ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯   作:あぬびすびすこ

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 この話を書くためにアオハル杯書いてるまである


44、アオハル杯決勝 第4回戦

「こうも見事にマークされると厳しいものがあるな」

 

 サングラスの先輩は帽子とグラスを直しながらそう呟いた。

 1人1人完璧にマークされたせいでかなり厳しいレースになったのがよくわかる。

 力量的にはブルボンやデジタル、シチーは負けていない。それでも勝てなかったのは、ひとえにチーム<ファースト>の走りが巧かったことに他ならない。

 

 やっぱり代理の指導はすごいんだなぁ……思わずそう呟く。

 

「そうね。悔しいけど、1枚上手だったわ」

「ありがとうございます……デュオジャヌイヤたちは、肉体的な能力が低いと悔しそうにしていましたから。体を鍛えて、レース技術を磨きました。その結果が出たのでしょう」

 

 代理は少し嬉しそうに、喜ぶメンバー3人を眺めていた。

 いいぞ、チーム<ファースト>と流れを喜ぶ反面、戦いとしてはかなり苦しい。

 

 1勝2敗なのはいい。だが、先ほどの敗北で完全に流れを持っていかれた。

 勢いもそうだし、何よりしっかりとレース展開を作られて負けてしまった。これが痛い。

 ゴールドシップがよくやっていた、荒らしまわって流れを乱す破天荒作戦をこちらがやられているみたいなものだ。破天荒じゃないけど。

 

『チーム<ファースト>が2勝! 王手をかけました! チーム<STAY GOLD>は巻き返しなるか! 第4回戦はダート1,800mです!』

 

 次はダートのマイル戦だ。

 前走の徹底マークを考えると、ここもかなり厳しい戦いになるだろう。

 

『選手入場です! チーム<ファースト>からドミツィアーナ、クラヴァット、フェニキアディール!』

 

 自信満々に出てくるチーム<ファースト>のメンバーたち。

 ダートの3人は全員が先行を得意としているウマ娘で、全員が前目に付けてそのまま押しつぶす走りをする。

 こちらの逃げウマ娘はかなり走りにくくなるだろう。

 

『チーム<STAY GOLD>からハルウララ、スマートファルコン、シンコウウインディ!』

 

 大歓声を受けながら、満面の笑みで手を振るハルウララとスマートファルコン。

 そして楽しそうに歯をむき出しにしてのしのし歩くシンコウウインディ。

 

「苦しいレースになりそうだ……」

 

 先輩のウララトレーナーが眉をひそめて見ていると、ウララがふと観客席の一点を捉えた。

 そして駆け寄っていき、ぴょんぴょん跳ねながら手を振っている。

 

「キングちゃんだー! スペちゃんも来てくれたんだね!」

「ちょっとウララさん! もうレースが始まるのよ!」

「あはは、ウララちゃんらしいね」

 

 どうやらキングヘイローたちが応援に駆けつけてくれていたようだ。

 前日に3位決定戦のレースがあったはずなのに……友達に恵まれているなぁ、ウララは。

 

「頑張ってくださいね」

「エルも応援してマース!」

「しっかり走ってくるんだよ」

 

 というか黄金世代揃い踏みじゃないか?

 みんなと仲がいいのは聞いていたが、本当に仲良しなんだな。

 

「相変わらずだね」

 

 先輩はウララを見て嬉しそうだ。苦笑いだけど。

 ただ、今回はもっともっと先輩を、ひいては全ての観客を感動させようと思ってますよ。

 

「え?」

「どういうことだい?」

 

 ウインディとファルコンのトレーナーが俺を見てくる。代理や他の先輩たちも不思議そうにしていた。

 俺は手を振るウララたちをみて口を開く。

 

 今日、この日を待っていたんです。

 大舞台でのダートレースをね。

 俺が作戦を自信満々に話すと、先輩たちは驚愕して目を丸くするのであった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「みんながんばろーね! 今日はわたし、負ける気がしないんだ!」

