堕ちる白。目覚める黒。   作:蒼京 龍騎

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大変お待たせしました!!!!!1ヶ月半ぶりの投稿……読者の皆様本当に申し訳ありませんでした……
遅れた分長く描きましたのでどうかお赦しを……_:(´ཀ`」 ∠):グフッ
今回は一夏無双の回となっております。無双系が苦手な人はブラウザバックを……


覚醒ーオーバーロードー

堕ちる白。目覚める黒。

 

第五話 覚醒ーオーバーロードー

 

 

本音side

「……っ……ここ……どこ……?」

IS学園、第三アリーナ。

そこで、突如崩落した天井から降り注ぐ瓦礫に巻き込まれ、生き埋めになった本音が起き上る。

本音は周囲を見渡すも、光が一切ない暗闇で状況を理解できずに呆然としていた。

 

────ドンドン!!!!ガキィン!!!ヴァオッ!!!!

 

そんな本音の耳に、何かが破裂するような音の他に、金属同士がぶつかるような音が聞こえてくる。

「……なに、この音……?発砲音……?」

その音は外から響いてくるもののようだが、外の様子が分からない本音は更に疑問を抱くことになる。

しばらくすると、アリーナに何かが衝突したのか軽い地響きが起こり、静寂が訪れる。

どうやら、戦闘が終わったらしい。

その後にズシン、ズシンと重たい足音が本音のいる場所まで近づいてくる。

自身を救助しに来た、と期待を膨らませる本音。

光を遮るコンクリートが、ミシミシと音を立てて剥がされる。

 

────しかし、期待は呆気なく裏切られることとなる。

 

「……うそ」

 

本音の目に映ったのは、日の光を背に本音を凝視する『黒いIS』。

しかし、その形状は……以前学校へ襲撃してきた無人ISに酷似していた。

────逃げないと。

本音は本能的にそう感じたが、両足が瓦礫に埋まっているようで逃げようがなかった。

ゆっくりと、黒いISが巨大な左腕……その掌を本音に向ける。

開かれた掌が赤く発光し始める。

本音は、死が目前まで迫っていることを、赤く光る掌を見たことで理解した。

レーザーで貫かれ、呆気なく死ぬ自身をイメージしてしまう。

「……けて……」

本音の口から無意識に言葉が漏れる。

「誰か……助けて……」

まだ死にたくない。その思いが本音の口を動かす。

叶うかも分からない、奇跡を望んで。

 

「……助けて……おりむー……!!!!」

 

本音が無意識にその少年の名を呼び、目を閉じる。

……直後。

 

 

 

 

「のほほんさんに……何してんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

耳を劈く怒声が、アリーナに響く。

「……え」

本音はその声を聞き、ゆっくりと目を開ける。

そこに居たのは……本音に向けていた左手を、根元から切り落とされた無人機と。

「……おり、むー?」

灰色のIS『雪灰』を纏った……先程本音が無意識に呼んだ少年。

 

────織斑一夏だった。

 

 

 

