ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯   作:あぬびすびすこ

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28、足りないもの

 練習試合は負けてしまったものの、非常に有意義な結果になった。

 観戦していたトレーナーやウマ娘たちも、頑張ればチーム<ファースト>に勝てるところまで手が届くとわかってやる気になっている。

 

 チームで反省会を行い、みんなでここがよかった、あそこは直そうと話をしていると。

 

「残念! 少し変わっていたがまだ変わり切れないか!」

「あん?」

 

 ゴールドシップが反応して振り向く。

 俺も視線を向けると、そこにいたのはなんと秋川理事長だった。

 

「む? ああ、トレーナー! それにゴールドシップ! 先のレース見せてもらった! 見事! 良き成長を見ることができたぞ!」

「こんにちは、トレーナーさん。ゴールドシップさん」

 

 扇子を開き、邁進! と書かれているのを見せられる。

 思ったより早い帰還だなぁ。

 

「学園の首領(ドン)じゃねーか! なんか帰ってくんの早くね?」

「うむ! 学園の事情を聞いてな! 早めに終わらせてきた!」

 

 迅速! と扇子を見せる。

 隣にいるたづなさんは疲れた表情だ。また予定変更して急に帰ってきたんだろうなぁ。

 

「理事長さんが帰ってきたということは! 徹底管理プログラムも廃止ですね!」

「えー! そうなのー?」

「樫本代理は、代理さんだから、だよね」

 

 確かに、理事長が戻ってきたのなら学園の方針も今まで通りになる。

 普通に考えると正解の考え方なんだが……いかんせん秋川理事長だからなぁ。ねぇ?

 

「ま、どーせかっしー代理にアオハル杯終わるまでやらせんだろ? アタシはおもしれーからいいけどな!」

「驚愕!? 何故わかったんだ!?」

 

 びっくりしてのけぞっているが、今までの活動を考えるとそれはそうって感じ。

 たづなさんが頭を抱えて唸ってるし。今度また飲みに誘ってあげるか。

 

 理事長のことだし樫本代理かアオハル杯かをどうにかしたいワケがあるんだろうからな。

 俺たちは今まで通りチーム<ファースト>に勝つことを目標にがんばっていこう。

 

「イッケンラクチャクにはならないデスネー……」

「だけど、勝てば解決、だよ」

「ライスさんの言う通りです! ちょっと残念ではありますが……今まで通り、力を合わせて頑張りましょう!」

 

 オー! と盛り上がるみんな。

 これには理事長もたづなさんもにっこりだ。

 

「激励! 君たちの走りに期待している!」

 

 理事長の応援を受け、メラメラ闘志を燃やすメンバーたち。

 打倒チーム<ファースト>を、改めて目標にするのであった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 バレンタインデーにゴールドシップから鯛をもらったり他のみんなから個性的なチョコやらなにやらをもらったり。

 イベントで盛り上がりつつも順調にトレーニングをこなしていたある日。

 

「いくぜ! 超合金スーパーゴルシRX-564!」

「負けねー! おりゃあああ!」

「バクシイイイィィィイイン!」

「えっほ! えっほ!」

 

 練習場を竹ウマで爆走するゴールドシップとジョーダン。

 その後ろでローラーを転がしながらバ場をならして走って行くバクシンオーとウララ。

 竹ウマでの細かなダメージを後ろのウマ娘がケアしていくので誰にも怒られない。

 というか整備しながらじゃないとバ場がおかしくなるので禁止されている。レギュレーションが厳しいトレーニングなのだ!

 

 ジョーダンはいつも以上に力強いし、やる気も絶好調。

 最近ゴールドシップになにかと高級ネイルサロンへ連れ去られてケアしまくっているからか機嫌がマジ極まれりと言っていた。

 俺の財布が素寒貧になっていくが、ゴールドシップも爪のケアをされて帰ってくるから渋々放置している。

 

「練習試合ではスタァの座を譲ったからね! 今日はタイトルロールを任せてもらうよ! ライスさん!」

「私じゃあ役者不足かも知れないですけどぉ……よろしくお願いしますぅ」

「よ、よろしくね、オペラオーさん。ドトウさん」

 

 ライスはオペラオーとドトウの3人で併走だ。

 実戦に近い走りでのトレーニングということもあってか、オペラオーがかなり燃えている。この前の練習試合はライスとリトルココンの戦いだからといって邪魔しないようにしていたからなぁ。

 

「ではッ! よーい、ドン!」

 

 デジタルの声に合わせて楽しそうに走り出すのを見ていると、遠目にウマ娘が見えた。

 誰だろうかと目を細めてみると、先日見たことがあるような姿。

 リトルココンと、ビターグラッセ?

