ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯 作:あぬびすびすこ
「ハッピーカムカム、福来たる~! 我がチームの勝利ですよ~!」
「イエース! フゥ~~!! ハッピーカムカムヴィクトリー!」
「やった、やったよ! みんなで勝てた!」
「やったねライスちゃん! みんなで頑張ったもんね!」
「ウララさんもライスさんも、本当に素晴らしかったです」
チームメンバーたちがターフに出てきて、みんなで祝福し合う。
非常に面白く、そして素晴らしいレースだった。大満足の結果だ。
「結果は我々の『敗北』ですか……」
アオハル杯を優勝したチーム<STAY GOLD>へ大歓声が上がる中、樫本代理はぽつりと呟く。
そういえば、このアオハル杯で勝利すれば徹底管理主義を撤回するという話だった。ものすごい忘れていたけど。
先輩たちもそんな話あったなと頷いている。
「やはり、私は……」
代理が俯いたその時――
「樫本トレーナーッ! 見ていましたかーッ! 聞いてくださーーいっ!」
ビターグラッセがターフに出てきて、大声で叫んだ。
そして、今朝計ったそれぞれのタイムを言い始める。
「私は2分24秒5! リトルココンは、3分4秒8!」
「みんな目標タイムを越えたんです! そして、アオハル杯でも満足のいくレースをすることができました!」
満面の笑みを浮かべるビターグラッセ。
驚いている代理の近くに、リトルココンが走ってくる。
「だから、樫本トレーナー! アタシたちと、もう一度……向き合ってくれませんか……!」
長距離レース直後で疲労し、息を切らせているのに彼女は走ってきた。
リトルココン……と代理が声を漏らす。
「トレーナーにも迷惑をかけて、必死こいて目標タイムを越えたのは、ぶっ壊したかったからなんです!」
「アナタが大切なトレーナーだから、大好きなトレーナーだから……」
「だからこそ、アナタの凝り固まった信念を、ぶっ壊したくて……!」
思いの丈を伝えるリトルココンに、思わず目を見開き驚く。
「今までアナタがアタシたちをしっかり守ってくれたこと、本当に感謝しています」
「でも、これからは……」
リトルココンが俯き、自分を落ち着かせるように息をついた。
「これからは、アナタと向き合いたい」
「管理される子どもじゃなくて、信頼できるパートナーになりたい……」
チラッと俺の方を見てくるリトルココン。
隣にはいつの間にか我が物顔で俺の肩に腕を乗せるしたり顔のゴールドシップ。
「アタシたちは、そう思ってます……」
「………」
全てを伝えたリトルココンは不安そうに代理を見つめる。
俯いていた代理は息をついて、顔を上げた。
「向き合う、か。そうですね……」
「レースは素晴らしいものでした。もう私は必要ないと確信しました」
その発言に驚くリトルココンは、思わず代理に詰め寄る。
「そんなこと――!」
「でも」
フッと少しだけ笑みを見せた。
「それと同じぐらい……まだ先が見たいと思いました」
そう話してターフに目を向ける代理。
ビターグラッセやジュエルネフライトたちチーム<ファースト>が代理を見つめていた。
「誰も彼もが私の想定を超えて……果敢にコースを駆けるものだから」
輝かしいものを、大切なものを見るような優しいまなざし。
暗く沈んでいた代理の目は、小さな光を取り戻していた。
「こんなふうに思えたのは、いつぶりだろうか」
「……信じてみないといけませんね。私も、貴方たちも」
樫本代理はリトルココンを連れて、コースへ。
――チーム<ファースト>の元へと降りていったのだった。
◆ ◆ ◆
音楽が鳴り響き、サイリウムが振られる。
俺も周りのみんなと同じように青色に光るサイリウムを振った。
ここはコースではなくウィニングライブのステージ。
アオハル杯での勝負を祝したライブが行われるのだ。
「いいぞーおめーら! 気合入れろー!」
隣でゴールドシップが騒いでいる。反対にいる代理は苦笑いだ。
今回はそれぞれの部門のリーダーがライブを行うことになっているのだが、彼女はライスにその座を譲ったのだ。
ライスが一番頑張ってたからな! と笑顔で薦めていた。なんというかまあ、ゴールドシップらしい。
腰に手を当て、全員勝気な表情を見せる。
チーム<STAY GOLD>からタイキ、ブルボン、センターにライス、フクキタル、ウララ。
チーム<ファースト>からドミツィアーナ、ビターグラッセ、センターにリトルココン、デュオジャヌイヤ、ジュエルネフライト。
