ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯 作:あぬびすびすこ
「どういうことだ……答えろよトレーナー!」
そういうものなんだ。
時代の流れだよ、ゴールドシップ。
「ふざけんな! こんなことってねーだろ!?」
これが現実だよ。
「クソッ……クソッ……! バカにしやがって……ッ!」
「あの~、何をしているんですか? 新年早々」
「あぁん!? なんだ、フクか」
あけましておめでとう。今年もよろしく、フクキタル。
「あけおめことよろ! 今年は紅ショウガみてーになれよな!」
「あ、普通にあいさつするんですね。あけましておめでとうございます~」
目を細めたフクキタルが挨拶を返してくる。
「ところでその~、何を? 神社でケンカはよくないですよ」
フクキタルの言う通り、ここは神社だ。新年の初詣ということでゴールドシップと一緒に来たわけで。
というか、別にケンカしていたわけじゃあないんだよ。ただ、なんか憤ってるからノっただけ。
「トレーナーさんの適当なノリはいい時と悪い時がありますねぇ~……ゴールドシップさんはなんで怒ってるんですか?」
「フク! オメー見たか? この出店の数々をよお!」
ビシッと指さすその先は、新年早々商売を頑張っている出店がある。
たこ焼きだったりから揚げだったり。お団子やお汁粉なんかも。後で食べようと話をしていたはずなんだけどな。
「去年はあったはずだ! 焼きそばの屋台がよおぉーーッ! なんの陰謀なんだ! 宇宙ウマ娘にアブダクションされちまったのか!?」
「えぇ~? 屋台のおじさんたちの都合じゃないですか? それよりお汁粉なんかどうでしょう! お汁粉占いというものがありまして」
「それよりだと……? 随分ふてーこと言うようになったじゃねーか」
時折フクキタルから発されるずぶとい言葉には驚いてしまう。
占いが関わるとゴールドシップ並におかしな言動があるからな。別方向にクセが強い。
「らちがあかねーな……よし! アタシは今年から焼きそば革命を起こすウマ娘になる!」
グッとガッツポーズをして、どこからともなくヘラを取り出した。
「焼きそばを普及、改革、進化させる! そして最強のジャンクフードにしてやるんだ!」
「トレーナーさん、焼きそばはジャンクフードなんですか?」
栄養バランスが悪いフードにあたるかは具材次第だな。
けど細かいことはいいって言われると思うぞ。
「こまけーことはいいんだよ! で、何すればいい?」
何をするかは特に決まってないらしい。
改革進化って言ってるんだから斬新なものを作ればいいんじゃないか。
「そうか……! ステレオタイプな焼きそばだけじゃあこれ以上の普及にはならねー。時代はエボリューションだぜ!」
「いぎゃあぁ~~~!? ヘラを振り回さないでください~~!?」
鉄ベラを振り回されてフクキタルが悲鳴を上げる。
相変わらず騒がしいなあ。思わず苦笑してしまうのだった。
「やっぱりこたつにはみかんですね~」
「コレか? コレだな!」
お参りをした後、何故か俺の部屋に来る流れになりそのままこたつに根を張られてしまった。
「ジョーカー1枚、敗北です。再戦を希望します」
「ブルボンさんのシャッフル速いね……!」
たまたま帰り道に出会ったブルボンとライスも連れて。
今は食事も見たいテレビ番組もないため、ババ抜きで盛り上がっている。
夏合宿の時も思ったが、ブルボンってポーカーフェイスなのにカードゲーム弱いな?
お茶の入った急須と湯呑を持っていそいそとこたつへ。
4ヶ所使われているのでゴールドシップを横にどかしてムリムリ入る。
「ゴルシちゃんの隣にくるたぁいい度胸じゃねーか。覚悟はできてんだろうな?」
粗茶を貢ぎましょう。
「苦しゅうない」
「安っ! ゴールドシップさん安いですよ~!」
「ライスもお茶欲しいな……お菓子も食べていい?」
好きに飲み食いしてもいいよ。
「やった……! あ、ブルボンさんもお茶どうぞ」
「ありがとうございます、ライスさん」
「こ、こんなの無料で見てもいいんですかぁ!? ヤバい! キャパが足りないよぉ~~ッ!」
ブルボンにトクトクとお茶を注ぐライス。うむ、和む。
ところでデジタルはいつ来たのだろうか。ライスたちと合流した時にはいなかった気がするんだけど。
「ウマ娘ちゃんいる所にデジたんありですからッ! あたしのことはお気になさらず!」
いや不法侵入者を気にするなというのはちょっと豪快な理論すぎない?
