テスト前でストレスが溜まり、書き晴らしていたらいつの間にか完成していたのでかなり早めの次話投稿となります。
今回個人的に見所がある話ですので、是非読んでいただけると嬉しいです。
あと今回アンチヘイトもあるので苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでも良い方は、(*っ´∀`)っドウゾ
一夏side
「皆おはよう!!!今日も最高の天気だな!!!!」
教室と廊下を仕切る扉を開けて、俺は気分良く挨拶をしながら隣に居るのほほんさんと教室へ入る。
クラスメイト達はいきなりの大声と、その声の主が俺であったことに驚いたのか、何やら訝しげな視線が俺に向かって飛んでくる。
その視線を気にせず、俺は自分の机に歩を進めて着席すると、クラスメイト達が何やらヒソヒソと耳打ちで会話をし始めた。
「ね、ねぇ……?なんか織斑くんめっちゃ爽やかになってない?」
「これもしかして……ヤッた?!もしかしなくともヤッた!?なんか布仏さん顔赤い気がするし!?」
「ないない絶対ない!!もしヤッてたとしても、昨日まであんな意気消沈して気分最悪調子最低みたいな状態だった織斑くんがあそこまで元気になるわけないって!!」
「じゃあ織斑くんとの同室どうだったって聞かれてあうあう言いながら顔赤くしてる布仏さんについてどう説明すんのよ!!」
……なにやら好き放題言われているみたいだった。
決して俺はのほほんさんといかがわしいことをした訳では無いというのに。今の俺はのほほんさんを可愛いと思いはするがそんな気持ちを抱いたことなんてないというのに。
ただのほほんさんの胸で眠っただけ……いや、今更ながらこれってけっこういかがわしい行為では……?
「……だ、大丈夫だろ……たぶん、きっと、メイビー」
気のせいかもしれないが、クラスメイト達から向けられる視線に僅かな殺意が込められてきた気がした。
疑問と共に湧き上がってきた不安感を、自分に言い聞かせるようにして沈める。
────キーンコーンカーンコーン。
「みなさん、おはようございます……?」
そんな時だった。チャイムと共に教室の扉が開かれ、山田先生がいつも通りの時刻に来た。直後にクラスメイト達が密談を止め、教室に沈黙が訪れた。
今クラスの中でひしめいている殺伐とした空気を感じ取ったのか、何故そのようなことになっているのか分からないと言いたげな顔のまま、山田先生は教壇に立った。
「え、えーとですね。それでは時間になりましたのでSHRを始めます」
「起立!!礼!!!」
クラスメイトの声に合わせて全員が立ち上がり、山田先生へ一礼してから席へ着く。
「はい、全員居ますね。それではまず今日の流れを……じゃなかった。その前に……織斑くん」
「……は、はい?」
普段なら呼ばれないタイミングで名前を呼ばれたからか、上擦った声で返事を返してしまう。
「大変申し訳ないのですけど、織斑くんだけ今日の授業から外れて倉持技研に向かってもらいます。詳細は伏せますが、倉持技研の所長がどうしても織斑くんに一度『白式』に乗って貰いたいそうで……」
「……あ、なるほど」
未だに疑問に満ちた表情のままの山田先生を視界に収めながら、俺は昨日の夢の内容を思い出してクロの言葉に納得する。
倉持技研に行くことになったとは聞いていたものの、放課後などの自由時間に寄って少しだけ乗る形になると勝手に考えていたが、どうやらそうではないらしい。
授業から外れるということは、長い時間倉持技研に居ることになりそうだ。
強くなったと言っていたことから、クロが研究員にとって前代未聞の何かをやらかしてその調査を行うのに俺が必要になった、といったところか。
「……クックク」
思わず笑みが零れる。
もうすぐ、強くなった俺の相棒に乗れる。
どんな風に強くなったかが、楽しみで仕方がない。
「あ、実はもう倉持技研からの迎えが来ていますので、なるべく急いで玄関まで向かってくださいね」
「よっしゃ!!!そんじゃあ行ってきまーす!!!!」
待ってましたと言わんばかりに、俺は席から立ち上がって駆け足で教室を抜け出した。
そうして、玄関に居た迎えの人の案内に導かれること三時間程。
「……こんな田舎にあんのかよ」
