ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯 作:あぬびすびすこ
「トレーナーさん! チームメンバーを募集しマス!」
夏合宿から帰ってきて数日。
タイキが突然トレーナー室に入ってきてこう宣言した。
今現在募集中だけど、いったいどうしたんだ?
「短距離のメンバーが少なすぎマス! ワタシもみんなと走りたいデス」
切なそうにくしくし目を擦る。
そういえばタイキは明るく見えて極度の寂しがりやだった。
他の部門でチームプレーを練習するメンバーを見て、ずっと羨ましかったんだな。
タイキが強いとはいえあまりにも頼りすぎていた。
気づけないでごめんなと謝ると、ひとつ頷かれる。
「トレーナーさんのせいじゃないデス! でもでも、チームで走ってみたいデス」
短距離のメンバーがタイキしかいないのは問題だからな。
本格的に募集をしてみようか。スカウトでもいい。
「イエス! やりまショウ!」
拳を掲げてにこやかに笑うタイキ。
こうして第2回チーム<STAY GOLD>のメンバー集めが開始した!
しばらくして。
「いっしょに走りまショウ!」
「わ、わたしはちょっと……」
タイキは一生懸命誘っているが、中々オファーを受けてくれるウマ娘がいない。
というのも、チーム<STAY GOLD>は現在2連勝中。
しかも前回の長距離レースでは強烈なチームプレーを見せたことも記憶に新しい。
あの水準の走りをトゥインクル・シリーズと並行しながらやると考えると、相当な覚悟があるかマックイーンたちのようにリハビリ中じゃないと難しいのだろう。
じゃあトゥインクル・シリーズで勝ちまくってアオハル杯でも走れてるゴールドシップはなんなのかという話ではあるが。
「ごめんね! 他の娘を誘ってみてよ!」
「オウ……わかりマシタ」
しょんぼりしながら手を振って戻ってきた。これで7人目だ。
検討するとさえ答えてもらえないためか、タイキはかなり落ち込んでいる。
一旦休憩しようとベンチに座らせる。
近くの自販機でジュースを買い、タイキに手渡した。
「センキュー」
いつものような元気もなく、眉尻を下げながらプルタブをあける。
小気味良い音が鳴るものの、雰囲気は暗い。うーん、タイキがここまで沈んでいるのは初めて見るなぁ。
「トレーナーさん……みんな、管理体制になってもいいんデスカ?」
ぽつりとタイキが呟いた。
「チーム<ファースト>に負けたら、自由じゃなくなりマス。でも、みんなあんまり気にしてないみたいデス」
ジュースの缶を手で遊びながら、俯いて切なそうに話す。
いつもの明るさはない。
「ワタシは自由で楽しいトレセン学園が大好きデス。他のみんなは、違いマスカ?」
不安そうにこちらを見る。
青く輝くその瞳は、揺れていた。
――自由な学園が、みんなも好きだと思うよ。
「本当に、そうデスカ?」
うん、と力強く頷く。
確かに管理するのは大切だし、ケガしないように見るのはあたりまえのことだろう。
ただ、それ以外のトレーニングや方針については千差万別であってもいいはずだ。
管理するもよし、自由にさせるのもよし。やり方に優劣はない。
スプリンターと言われたミホノブルボンが何故二冠、菊花賞2着にまで走れたのか。それは徹底した管理の下スパルタトレーニングで肉体を強化したからだ。
天皇賞でライスシャワーがメジロマックイーンに勝てたのは何故か。ケガをしないようにというような管理も何もなく、自分自身を追い詰めて、極限まで削ぎ落とした体に鬼を宿したからだ。
ブルボンもライスもそれぞれトレーニング内容も方針もすべて違う。それでも勝てたのは、それぞれが
そして栄光を掴み取った。管理するだけでは到底たどり着けないものだと、知っている者はわかるはず。
「難しいデス……」
タイキが頭を抱えてしまった。苦笑して手短に説明する。
要は、みんな納得してないんだから管理体制はおかしいって話だよ。
「その通りです!!!」
「オウ! 誰デスカ?」
後ろから大声が飛んできて思わず体が跳ねてしまう。