一夏side

「のほほんさん!!!大丈夫か!?」

無人機の攻撃からのほほんさんを守った俺は、目の前に居る片腕を切り落とされた無人機を睨みながら聞く。

無人機は、機械のくせに腕を切られたことに対して驚愕しているようで、その場で固まっている。

「……」

「……のほほんさん?」

「……あっ、ごめんおりむー!!!足が挟まれてること以外は大丈夫だよ!!!」

突然俺が現れたせいなのか、ボーッとしていたらしい。遅れて返事がやってくる。

ハイパーセンサーを使いのほほんさんの足を見てみると、足が瓦礫に挟まれており動けそうにはなかった。

俺は即座に<堕天翅>を起動、発生した光輪を背後にいるのほほんさんに向けて重力を操作し、瓦礫を浮かして足を自由にする。

「ここは俺に任せて逃げろ!!!!こいつは……俺がブッ倒す!!!!」

<雪片弐型>を手に出現させ、<禍爪>の爪先に重粒子を集積させて光弾を形成し臨戦態勢をとる。

立ち上がったのほほんさんは俺に「ありがとう!!!」と言うとその場からアリーナの出口めがけて走り出す。

走れているということは、骨折はしていないようだ。

俺は心の中でほっと安堵のため息をつき、再び無人機を睨む。

すると、先程まで固まっていた無人機が何かを思い出したかのように動き出す。

……何故か俺ではなく、のほほんさんへ向かって真っ直ぐに加速を開始しようとする。

「行かせねぇよ!!!!」

瞬時に無人機の前に立ちはだかり、俺は<雪片弐型>を無人機のカスタム・ウィングらしき箇所へ向けて横に一閃する。

その際無人機が球状のユニットを自身の正面に飛ばし、そこからエネルギーシールドのようなものを展開するが……以前よりも何倍も早い速度と高い出力で振り下ろされた刃が、無人機の翼をシールドごと纏めて切り裂く。

切り落とされた翼が爆発し、無人機は一瞬身を震わせる。

反撃が来ると身構えた俺だったが、残っている攻撃手段がそれしかなかったのか、切られていない右腕にある大型ブレードを俺に突き刺そうとする。

だが、所詮は突き。動きは直線的で読みやすい。

俺は体をひねって拳を躱し、残っていた右腕も切り落とす。もちろんシールドも張られたが容易く切り裂けた。

再び無人機が驚愕したようで一瞬動きが止まり、俺はその隙を逃さず先にシールド発生ユニットと思わしき球状のユニットを一刀両断し破壊してから膝に<禍爪>の先を向けて重粒子光弾を放つ。

赤黒い軌跡を描きながら複数の光弾が膝に着弾し、穴を穿つ。

無人機は足を撃たれたことにより立っていられなくなったようで膝をつき、俺に顔を向けるだけとなった。

俺は問答無用で無人機の胸に<雪片弐型>を突き刺し、堅牢な装甲に守られているISの頭脳であり動力源でもあるISコアを貫く。

頭脳を破壊された無人機は糸の切れた人形のように項垂れ、活動を停止する。

動きが止まった無人機を見て、安堵のため息を吐く俺だったが……そこで違和感に気付く。

(……なんで俺、こいつのコアの場所分かったんだ?)