電車やバスを乗り継いで辿り着いた、自然に囲まれた田舎のような場所に建つその建物……倉持技研まで来た俺はとりあえずその中に入ろうと建物に近づく。
が、倉持技研の横に建っている倉庫らしき場所から誰かが走ってきているのが見えたので、一度足を止めた。
「誰だ?……完全に不審者の格好してやがるけど、研究員っぽいな」
目を凝らして見れば、走っているのはスクール水着の上から白衣を着た変態女だった。
首から下げたプレートには倉持技研と書かれているため、一応倉持技研に所属している研究員なのだろうが……あんな奇抜な格好が許されているとしたら、相当に高い地位の人間だろう。
「はぁっ……はぁっ……き、君が織斑一夏くん……?ぜぇっ……はぁっ……」
大きく肩を揺らしながら、俺の目の前まで来た女……プレートによると
「ああ。俺が織斑一夏だ」
「よ……良かった……色々話はあるけど……とりあえずおねーさんに着いてきてくれ……」
かなり急いで来たらしい。息を切らし、ふらふらになりながら着いてくるよう促すヒカルノの指示に従い、俺はその後ろで歩く。
先程まで水泳でもしていたのか、その体はびしょ濡れであり、そのせいで余計体力を消耗しているのだろう。
正直、この女大丈夫か?とも思ったが……プレートに書かれた身分を見てみれば、なんと倉持技研第二研究所所長。
認めたくはないが、この奇人が俺の『白式』を作った所の責任者らしい。
「ぜぇっ……今……おねーさんのこと……頭のおかしい奴だと思ったでしょ……ゴホッゴホッ」
「そんなイカれた格好してたら思うに決まってんだろ」
「その甘いマスクから想像できないぐらい辛辣だね君!?ゴホッゲホッ」
俺の言葉がかなり心に刺さったらしい。ヒカルノが大きく咳き込みながら嘆くように叫ぶ。
……と、そうこうしているうちに大きなシャッターの前まで到着していた。
そのシャッターには大きく『開放厳禁!!!篝火ヒカルノ以外絶対開けんな!!!』という文字が書かれており、余程俺の『白式』を隠しておきたかったことが伺えた。
「ふぅっ……とりあえず、シャッター開ける前に現状を説明しておこうか」
一度大きく息を吐いて、それで呼吸を整えたヒカルノが先程までの雰囲気から打って変わり、真面目な顔で俺に語り始める。
「まず君の『白式』が昨日の昼ぐらいに突然
「……おいおい」
ヒカルノから、さらりと出てきた四次移行という単語に呆れながら言葉を漏らす。
クロが『白式』にとんでもないことをしでかした、ということはなんとなく察していたが……それがまさか、前例の一切ない四次移行だったとあればこんな反応を返したくもなる。
ただでさえ『雪灰』に三次移行した際も充分異常だっというのに、その先を行くとは俺でさえ思いつかなかった。
『白式』が異常な進化をし続けている事実に、少し恐怖に似た感情を覚える。
しかし、同時に。
俺の心は、そのせいで来る前よりも昂り始めていた。
「……乗りてぇ」
早く『白式』に乗りたい。
その気持ちが、俺の中で暴れ狂う。
思うがままに飛び回りたい。
圧倒的な力を振るいたい。
と、そんな気持ちが顔に出ていたのか、ヒカルノがやれやれと呆れた様子で懐からリモコンのような物体を取り出すと、それに付いているボタンを押す。
その動作と連動するように、目の前のシャッターがゆっくりと開いていく。
「……それじゃ、ご開帳と行こうか。これが君の進化したIS……」
ギギギ、という音をたてながら、シャッターが完全に開き切る。
陽の光がシャッター内に入り込み、そこにあった
色は前よりも黒に大きく近づいた灰色。そこに赤紫の光る線が刻まれ、様々な箇所で機体を彩る。
背の<堕天翅>は四枚から六枚に。左右対称な六枚の並んだ翅を広げる様は、まるで降り立つ堕天使のようで。
以前にも増して鋭利になった装甲。それは解放された今の俺を表すように、機体をより禍々しく、攻撃的なシルエットに仕立てあげている。
そう。これこそが、進化した俺の────俺だけのIS。
「……
「『黒望』……黒を望む、か」
新たな機体名に、意味を与えるように呟く。
まさしく、今の俺にぴったりな名前だ。
ただただ、植え付けられた青臭い正義を追い求めていた、真っ白な馬鹿だった前の俺。
