業を行う。まず初めに……そうだな。織斑!!!」

「は、はい!?」

いきなり名前を呼ばれた俺は、慌てて返事をするも声が裏返ってしまう。

「タッグマッチでは主に何が重要になるか言ってみろ!!!」

「……えーと、やっぱり仲間との連携は必要不可欠だと思います。なので、組む際も連携が上手く組めそうな人と組むことが大切だと個人的に考えています」

自分の考えを述べると、千冬姉は「確かにそれも大切だ」と頷くが、千冬姉は言葉を続ける。

「だが、もしその上手く組めそうな人と組めなかった時はどうする?適当に人を選ぶか?上手く組める保証もない人とやるのか?

答えは否だ。付け焼き刃のコンビネーションをしてしまえば、必ずどこかで縺れが生じる。

故に、今回の授業では誰と組んでも確実なコンビネーションを発揮出来るようその方法を解説した後、一般生徒と専用機持ちそれぞれ一人ずつで組み、アリーナでタッグマッチの模擬戦を行う」

千冬姉の言葉に、生徒らが大きく頷く。

「それでは、早速解説を行うぞ。一言一句聞き逃さず、集中して聞け。

まず────」

授業に集中するため、俺は千冬姉の話に聞き耳を立てる。

 

 

 

「────ということだ。以上で解説を終える。では事前に伝えた通り、専用機持ちはアリーナへ向かえ。一般生徒はこの場にて待機。誰と組むかはこの後私が決めて専用機持ちにそれぞれ通達する 。では、行動開始!!!」

一時間ほどの解説が終わり、千冬姉が生徒に指示を飛ばす。

俺は指示に従い、アリーナに向かうためPICを機動、浮遊するも……そこでまた驚かされることになる。

「……あれ?……すんなり浮いたぞ……!?」

『雪羅』の時より、すんなり浮遊出来た。

今までは、自身が浮いている様子を脳内でイメージをすることで浮遊していたが……浮きたいと思った瞬間に、機体が浮いた。

(……ん?思っただけで(・・・・・・)動いた?ってことは……!!!)

頭に一つの考えが浮かび、それを確かめるために四肢を振ったり曲げたりしてみるが……

本当の意味で自分の体を動かしているように、一切のラグ無しで軽やかに機体が動くことに驚愕する。

まるで、『雪灰』が俺の思考を先回りして読んでいるかのように。

「すげぇ……!!!」

テンションが上がった俺は左手を顔の前まで持ってきて、掌を二回ほど開いたり閉じたりしてから指定されたアリーナへ向けて翔ぶ。

数秒とかからず、無人のアリーナに到着して地面に足を着けた瞬間。

ピロン。

軽快な電子音が鳴ると同時に、俺の視界に一通のメールが表示される。

(ん?相方決まったのか?……お、相川さんだ、よかった……)

組む人が、自身のよく知る人物だと分かった俺は安堵のため息を吐く。

だが……問題は対戦相手だ。

(……アイツらと戦いたくねぇ……)

専用機持ちと一般生徒がコンビになる以上、専用機持ちである五人の誰かと戦うことになるのは確実だろう。

その際何を言われるか分かったものじゃない。

言われた後に……俺が怒り狂って何をしでかすかも分からない。

「……心配だ」

ボソリと呟く。

「織斑くんおまたせー!!!」

「どぅおっ!?」

後ろから響いてきた大声に、反射的に体を跳ねさせて驚く。

声の方に振り向くと、『打鉄』を纏った相川さんが俺の方に向かって歩いて来ていた。

「驚かせないでくれよ相川さん……」

「あはは……ごめんね」

頭をポリポリとかいて、小さく頭を下げる相川さん。俺に怒る気は微塵もなかったので「大丈夫だよ」の一言で済ませる。

その後対戦相手が来るまで待機することになったのだが……さっきから相川さんがずっとモジモジとしている。

その顔は俺に向いていて、なにか言いたげだった。

「……相川さん?俺の顔になにか付いてるのか?」

思い切ってそう聞いてみるが、相川さんの視線がどこか申し訳なさそうなものに変わる。

「……いや、ちょっと……朝のことが気になっちゃって……

あの五人と……なにかあったの?」

「……」

その言葉に、俺は静かに首肯する。

相川さんは短く「そう……」とだけ返してくれた。

あの五人とは違い、細かく追求して来ない相川さんに感謝しつつ視線をアリーナの向かい側に向ける。

すると……いつの間にやら、そこには『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏ったラウラと、『ラファール・リヴァイブ』を纏った……自称ウザキャラ、岸原 理子が居るのだが……顔を俯かせているラウラにどう接すればいいのか分からないようで、あたふたしている。