「うん! ファル子もがんばるよ!」

「ウインディちゃんは自由に走るのだ!」

 

 やる気と元気に満ち溢れているチーム<STAY GOLD>。

 先ほど2連敗して後がなくなっているとは思えない程活気がある。真剣さはあまり見えないが。

 

「……事前の想定通りでいいね」

「うん。それしかないだろうし」

 

 ドミツィアーナたちはスマートファルコンを見て作戦を再確認する。

 逃げウマ娘のスマートファルコンは先行勢である3人が一番気にするところだ。

 流れの中で前さえ取れれば、シンコウウインディは封殺できると考えている。3人壁になれば、前には出れない。

 

「速くないし勝てもしない、元気ばっかりの子になんでリーダーさせてんのかな」

「何か考えがあるんだよ。トレーナーも悪い人じゃないしさ」

「……そうだね」

 

 ハルウララを見て、少し眉をひそめてしまうフェニキアディールだが、クラヴァットに諭されて緊張を解く。

 やはりレースの世界は速いウマ娘が正義だし、勝者こそ称えられるべきだ。

 しかし、ハルウララは頑張って走ることで多くのファンを獲得していった。負け組の星とまで言われているぐらい人気を博している。

 それが好ましいことかどうか。同じように頑張って実力をつけることでファンを獲得しているフェニキアディールにはわからなかった。

 

 それぞれ準備を終え、ゲートに入っていく。

 勝利が確定するのか、まだ先になるのか。

 この一戦に全てがかかっている。

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了。まもなく出走です』

 

 ――ガタンッ

 

『スタートしました! 各ウマ娘、綺麗なスタート! 一気に抜け出すのは5番スマートファルコン! やはりこのウマ娘です!』

 

 ゲートが開き、一瞬で飛びだすのはスマートファルコンだ。

 砂のサイレンススズカと言わしめるその逃げ技術は素晴らしいものがある。

 逃げ切りシスターズの交流によって培ったスタートとその後の走り。まずハナを取られることはない。

 

 しかし、チーム<ファースト>の面々がそんな簡単に逃がすはずもなく。

 

「ふっ!」

「はぁ!」

『7番ドミツィアーナも前に出ます! 2番クラヴァットも追従していきます!』

『簡単にはいかせまいときっちりマークしていますね』

 

 スマートファルコンをドミツィアーナが追いかける。

 クラヴァットはその2人の後ろを走る。追走はドミツィアーナに任せ、スリップストリームをとるようだ。

 

「ウインディちゃんも混ぜるのだ!」

「そうはいかないよ!」

 

 シンコウウインディが追いかけようと前に出ようとしたところで、フェニキアディールが前に入る。

 邪魔なのだ! と横から出ようとするが、それもまた邪魔する。完璧なマークだ。前に出ることはできない。

 

 阪神ダート1,800mはコーナーまで300mしかないため、ポジション争いが激しい。先ほどからシンコウウインディが動こうとしているのもそのためだ。

 そしてその動きで一番影響を受けるのが内枠だ。ポジションが定まる前にコーナーに入るせいで揉まれてしまう。

 

「わわわ!」

『1番ハルウララが後ろに下がります! 大丈夫でしょうか!』

『ポジション争いで弾かれてしまったようですね。少し厳しくなりました』

 

 1枠1番だったハルウララはポジション争いのうねりに乗れず、最後方にはじき出されてしまった。

 そのまま先頭のスマートファルコンがドミツィアーナやクラヴァットたちを引き連れてコーナーへと入っていく。

 

『順位を見ていきましょう。先頭は5番スマートファルコン、続いて2バ身離れて7番ドミツィアーナ、その後ろに2番クラヴァット。1バ身離れて9番フェニキアディール、後ろに6番シンコウウインディ、並んで12番ヘイストファイア、4番ゴールドシュシュ。1バ身離れて3番ジュエルサファイア 、並んで11番フリルドチェリー、後ろに10番コロッセオファイト、8番アストレアノーチェ。最後方1バ身離れて1番ハルウララです』

