ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯 作:あぬびすびすこ
「これより、第564回青春はゴリラとパンダの左脚の中指会議を始める! ゼネラルマネージャー兼クリエイティブディレクター兼マグロ漁師トレぴっぴ! 始めてくれたまえ!」
「何もかも全部違う……!」
「う、ウマ娘ちゃんがこんなにいっぱい……! ヴッッッ」
ゴールドシップの宣言した会議はスズカの戦慄とデジタルのバイブレーションで始まった。
今日は6月末に迫った第2回プレシーズン戦のための全体ミーティングだ。全員集まってもらい、ここで作戦と出走者を決定する。
「次の対戦チームってどこでしょう?」
「チーム<猛ダッシュ>。クク……BNWが相手だ、アツいレースになりそうじゃないか。なァ?」
くつくつ笑うナカヤマがミーティング資料を手で叩く。
今回対戦するのはビワハヤヒデ、ナリタタイシン、ウイニングチケットの3人が所属するチームとのレースだ。
ビワハヤヒデとナリタタイシンはケガや体調不良があったものの復帰。マックイーンやスズカ同様リハビリを兼ねての参加らしい。
それぞれが出走するマイル、中距離、長距離はかなり大変な戦いになりそうだ。
とはいえ短距離とダートを疎かにはできない。まあ、ウチには強力なメンバーがいるから大丈夫だと思うけど。
「ワタシは前回とおんなじ短距離デスカ?」
「今のメンバーだと短距離を走れる方はタイキさんだけです。よろしくお願いします」
フラッシュの言う通り、現状短距離で力を発揮できるのはタイキのみ。
トゥインクル・シリーズでの最強マイラーを短距離で使うのは暴挙かもしれないが、お願いするしかない。チーム戦の辛いところだな。
「トレーナーさん、大丈夫デス! ワタシ、やりマス!」
「がんばってくださいタイキさん! 勝てば福を掴めますよ!」
グッと拳を突き上げるタイキに甘えて、短距離はタイキのみだ。
このプレシーズン戦に勝つことができれば、短距離を得意とするウマ娘も勧誘しやすくなるかもしれない。
フクキタルの言葉を借りれば、福がくるってこと。
「マイルはどうしましょう。私とブルボンさんだと逃げが被っているし……」
「はい。私とスズカさんが同時に出るのは互いに競合すると判断します。マイルと中距離に分けるべきでしょう」
スズカとブルボンの言う通り、逃げ2人はどちらかが犠牲になるか、どちらもつぶれるかの未来しかない。
今回は中距離にスズカを入れることにしよう。
「私が中距離ですね。わかりました」
「スズカさんはレースが控えてるから無理しないでね!」
そう、スマートファルコンが言う通りスズカはトゥインクル・シリーズでの復帰戦が近々待っている。
アオハル杯でのリハビリトレーニングがかなり順調で、プレシーズン戦でもしっかり走れた。
そのため、以前より考えていた海外遠征を実現するために一度公式レースに出ようということになったのだ。
「では、マイルは私とデジタルさんでよろしいでしょうか」
「はわわ……あたしがブルボンさんと一緒に走るなんてぇ!」
前によく見て右手を前に出すポーズでそう問いかけてくるブルボン。
デジタルは恐れ多いですぅぅう! と叫んでいるが、君も大概な成績を出してると思うんだが。
今回はブルボンをリーダーとしてデジタルと出走にしよう。
「オーダーを受理。マイルリーダーとして始動します」
「がんばってね、ブルボンさん!」
「はい、ライスさん。貴方に追いつくために走ります」
「ぐっはぁぁぁああああッッッ」
ライスの声援を受けて何故かデジタルが吹き飛んでいった。
光が爆発したみたいに両手で顔を抑えていたが一体なにが見えたんだ、あの娘は。
みんな慣れてきたのか視線を向けてすぐ戻しちゃうし。とりあえずそっと起こしてイスに座らせる。
「ねえねえトレーナー! わたしはダートでいいんだよね!」
ウララがにこにこしながら聞いてくる。
もちろんウララはダートだ。そして今回はスマートファルコンと一緒に走ってもらうぞ!