その呪いから外れ、偽物の正義を捨てて、やりたいことをやり、黒に染まり始めて自由な今の俺。
さらなる
「気に入った。早速乗るぞ」
いてもたってもいられなくなり、俺を待つように鎮座する『黒望』の元まで歩き出す。
「へっ?ちょいとタンマ!!ISスーツ着てからじゃないと」
「必要ねぇ」
何故か、俺はヒカルノにそう返していた。
そう言える根拠は一つも無かったが、俺の心が告げている。
ヒカルノの制止を無視して、『黒望』に乗り込み背を預ける。
「……ッ!!!ハハハハハッ!!!!」
莫大な情報が、頭に流れ込んでくる感覚。
体が、ISと混ざって一体となっていく感覚。
この感覚が、俺の気分を異常なほどに高揚させる。
『打鉄』に乗った時の不快感のことも相まって、すんなりと馴染むことに快感さえ覚えてしまう。
試しに手の平を開けたり閉じたり、足を軽く動かしてみたものの、やはり一切の動作遅延が無い。
「えっ、なんでそんなにすんなり動かせて────」
そんな光景に驚愕したらしいヒカルノが、どこからかタブレット端末を取り出して操作を始める。
そして、操作を始めて十秒後。ヒカルノは疑問に満ちた顔のまま口をあんぐりと開き。
「────ハァッ!?動作伝達率100%!?ISスーツ着てないのに!?嘘でしょ!?」
信じられないものを見るように、俺と『黒望』へ視線を飛ばす。
その視線に、一種の優越感を覚えた俺は驚愕して固まるヒカルノを置き去りに倉庫の外へと出る。
快晴の空を見上げれば、広がるのは雲ひとつない無限の青。
こんな好条件の空で飛べば、それはとても良いデータが取れるだろう。
「ちょっ、待って!?流石に待って!?まだフライトの許可が取れて────」
「さぁ、飛ぼうぜ『黒望』ォ!!!」
必死に止めようとするヒカルノを無視して、昂る気持ちを吐き出しながらスラスターに火を入れ、<堕天翅>を起動する。
スラスターが爆炎を吐き出し、<堕天翅>が光輪で不協和音を奏でながら俺の体を空へと押し出す。
目まぐるしく景色が移り変わるが、それを目で追いつつある程度の高さまで飛んだところで、反転するように急制動をかけて空中に留まる。
「……ああ、イイ。最高にイイぜ、ノってきた」
明らかに、以前よりも速くなっていた。<堕天翅>が二つ増えたからだろうか。
絶好調の気分に身を任せて、今度は腕部の<禍爪>を起動。
空をスラスターと<堕天翅>の併用によって曲技飛行さながらの軌道を描きながら飛びつつ、被害が出ないように重粒子光弾をばらまく。
更に、重粒子を<禍爪>に貯め、重粒子砲を空目掛けて放ってみる。
数秒待つと、ひらひらと空中で霧散した重粒子が雪のように降り始めた。
それに向かって展開した<雪片弐型>を振るってみれば、風に吹かれたように重粒子が舞い踊る。
話通り、かなり強化されていることが分かって関心していると、突然通信が入った。
送り主は当然と言うべきか、ヒカルノだ。
『ねぇぇぇぇぇ?!?!なにしてんのぉぉぉぉぉ!?!?』
「うおっうるせえっ!!!なにって、試し乗りに決まってるだろ」
突然の怒声に驚いたものの、冷静に言葉を返す。
『それならこっちでプラン用意しといたのに予定ぶち壊さないでよぉぉぉぉぉぉ……お願いだから指示にしたがってくれよぉぉぉぉぉ……』
「……あー、なんというか……すまんかった」
疲れ果てた様子の声に、流石に気まずさを覚えて謝る。
気分の昂りに任せて暴れ狂ってしまっていたことを反省し、足早にヒカルノの元まで戻る。
案の定、ヒカルノは頬を膨らませ、怒っていることを表すように腕を組んで仁王立ちしていた。
「まったく、人を派手に振り回してくれちゃって」
「本っ当に申し訳ねぇ……性能上がってたもんだからこっちのテンションも上がって……」
「……まぁいいさ。誰でもおニューの力にはワクテカするもんだしね」
俺の謝罪に納得してくれたようで、うんうんと頷くヒカルノ。
……しかし、その顔からは明らかな困惑の色が漏れ出ていた。
恐らく、というかほぼ確実に、『黒望』の性能についてだろう。
だが……俺にはヒカルノがそこまで悩む理由が分からなかった。
