ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯 作:あぬびすびすこ
「オウ! アメリカに行くのデスネ!」
「ええ。ごめんなさい、急な話で」
先輩とスズカへ事情を聞きに突撃したところ、驚きながらも話をしてくれた。
どうやら前々から考えていたアメリカ遠征の計画を立てていたらしい。それをどこかしらで知ったゴールドシップがぽろっとこぼしたという顛末だ。
しばらくアメリカへ滞在するらしいので、かなり長めの離脱になるらしい。
「お前さんにトレーニングをさせてから調子が良くてな。そろそろやってみないかって話になったんだ」
「ケガをする前からの予定でしたから。アオハル杯もいいですけど、挑戦してみたいと思って」
癖毛の先輩は飴を咥えながら楽しそうにしている。
最近好調なスズカを見て、今ならイケると思っているんだろう。
アメリカは全部左回りだし、中距離GⅠも多い。きっとスゴい成績が残せるはずだ。
「トレーナーなら是が非でも走らせてやりたい。だろ?」
そうですね、とお互い頷く。
本当に魅力的だし、スズカなら必ず勝てると思える挑戦だ。
アオハル杯のチーム的にはかなりの戦力ダウンだが、是非とも頑張ってほしい。
「スズカがいないのは寂しいデス……でもでも、頑張ってほしいデス!」
「どうせいつでも先頭でぶっちぎんだからよ! 帰ってくるまでずっとハナでいろよな!」
「タイキ。ゴールドシップ。ええ、ありがとう」
タイキは寂しそうではあるが、スズカを応援する。ゴールドシップも嬉しそうだ。
夢が広がるなぁ。担当ウマ娘がこんなに凄い挑戦ができるなんて、先輩に嫉妬してしまう。
もっとも、ゴールドシップも偉業を為しえる強さだけどな!
「ゴルシちゃんは世界にとどまらねーぜ! 宇宙でラップバトルだ! YO! YO!」
「はは、元気なことで何よりだよ。それはそうと、お前さんに話があるんだ」
話とは。にこやかな表情だから、悪いコトではないだろうけど。
「チーム戦を頑張ってるところでスズカが抜けちまうだろ? こっちの都合だからな、その埋め合わせをしてやる」
埋め合わせ……ということは!
「ああ。チーム入りに興味があるウマ娘を探しておいた。俺の担当ってわけじゃないけどな」
ほら、と資料を渡されたので受け取って確認する。
何々……ん?
「どうしたんデスカ? トレーナーさん」
頭の上に?マークを出しながら寄ってきたので、資料を見せる。
フム、と書いてあった名前を見て、目を丸くしてゴールドシップの方を振り向いた。
「あん? なんだ、金魚みてーな目して」
タイキが驚くのも無理はない。
新規メンバーとして推薦してくれているウマ娘は2人。
トーセンジョーダンとシンコウウインディだ。
さっき会ったばっかりだし2人の申請書も俺が持っている。
つまり……何もかも最初から知ってたな、ゴールドシップ。
「どういうことだ? またアイツが何かしたのか?」
かなり不安そうな先輩がゴールドシップをチラ見して俺の肩に手を置く。
さっき件の2人に会ったこと、申請書をもらっていることを説明すると、なるほどなと顔を手で覆う。
「道理で慌ててたわけだ。全部見られてたのか……」
「でも、私もトレーナーさんも1回しかこの話をしてなかったと思うんですけど……」
「壁に耳あり障子にゴルシちゃんだぜ!」
ヒトはそれを盗聴と言う。
「こまけーことはいいんだよ!」
「ここか! ゴルシ!」
ガラガラと扉を勢い良く開けたのはトーセンジョーダン。シンコウウインディは何も分かっていない表情で立っている。
「返せ! あたしの紙! あとこっちのえっと……名前なんだっけ」
「ウインディちゃんなのだ! さっきも言ったんだぞ!」
「そう! ウインディちゃんのも返せ!」
「返せー! でもウインディちゃんは入るって話をしたぞ?」
2人でゴールドシップに詰め寄っていく。
ジョーダンは怒っているのだろうが、ウインディについては俺が既に勧誘済みだからかなんとなくの流れで突撃している。
怒りの矛先が向いているゴールドシップはどこ吹く風だ。ウインディがかみつこうとしているのをするりと避けながら口笛を吹いていた。
「おい! 聞けよ!」
「周波数を合わせろよな! ウマ娘には聞こえねーぜ」
「しゅう……?」
首を傾げて困っている。
ジョーダンはあんまり勉強ができないタイプらしい。ゴールドシップは教養あるし、なんだかんだいって頭がいいからなぁ。
いまいち単語の意味がわからないようだ。
「おめー、少しは勉強したほうがいいぞ」
「ゴルシにはぜってー言われたくねー!」
「おいお前ら、騒ぎすぎだ。俺のトレーナー室で暴れんな」
ギャーギャー騒ぎ出したので流石に先輩も困ったのか止めに入る。
あ、でもタイミング悪いですよ先輩。
「は?」
こちらに振り向いた瞬間、ゴールドシップがトーセンジョーダンにラリアットをお見舞いする。
しかし射線上には先輩が!
