ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯   作:あぬびすびすこ

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 春の大感謝祭!


30、感謝祭

 毎年恒例ファン感謝祭。

 アオハル杯のおかげで例年以上の賑わいを見せていて、どの出し物も大盛況だ。

 

 俺は準備以外は見回り程度しかやることがないため、チームメンバーがやっているイベントを見に行くつもりでいる。

 ゴールドシップはマックイーンと一緒に焼きそばを売りさばくと言ってどこかに行ってしまったし1人で回る……つもりだったが。

 

「樫本代理、ドミツィアーナさんが似顔絵を書いてます。やってみてはいかがですか?」

「いえ、私は……」

 

 今現在、たづなさんと樫本代理の3人で回っている。

 というのもチーム<ファースト>の自主トレ発覚以来、物凄い沈んでいる樫本代理を元気づけるためだ。

 通常の業務に支障をきたしそうなレベルだとたづなさんに相談されたので、1つ息抜きにということで連れ出したというわけ。

 

 チームのウマ娘を見て腰が引けている代理を背中を押していく。

 こちらを見つけるや否や、ドミツィアーナは満面の笑みで迎えてくれた。

 

「樫本トレーナー! 来てくれたんですね! それにたづなさんとゴルシのトレーナーさんも」

「ええ、まあ……」

「こんにちは、ドミツィアーナさん!」

 

 お久しぶりと手を上げる。

 どうぞどうぞと座るように促され、困った表情でイスに腰かけた。

 対面するのを渋る様子を見せたせいか、ドミツィアーナが悲しそうな顔をするので、俺とたづなさんも苦笑いだ。

 

 別に嫌なわけじゃないから安心してほしい。こういうのに慣れていないだけだよ。

 

「本当ですか……?」

「ええ。経験があまりないだけです。ね?」

「そう、ですね……遠征先で見かけることはありましたが、実際には知りません」

「それなら体験してください! 今から樫本トレーナーを描きますから!」

 

 ドミツィアーナは筆をとり、色紙に絵を描き始める。

 代理が来てくれたのが嬉しかったらしく、上機嫌だ。

 

「あの、私はどうすれば」

「トレーナー! こっちを見て動かないでください!」

「は、はあ……」

 

 勝手がわからず心配そうに周囲を見たり俺とたづなさんを見たりしてドミツィアーナにたしなめられる。

 <ファースト>のウマ娘に叱られる姿が新鮮すぎて、思わず吹き出してしまう。

 流石に笑われたことが気に入らなかったらしく、ジロリと睨まれた。

 

「トレーナー、バカにしていますか?」

「樫本トレーナー! 前を向いてくださいよー! 描けないじゃないですかー!」

「あ、ああ、はい」

「ふふ、ふふふっ」

 

 ぷんすか怒られて縮こまる代理に、たづなさんも笑い声が漏れる。

 大変失礼ながら、面白すぎる……!

 

 しばらくして描き終えたらしく、筆をおいて汗を拭う。

 

「描けました。じゃーん! どうでしょう!」

「うふふ、似てますね!」

「そうでしょうか……?」

 

 ドミツィアーナが描き上げた樫本代理は、非常によく似ている。

 しかし、こういった似顔絵あるあるだが、特徴がある部分をすごい強調するものだ。

 

 色紙の中にいる代理は目がつり目もつり目、物凄いキツイお目々をしている。

 きゅっと引き締まった口元に、スーツ姿で腕組み。

 なんというか、おキツイ女上司みたいな感じだ。

 

「ドミツィアーナ、本当に私を描いたのでしょうか。バカにしていませんか」

「いや、いやいやいやそんなことはっ!? 似顔絵ってこういうものなんです!」

「本当ですか……?」

 

 イメージと違ったらしく、真顔でドミツィアーナを詰め始めた。

 ふざけていると思っているらしい。でも、似顔絵って大体こういうモンだからなぁ。

 似顔絵について説明すると、納得したのか頷いた。

 

「パーツを強調して書くものなんですね。わかりました」

「わかっていただけて何よりです!」

「ええ、ドミツィアーナ。ありがとうございます」

 

 改めて色紙を受け取ると、ドミツィアーナは嬉しそうに笑顔を見せてくれる。

 それを見た代理も、少しだけ口元を緩めるのだった。

 

 色紙を片手に巡っていると、大盛況の出し物を発見。

 

「表はあっても占い……?」

 

 出店している占いの館に書かれた名前を見て代理は首を傾げる。

 十中八九フクキタルの出し物だろう。名前のセンスといい盛況ぶりといい。

 

「並んでみましょうか。樫本代理も占ってもらいましょう」

「はあ……占いですか。あまり信じていませんが」

 

 頬に手を当ててうーんと考えている代理と共に列へと並ぶ。

 回転率がよく、あれよあれよと俺たちの番へ。

 

「次の方どうぞ!」

「失礼します」

「あびゃあああ~!? 何故チーム<ファースト>のトレーナーがここにぃ~!?」

「救いはないんですかぁ……?」

 

 代理だけ入ったら阿鼻叫喚の騒ぎに。

 苦笑いしているたづなさんといっしょに入ると、俺を見たフクキタルはすぐに落ち着いた。

 