俺が突き刺した<雪片弐型>は、おかしなほど正確に無人機のISコアの中心に刺さっていた。

しかもこれは直感で刺して偶然こうなった訳ではなく、俺は……無人機のISコアの場所を理解した上で(・・・・・・)突き刺した。

────見た事もない、新型のISのコアを。

「……考えてても仕方ないか。残りをとっととぶっ壊そう」

このまま悩んでいると学園が荒らされ放題になると思った俺は思考を辞めて、ある程度空へと上昇する。

「ひぃふぅみぃ……五機もいやがる。

……それにしても……」

上空から見下ろしたことで分かったのだが、無人機は先程俺が壊した一機以外にも五機、計六機居たらしい。

学園内のあらゆる場所で専用機持ちと一部の教師が応戦しているが、無人機の性能に苦戦しているようだ。

無人機はほぼ無傷なのに対して、専用機持ちは満身創痍といった様子。

「……はぁっ。正直助けたくないけど、千冬姉に怒られたくないからな」

今までさんざん俺に酷いことをしてきやがった奴らを助けるのは、非常に嫌だが……助けなければ千冬姉に何を言われるか分かったものでは無い。

頭を抑えて、ため息混じりに呟く。

「……ん?あいつは……」

考えにふけている時に、視界の端に見知った顔が写り、そこへ視線を集中させる。

────そこには。

「……ははっ、いいザマだな、更識簪」

昨日、俺に対して平手打ちをかましてきた女、更識簪が必死の形相で無人機から逃げていた。

ひっぱたかれた恨みからだろうか。未完成である専用機を展開できず無様に逃げ惑っている彼女を、俺は見下し、嘲笑う。

「……きーめた。あいつは助けないでやろーっと。助けてやろうとしたのにひっぱたいた女を助ける道理はねーしな。どうせほっといても会長が助けるだろうし」

俺は必死で走っている簪に背を向け……無人機と戦っている専用機持ち組の中から、俺が被った被害が比較的少ない奴から助けていくことにした。

(今のところ一番マシだったのは……シャルロットだな。まぁあいつは基本大人しかったしな。一番先に、一番早く、助けてやりますかね)

一番先にシャルロットを助けることにした俺は、視線をシャルロットとラウラのペアと戦闘を行っている無人機に向け、右腕の<禍爪>を構える。

「<禍爪>。重粒子加速砲、スタンバイ」

爪先を無人機に向けて呟くと、個々に分かれていた爪が中指を中心に集まり、爪が上下に分割、内部の砲身が展開し重粒子加速砲発射形態へ移行する。

<禍爪>全体に赤い線が走り、キィィィィィィィという甲高い音と共に開いた爪に重粒子が充填されてゆく。

最大まで重粒子が溜まり、『Full Charge』の文字が視界に表示される。

「……重粒子解放。

────消し飛べ」

銃の引き金を引くように、人差し指を曲げる。

ヴァオッ!!!という発射音と共に強い反動が起き、右腕が跳ね上がり<禍爪>の先が空に向く。

赤黒い粒子の奔流が、驚異的な速度で無人機へと向かってゆく。

速度故か、無人機が迫る奔流に気付く様子は無い。

だが当たるまでもう少しのところで、やっと気付いたようだ。

逃げようとスラスターにエネルギーを溜め瞬時加速をしようとする無人機だが……

「残念だったな。ゲームオーバーだ木偶」

俺が黙って見ている訳が無い。

予め無人機のスラスター目掛けて余していた左腕の<禍爪>で重粒子光弾を乱れ撃っていたのだ。

エネルギーを溜めている関係上スラスターを吹かせない無人機に、いとも容易く光弾は当たった。

スラスターを穿たれて、機動力が激減した無人機の左半身を奔流が呑み込む。

奔流が通過し終えると、呑まれた箇所は綺麗に消え去っていて、無人機の半身が無くなっていた。

断面からは半分になった黄金の球体……ISコアが、機体と同じく半分を削られた状態で露出している。

無論、コアを破壊された無人機は機能を停止し地に伏せる。

俺は無人機が動かなくなったことをじっくりと確認してから、チラリとシャルロットの方を向く。

シャルロットの目は真っ直ぐ俺を捉えており、顔は驚愕と困惑に染まっていた。

『……一夏』

耳元から、急にシャルロットの声が聞こえてくる。

どうやら、秘匿回線を俺に繋げたようだ。

「……なんだ?俺に用があるなら早くしろ」

要件を手短に済ますように言うも、数秒の間が空く。

間に耐えかねて回線を切ってやろうかと思ったが、行動に移す前にシャルロットが口を開く。

『……なんで、僕を助けたの……?』

「……」

シャルロットから出た予想外の質問に、思わず口を開けて固まってしまう。

『……思い返せば……確かに僕は……一夏のことを考えないで……一夏に酷いことをしてきた……なのに……なんで……なんで僕を助けたの……?』

シャルロットが俺に向けるその目は、ほんの少し輝いているように見えた。

まるで、『自分のことが好きだから助けたんじゃないか』と、ありもしない希望で嬉しがっているように。

────それが、俺にとって、酷く不愉快だった。

シャルロットが抱いている都合のいい幻想を、ぶっ壊したくなってきた。

「……そりゃあ、決まってるだろ」

俺は口角を大きく上げ……胸の中でドス黒い感情を渦巻かせ、それをシャルロットに対して。

 

