ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯   作:あぬびすびすこ

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 前話は主役不在でしたねそう言えば


31、感謝祭の裏で

 樫本代理とたづなさんは仕事を再開するということで別れ、見回りに戻る。

 勝たねばならないチームだということは重々承知の上だが、代理もリトルココンたちウマ娘もどうにか助けてあげたい。

 せめてなんとか意思疎通ができるようになればいいんだけど……コミュニケーションが苦手だからなぁ、代理。チームリーダーのリトルココンもすごい口下手っぽいし。

 ビターグラッセがいないとあのチーム回らないんじゃないかと思うところがあるな、うん。

 

「おい兄ちゃん、焼きそば食わねーか?」

 

 背後から話しかけられ、間に合ってますと返す。

 

「なんだぁ? アタシの焼きそばが食えねーってのか? アァン?」

「ちょっと、ゴールドシップさん! 無理やり購入させるのは……あら、トレーナーさん」

 

 振り向くと、はっぴを着たゴールドシップとマックイーン。

 俺の顔を見てゴールドシップの行動に納得がいったのか、俺たちの顔を見比べて頷いた。

 

「ゴルシちゃんは見たぜ! たづなさんと理子ちゃん代理の3人で遊んでただろ!」

 

 ビシッと指さされて、そうだよと頷く。

 何かに気づいたらしく、マックイーンが耳と尻尾をピンと立てた。

 

「ああ、だから先ほど走り回っていたのですね。急に焼きそばを全部渡されるので何事かと思いました」

「おもしれーことしやがってよー。アタシもついていきたかったぜ」

 

 一応仕事で見回りしてたんだけどなぁ。

 しかし気分転換という名目で代理を遊ばせていたのは事実だ。

 今度出かける時には誘ってあげよう。

 

「なら前に行ったカフェで大容量ハチミルク買いにいこーぜ」

「ああ、あそこですの。今はりんごフェアをしていたので、そちらもオススメですわ」

 

 フジキセキが宣伝大使になっているりんごを使ったジュースもあるらしい。

 しかしゴールドシップは特段反応しない。まあ、そんなに好きじゃないもんな、りんご。

 

「とりあえず焼きそば食うぞ焼きそば!」

「ええ。先ほど作ったばかりです、味は保証しますわ!」

 

 パックに入った焼きそばを掲げる2人に思わず笑ってしまう。

 じゃあお呼ばれしようかなとカフェテリアまで赴くのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「なるほど。だからリトルココンさんたちは遅くに……」

 

 マックイーンの言葉に俺は頷いた。

 チーム<ファースト>の自主トレは、ウマ娘たちの中でも噂になっているらしい。

 日が落ちてからトレーニングに赴く娘は結構いるみたいだが、集団で寮から出ていくので目立つんだとか。

 

 徹底管理をうたっている樫本代理と、それ以上にがんばろうとするメンバーたち。

 模擬レースからちぐはぐになってしまっている。なんとか前のようにとはいかないが、ちゃんと意思疎通できるような状態にできないだろうか……。

 

「そうですね……しかし、ハッキリ言います。私たちが何かすべきではないと思います」

 

 真っすぐに俺を見てそう話すマックイーン。

 

「自主トレをして鍛えたいという気持ちは素晴らしいですわ。しかし、オーバーワークは褒められるべきではありません。それを指導するのはトレーナーです。私でも、ゴールドシップさんでも、貴方でもありません」

「ま、そーだな。こればっかりはトレーナーがどうこうすっとよくねーだろ」

 

 2人からそう告げられ、そうかぁ……と天を仰ぐ。

 困ったものだな……しかし、だからといって放置していたらケガは必至。

 今はリトルココンがトレーニングを分析して色々やっているらしいが、それにも限界はあるだろう。

 精神は肉体を超えることもあるが、気持ちだけでは体を休ませることはできないんだから。

 

「同じチームでしたら、私から声をかけることもできるのですが……」

「アタシらは敵同士みてーなもんだからな」

 

 ここでアオハル杯のチーム対抗戦というシステムが悪さをする。

 この後対戦するチームがトレーニングをやめたほうがいいなんて言ったら、妨害行為として見られてしまうし。

 どれほどオーバーワークでも、それを止めることはできないのだ。

 

 だからといって、手を差し伸べないのはトレーナーとして失格だと俺は思う。

 なんとかケガのリスクを少なくするためにできることはあるはず。問題だと思われても、どうにかしたい。

 

「まったくもう……ゴールドシップさんのトレーナーさんですわね」

「おう! アタシが直々に選んだヤツだからな!」

 

 何故かマックイーンに苦笑いされ、ゴールドシップが胸を張る。

 よくわからないが褒められているらしい。

 

「私も何か考えておきます。イクノさんにも相談してみましょう」

 

 手を合わせて提案してくれるが、イクノというのは……。

 

「同室のイクノディクタスさんですわ。とても頭の良い方です」

「すげーマイペースだけどな。トレーニングできないぐれーにレースに出まくれとかいうんじゃねーか?」

「そこまで奇抜なことは言わないと思いますが……」

 

 後日イクノディクタスから沢山レースに出すことでトレーニング量を相対的に減らすというのはどうでしょうと言われ、困惑したと語る。

 なお彼女的にはジョークだったらしい。

 