 

 観客席でじっとこちらを見ているが、偵察だろうか。

 それだけこの前の練習試合で力を見せつけたということだな。

 

「あん? なにをそんなに見てんだ?」

「ぜぇ、ぜぇ……ゴルシ、スタミナありすぎっしょ……」

 

 戻ってきたゴールドシップが竹ウマの上から話しかけてくる。不思議そうな顔で、ケロッとしていて息の乱れもない。一緒に走っていたジョーダンは地面に倒れて息も絶え絶えなのに。

 指さしてリトルココンたちを示すと、そちらに顔を向ける。

 

「へぇー? ほぉーん?」

「うわ、顔ヤバ。ドン引きなんですけど」

 

 いたずら小僧といったらいいのだろうか。非常にやらしい顔で笑っている。

 竹ウマから降りて、ニコニコしながら俺のことを担ぎ上げた。

 ん?

 

「オラァ! カチコミじゃああぁーい!!!」

 

 そう言って観客席に走り出した!

 遠目で見ても、2人が慌ててどこかへと逃げていくのが見える。

 

「おいおいこのゴルシちゃんから逃げられるとでも思ってんのかぁー?」

 

 舌なめずりして追いかけていくゴールドシップ。

 そろそろ担がれた時用のクッションでも買おうかなと思いながら揺らされていくのであった。

 

 

 

 

 

「くそ! どんだけついてくんだ!」

「なあリトルココン。別に逃げなくてもいいんじゃないか? もうバレてるんだし」

 

 しばらく追いかけっこを続けていたが、ついに観念したのか大樹のウロで止まった。

 大樹のウロというのはレースに負けて悔しいという思いの丈を叫ぶ切り株。

 最近は悔しさ以外にも抑えきれないナニカを叫ぶために使っているウマ娘もいるとかいないとか。デジタルのことだよ。

 

「ついにお縄につくみてーだな!」

「そんなに悪いことをしただろうか! 少し練習風景を見ていただけだ」

 

 それはそう。思わず頷く。

 

「へっへっへ、そうは問屋が卸さねーぜ。アタシらのシークレットを見ちまったからにはな!」

 

 ビシッと指さすゴールドシップだが、別に秘密にしているものはない。

 というか他のトレーナーからウマ娘を預かっている身だから、すごいオープンだ。

 もう技術交流の場だからね、うちのチーム。

 

「ふざけてばっか」

「あん?」

「やる気あんの? 真剣にトレーニングしないし、いつもおしゃべりし放題。こっちは強くなるために本気でやってんだ……!」

 

 リトルココンが眉をひそめて俺たちを睨む。

 うーん、前もそうだけど、何か物凄い勘違いされている気がする。

 トレーニングは見た目も悪いし和気あいあいとやってるけど、みんな真剣に取り組んでるし。

 おしゃべりしてるのはチームワークをよくするためだからな。理由があって自由にやらせているわけで。

 

「なんだ、知らねーのか? ゴルシちゃんはいつだって本気だぜ!」

「は? どこが」

「アン? なんだぁ、おめー」

 

 首をカクカク上下させ、肩を揺らしてリトルココンに詰め寄っていく。

 ビターグラッセがまずい! と見てくるが、俺は大丈夫だと首を振る。だって、別に怒ってるわけじゃないし。

 

「アタシらのことが気に入らねーのはいいけどよ。おめーらそれでいいのか?」

「なにが? 練習試合だって勝ったし」

「こっちのが伸びてたろ、実力」

「………!」

 

 自信満々に胸を張るゴールドシップと、尻尾を揺らして目をそらすリトルココンが対照的だ。

 

「どーせこっちがなんで伸びたのか気になって見にきたんだろ?」

「………」

「まあ、うん。そうだ」

 

 ビターグラッセが困った様子で頭をかいている。

 今まで敵なしだったのに追いつかれて、焦りが出てきたって感じだろうか。

 

「見りゃあわかったろ? 本戦楽しみにしてっからよ。もっと強くなってからやりあおうぜ!」

 

 ゴールドシップはそう言って帰っていった。

 相変わらず気分屋だなぁと思いながら俺も追いかける。

 

 あ、そうだ。2人とも。

 

「はい」

「……なに?」

 

 何か手を貸してほしければ言ってくれ。

 チームは違うし担当外だけど、トレーナーだからさ。

 

「………」

「ありがとう! 何かあれば、声をかけさせてもらうよ」

 

 2人に手を振って、その場を後にする。

 練習場の観客席にいたゴールドシップに合流して、背中をビシッと叩く。

 

「今ので背骨折れたわ。慰謝料564万」

 

 出世払いね。

 

「しょうがねーなぁ」

 

 それにしても、発破をかけるなんてよっぽど気にいってるんだなぁ。

 ゴールドシップを見ると、へへっと笑っていた。

 

「おもしれーやつらだしな。どうせレースすんなら、アツいレースがしてーからよ!」

 

 ニコニコ笑う彼女を見て、変わらないなあと思わず笑ってしまうのだった。




 チーム<ファースト>の意識が変わるお話
 スポ根だ!
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