弾けるような笑顔でみんなが手を振り、右手を振り上げた。
青空 飛ぶように駆け出そう
両手を上げて跳びあがるみんな。
アオハル杯での思い出がぽつぽつとでてくる。
最初は面白そうだからとゴールドシップが言うのでメンバーを集めていたけど。
代理がすぐ廃止なんて言うからとんでもないことになったと思った。
笑顔色の勇気をくれた
タイキたちと一緒に理事長室にまで乗り込んだ。
賭けをしましょうという話になって、アオハル杯で対決になったんだよな。
チーム<ファースト>には驚いた。
精鋭15人がすぐに集まったんだから。
俺たちは物凄い苦労してたのにね。
そして誓った 絶対負けないって
タイキ、フクキタル、ライス、ウララ。
そしてスズカとデジタル。最初はたった7人のチームだったな。
デジタルは気づいたら来てただけだったけども。
プレシーズン戦は順調な滑り出しだったな。
レースを見て面白そうだとナカヤマとフラッシュ、ブルボンとファルコンが参加してくれて。
チームメンバーが増えていくのもまた嬉しかった。
代理と町で遭遇した時も面白かった。
あそこから友人になれたというか、仲良くなれたというか。
悪い人じゃないんだなってわかったんだよな。
ぶつかりつまずいても
走れ! 目指せ! 歓喜の
2戦目も中々いいレースができたし内容が良かった。
自分の作戦がきちんと通用するっていうのもわかったことだし。
そう強くなれたんだよ
夏合宿も充実していたなぁ。
海でしかできないトレーニングも試せたし。
ジョーダンが結構来てたけど、もしかしてあの時ぐらいからチーム入りしたかったのかな。
劇的フィナーレ!!!
Yes!High-five!!
合宿の後にはまさかのスズカが脱退。
ただその後にジョーダンとウインディが参加してくれた。とても順調だったな。
そして野良レース。ライスの不運ここに極まれりって事件だったな。
一度へこんじゃったけど、みんなでお出かけして自信を取り戻せたのはよかったよ。
限界追い越せるよ
響け! 届け!
そこからまた盛り上がって3戦目も作戦勝ちで順位も上がっていった。
チーム戦が少しずつ分かってきた感じもあったな。
ただ、チーム<ファースト>の自主トレだったり、代理の過去だったり。
このアオハル杯自体が一筋縄ではいかないモノになってしまったけど。
ほら奇跡は続くよ
プレシーズン最終戦ではルドルフやらオグリキャップやらレジェンドメンバーとの戦いだった。
かなり苦しかったものの、なんとか勝ちあがることができた。
と思ったらチーム<ファースト>が大混乱。
ハードトレーニングを経て代理をもう一度立ち直らせてあげようと必死になっていた。
もうこの辺で最初の趣旨は完全になくなった気がするね。
劇的フィナーレ!!!
Yes!High-five!!
そして今日。
アオハル杯決勝。
お互いの作戦と維持がぶつかり合って、最高のレースをすることができたと自信を持って言える。
ウララも勝たせてあげることができたしな!
最強5!!
最後には樫本代理の心の雪解けを見ることができた。
本当に良かったと心から思える。いやぁ、本当に良かった。
WINnin5!!!
チーム<STAY GOLD>とチーム<ファースト>が共に笑顔で走り、踊れた。
それだけでも、俺がこの3年間走り切った意味があったと思える。
確かな満足感と共に、俺たちのアオハル杯は終わったのであった。
◆ ◆ ◆
――後日。
樫本代理は管理主義体制を撤廃し、理事長の座を降りた。
また、今後『アオハル杯』を行う可能性や、チーム戦の有意性が協議された結果、アオハル杯チームは存続することになった。
「向き合ってわかることが多くありました……また、1からやり直してみます」
そう言って笑顔を見せる樫本代理……改め樫本トレーナー。
秋川理事長が必要な人材だということで、学園のトレーナーに再編入という形になったらしい。
……樫本トレーナーってURA職員じゃなかったっけ?
まあ細かいことは理事長が色々解決してくれているんだろうから俺は気にしないでおこう。
「次はトゥインクル・シリーズであなたのウマ娘に挑戦させてください。そうですね、差し当っては……」
カレンダーの方に目を向けたので、俺もそちらを見る。
1月下旬。赤ペンで丸くマークされた日に、レースの名前。
「――URAファイナルズで」
残り4話。
最後はURAファイナルズで締め!