 

 第1コーナー第2コーナーは急で小さなカーブ。

 するりと抜けてすぐに向こう正面へ。

 

 スマートファルコンはかなりのハイペースで飛ばしている。マイルで考えたとしても、このペースは速すぎる。中距離も走れるのだから、そのスタミナが尽きるとは思えないが。

 対策としてスタミナがあるドミツィアーナがマークし、クラヴァットはスリップストリームを使って脚を溜める。後方のシンコウウインディはフェニキアディールが、抜かれたらドミツィアーナが膨らんで止める算段だ。

 マルゼンスキー相手にタイキシャトルとサクラバクシンオーがやった作戦と似たものだ。強者を倒すためのチームプレー。考え抜いた末の作戦だった。

 それにしたって速すぎやしないかと思いながらも、スマートファルコンなら逃げ切ってしまうだろうと警戒は怠らない。

 

 前方でペースに四苦八苦しているのをよそに、シンコウウインディは目の前でふらつき邪魔しているフェニキアディールにすこぶるムカついていた。

 往来の負けん気の強さ、そして明らかにブロックする動き。しかも踏みこむたびに巻きあがる、砂もまた苛立ちを増加させる。

 

「なんなのだ~~~っ!!!」

「は!? やばっ!」

 

 ついに怒りの頂点に達したシンコウウインディは、一気に外側へ跳ね飛ぶように動き、そのまま大外からフェニキアディールを追い抜かす!

 トレーナーとゲート練習した時に身につけた、地面をとにかく掘りまくる脚の動き。走る動かし方とはまた違うギアシフトを身につけていたシンコウウインディの加速にフェニキアディールは対応できずにいた。

 

 後ろの動きを察知したクラヴァットは、チッチッと口で音を鳴らし合図する。

 ドミツィアーナが少し後ろを確認すると、外に膨れてクラヴァットがそのまま前方へスライド。

 想定よりも早く展開が動いたが、スマートファルコンはしっかり捕捉している。前が垂れてしまった時は、フェニキアディールの差しも活きる。

 2手3手先を読んだ動きに、スマートファルコンのトレーナーを思わず舌を巻く。そして近くにいた樫本代理を称賛した。レベルが高いと。

 

 そんな中、展開にも流れにもついていけてない最後方に、ポツンと1人ハルウララ。

 えっほ、えっほとゆったりいつも通りに走っていた。

 

「あとちょっとだよね」

 

 さくせんどーり! ハルウララは自信満々に最後方をひた走る。

 だってこれは、トレーナーと相談して考えた作戦なのだから。

 

『2番手3番手の順位が変わり、シンコウウインディも前に出ました! ここでスマートファルコンが第3コーナーへ入っていきます!』

 

 先頭で互いのチームが5人、様々な展開を繰り広げながら第3コーナーへと入っていく。

 第3第4コーナーは長く、それでいて下り坂だ。ここからさらにスパートなどの展開が増えていく。

 

 さてどうなるのだろうと観客たちも応援しながら見守っていると、突然大声が聞こえてきた。

 

 ――ウララァーーッ! がんばれェーーーッ!!!

 

 近くにいた人々はギョッとしながら声を出した人物を見る。

 それはチーム<STAY GOLD>のトレーナーだ。先頭を走るスマートファルコンでもなく、上がってきたシンコウウインディでもなく、ハルウララ?