「お前ら見捨てて千冬姉に怒られたくないからな」

 

……吐き出す。

『……え』

一気に、シャルロットの目が暗くなる。

先程よりも、声のトーンが落ちているのがはっきりと分かった。

「いやさ、確かに見捨てようとは思ったぞ?でもそうしたら千冬姉に何言われるかわかったもんじゃねぇし。

だから助けた。お前らを見捨てれなくて助けた訳じゃない。

……千冬姉に感謝するんだな。恩知らず(・・・・)

俺はシャルロットに言葉を吐き捨て、回線を切り別の無人機のいる場所へ向けてスラスターを吹かす。最後にシャルロットがどんな顔をしていたのかは見えていないが……興味はないからどうでもいい。

意識を切り替え、残っている無人機の位置を再確認しようとしたところで、違和感に気付く。

(……なんだ?いきなり動き始めたぞ?)

先程まで専用機持ちらと戦闘をしていた無人機が、急に戦闘を止めて専用機持ちらから離れ始めたのだ。

(……どこかへ向かってる?)

無人機は全機同じ方向へ向かっているようで、レーダーで見てみると反応が一点に向かって動いているように見えた。

試しに無人機が向かう先に線を引き予測してみると……俺の予想は。

「────っ!?あいつら……シェルターに向かってやがるのか!?」

最悪の形で、的中していた。

更に、レーダーに意識を集中させていたせいで、無人機から目を離してしまっていたことで……無人機の左手のレーザーが発射されそうになっていることに、気付けなかった。

無人機らが、シェルターのある方へ向けて手を伸ばす。

「やらせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

絶叫を上げ、<堕天翅>とスラスターをフル稼働させる。

対IS用に作られたシェルターといえど、アリーナのエネルギーシールドを破る威力を持ったレーザーが直撃すれば、確実に崩壊する。

……中にいる生徒らも、無事では済まない。

(間に合え……間に合えっ!!!!!)

大慌てでスラスターを吹かしているが……いかんせん気づくのが遅すぎた。

俺と無人機との間にはかなりの距離が空いており、<堕天翅>とスラスターをフル稼働させても数秒はかかる。

その間に、無人機はレーザーを発射するだろう。

……その予想通り、無人機らがレーザーを発射しようと掌を赤い光で染める。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

感情のままに、無人機らに止めるよう叫ぶが。

 

 

赤い閃光は、無慈悲にシェルターに向かって迸る。

 

 

(……俺は……護れないのか……?)

時間が引き伸ばされたかのように、ゆっくり進む時間の中、俺は右手をシェルターのある方へ伸ばしたまま無力感に襲われていた。

────もう、間に合わないのは確実だった。

重粒子光弾は当たったとしてもレーザーを相殺できない。重粒子加速砲は重粒子のチャージが必須で、今からでは間に合わない。【零落白夜】を纏わせた<雪片弐型>を投げればレーザーの一本は防げるが、残りの二本に対応できない。

……どう足掻いても、助けられそうにない。

それでも、俺は諦めきれなかった。

(嫌だ……諦めたくねぇ……あの中には……のほほんさんがいるかもしれねぇのに……

諦めて……諦めてたまるかッ!!!!)

そう、心の内で叫んだ瞬間。

 

『そうだよ。一夏、諦めないで』

 

俺の耳に、突然少女の声が響く。

『安心して。まだ助けられるから。

────キミとボクの本当の力は、こんなものじゃないから』

 

────ドクン。

 