確かにISとして異常と言える点はいくつもあるが、ISの進化として無いとは言いきれない範疇に収まっている。だというのに、それがおかしいとでも言うかのようにヒカルノは悩んだ顔のままだ。
「……さて、試し乗りも済んでスッキリしたことだろうし、今度はこっちの指示に従ってもらうからね」
「イエッサー。さっき好きに飛ばせて貰った分、指示に従います」
考えても答えが出ないと思った俺は思考を中断し、ヒカルノの指示に従って倉庫の中へと戻ることにした。
本音side
「……ねぇ相川さん〜。この先アリーナだけど本当に合ってるの〜?」
「うん。布仏さんに用がある人が居るんだって」
放課後。授業が終わり、生徒達が部活に向かう時間帯。
そんな時間に、本音は同じクラスの相川清香と共に第二アリーナまで向かっているところだった。
何故本音がアリーナまで向かっているのかと言うと、話は昼休みの時間にまで遡る。
「布仏さん、ちょっといい?」
「ん〜?なになに相川さん〜?」
昼休みになり、昼食を摂り終えた本音の元に清香がやってきた。
清香が困惑しているような顔をしていることを不思議に思いながらも、本音は話を聞くことにした。
「実は……理由は知らないけど、放課後に布仏さんと話したいって人が二組にいるみたいなんだ。二組にいる私の友達がそう伝えてって」
「……?誰だろ〜?」
記憶が正しければ、二組に親密な知り合いなど居ないはず。
だというのに、名指しで来たその話に、本音の頭には余計に疑問が浮かんだ。
かといってその話を無視する訳にもいかず、特に用事もなかったため、放課後に呼び出した人物の元まで向かうことにしたのだ。
────そして、現在。
本音は呼び出した人物に集合場所として指定された第二アリーナまで足を運んでいた。
……しかし、アリーナには本音と清香以外の姿は無かった。
嫌なほど、静まりかえっている。
「……人、居ないね」
「うん……」
念の為時刻を確認するものの、指定された時間から三分過ぎている。
遅れているだけかもしれない、ともう少し待ってみることにした本音だが。
────カツン、カツン。
本音達が入ってきたアリーナの入口から、複数の足音が響いてきた。
その人達が、自分を呼び出した人であると予想した本音は、いきなり呼び出したことについて問おうと振り返り────
「────え」
呆然と、声が漏れる。
視線の先には、この場に居るはずのない少女達が居たからだ。
そう。以前より目立っていた問題行動により、一組から外され別々の組へと移った少女達。
「……ようやく会えたな、布仏本音」
篠ノ之箒。セシリア・オルコット。凰鈴音。シャルロット・デュノア。ラウラ・ボーデヴィッヒ。
限られた者しか持てない専用機を持つその少女達が、本音を憎悪の籠った目で睨みつけていた。
いや、憎悪なんて生易しいものでは無い。
……殺意。背筋が凍り、身が竦む程のそれを、その五人は本音に向かって放っていた。
「ち、ちょっと!?どういうこと!?なんで貴方達がここに……ッ!?」
現状に疑問を抱いた清香が少女達に詰め寄ろうとするが、その歩みはすぐに止まった。
……光の粒子が、少女達に纏わりついていた。
気づけば少女達はISをその身に纏い、武装を顕現させて臨戦態勢に入っていた。
そして、各々は手に持つ武器の先端を……あろうことか本音に向けた。
「……ッ!!!布仏さん、私の後ろに下がって!!」
ただならぬ雰囲気を感じ取ったようで、清香が学園から借りていた『打鉄』を纏い、武装を顕現させながら本音の前に立つ。
「えっ……!?相川さん、何してるの……っ?!」
突然の事態に動揺し、なぜ清香までもがISを纏ったのか聞こうとするものの……再び放たれた殺気に口を噤む。
「……退け。用があるのは布仏本音だけだ。お前に用は無い」
「じゃあ……なんでIS持ってない布仏さんに向かって武器構えたの。立派な校則違反だけど」
尋常ではない殺気に当てられたせいか、恐怖に腕や足を震わせながらも清香が少女達に問う。
少女達は返事を返さず、その代わりに早く退けと言わんばかりに武器を清香へと近づける。
「言っとくけど、ここを退く気はないから。アンタたち……布仏さん
「……え?」
清香から放たれた言葉に、本音は現状を忘れて硬直した。
殺す。本音を。
……何故?