 みんながそう思っていると、更に別の場所から声が聞こえてくる。

 

「ウララーーーーッ!!! がんばれよーーーー!!!!」

「ウララさ~~ん! 行けますよ~~!!!」

「ウララーーー!!! ファイトーー!!」

「ウララちゃーん!!! がんばってー!!!」

 

 トレーナーの後ろから聞こえてきた声にまた驚く。

 勝負服に身を包んだゴールドシップ、マチカネフクキタル、タイキシャトル、ライスシャワーが、何故か観客席から応援していた。

 特にゴールドシップに関しては次のレースがあるというのに。でもゴールドシップだしなぁ……と観客たちが納得していると。

 

「うらら~~~!!!」

『ハルウララ仕掛けた!? ここでハルウララが仕掛けました! 残り半分のところでスパートをかけています!』

「な、えっ!?」

 

 ハルウララが最後方からグングン加速し始めた。

 そんなバカな!? ハルウララのトレーナーは目を見開いた。

 

「な、なんで! なんであんな無茶を!」

「うるせー! ちゃんと見ろよな! おめーの担当ウマ娘だろ!」

 

 思わず<STAY GOLD>のトレーナーを掴んでしまうが、ゴールドシップから一喝されてハッとする。

 トレーナーも、ゴールドシップも、ここにいる他のウマ娘も。

 誰もが真剣にハルウララを応援しているのだ。

 

 レース場全体が騒然としている中、ハルウララはゴールドシップから教えてもらった通り、コースの半分からスパートをかけ始めた。

 そして3年間やり続けたぱかプチダッシュの通りに体を傾けてコーナーを回る。全て体が覚えているのだ。

 

 無駄なく加速していけば、差しウマ娘たちのバ群が待ち構える。

 しかしマチカネフクキタルから教わったように、恐怖せず自分の行きたいところへ進めば勝手に道は開いてくれる。

 

「ウララさ~ん! 今日は超大吉ですよ~!」

「うららら~~!」

「え!? なんで!?」

「うそっ! 抜けた!?」

 

 差しウマ娘はどちらのチームにも属さないため、積極的にブロックすることはない。

 しかし、だからといって。バ群の中を互いに不利もなく迷惑もかけずに直進していくなんて!

 凄まじい豪運、そして勇気。思わず何度もその背中を見てしまう。

 

 赤い鉢巻をたなびかせて、ハルウララはまだまだ進んでいく。

 まだスパートをかけていないのだから、走れば走るだけ順位は上がっていくのだ。

 

 しかし先行している集団に到達したところで、スマートファルコンら先頭のウマ娘たちが最終コーナーを抜けた。

 

『さあスマートファルコンは最終コーナーを抜けて直線に入った! このまま逃げ切れるか!』

 

 コーナーからの加速を経て、スマートファルコンはさらに後ろを突き放しにかかる。

 それを逃さないとクラヴァットは溜めた脚を解放する。

 

「やあああーーー!!!」

「はああああーーッ!!!!」

『スマートファルコン逃げる逃げる! クラヴァットが追いかける! 少しずつ差が詰まっているぞ!』

 

 スタミナがあるとはいえハイペースでの1,800mは辛いのか少しペースが落ちるスマートファルコン。そこを差しに行かんとクラヴァットは一気に脚を使う。

 少しずつだが着実に差が詰まっていく。このままでは抜かされる可能性は高い。

 

 それを見たシンコウウインディは、ウインディちゃんの出番なのだとスパートをかけていく。

 下り坂を利用してグングン進む、が。

 

「まだだよ!」

「ぐぬぬ! 邪魔なのだー!」

 

 後ろから追いかけてくるフェニキアディールに圧をかけられる。

 そして後方に気を取られていたら、自分の走るライン上にドミツィアーナが。

 避けて走れはするが、それだと間に合わないだろう距離がクラヴァットとの間にある。

 完璧なマークを受けて、シンコウウインディは――。

 

「かかったのだ!」

 

 ――満面の笑みを浮かべていた。

 

「は?」

「なにっ?」

 

 後ろを見たドミツィアーナは思わず声を漏らし、隣を走るフェニキアディールは何度もシンコウウインディを見てしまう。

 わずかに意識が外のシンコウウインディだけに向いたところで。

 

「ウララー! ゴーゴー!」

「うららら~~!!!」

 

 最内からハルウララが一気に突っこんできた!