「っ!?が……!?」

いきなり、俺の心臓が大きく跳ね、頭に電流が走る感覚を覚えた。

それと同時に、全身に高速で血液が回り、体が燃えるように熱くなり……ゆっくり進む時間の中で、体が徐々に動き出す。

『……ボクの力はまだ抑制されたままだけど、一時的にならある程度の力は出せるよ』

更に、熱くなる俺の体に同調するかのように『雪灰』全体に赤い線が走る。

『……さぁ。

【オーバーロード】……一夏の力が目覚めるよ』

少女が呟いた直後。

俺の視界に、『Orimura Ichika Overload Activate』の文字が表示され……

「……?」

違和感を覚える。

先程と同じように、目に映る景色はゆっくりと動いている。

だが、ゆっくりと進む時間の中で……俺は普段通りに動けていた。

先程まで見えない何かに抑圧されていたかのように動きが鈍かった体が、すんなりと動く。

「……どうなってんだ?」

周囲を見渡してみるが、変わらず時はゆっくりと進んでいる。

────どうやら、今この瞬間。

俺だけが、ゆっくりと進む時間の中で、普段通りに動けるようだ。

「……なんだか分からねぇが、これなら間に合う!!!!」

このチャンスを逃すまいと、シェルターへ向けて加速する。

レーザーが到達する前に、シェルターの前に出られた俺は迫り来るレーザーを睨み、両腕の<禍爪>を盾のように構える。その上で<禍爪>の表面には重粒子を散布しバリアの役割を持たせた。

ゆっくり進んでいた時間が元に戻り、レーザーが<禍爪>に直撃し腕に強い負担がかかる。

「ぐっ……!!!!うぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

あまりにも強い威力を持ったレーザーに、腕が弾かれそうになる。

拡散したレーザーが『雪灰』のあちこちに当たり、SEが目に見える速度で削られてゆくが……俺は自分を鼓舞するように絶叫を上げ、スラスターを全力で稼働、絶対防御すら貫くレーザーを<禍爪>に纏わせた重粒子と圧倒的な機体の出力を以て相殺し受け止める。

「ブッッッッッッッ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

そして、レーザーの威力が少し弱まった所で思い切り腕を横に開き、レーザーを弾く。

逸れたレーザーが地面に着弾し、爆発が起こる。

すぐさま、俺は無人機へ向かって加速する。

再び周囲の時間が遅くなり、無人機らの動きが止まったかのように遅くなる。

左の手の平を俺に向けて、レーザーを放とうとするが……

「撃たせるわけねーだろ」

無人機がレーザーを放つよりも先に、俺は<禍爪>で無人機らの左腕を切り刻む。

腕を切られた無人機らは先程のように驚くような仕草はせず、右手に付いているブレードを俺に向けて一斉に異なる方向から突き出してくる。

以前までの俺なら食らっていたであろう三方向からの同時攻撃だが……今の俺なら見切れる。

体全体を捻って迫り来るブレードを回避し、お返しと言わんばかりに<禍爪>で二体の顔を切りつけ、足に追加された爪に重粒子を纏わせ残った一体の胴を蹴り爪を刺し穿つと、時間の進みが元に戻る。

顔を切りつけられた二体は後ろへ下がり、足の爪に刺された無人機は離れようともがくが……俺が刺した爪が体に食い込み、離れることが出来ない。

俺は体勢を整え、無人機が付いている足を地面に向け……

「……落ちろ。木偶野郎」

地面に向けて、最大出力で加速する。

その間にも、無人機は腕を動かしたり、ブレードで切りつけてきたりして抵抗する。

だがそんな抵抗は虚しく……俺の足が、地面に衝突する。

ミシミシ……バキッ!!!!