タイキと2人で振り向くと、誰もが知っているウマ娘がそこにいた。
「はいッ! サクラバクシンオーです!!」
おでこをキラリと輝かせ、ガッツポーズでこちらに体を近づけるのはサクラバクシンオー。
トレセン学園きってのスプリンターで、短距離最強とも噂されるウマ娘だ。
学級委員長に異常なこだわりを持つこと、「バクシン」というワードを叫びながら暴走していることだけは知っている。
「管理体制にお困りのご様子ですね! 学級委員長として、困っているみなさんを見過ごすことはできません!」
大声で話しながらキビキビ動くので思わず見つめてしまう。
珍しいことにタイキも勢いに飲まれて目がまんまるだ。
「タイキさんはチームメンバーを募集していると聞きましたッ! 私が力をお貸ししましょう!」
「オウ! いいのデスカ!?」
「もちろんです! 短距離でも長距離でもお任せを! バクシン的勝利をお見せしますよ!」
ハッハッハ! と腰に手を当てて笑うサクラバクシンオー。
なんというか……愉快なウマ娘だなぁ。
「とってもウレシイデス! いっしょに頑張りまショウ!」
「ええ! もちろんです!! そうと決まれば、早速トレーナーさんに伝えてきます! バクシンバクシーーーーーンッ!!!」
お礼を言おうとしたら物凄い速さで走って行く背中を見つめることしかできなかった。
は、速い……!
「おう、なにしてんだ?」
校舎へすっとんでいく学級委員長を眺めていたら、ゴールドシップがリヤカーを運びながらやってきた。
リヤカー……? と首を傾げていたが、誰かが中で起き上がる。
「ちょっとゴルシ! 急に何すんだ!」
「おめーが暴れっからだろ。優しく運んでやったじゃねーか」
「ラリアットが優しくねーよ!」
頭を擦りながら怒っているのはトーセンジョーダンだ。
なんだか最近よく見かけるなぁ。
「ここはどこなのだ?」
そしてひょっこり顔を出したのはシンコウウインディ。
彼女はレースぶりというか、本人のキャラクターが有名なウマ娘だ。
いたずらで腕やらなにやらかみつきまくる上、レース中でもかみつきに行ってしまうほどの闘争心の持ち主。
走りは本物で、フェブラリーステークスで1着をとるなどの活躍を見せている。
しかしトーセンジョーダンはゴールドシップだしわかるが、シンコウウインディは何故……?
「こいつ落とし穴掘りまくっててよー。アタシのこと見つけたら急にくっついてきたんだよ」
「ゴルシよりすごい落とし穴を作るのだ! まずはゴルシの作り方を盗むんだからな!」
どうやらいたずらのスキルアップのためにゴールドシップにくっついてきただけのようだ。
「2人もチームに入りまショウ! いっしょに走れマス!」
「え、チーム? あー、アオハル杯か……あたしはバカだし頭使えないからチームはちょっと」
「ほれ、トレーナー。ジョーダンのチーム申請書だぜ」
「話聞けよ!」
ゴールドシップからトーセンジョーダンのチーム申請書を渡された。どさくさに紛れてシンコウウインディの分もある。
「おめー夏合宿の時から興味ありますっつー顔でチラチラ来てたじゃねーか。狙ってたんだろー、虎視眈々とこの時をよ!」
「……こし?」
「………」
トーセンジョーダンがなんだそれと首を傾げると、ゴールドシップは無言になる。
謎の空気感になっている内に、シンコウウインディにチームの説明をして入るかどうか確認しておく。
チーム入る? ゴールドシップはいるよ。うん、いっしょにトレーニングする。好きにやってもいいよ。よし、じゃあよろしくね、うん。
「つまんねーこと言ってねーでさっさと入ればいいだろ!」
「でも、メンバー多いし! 中距離3人いたじゃん。あたしの枠ねー」
「あん? スズカが抜けっから大丈夫だろ」
え?
「ワッツ?」
「あ? あ、やべ、これまだ触れちゃいけねーヤツだった」
ゴールドシップの発言でその場の空気が凍った。
スズカが抜ける……!? 俺とタイキは思わず見つめ合うのであった。
IN!
・サクラバクシンオー
・トーセンジョーダン
・シンコウウインディ
OUT?
・サイレンススズカ