ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯   作:あぬびすびすこ

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 2度目の夏が始まる


35、シニア夏合宿 上

 2度目の夏合宿がやってきた。

 なんてすがすがしい日なんだろうか。

 

「おいおいそんな手でアタシに勝つつもりか? 冗談は名前だけにしろよな!」

「うっせー! 絶対勝つし! オリねーから!」

「んぐっ、ふふ……!」

 

 背後で行われているインディアンポーカーの喧騒と吹きだすルドルフの声を聞きつつ気分よく手元の端末を見る。

 そこにはネット記事で先日のアオハル杯プレシーズン最終戦が書かれていた。

 

「『チーム<STAY GOLD>4度目の下剋上!』だって。すごいね、お兄さま」

 

 隣に座るライスが端末を覗き込み、嬉しそうに笑みを見せる。

 先日のプレシーズンで、ギリギリではあるが勝利したのだ。

 短距離の同着と中距離での勝利。その後長距離でルドルフに横綱相撲で敗北し、ダートではエルコンドルパサーが一気に突き抜けて負けてしまった。しかし最終戦のマイルで大外からデジタルがぶっ飛んできて劇的な勝利。

 勝敗的には短距離が1着勝利扱いになったため、3勝2敗ということでプレシーズン最終戦でも勝利。チームランクも2位となり、アオハル杯優勝有力候補となった。

 

「ほほう! 私のバクシン的勝利も書いてあるのですね!」

「マルゼンスキーさんと同着なんてすごいよ……! 私は負けちゃったから」

 

 ちょっと悲しそうにしているが、ライスはルドルフと半バ身差の2着だ。

 長距離が2,600mしかなく、ライスとしては短い距離でこのパフォーマンス。

 もう少し伸びたらいけるだろうと思えるほどの走りだった。いや勝っていただろう。そのぐらい凄かった。

 

「えへへ……ありがとう、お兄さま」

「ちょっと。ライスは私の担当だからね」

「お兄さまとお姉さま……ッ! なんという甘美な響き!」

 

 同乗していたヒットマンの先輩に怒られてしまった。

 隣にはウマ娘の隣に座るのは解釈違いだしイエスウマ娘ちゃんノータッチですのでと叫び倒していたデジタル。

 もう毎年隣に座っているらしい。

 

「イチゴ大福をレイズ! さあどーすんだジョーダン!」

「うぐぐ……!」

 

 後方ではインディアンポーカーが最終局面になっていた。

 ゴールドシップがハートの4。ジョーダンがクラブのA。いや強いなジョーダンの手。

 しかしゴールドシップが自信満々にブラフオールインをしているせいでかなりビビっている。ノリはいいけどこういう時は結構考えるんだよな、ジョーダン。

 

「ジョーダンさんがオリる必要性を感じられまむぐぐ」

「ノー! お口にジッパーデス!」

 

 ブルボンがタイキに口をふさがれる。

 まあ、他のみんなが降りていてゴールドシップが4だって見えてるんだから、強いのはジョーダンだってわかるよね。

 でもそういうのが今一わからないのがジョーダンだから。

 

「くぅあ~! にんじんチップスの限定フレーバー渡したくねー!」

「だっはっはっは! おめーの2倍のりしおはこのゴルシ様がいただくぜ!」

 

 脚をバタバタ暴れさせてものすごく悔しそうにしている。

 いやぁ楽しんでいるなぁ。

 

「この勝負に勝って頂きに上るということか。ふふっ」

「………」

「………?」

 

 ゴールドシップがスン……と真顔になってしまった。

 エアグルーヴとジョーダンは首を傾げているが。

 今のはダジャレに相当していいのだろうか……?

 

「あー、なんかしぼんじまったな。ジョーダンさっさと終わろうぜ」

「え、なんでゴルシやる気なくしてんの?」

 

 しょぼくれたゴールドシップを見て困惑するジョーダン。

 そして反応がむなしく眉尻を下げて俺をみてくるルドルフ。助けを求められたようだ。

 

 いつも立て板に水のように話をするね。()()()に。

 

「! ああ、そうだな!」

「???」

 

 とても嬉しそうに耳をピコピコ動かす。エアグルーヴは俺とルドルフを交互に見て困惑しているが。

 

「お兄さま……?」

「何があってもどうにかできるよね、君は」

 

 ライスが困った様子で見てくる。

 先輩にも苦笑されながら、合宿所へと向かっていくのだった。

 

「あ、コールね。チョコビス1つ」

「は?」

 

 ついでにゴールドシップは敗北した。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「ゴルシちゃん! 1つもらっていい?」

「好きに食っていいぞー」

「お肉もありマース!」

 

 夏合宿についた初日。

 チーム全体で完全オフという大胆なプランのもと浜辺で遊んでいた。

 ゴールドシップは持ってきた自前の器具でイカ焼きを作ってみんなに食べさせている。すっごい磯の香り。

 そして隣ではタイキがアメリカンなバーベキュー。肉がスッゴイ大きい。

 

「あむあむあむ! おいしいねライスちゃん!」

「うん、美味しいね!」

「はぁ、はぁ……! こんなご褒美があっていいのでしょうかッ!?」

 