相変わらずのイエスウマ娘ノータッチだ。でも勝手に入ってきた罰としてブルボンの隣に突っ込んでやろう。
いけ、ブルボン! デジタルをつかまえるんだ!
「ミッション、アグネスデジタルさんのキャプチャーを受理。ミホノブルボン、始動」
「え? え!? えッ!? ほぎゃあああ~~~!?」
「キャプチャーしました。これよりこたつへ移行します」
「あっ! あッ! アッ!」
むんずとデジタルを抱えてこたつへと戻っていくブルボン。
そのまま隣に差し込み、何事もなかったようにトランプを配り出した。
「これより6人でのババ抜きを開始します。次は負けません」
「デジタルさんが気を失ってますけど大丈夫なんでしょうか?」
「ま、すぐに起きんだろ!」
それもそうかとゴールドシップの言葉に全員納得。
そそくさと自分の手札を確認するのだった。
なおデジタルは短時間での気絶と覚醒を繰り返しながらの対戦となったのだった。
◆ ◆ ◆
ひとしきり盛り上がったところで夕飯の買い出しに行くことになった。現在商店街を練り歩いている。
人ん家で遊んだうえ晩御飯まで食べて帰るというのだから、なんかもう遠慮が無いな君たちは。
チームだからといってそういうところまでゴールドシップに似なくてもいいのになぁ。
「なんだぁ? アタシが図々しいっつーのかトレぴっぴよお? 上等じゃねーか! もっと図々しくなってやるぜ! 葉っぱを食むキリンのポーズ!」
それは
「トレーナーさん、マスターより今日は好きに食べてもよいと許可をもらっています。このお魚を購入しましょう」
かなりおおぶりの鮭を指さすブルボン。
焼くとみんなの分作るのに時間かかりそうだな……鍋にするか。石狩鍋。
作ればすぐ食べれるし追加分も作りやすいし。
「了解しました。ではこの美味しそうな鮭を20切れいただけますか」
「あいよ! やっぱりウマ娘の嬢ちゃんたちはよく食うねぇ! おまけもつけとくよ!」
魚屋のおじさんが嬉しそうに切り身を詰めていく。
トレセン学園が近いから、この商店街はウマ娘たちによくしてくれる。
「トレーナーさ~ん。このキャベツおっきいですよ~! 5個買いましょう5個!」
両手にマルマルデカデカの大きなキャベツを持って見せてきた。
いや本当に大きいな! 5個も食べれるのだろうか……いや食うな、うん。
「にんじんも安いよ、お兄さま……あっ」
フクキタルと一緒に八百屋さんを見ていたライスのセリフに思わずみんなが振り向く。
お兄さま……?
「あ、えっと、その……うぅ……」
恥ずかしそうに顔を隠しているライス。
すると、ブルボンがこそっと耳打ちしてきた。
「ライスさんは自分のトレーナーを好きな絵本の登場人物になぞらえてお姉さまと呼んでいます。トレーナーさんのことも日ごろからお兄さまと呼びたいと話していました」
なるほど……ライスからの信頼の証みたいなものと思っていいのかな。
ライスが言いたい呼び方で大丈夫だぞ。
「本当……? じゃ、じゃあ、その……お、お兄さま」
うん、どうしたのライス。
「えへへ……ありがとう、お兄さま。あのね、にんじんが安いんだよ。たまねぎも、ほら」
嬉しそうに笑うライスに連れられて八百屋に足を運ぶ。
寒い正月元旦の空気の中、少しほっこりと暖かくなりながら食材を選ぶのだった。
ライスのトレーナーはお姉さま(ヒットマン)
トレーナーはお兄さま(トレーナー界の奇行子)
どっちもちょっと接しにくそうですねぇ!