ピロロロロッ。ピロロロロッ。

耳に、携帯の着信音……IS間の個人用回線である秘匿回線が来た事を伝える音が響く。

「……ちっ、何の用だよ」

かけてきた人の名前を見て、俺は舌打ちをしながらも回線を繋げる。

「……何の用だラウラ。お前と話してる暇は無いんだが」

回線を繋げてきた主……目の前に居るラウラにそう言うも、返事は返ってこない。

「……早くしろ。切るぞ」

「……すまない……朝のことだが……」

ピッ。

俺はその一言が聞こえた瞬間に回線を切った。

……あのままラウラの声を聞いていると、朝の事を思い出して腸が煮えくり返りそうだ。

少し湧き出てきた怒りを、歯を食いしばることで抑える。

ラウラは回線を切られたことにショックを受けているようで、ポロポロと泣いている。

────可哀想だ、とは思えなかった。

以前の俺なら罪悪感に駆られて慰めるところだが……そうする気はまったく起きてこない。

むしろ……ざまぁみろ、とすら思ってしまう。

(……変わったな……俺)

そんな思考を、昨日のように嫌悪するのではなく、俺は許容してしまった。

もう……俺は狂ってしまっているのかもしれない。

そんなことを考えていると……アリーナの壁に付いている大型のモニターが点灯し、画面に放送室に居ると思われる千冬姉の姿が表示される。

『全員アリーナへ集合したな?これよりタッグマッチ形式の訓練を行う。このアナウンスの後にカウントダウンを始め、戦闘を始めてもらう。なお、先程教えたことは参考程度にしておけ。馬鹿正直に使ってもすぐに対策されるからな。

────ではカウントダウンを始める。両者、武装を構えろ』

モニターから鳴り響いた千冬姉の指示通りに、俺は武装を構えようと腰に付いている鞘に納刀してある<雪片弐型>に手を伸ばそうとして……手を止める。

「……ッ!?」

<雪片弐型>を取ろうとする直前。

頭に見覚えのない……記憶が流れ込んでくる。

 

 

『……へぇ、<禍爪>ってこう使うのか。射撃と斬撃両方に使えるのは……最高だな。

ってか<堕天翅>はこんな光の輪でどうやって加速してんだよ……』

上下左右、どこを見渡しても真っ白な空間。

そう呟くのは、俺によく似た容姿の、無表情で、白の空間に相反する黒いISを纏った……五才ほどの少年。

その腕には<禍爪>に似た……いや、<禍爪>そのものが付いており、カスタム・ウィングには<堕天翅>が四枚付いている。

『最高にいいでしょ?ボクの作った<禍爪>』

黒いISを纏う俺に似た少年に、その隣にいた……三つ編みの長い黒髪に、赤い目、そして身に纏う黒のふわりとしたウェディングドレスが特徴的な少女が、眩しい笑顔で話しかける。

『新しく作った重粒子加速放射装置で威力は高いしエネルギー消費は少ない。しかも重粒子を纏わせて斬撃の威力も上げれるから一夏にピッタリだよ。そして<堕天翅>の輪っかだけど、それは重力による加速の影響を可視化したもので────』

『あー、わかんねーから短く纏めろ』

『……まぁ重力で加速できるってことだよ。<堕天翅>は』

『ふーん。そうか、まぁそれさえわかりゃいいか。行くぞ◻️◻️』

『はーい』

軽い声で少女が返事を返すと……少女はISに触れて、消えた(・・・)

『さて、実験実験、っと』

少年が呟いた瞬間。記憶が途切れる。

 

 

「……あれ」

記憶の世界から戻った瞬間。

……<禍爪>と<堕天翅>に目をやり、違和感に気付く。

「分かるぞ……!?どう使えばいいのか……どう使うべきなのか……!!!!」

<禍爪>と<堕天翅>の使い方が分かる。

記憶の世界にいる間に刷り込まれたかのように、俺はその二つの武装の使い方を理解していた。

俺は<雪片弐型>に伸ばしていた手を離し、腕を伸ばして拳を……正確には<禍爪>の爪先をラウラと岸原さんにそれぞれ向ける。

すると五本の爪に赤い線が走り、爪先に赤黒い粒子が集まり禍々しい光弾を形成する。

(これが重粒子光弾……そして……)

俺は形成した光弾……その武装名を呟いた後に一度消し、今度は赤黒い粒子を爪に纏わせ、その場で軽く数回振ってみる。

赤黒い粒子が、爪を振る度に撒き散らされる。

(……重粒子ブレード)