「わあ! ファル子ちゃん! がんばろうね!」
「うん! ウララちゃんと一緒に、ファル子がんばるよ☆」
キャッキャと盛り上がる2人。
ダート路線で華やかに活躍しているウマ娘は少ないが、ウララとスマートファルコンがいればもう勝ったも同然だろうと思っている。
ウララに近づいて肩をポンと叩く。
――リーダーはウララだからな。
「えーっ!? わたしがリーダーやっていいの! やったー!」
「ぶーぶー! ファル子じゃないのー!」
スマートファルコンが不満そうにしているが、リーダーをウララ、その横でしっかり支える役を彼女にやってもらいたいという考えだ。
一生懸命頑張るウララと向上心の塊みたいなスマートファルコン。相性はいいはずだからな。
「うーん、わかった! アオハル杯ではウララちゃんにセンターを任せるね!」
「よーし! わたし、がんばるよ!」
えいえいおー! と拳を突き上げてやる気をみせてくれるウララ。
最近かなり調子がいいらしく、トゥインクル・シリーズのレースでも12人中6着と躍進している。
前は最下位が多かったらしいが、今はドベになることすらない。成長しているんだなぁ。
「では中距離はどうしましょう? スズカさんは確定してますけど」
「アタシは長距離が苦手なんでね……中距離を走らせてもらう。いいだろ?」
ナカヤマは適正距離が中距離に特化しているらしい。
彼女とスズカは確定として、あと1人。
前回テイオーの2着と結果を残しているからな、フクキタルに頼むとしよう。
よろしくな、リーダー。
「ぎょえー!? 私がリーダーですか!?」
「頼むぜ、リーダーさんよ。運否天賦の走り……アタシは嫌いじゃあないぜ」
「よろしくね、フクキタル」
叫び声を上げてはいるが、この3人だと実はフクキタルが一番真面目だ。
ナカヤマは気分が乗らないと本当に手を抜くし、スズカは走る事しか考えないし。
チーム入りして初めて色々知っていったわけだが、思いの外みんなクセが強い!
ゴールドシップ程じゃあないけどな。
「うっし! じゃあ長距離は決まりだな! リーダーアタシ! メンバーゴルシ! 最後に564ちゃん!」
「ら、ライスは!?」
「私とライスシャワーさん。ゴールドシップさんですね。リーダーはゴールドシップさんでいいでしょうか」
弾けるゴールドシップ、焦るライス、そして全てを軌道修正するフラッシュ。
相性がいいな? この3人。
ゴールドシップはフラッシュと仲がいいのは知っているが、性格面でも合っているのかもしれない。
リーダーはゴールドシップでいいだろう。資質はピカ一だし。
今度の宝塚記念にクラシック級で挑戦できる実力もある。しっかりとリーダーとして活躍してもらうことにしようじゃないか。
「トレーナーさん。作戦はどうするんデスカ?」
今回はこちらも相手もほぼフルメンバーでの戦いになるだろう。
チームとしての作戦をかんがえなければならないというわけだ。
「皐月賞での走り……アンタの作戦だろ?」
「すごかったですね、ゴールドシップさん! ウマ娘ちゃんたちが外に行く中、たった1人内側から白いウマ娘ちゃんが閃光のように駆け抜けて!」
復活したデジタルが指をワキワキして興奮しながら話す。なんか取材に来た雑誌記者で似たような人いたな。
皐月賞での内側から突っこむ作戦は俺発案、ゴールドシップ実践という形だ。
完璧にハマって勝利したからお互いに気持ちいい展開だったなぁ。
つまり、それを期待されているというわけか。みんなからの視線が刺さる。
まあ、事前にある程度考えてきたから、距離別に説明していく。
タイキは普通に走ってもらうとして。
「オウ……チョット寂しいデスネ」
次回以降に期待してほしい。
マイルはブルボンが自分の逃げをしっかりしてもらって、デジタルは最後のコーナーで思いきり外に膨らんでほしい。
大外ぶん回して直線一気だ。マイルに出るであろうナリタタイシンは根性が凄いから、内にいて併走させないようにしたいからね。
「了解しました」
「ウマ娘ちゃんを見ながら走っていいんですね!? わっかりましたぁ!」
わかってるのかわかっていないのか……まあいいか。
中距離もスズカが大逃げ、ナカヤマとフクキタルはそれについていく形だ。
スズカの逃げが決まれば勝てるだろうけど、最初の段階でブロックされる可能性もあるからね。その時は2人の差し脚で勝つ。
「わかりました。私はいつも通りですね」
「私とナカヤマさんも普段通り走ると。ペースに気をつけないといけませんね!」
「クク……異次元の逃亡者とレースか。いいねェ、アツいじゃないか」
静かに闘志を燃やすナカヤマ。いや、スズカではなくウイニングチケットに燃やしてほしいな!
長距離はライスがビワハヤヒデを徹底マーク。フラッシュはその2人を見ながら機を見て差す。できれば内からがいいな。
ゴールドシップはその日の気分で走っていいよ。先行ならライスと一緒に荒らしまわって、追込ならそうだな……残り半分になったらスパートかけよう。
「半分……ゴールドシップさんのスタミナならできそうですね」
「私はビワハヤヒデさんだよね……うん。ライス、がんばるよ」
「アタシはどうすっかなー、どっちも面白そうなんだよなー」
気分で走れはもう作戦じゃないだろうと思われるだろうが、そっちのほうが作戦を読まれにくい。
ゴールドシップはレースを荒らしに荒らして自分だけ突き抜ける走りだから、楽しく走ってくれれば勝てるはずだ。
とりあえずの作戦は決まりだ。
あとはトレーニングで修正していこう。
「おっしゃー! 気合入れていくぞー! 金銀財宝、掘り当てようぜ!」
『おー!』
謎のコールから、みんなで拳を突き上げる。
2回目のプレシーズン戦。絶対に勝つぞ!
対戦相手はチーム<猛ダッシュ>ことBNW
短距離ダート以外はフルメンバーのそこそこ強敵ですね
ここからどんどん強いチームばかりに……!