「ん?」

「あら?」

 

 ゴールドシップたちが何かに気づいたらしく、カフェテリアの入り口を見つめる。

 何だと思って俺も視線を向けると、ジャージ姿のリトルココンとビターグラッセがいた。

 

「お、こんにちは!」

「………」

 

 ビターグラッセは元気よく挨拶してくれるが、リトルココンは何とも言えない表情で口をもごもごしながら会釈してきた。

 相変わらずだなぁと思わず苦笑してしまう。

 

「よう! おめーら何に出てたんだ? 出し物はやってなかっただろ」

「私はタイヤ引きリレーに出場していたよ。リトルココンは2,000m×4人リレーだ」

「お2人ともレースに出ていたのですね。姿を見ないわけです」

 

 チーム<ファースト>の中で2人だけ姿かたちも無いなと思っていたが、そういうことだったのか。

 うちのチームメンバーはみんなトークライブや出店、裏方でレース系に出ないと聞いていたからあまりチェックしていなかった。

 

「ところでゴールドシップ。君は自分の企画したレースがもうすぐ始まるんだが、行かなくていいのか?」

「あん? 今何時だ?」

 

 14時になるよ。

 

「やっべ! ギリじゃねーか! 行くぞマックイーン!」

「あ、ちょっと!? 私は金船杯出ませんわよーーーっ!?」

 

 ゴールドシップがマックイーンを担いでカフェテリアから飛び出ていってしまった。

 残るは俺とリトルココンたちのみ。

 

「はは。いつも騒がしいな」

「うっさいだけっしょ……ねぇ、ちょっと」

 

 リトルココンが同じテーブルのイスに座り、腕を組む。

 そしてチラチラと様子を窺ってくるんだが……なんだ、どうした。

 ビターグラッセは面白そうに笑って同じく席に着く。何の用だろうか。

 

「……どうやってんの、休み」

 

 休み?

 

「そう」

「体を休めるのにはどうしたら効果的なのか知りたいんだ。チーム<STAY GOLD>のメンバーは小さいケガすらほとんどしないだろう?」

 

 ビターグラッセの言う通り、うちのチームはケガをほぼしない。

 それはトレーニング前後のアップダウンにもの凄い気をつけていたり、少しでも無理してそうならゴールドシップが回復するまで拉致して連れまわしたり。

 細心の注意を払っているから、コンディションがいい状態で常にいられるわけだ。

 

 俺の指導法は樫本代理のトレーニング方法と比べると相当甘いだろうから、参考になるかわからない。

 逆に聞きたいが、チーム<ファースト>はいつもどうやって体調を回復させているんだろうか。

 常にトレーニングしているイメージがあるからなぁ。

 

「チームでのトレーニングは個別に組まれてる。その日のコンディションによってメニューが変わるんだ」

「しっかり考えてあるわけ。そっちと違って」

 

 今は教わろうとしてるんだからとビターグラッセは苦笑いだ。

 なるほどなぁ。今までのトレーニングを見るに、要はその日毎にケガしない限界ギリギリのトレーニングをしているというわけだな。

 それなら実力も自信もつくだろう。今現在、結果もでているし。

 

 でもちゃんと休めてるんだろうか。休日ってみんな何してるんだ?

 

「……ランニング、とか」

「筋トレをしているよ!」

 

 ああ、うん。

 すぐにそれをやめればいいと思うよ。

 

「は? なんで」

 

 いやぁ、だって休日は体を回復させるために作ってるわけだからさ。

 そこで体に負荷をかけたらケガしやすくなるに決まってるし。

 

 うちのチームは各トレーナーに許可を取って休日の運動を禁止してるぐらいだからね。

 ランニングも禁止してるし、散歩ぐらいしか許可してないよ。

 

「なっ、本当か!? そんなの耐えられない!」

 

 ビターグラッセは反応を見るに、相当なトレーニングジャンキーだな。

 でもそれだけトレーニングしてるなら、筋肉を回復するメカニズムとかもわかってそうだけど。

 

 とにかく、ケガしたくないのであれば休日は必ず休むことだな。

 あと自主トレでオーバーワークしないこと。

 そう話すと、気まずそうに2人とも目をそらす。

 

 樫本代理に自主トレしたいって話はした? そう聞くと、困ったような表情になった。

 

「その、してないんだ」

「言ったらダメだって言われるから」

 

 やっちゃいけないという自覚はあるんだなぁ。それでも、もっと強くなりたいんだろう。

 これは樫本代理が動けないわけだ。もっと強くなりたい、走りたいと思う気持ちを止められない。

 だって、代理は強くなりたいと思っているから指導しているわけだし。

 

 あんまり手助けしたり口を出したりはできないかもだけど……相談してくれたら、なんでも答えるよ。

 

「うん、ありがとう! 助かるよ」

「………」

 

 素直にお礼を言う娘と気まずそうに目をそらす娘。

 対極にいるのに、不思議と仲がいいなぁと思うのだった。




 ほんのちょっとだけ頼る相手になっているトレーナーでした
 代理以外に1番親交があるのでね

 自主トレは悪いと思ってもやめられない
 だって代理のために強くなりたいんだもの
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