疑問に頭が埋め尽くされて、思考が纏まらなくなる。
そんな本音に代わるように、清香が震える声でその理由を口に出した。
「どうせ、織斑くんを布仏さんに取られた嫉妬でしょ?
今まで嫌われてない方がおかしい言動しといて、まだ織斑くんがアンタたちを嫌ってないと思ってるんだ。
……馬鹿じゃないの────」
しかし、その言葉が発し切られることはなく。
ガァン!!!と、鈍い音と共に清香の体が後ろに吹き飛んだ。
……箒が、清香を切りつけたのだ。
「っ!?相川さんっ!!」
慌てて吹き飛んだ方向を見れば、清香は弾き飛ばされたものの、アリーナの端すれすれの場所でどうにか停止していた。
が、止まった所で数回咳き込み、その度に口から血が吹き出ていたため相当な衝撃が体に走ったことがわかる。
「……に…て……!!のほ…けさん……!!!」
血を吐き出しながら、よろよろと立ち上がり本音に何かを訴える清香。
本音はそんな清香が心配になり駆け寄ろうと走り出す……が。
「……あ、れ?」
唐突に、斜めに衝撃が走って本音の体が地面に叩きつけられる。
うつ伏せになって、じわじわと、衝撃が走った箇所が熱くなっていく。
熱くなった部分から、何かが流れ出ているような感覚に襲われる。
……本音の視界に、やけに生々しい赤い液体が映り始める。
「……う、そ」
そこで、本音は理解した。
切られたのだと。流れ出ている赤い液体は、自らの血であると。
そう理解した途端、急速に体から血と共に熱が抜けて冷えていく。
……死が、本音の元に迫っている。
「は……はははっ!!!やった、やったぞ!!!これで邪魔者は消える……!!!」
「やりましたわね!!これでようやく……!!!」
「ざまぁみろ横取り女め!!!」
「ふふっ、しかも丁度よく証拠隠滅に使えそうな子が居るし……嬉しいなぁ。手を汚さずに会えそうだね」
「念の為数発打ち込んで殺したいところだが……このままじわじわ死なせるのが良いな」
本音の後ろから、嬉嬉として笑う少女達の声が聞こえる。
だが、段々とその笑い声も聞こえにくくなり、意識が遠のいていく。
「やだ……いや…だよ……」
口に出して自らに迫る死を拒絶するが、そんなもので止められる訳がなかった。
「……おり、むー」
薄れゆく意識の中で、本音は少年の名を呟く。
また、助けに来てくれるかもしれないという淡い期待を込めて。
……だが、願いは叶うことなく。
本音の意識は、泣きそうになっている清香を視界に入れながら途切れた。
一夏side
『──助、けて……織斑く、ん』
「……?」
ヒカルノ主導で行われた検査が全て終わり、ISから降りようとした瞬間。
聞き覚えのある声が聞こえて、俺は慌てて周囲を見渡す。
相川さんによく似た声だったから、相川さんが来たのかと思ったがそうではないらしい。
「……?どうしたんだい、降りたくないのか?」
「…………」
ヒカルノに先程の声は聞こえていなかったらしく、平然と俺にISから降りるよう催促する。
確かに、今日はほぼ丸一日乗りっぱなしだったからいい加減降りるべきだ。
そう、だというのに。
「……っ」
そわそわと、体が落ち着かない。
今ISを降りたら、取り返しのつかない自体になりそうな予感がしてならない。
先程聞こえた声は、間違いなく助けを求める声だった。
これがもし聞き間違えでなければ……
『早く……第二アリーナ……布仏さんが……!!!』
「……っ!?」
今度は、はっきりと相川さんの声が聞こえた。
しかも、今度はのほほんさんの名前まで出てきた。
……確信した。これは聞き間違いでも、幻聴でもない。
先程の助けを求める声。そしてのほほんさんの名前。
嫌な繋がりが、頭の中で完成してしまう。
「篝火さん……すいませんッ!!!!」
これから起こす事態に対して謝罪を行い、俺は『黒望』を強制的に起動させ、機体を固定していたアームを押しのける。
「ちょっ!?はっ!?少年!?何やって────」