そんな音と共に、無人機の胴体が踏み潰される。

足を退けて見てみると、無人機の胴体部分は綺麗に踏み抜かれていた。

当然、内蔵されているコアも潰れているので無人機は動きを止める。

天に伸ばしていた手が、だらんと地に落ちる。

「……ハハハッ。確実に死んだな、ざまぁねぇ。

────そんで、次はお前らだ」

動かなくなった無人機を嘲笑い、空に浮かぶ無人機に目線を移す。

しかし、無人機らは俺に恐れをなしたように大慌てで俺に背を向けてスラスターを吹かし、逃走を始める。

「……逃げんじゃねーよ。

逃げると……殺せねーだろうが」

もちろん見逃すはずもなく、俺は向けられている背に向かって両腕の<禍爪>の先を向けて展開、重粒子をある程度チャージし重粒子砲を放つ。

チャージされた重粒子砲は逃げる無人機の背に直撃し、スラスターを抉り取るように破壊する。

スラスターが爆発し、無人機がその衝撃で失速し地に落ちる。

土煙をあげながら転がり、学園の端まで転がったところで動きが止まる。

衝撃で関節がイカれたのか、ギギギと鈍い音を出しながら無人機がゆっくりと立ち上がる。

「……へぇー、けっこう頑丈だな。

────ぶった斬り甲斐がありそうだ。

あの雑魚シールドみたく、簡単に切れないでくれよ?」

動きが鈍い無人機に向かって、俺は舌をなめずりながらゆっくりと歩みを進める。

この距離から重粒子光弾で撃ち壊してもいいが……それではつまらないので<雪片弐型>で切り壊すことにしたからだ。

そんな俺の思考を拒否するかのように、無人機は球状のビットを分離して飛ばし、先程まで防御に使っていたバリアを槍状に変形、真っ直ぐ俺へ向けて飛ばしてくる。

俺は向かってくる球体を軽快に躱しつつ、じわじわと無人機との距離を詰める。

無人機は迫る俺に怯えるように宙に浮いて俺から距離をとろうとするが……スラスターをやられているので大した速度は出せていない。

(……いい加減ウザってぇな、このクソビット)

何度も飛来するビットを回避し続け、流石に避け飽きたので……<雪片弐型>で飛来してきた複数のビットをバリアごと叩き切る。

遠距離攻撃手段を失った無人機がどう出るのか気になった俺だが……意外なことに、先程まで俺に背を向けて逃げに徹していた無人機が急に向きを変え、俺に向かってブレードを構えながら向かってきた。

「……機械のくせに、馬鹿じゃねぇの」

武装の大半を失い、スラスターも破壊されてもなお向かってくる無人機の愚かさに呆れ果ててしまう。

機械のくせにマトモな思考すらできないのか、と思いつつゆっくりと迫ってくる無人機に対して、俺は<禍爪>を向けて重粒子光弾を乱射する。

光弾は真っ直ぐ無人機へと向かい、黒い装甲を削り取ってゆく。

……だが、その身を削られながらも、無人機は俺に向けての歩みを止めない。

「……まぁ、これじゃ止まらねぇか」

分かってはいたが、やはり重粒子光弾では威力不足のようだ。

関節は容易く撃ち抜けたが、装甲は少し抉れる程度だ。これでは倒すまでにどれだけ時間がかかるか見当がつかない。

いや、今はそれよりも……

「……チッ、気付いたら重粒子もエネルギーも少ししか無いじゃねぇか。アレで結構食っちまったのか?」

先程まで潤沢にあったはずのエネルギーと重粒子が、視界のパラメータを覗いて見ると枯渇しかけていた。

どうやら、あの加速はかなりの量の重粒子とエネルギーを食らうらしい。

二つの残量ゲージを見てみるが……エネルギーの方は【零落白夜】を一回使える程度しか残っていない。

重粒子の方はどう消費しようかと思ったところで……俺は<堕天翅>の能力を思い出し、ニヤリと笑った。

「そんじゃあ仕方ねぇ。いたぶれないのは残念だが────完膚無きまでに、ブッ壊すか」

俺は無人機をいたぶれないことを残念がりつつ笑い、背部の<堕天翅>に向けて指示を出す。

「<堕天翅>分離、形態変形。

────モード、『武装拡張』(アドバンスドウェポン)、<雪片弐型>」

言い終えると、<堕天翅>がカスタム・ウィングから分離し<雪片弐型>へ近づく。

<堕天翅>は<雪片弐型>の側面に張り付き、ブゥゥゥンと小さな唸りをあげると完全に<雪片弐型>と連結する。

「……単一仕様能力(ワンオフアビリティ)、【零落白夜────」

連結を確認した俺は『白式』の時からの切り札であり……自慢の姉の切り札でもある、その能力の名を呼ぶ。

<雪片弐型>の装甲が展開し、白い刃が発生する。

いつもならこれで終わりだが、今回は……いや。

これからの俺は(・・・・・・・)、更に先を征く。

「────赫刀】(アガタナ)