 

「んなっ!?」

「嘘だろ!?」

 

 一番後ろで走って砂まみれになっているハルウララが、気づけば自分を抜いてドミツィアーナのところまで。

 信じられない光景に、思わず思考が止まってしまう。

 正しくヴィクトリーショット。ここしかないというレベルで弾みをつけた加速で、自分の好きに進んでいった。

 

 桜色がドミツィアーナを通り過ぎて、フェニキアディールはようやく気付いた。

 

「やったな……っ!」

 

 まんまとハメられた。

 シンコウウインディは策にはまった2人を見て嬉しそうに笑う。

 

 中盤の抜け出しから全て作戦通りだったのだ。

 自分にマークを向けさせて、引きつける。万が一にも、ハルウララの邪魔をさせないために。

 こんな大掛かりな引っかけ方なんてあるのか!? フェニキアディールは思わずなんのためにと吐き捨てる。

 

 だってそうだろう。ハルウララはオープン戦すら勝てないレベルのウマ娘だ。

 113戦113敗。よくぞここまで諦めずに走ったものだと感心してしまうし、よくもまあこんなにも弱いものだと頭を抱える。

 そんなウマ娘を走らせるために自分をマークさせるなんて何の意味が……。

 

「……まさか」

 

 まさかまさか、まさか!

 思わず先頭を走っている2人を見る。

 最初からおかしなハイペースだったのも!

 こいつがマークを集中させたのも!

 全部あのハルウララに展開を向かせるために……!?

 

 チラッと振り向き、ハルウララを確認した先頭2人。

 クラヴァットは衝撃を隠せない表情で。

 先頭を走るスマートファルコンの表情は、笑顔で。

 まるでハルウララを待ち構えているかのような優しい笑みだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 ――今日はウララが勝ちますよ。

 

 後輩からいわれたその一言は、本当に衝撃的な言葉で。

 いつだって、最初からハルウララを勝たせるために走らせていたし、諦めたことなんてなかった。

 

 113回レースをして、全て負けてきた。もちろん惜しいこともあったけど、それでも1度だって勝てない。

 諦めたことはないし、もちろんウララだって走るのが楽しいとがんばってきた。

 だけど、流石にここまで勝てないと、なんとなく思うことがある。

 

 ハルウララは勝てない。

 

 負け組の星と言われ、負けることで人気になったウララ。

 勝つことなんて望まれていないのかなとか、勝たないほうがいいのかなとか。

 色々考えこんでしまうこともあった。

 

 しかし、俺が考えていたことなんて本当は間違っていて。

 ウララは負けているから人気になったんじゃない。

 ――がんばってがんばって走るから、人気になったんだ。

 

「がんばれーーー!!!! ウララーーーー!!!」

「ウララちゃーーん! あともうちょっとだよーーー!!!」

「いけ! いけっ! いけぇーーーー!!!!」

 

 観客たちの誰もが本気でハルウララを応援してくれている。

 最終直線、残り200m程度。最後の上り坂。

 誰もがハルウララの勝利を願ってくれて、誰もががんばってくれと本気で叫んでくれていて。

 

「いけェ! 勝てるぞォ!」

「頑張りなさい! ウララ!」

「クラヴァット……! ハルウララ……!」

『ハルウララが上がってきた! スマートファルコンとクラヴァットまで残り1バ身!』

『ハルウララがんばれ! ハルウララがんばれ! ハルウララのはじめての勝利が見えてきた!』

 

 サングラスの先輩も、眼鏡の先輩も、樫本理子代理も、解説の人までも。

 みんなが声を上げてハルウララを応援してくれていた。

 