困惑するヒカルノを無視してスラスターと<堕天翅>を起動し、倉庫の天井を突き破って外へと出る。
すぐさまヒカルノからの通信が入るが着信拒否に設定し、IS学園目掛けて全力で飛ぶ。
第二アリーナと聞いて、真っ先にIS学園が思い当たったからだ。
「間に合ってくれ……頼む……っ!!!!」
危惧しているような状態になっていないことを祈りながら、俺は焦る気持ちに身を任せてさらに加速する。
二つの推進装置の合わせ技により、数分とかからずIS学園に到着する。
急いで第二アリーナに接近してみるものの、何故か既にバリアが貼られている状態であった。
「クソッ!!!なんでバリアが貼られてんだよ!?」
当然中の様子は伺えず、何が起こっているのか聞くため管制室に連絡を入れてみるが無反応。
明らかな異常事態だ。訓練時は管制塔に教師が居るはずだというのに、そこからの反応が無い。
「……っ!!
一刻も早く現状を知りたかった俺は、バリアを破って無理矢理入ることにした。
<堕天翅>を<雪片弐型>と接続。出力の増した赤黒い等身が伸びる。
それをバリアに向かって振るえば、容易く切り裂くことが出来、俺はすぐさまアリーナの中へと入った。
「……は?」
その向こうの光景が、否応なしに俺の目に映った。
……赤い水溜まりに伏せるのほほんさん。異なる五機のISに蹂躙される、のほほんさんを庇うように覆い被さる『打鉄』を纏った相川さん。
それだけでも、急速に腸が煮えくり返りそうな感覚に襲われたが。
極めつけは、そのISを動かしているクソ女共。
嬉しそうな顔を作りながら、とっくに戦えない状態になっている相川さんに攻撃を加え続けている。
「……なにを……何をしてんだテメェらァ!!!」
怒りを吐き出しながら、即座に<禍爪>を起動。光弾を相川さんに群がるISに向かって放つ。
しかし、叫んだせいで俺の存在に気付いていたクソ共に光弾は当たることなく避けられ、二人から距離をとるように離れる。
その隙を見計らい、俺は二人のそばに降り立つ。
「相川さん!!!のほほんさん!!!」
「……お…むら……くん……」
焦点の合っていない目で、血を吐き出して途切れ途切れの言葉を紡ぎながら、傷だらけの相川さんが俺を見る。
……明らかに重症だ。それでも、相川さんは何かを訴えるように俺のISの脚部にしがみつく。
「……た…けて……のほ…けさん……死ん……う……」
「……っ!!!」
視界をのほほんさんの方へと向ける。
ISを纏っていない状態で切られたのか、のほほんさんの背中に大きな切り傷が出来ていた。
そこから流れ出した血が、のほほんさんを中心とした水溜まりになっている。
これほどの出血となると、失血多量どころの話では無い。
『警告、失血多量。失血死まで残り2分。即座に輸血が必要な状況』
「…………」
のほほんさんが死にかけていると、ISのセンサーまでもが告げた。
その事実を改めて知った瞬間。
すっ、と俺の中で何かが冷えていく。
嫌なほど冷静に頭が回り始める。今、俺はこうするべきだというイメージが頭の中に湧き出す。
「……相川さん。のほほんさんを守ってくれてありがとう、あとは任せてくれ」
「……あ……がと……」
嬉しそうに涙を流しながら、意識を保てなくなった相川さんが地面に倒れそうになるものの、俺はその体を手で受け止め、のほほんさんの横に優しく横たわらせる。
後ろで馬鹿共が何か喚いている気がするが、それを気にせず背の<堕天翅>を起動する。
だが、使うのは<GーAccelerator>ではない。重力を操った所でこの怪我は治せない。
故に、今使うのは……新たに思い出した使い方。
<堕天翅>本来の……常識外れな、その能力を発動させた。
「────
そう、命じるように呟いた直後。カスタム・ウィングから全ての<堕天翅>が分離し、のほほんさんと相川さんを囲うように飛び始める。
俺は片膝をついてのほほんさんと相川さんに近づき、二人の手を優しく握りながら微笑む。