「トレーナーさんもいたんですか! あ、さては理事長代理を誘ってきましたね!」

「救いはあったんですねぇ~」

「私を何だと思っているんですか」

 

 怖がられているのが不服なのか腕を組んで眉をひそめている。

 しかし落ち着いているフクキタルはさあさあどうぞとイスを示す。流石フクキタル、ずぶとさは天下一品だ。

 

 腰かけた代理と水晶玉を挟んで、フクキタルはイスに座る。

 そして、手をうねうねと動かし始めた。

 

「さあ代理さん! 何を占いましょう!」

「……何を占うものなんでしょうか」

 

 眉尻を下げて俺とたづなさんを見る。

 大体悩みとかを話して、解決の方向性を導いてもらうとかじゃないですか。

 

「そうですね。フクキタルさんの占いは評判がいいですから、1つ聞いてみてはいかがでしょう」

「ふっふっふ~、たづなさんからもこの評価! さあ、覚悟してください! どんなことでも導いてあげましょう!」

「悩みですか……」

 

 顎に手を当ててしばらく考え込み、顔を上げた。

 

「体力がないことでしょうか。自宅に戻るとすぐに睡魔が襲ってきて困っているんです」

 

 占いで解決できるのかという悩みだ。

 そしてそれをどうにかするのがフクキタルクオリティ。

 

「なるほど! では早速占ってみましょう! ふんにゃか~はんにゃか~」

「救いはあるのでしょうかぁ~……」

 

 水晶玉の上に手をやって撫でまわすように動かす。

 これで何が見えているんだと毎回思うが、由緒正しい占いのやり方でもあるのでツッコめない。

 

「エコエコアザラシ、エコエコオットセイ……きええぇぇぇ~~~いっ!」

「これは本当に占いなんでしょうか?」

 

 フクキタルが立ち上がってポーズをとり始め、あまりのおかしさに代理がまた俺を見る。

 うん、俺にもわからないです、はい。

 

「出ました! 友人と遊ぶのが吉とのことです!」

「友人と……?」

「そうです! きっとスタミナと根性が鍛えられることでしょう!」

 

 グッと親指を立てて自信満々にそう答えるフクキタル。

 ふむ……と顎に手を当てて考えこみ、ぽつりと一言。

 

「検討しましょう」

「救いはあったんですねぇ~」

 

 さっきから言ってる救いとは何なのだろうか。

 そう思いながら占いの館を去ったのである。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「去年も一昨年も思いましたが、やはり感謝祭の熱量は予想を超えるものがあります」

「そうですね。特に今年はアオハル杯のこともありますから、いつも以上です」

 

 ぐるりと回り終えた俺たちは、俺のトレーナー室で休憩していた。

 テーブルには出店でもらった色紙やらあみぐるみやらなにやらがたくさんある。

 大体がチーム<ファースト>のメンバーから受け取ったものだ。

 

「ふぅ……」

 

 ゆっくり息を吐き、もらってきた物品を指で撫でる。

 代理の表情は複雑で、嬉しそうで、悲しそうで、苦しそうで。

 息抜きにはなったみたいけど、根本的な解決には至ってないからなぁ。

 

 あの後話したりは? そう聞くと、悲しそうに首を振る。

 

「できていません。トレーニングは今まで通りにやっていますが……やはり疲労がたまっているのがわかります。データ上でも出ていますから」

「ウマ娘のみなさんは、勝ちたい、速くなりたいという想いが強いですからね……なんとかケガせずに抑えてくれるといいんですけど」

 

 たづなさんもチーム<ファースト>の自主トレには心配している。

 明らかにオーバーワークだからなぁ。やりすぎるとそれこそ今までのトレーニングすら無意味になってしまう。

 

 話をできていないがトレーニングはしているということは、代理がきちんと聞いていないんだろう。

 代理の性格を考えると、すぐにでも叱りそうなものですけど。そう話すと、手に取っていたあみぐるみを見る。

 

「……私は昔、トレセン学園でトレーナーをしていました」

 

 ぽつぽつと、樫本代理は話をしてくれた。

 

 かつてトゥインクル・シリーズでも活躍するウマ娘を担当していたこと。

 アオハル杯が開催され、チームレースに励んでいたこと。

 担当していたウマ娘がチームのために無理をしすぎて、レース中に故障してしまったこと。

 そのウマ娘はレースができなくなってしまい、学園も中退しなければいけなくなったこと。

 

 どれも聞いていて胸が苦しくなる話だ。

 俺もゴールドシップが大ケガして中退になんてなったら、トレーナーを辞めてしまうかもしれないだろうから。

 

「だから、ケガをしないようにするために管理しようと……」

「そうです。全てをトレーナーが把握することができれば、ケガをする心配もなくなる。事前に防ぐこともできる。だからこそ、私は……」

 

 そう言って悲し気に頭を振る。

 樫本代理の心にあるものは、思っていたよりも悲しく根深い。

 代理もチーム<ファースト>のみんなも、なんとかしてあげられないだろうか。肩を落とす代理を見て、強くそう思うのだった。




 アプリ版より早めにお話が。
 正直友人サポカ入れて何度もお出かけしてたら絶対相談すると思うんですけどもね!
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