「ウララさん! 最後まであきらめないで!」

「ウララちゃん! いける! いけるよ!」

「ウララー! がんばれー!」

 

 仲のいいキングヘイローたちの声も聞こえてくる。

 声が聞こえたのか、ウララは目を見開いて必死に上り坂を駆け上がっていく。

 

「ウララーー!!! やっちまえーー!! 勝てーーーー!!!」

「ウララちゃん!!!」

 

 ゴールドシップが叫び、ライスシャワーも声を上げる。

 タイキシャトルやマチカネフクキタルも、大声でウララの名前を呼んだ。

 

 はっ、はっ、と息が切れる。目頭が熱くなり、じんわりとしかウララが見えない。

 どうしたらと意味の分からないぼんやりした思いを抱いていると、背中を思いきり叩かれた。

 思わずハッとする。叩いたのは後輩だ。

 

 ――ウララァーーー!!! 勝てェーーー!!!!

 

 全力で叫ぶ彼を見て、俺も目を擦り、大声を出す。

 

「ウララーーー!!!! いっけえええええ!!!!」

 

 誰よりも、誰よりも大きな声でウララを応援する。

 一度だけ。一度だけ耳がピクリと動いた。

 

「うらら~~!!!!」

 

 必死な形相で、だけど笑顔を浮かべて、ウララは一気に上り坂で加速する。

 そして、追いかけていたスマートファルコンとクラヴァットの2人と並ぶ。

 

「―――」

「―――」

 

 スマートファルコンとウララが目を合わせると。

 ウララがほんの少しだけ抜け出した。

 

『ハルウララ抜け出した! ハルウララ抜け出しました! そのままゴールイン!』

 

 一瞬の静寂。

 その後、大爆発が起きたかのように歓声が上がる。

 

『年末の阪神に桜が満開! 大・大・大逆転です! ハルウララが! ハルウララがやりました! 初めての勝利です!』

『よくやりましたね、ハルウララ。おめでとう……本当に、おめでとう』

 

 実況解説の2人も思わず涙を流している。

 観客も泣いている人が沢山いるし、トレーナーのみんなも、ゴールドシップやライスシャワーもみんな泣いていた。

 

「………」

 

 そんな中、ウララはぼーっと掲示板を眺めていた。

 どうしたのだろうかと思っていると、スマートファルコンが肩を叩き、何かを話す。

 

 すると、ウララはぷるぷると震え出した。

 

「――ふわわぁ~! やったぁ~!!!」

 

 ガッツポーズをしたウララは、嬉しさに震えながらぴょんぴょん跳びあがる。

 そしてスマートファルコンやシンコウウインディにありがとー! とお礼を言うと、こちらへ走ってきた。

 

「トレーナー! 見た見たー!? わたし勝ったよ!」

 

 キラキラ目を輝かせたウララが、満面の笑みで報告してくれる。

 ああ……と声を振り絞る。

 

「どうしたのトレーナー!? どこかいたいの? あれ? みんなどうして泣いてるの!?」

 

 ボロボロ泣いてる俺たちを見て、心配そうにするウララ。

 こんなに優しくて、あきらめなくて、がんばれるウマ娘を担当できるなんて。

 俺は幸せだなぁとウララに笑いかけるのだった。




<STAY GOLD>
・ウララ以外を潰すために超ハイペース
・ウララにマークを向けないためにウインディが暴れる
・ハルウララがんばる!

<ファースト>
・スマートファルコンはハイペースでも逃げ切っちゃうから徹底マーク
・シンコウウインディも油断すると抜かれるからマーク
・マークしている仲間の後ろで脚を溜めて、最後の直線で全員追い抜く

 ハイペース(速すぎ)でみんなに脚を使わせてズブズブにしたところで、最後方で脚を溜めに溜めていたウララがうらら~とみんな抜かしちゃう作戦
 なお何か1つでも邪魔があると厳しい

 ウララの3年間の集大成を叩きこんだレースでした
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