「……のほほんさん。相川さん。今助けるからな」
<堕天翅>から、重粒子とはまた違った黒色と水色の粒子が放出され、それらは二人の傷口に集まり始める。
集まった粒子は傷口を塞ぐように固まり始め……数秒と経たず、二人の傷跡が
失血多量の警告表示も引っ込み、のほほんさんの命の危機は去ったのだ。
「……は?」
「なに、が……」
「今の……なに?」
「……ナノマシン治療?」
「いや……それにしては早すぎる」
目前に迫っていた危機が去ったからか、後ろで話すクソ共の声が鮮明に聞こえ始めてきた。
……同時に、先程まで鳴りを潜めていた怒りが、急速に湧き上がってくる。
着いていた膝を上げて立ち上がり、ゆっくりとクソ共の方へと振り向く。
「……一応聞いとく。なんでこんなことしやがった」
込められるだけの怒りを込めて、質問する。
五人は一瞬体を震わせた後に口を閉じる。
……が、ただ1人。慌てて弁明するかのようにモップが口を開き始めた。
「わ、私達ではない!!!私達はただ相川に襲われている布仏を助けようと────」
「……ああ。分かった、もういい。聞いた俺が馬鹿だった」
目の前の女は、言い訳にすらなっていない嘘の弁明で乗り切ろうとした。
傷付けたことに対する謝罪など一切無い。
バキンと、俺の中で何かが壊れた。
もう、容赦など要らない。こんな馬鹿共、生きているだけ世界の毒だろう。
「……殺してやる、お前らみたいな自己中イカレ共」
怒りではなく、今度は殺意を込めた言葉を送る。
『……機体性能制限、解除条件達成。
感覚共有遠隔操作機能『MLーSistem』、並びに感情共鳴機体性能向上システム『ELーSistem』解放。
<堕天翅>、機能制限解除。────他ISの能力使用制限を、解除します』
殺意を固めた俺を後押しするように、ピピッと、軽快な音と共に機械音声が流れたと同時。
『黒望』の更なる使い方が俺の頭に流れ込んでくる。
────ああ。これなら、余裕で殺し切れるな。
その全てを見終えた俺は確信し、<堕天翅>をカスタム・ウィングの定位置に戻し……命じた。
「『無類神器』、権能使用。
<堕天翅>が変化を始める。
装甲を展開し、<堕天翅>同士が連結して大きく形を変えて……巨大な翼のような形へと変貌を遂げる。
「……!?あれは……馬鹿な!?」
その翼の形状に、見覚えがあるような口ぶりで眼帯女が驚愕する。
それはそうだ。この翼はクソ共にとって見覚えがあるどころか、実際に
俺は驚いているクソ共に向かって、見えない銃を握るように手の形を変え、その銃口を構えた。
「……死ね」
その一言と共に、人差し指を引き金を引くように曲げる。
直後。翼から銀色の線が何本も発射され、それらは真っ直ぐにクソ共へと迫る。
「な……っ!?」
しかし、俺のその攻撃は一度は見ていたものだったからか、軽く身を捩っただけで銀の線を躱される。
攻撃が一つも当たらなかったというのにも関わらず、俺は大きく笑った。
「ぐあっ!?」
「きゃあっ!?」
「ああっ!?」
直線で走っていたはずの銀の線が、躱された後で
「……ば、かな……」
茫然自失とした様子で、銀の線を避けきった眼帯女が呟く。
「ありえない……あってたまるか!!!『銀の福音』に……BT兵器の
何故……なぜ他のISの能力を使うどころか併用している!?」
そう。これこそが『無類神器』。
「……光栄に思え。この力で殺されることを。
のほほんさんを傷つけたその罪……地獄で贖え」
言い放ちながら、俺はクソ共へと向けて歩みを進める。
……絶対に殺すという、ドス黒い意志を固めながら。
────Break down phase……2.7
いかがでしたか?
今回かなり気合い入れて書いたので、面白いと感じて頂けたなら嬉しい限りです。
次回の投稿日はテストや課題などでかなり遅くなりそうですが、楽しみにしていただけると嬉しいです。
感想、評価お待ちしておりますm(_ _)m