軽く使ったことで、俺は実感した。

それらの武装が、恐ろしい程に、自身に馴染むことを。

まるで……何百、何千と使ったものであるかのように。

口角と気分が、自然と上がってゆく。

次は<堕天翅>の試運転を……と思ったところで、俺は行動を中断する。

アリーナのモニターを見ると、既にカウントダウンが始まっており今は4と表示されている。

カウントダウンが知らぬ間に始まっていたことに一瞬驚くも、すぐさま冷静になる。

そして……<堕天翅>を使うために、相川さんに回線を繋げる。

「……相川さん、ちょっと離れて耳塞いでくれないか?」

「……え?離れろって、何するの?」

いきなり話しかけられたことに驚いたのか、相川さんはポカンとしている。

「いいからいいから。離れなかったら……巻き込まれても知らねぇぞ!!!!」

そんな相川さんを置き去りに、俺はカスタム・ウィングに付いている<堕天翅>を起動する。

瞬間。

<堕天翅>の装甲が展開し、その後ろに天使の輪のような光輪が出現し……耳をつんざく不快な音が大音量で鳴り響く。

その音を例えるなら……黒板を引っ掻いた時に出るあの音。

「うわっ……!?お、織斑くん耳塞げって……まさかこれのこと……!?」

「ひえっ!?ちょっとなにこれ!?うるさっ!?」

「なっ……!?なんだこの音は……!?」

アリーナに居る俺以外の全員が、その音に耐えられず耳を塞ぐ。

 

だが……ゴングは現状を知らず、無慈悲に鳴る。

 

『カウント0。戦闘開始』

「行くぜ行くぜ行くぜェ!!!!!」

<堕天翅>の光輪から不可視の力が放出され、俺は対面の二人目掛けて加速する。

瞬時加速並みの速度で加速しながら、重粒子を纏わせた<禍爪>の爪で擦れ違いざまに切りつける。

視界に表示されている、二人のISのSEが一割ほど減る。

「なっ……!?卑怯な!!!」

「そんなのアリィ!?」

「テメーが言えたセリフじゃねぇだろ!!!AICなんて卑怯装置積んでるテメーがよ!!!」

耳を抑えていた二人はすぐに戦闘態勢をとり、ラウラはレールガンの銃口を、岸原さんはアサルトライフルの銃口をそれぞれ俺に向けてくる。

そして一斉に引き金を引き、炸裂音と共に弾丸が発射され、俺に迫ってくる。

迫り来る弾丸に対して……俺は笑った。

(……馬鹿め。何も知らずに銃を撃ってきやがった)

<堕天翅>を反転させ、光輪を背後から正面に向ける。

「『GーAccelerator』!!!出力最大!!!!」

叫ぶと、光輪の放つ不協和音が更に大きくなり、更に眩く光り始める。

直後。

「きゃあっ!?」

「ぐあっ!?」

俺に向かっていた弾丸が、急に進行方向を変えてラウラと岸原さんに襲いかかる。

二人のSEが更に削れる。

「……な……何が……!?」

「……『Gravity Accelerator』。<堕天翅>に内蔵されている装置だ。重力を操作できてな、さっきはそれでお前らに銃弾が返ってきたってワケだ。どうだ、わかりやすいだろ?」

困惑する二人に言うと、二人は口を開けて固まる。

数秒待つと、最初にラウラの硬直が解ける。

「……馬鹿な……!?重力操作装置は……ルクーゼンブルク第七王女専用IS<セブンス・プリンセス>にのみ搭載されている装置のはずだ!!!!なぜお前のISに搭載されている!!!!」

ラウラが信じられないといった表情をしながら、大声で叫ぶ。

その叫びに対して……俺の口から、自然と返答が出る。

「あー、あれか。あれ束さんが作った強化型のパチモン。こっち元祖のオリジナルな?」

「……は?」

ラウラが再び硬直した直後。

(────あれ?俺今なんて言った?<堕天翅>がオリジナル?ラウラの言っていたISの方がパチモン……偽物?どういうことだ?)

 

俺は自分の言ったこと(・・・・・・・・)に疑問を持ち始める。

 

自分の口から、自分の記憶に一切合切無い情報が出たことに困惑する。

……待てよ?

(俺は本当に知らないのか?ってか知らなかったらこんなこと言えないだろ。

もしかして記憶が無い幼稚園児時代に……いや、その頃はISが無かったから有り得な……)

────ズキン。

「……っ!?あ゙……!?」

頭を割られそうな程の頭痛が、突如として俺を襲う。

あまりの苦痛に悶絶し、その場に突っ伏して悶える。

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっっ!?!?」

脳の内側で、虫が暴れ回っているかのような苦痛。

手で押えて真っ暗な視界が、パチパチと光り始める。

その光が段々と強さを増していき、視界を埋め尽くした瞬間。

 

────意識が途切れる。

 

 

 

 

 

「ごめんね、一夏」

 

 

 

 

 

俺に謝る、少女の声を聞いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

break down phese……1.2




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