更にそう呟き、<雪片弐型>の持ち手に追加された引き金を引く。

その動作と連動するように連結されている<堕天翅>から残っている全ての重粒子が吹き出し、白い刃に赤黒い粒子が入り込み、純白の白が赤黒く変色してゆき、刀身が伸びる。

重粒子の放出が止まり、粒子を吸いきった【零落白夜】は……その名前に相応しくない赤黒い光を放ち、普段と変わらなかった刀身は長刀と呼べるほど長くなる。

「一撃で一切合切何もかも……終わらせてやる」

視線の先に刃の切っ先が向かうよう<雪片弐型>を構え、足を動かし刃を振るうための形を作る。

スラスターがキィィィという音と共に、エネルギーの貯蓄を始める。

無人機が、少しずつ俺に近づく。

俺は刀を構えたまま静止し、無人機がこちらの間合いに入るのを見計らう。

(……あと十歩)

いつもより冴えている頭が、無人機があと何歩で間合いに入るかを導き出す。

考えている間にも、無人機は歩を進める。

ズシン、ズシンと、地面を揺らしながら迫り来る。

俺は刀を構える手を一切緩めず、こちらをその禍々しい目で睨む無人機から目を逸らさず、睨み返してやる。

(……残り三歩、二歩、一歩……)

刀を握り直し、無人機が最後の一歩を踏むのを待つ。

無人機の足が、じわじわと地面に近づく。

────ズシン。

無人機が俺の間合いに入る。

だが、同時に向こうも俺を間合いに捉えたようで、二つの無人機が一斉にブレードを振り上げる。

鈍い輝きを放つブレードが、俺の頭をかち割らんと振り下ろされる。

しかし、そんな状況でも俺の頭は依然として冷静だ。

刃を視界に入れつつも、目線の先は常に無人機に向けておく。

振り切らんと言わんばかりの勢いで振られた刃が、俺の髪に当たるのを感じても動かない。

(まだだ、まだ。

────今)

頭皮に刃が当たる感触がしたと同時に、俺は身を屈めスラスターを吹かす。

そして通り過ぎる瞬間に、赤黒い刃を鉄の皮膚目掛け横に振る。

熱を帯びたようにも見えるその刃は、鉄の皮膚を、火花を散らせながら容易く切り裂き、それどころか腹を断ち切る勢いで進む。

刃を振り切ると、胴を綺麗に断ち切れたようで無人機の上半身が宙に舞う。

俺はそのままの勢いで刃の持ち方を逆手持ちに切り替え、地面に向かって蹴りを放ち、足を地面に食らいつかせる。

食らいつかせた足を軸にスラスターの推進力によって俺の体が左に回転し、視界にもう一機の無人機の姿を捉らえる。

無人機の視線は俺に向いていたが、体の方はブレードを振った体勢のまま動いていない。

俺は再びスラスターを吹かし、無人機の懐目掛けて刃を斜めに振りかぶりつつ加速する。

無人機の懐に入ると同時、刃が無人機の左肩から袈裟斬りをするように当たり火花を散らせる。

無人機は必死の抵抗といった様子で、左腕とは違い人のように細い腕で<雪片弐型>の根元を掴み押し返そうともがく。

『ヤメテ!!コロサナイデ!!!!』

そんな時だ。その機械音声が聞こえたのは。

その声は、聞き間違いだと処理できないほど鮮明に俺の耳に響いた。

(……今この場で命乞いをしそうなのは……目の前のコイツぐらいだな)