「うるせー! ゴルシちゃんラリアット!」
「ぐほっ!?」
「トレーナーさん!?」
身代わりとなった先輩は流れるようなラリアットに襲われて吹き飛んでいく。
スズカが尻尾を撥ね上げてすかさず助けに行った。
「トレーナーさん! 大丈夫ですか!?」
「ぐぐ……い、イイパワーだったぜ……ガクッ」
先輩はグッとサムズアップして倒れ伏した。
スズカがうそでしょ……と困惑しながら体を揺すっている。
「大丈夫だろ。手加減したからな」
「ああ。どこも痛くないぞ」
「ウマ娘に吹っ飛ばされてケガしないとかマジ? トレーナーってヤバ」
ジョーダンの発言に、ウマ娘たちはみんな揃って頷くのであった。
◆ ◆ ◆
改めてジョーダンとウインディ、そしてバクシンオーをアオハル杯用のチーム部室へと集めた。
チームに入る最終確認だ。バクシンオーは自薦だしウインディは本人に許可をとったけど、ジョーダンは別だからなぁ。
「あ、フラッシュさん、ナカヤマさんもちっす」
「こんにちはジョーダンさん」
「よう。ジョーダンも来るとはな……クク、面白い」
フラッシュとナカヤマはジョーダンと知り合い……というか、今現在トゥインクル・シリーズでしのぎを削っている3人だ。
みんなGⅠウマ娘だし、シニア級でバリバリに活躍している。何の因果かこのチームに集まってきた。
「あーっと、あたしはまだ入るわけじゃ……」
「みなさんよろしくお願いしますッ!! このサクラバクシンオーが来たからにはご安心を! 必ずチームを勝利に導きますよ!!!」
「うわうっさ!」
「あれれ? ライスちゃんなにかいった?」
「う、ウララちゃんの耳が……!」
ジョーダンが話をしている間に申請書を机に叩きつけたバクシンオーが全力のあいさつをしてきた。
あまりの声量にみんな耳がペタンと畳まれている。ウララは間近で聞いてしまったせいか頭がふらふらしているし耳がおかしくなってしまった。
そして同じようにふらふらしているウマ娘が1人。
「な、なんなのだ……! うう、ガブー!」
「ひょえええぇぇぇええ!?」
本能で近くにいるデジタルにかみつくウインディ。
デジタルは叫びながら足をガクガク震えさせている。生まれたての小鹿のようだ。
「え、ヤバ! なにあのバイブレーション!」
「クク……愉快なチームだろ?」
「楽しいチームですよ。少し奇抜ではありますが」
「いや、少しじゃないっしょ。でもおもしれー」
ジョーダンは震えるデジタルを撮影し始めた。
ゴールドシップの勧誘がかなり強引というか過激というかおかしかっただけで、印象自体は悪くないらしい。
「じゃ、おめーもチーム入りだな!」
「ゲッ、白いのだ」
「確かに白いですからね~」
「イエス! ホワイトカラーなウマ娘デス!」
「リーダーだからな!」
にゅっと出てきたゴールドシップがぴらぴらと申請書を見せつけている。
ジョーダンはすごく嫌そうな顔をしつつも嫌だとは言わない。
「ま、フラッシュさんたちいるし、なんかスゲー人ばっかだし。面白そうだから入るわ、チーム」
「あ、間に合ってるから」
「誘っといてドタキャンすんなっ!」
カラカラ笑うゴールドシップと怒るジョーダン。
もっともっとにぎやかになってきたなぁと思いながらみんなを見るのだった。
スズカさんアメリカ遠征のため長期離脱。
代わりにスプリンターと中長距離ウマ娘、ダートウマ娘が加入。
バランスは良くなってきましたね!