 ウララとライスが口元を汚しながらも楽しそうに食べている。

 先日のアオハル杯でみんな頑張ったからね。今日はゆっくりしてもらおう。

 

 といってもここにいるのはタイキとブルボン、フクキタル、ライス、ウララ、そしてデジタルの6人とゴールドシップのみ。

 他のメンバーは自分のトレーナーと一緒にトレーニングだ。流石に初日休みは暴挙だと言われてしまった。その通り。

 

「ブルボンさ~ん。お1つどうです?」

「マスターより食事制限のオーダーを受理しています。そのお肉を食べると摂取カロリーがオーバーしてしまいますので」

 

 流石のストイックさだ。ただすっごい食べたそうにしてるけど。

 

「安心してください! このイカ焼きとお肉を一緒に食べると海と陸がぶつかりあってカロリーが0になるのです!」

「! そんな計算式が……!」

 

 いやないから。フクキタルの頭にチョップを入れる。ふんぎゃろー! と怒り出したが知らんぷりだ。

 鶏肉と野菜ならある程度大丈夫だろうから、それをもらうといいよ。イカ焼きはちょっと微妙だけど。

 

「ブルボンさん、野菜串持ってきたよ」

 

 話を聞いていたらしいライスが野菜のみが刺さったバーベキュー串を持ってきた。

 それを見てブルボンは目を閉じる。

 

「……データを照合。行動を修正します。ありがとうございます、ライスさん。いただきましょう」

「うん! にんじんがね、甘くて美味しいんだよ」

「ヒュッ」

 

 ライスが笑顔でこのお野菜がねと丁寧に教える。ブルボンは微笑みながら話を聞き、その野菜に舌鼓を打った。

 そしてそれを見ていたデジタルが過呼吸みたいになって倒れそうなのをキャッチ。両手の食べ物を机に置き、休憩スペースにそっと横たえる。

 相変わらずウマ娘同士の交流で天に召されすぎだ。

 

 ふぅとため息を吐いていると、近くからグウゥゥゥと地響きのような音が。

 何だと思って辺りを見回す。

 

「………」

「初日から何してんねん! 旅行に来たんか!」

 

 振り向いた先には羨ましそうにバーベキューを見るオグリキャップと呆れたように見ているタマモクロス。

 そして帽子をかぶったトレーナーと髪を縛ってる活発なトレーナー。どちらも有名な先輩だ。

 

「美味しそうな匂いだ……イカ焼きを1つくらいもらえないだろうか」

「オグリ、今イカ焼きって言うたやろ? あれはイカ焼きやあれへん! 姿焼きやっていつも言うとるやろ!」

 

 何故かケンカが始まってしまった。

 そういえば関西だとイカ焼きは粉ものなんだったか。

 

「し、しかしタマ。イカを焼いているんだ。イカ焼きでいいだろう」

「イカ全部焼いとるんや! 姿焼きやろ!」

「うぅ……ん?」

 

 押し切られてオグリキャップが困っている。

 ふと、視線に気づいたのか俺を見てきた。

 

「君は……」

「お? なんや、ゴルシのトレーナーやないか。初日からどないなっとんねんアレ!」

 

 ビシッと指さされて怒られてしまった。

 まあ普通に考えたらおかしいよね。

 でもアオハル杯で思いきりレースしたし、ゴールドシップに至ってはGⅠレースとアオハル杯。

 休ませないとケガしてしまうだろうからな。

 

「うん、そうだな。ケガをしてしまうと走れなくなってしまう」

「それはそうやけど……もっとこう、なんかあるやろ!」

 

 納得がいかないらしく、タマモクロスはぐぬぬと唸る。

 まあ、うん。すごいトレーニングするイメージあるからね。タイプが違いすぎるんだろう。

 

 と、そこでぐううと地響きが1つ。

 

「すまない。お腹がすいてしまって」

「さっきからこの調子や。トレーニングもままなれへん」

 

 お腹を擦るオグリキャップ。

 先輩たちを見ても、苦笑いをするばかり。

 

 もし大丈夫なら食べに来てもいいけど。そう言うと、目を光らせて詰め寄って来た。

 

「本当か!?」

「おいおい、いいのか? 知ってるとは思うが、オグリは食うぞ」

 

 それは知っている。だってカフェテリアでよく見かけるからな。

 山のように積まれた食べ物の数々を。

 でもなんかタイキとゴールドシップがえらい量の食材を調達してきちゃったから消費しきれなそうだし、食べてくれるなら万々歳だ。

 

「よし、食べよう」

「君がいいって言うのなら……でも本当に大丈夫か?」

「結構すごいよ、オグリの食欲」

 

 先輩たちから物凄く心配されている。

 だがまあ、大丈夫だろう。タイキが用意して来る肉の量は毎回とんでもないからな!

 

 やる気満々で歩いていくオグリキャップを他のみんなが心配そうに見つめている。

 みんなのアイドルにしてスーパーウマ娘と言われているはずなんだけどなぁと思ってしまうのだった。

 

 なお用意していた食材は全てオグリキャップが食らいつくした。本当にすごい食べるなぁ。




 トレーナーはシングレ基準。
 シングレのキャラみんないいよね……うん、いい……。
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