状況からして、先程の声は今俺が切ろうとしている無人機のもので間違い無いだろうと、嫌なほど冷静な頭が導き出す。

大方接触回線から俺に向かって、壊されたくないから命乞いをしているんだろう。

だが、俺は機械如きに……ましてやのほほんさんを殺そうとしたクソ野郎に慈悲をかける気は無い。

「……死ね。クソデブリ野郎」

命乞いに対して、吐き捨てるように返事を返し腕に力を込める。

<雪片弐型>の赤黒い刃が、無人機の腕と体をじわじわと切り開くかのように進み……俺が再び力を込めた瞬間、無人機の上半身が斜めに切り裂かれ、宙へと舞う。

舞った体は地面に落ちると、もぞもぞと死にかけの虫のように動いたのちしばらくすると動きを止めた。

「……ふぅっ。これで殲滅完了、っと」

無人機を全て倒し終わり、俺は安堵のため息を吐く。

それと同時に、俺は自身の右の手のひらを開き、じっとその手を見つめる。

「……あれは一体なんだったんだ?」

先程俺の身に起きた……俺以外が遅くなるという異常現象。

どう考えても、ISの枠から外れた能力だった。

今までそんな現象を聞いたこともない上に見たこともない。

あれがあったおかげでクラスメイトらを救えたのはいいが……どうしても気になる。

さらに……俺は少女が言っていた言葉も気になっていた。

「俺の力って……なんのことだ?」

あの時少女が俺に囁いた、『一夏の力』という単語と、その後に出現した『Orimura Ichika Overload Activate』の文字。

俺には特別な力なんて、あったとしても男だけどISが使える程度しかないと思っていたが、少女の言葉からまだ他にもあるように思えてくる。

「────いや、それはあり得ないか。だったら俺人間辞めてるしな」

頭の中で一つの考えが浮かぶが、あり得ないと結論づけて首を振り、忘れようとする。

「一夏くん!!無事!?」

いきなり後ろから声をかけられ、俺は声の主がわかっているため嫌々振り返る。

「……会長ですか。ああ、無人機なら全部デブリに変えておきましたよ。俺はいたってぴんぴんしてます」

俺本人でさえやりすぎだと言えるほど、冷たい声で楯無に返す。

楯無は俺の声色が変だと思ったようで、訝しむように顔を歪めるが、その顔は。

「ちょっと一夏くん!?無事じゃないでしょう!?どうしたのその血!!!!!」

「……え?血?」

楯無は俺の顔を見た瞬間に、なにか見てはいけないものでも見たかのように口をあんぐりと開けて、俺の顔を指さした。

顔に誰かの血でもついているのだろうかと、顔を手で拭ってみる。

そして、拭いた後の手を見てみると……

「……マジか」

赤い液体が、俺の手のひらを染め上げていた。

更に、それを見た瞬間。

「……うっ!?ゲホッゴホッ!?」

胸から何かが迫り上がってくる感覚に襲われ、赤に染まった手で口を押さえて大きく咳き込む。

その度に口の中に生暖かい液体が飛び散り、鉄のような味が口いっぱいに広がる。

再び手を離して……俺は絶句した。

────手のひらに赤い水溜りができており、それがポタポタと地面に向かって落ちていた。

そこでようやく、赤い液体の正体が自身の血液であることを知った。

血を出しすぎたのか、意識が遠のき始める。

体から力が抜けて、地面に倒れ込む。

「一夏くんっ!!!!」

『一夏っ!!!!』

耳と頭の中の両方から俺を呼ぶ声がしたが、返事を返せず、俺の意識はプツンと切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

break down Phase……1.8




感想、評価お待ちしております!!!!!
次回はいつ出せるか未定ですが、早めに出せるように頑張ります٩( 'ω' )و
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