ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯   作:あぬびすびすこ

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 チームができたらやることは1つ!


5,トレーニング開始!

 チーム名も決まり、メンバーも集まり。早速トレーニングするぞ!

 というわけにはいかず、まずはチームメンバーの先輩トレーナーたちに挨拶回りだ。

 非公式チームだから、それぞれみんなにトレーナーがついているわけで。

 先輩のウマ娘、お借りしますとお願いしに行くわけだな。

 

 今日の昼休みにはライスとデジタルを担当しているヒットマンとも呼ばれる女性の先輩には快諾された。

 

「ライス、チームができると嬉しそうにしていたの。最近はあまりレースに出れてないし、あなたのチームでたくさん走らせてあげてね。デジタル? 好きなようにさせてあげて」

 

 なんて言われてしまった。ウマ娘の気持ちを重んじているようで、ますます尊敬してしまう。

 2人とも楽しみにしてくれているみたいだし、がんばらないと!

 

 放課後にゴールドシップを連れて練習場まで行くと、先輩たちとメンバーが集まっていた。

 しかし、何やら言い合いをしているような……?

 

「あ、トレーナーさん」

「お、来たか」

 

 スズカが反応すると、飴を咥えた癖毛の先輩が気づいて手招きしてくる。

 なにがあったのか聞くと、眉尻を下げて頭をかいた。

 

「ほら、アオハル杯って非公式レースだろ? それに注力するってのはトレーナーとしてもチームとしても困るわけだよ。もし勝ったとしても実績になるわけじゃないしな」

 

 困った風に笑う先輩を見て、俺もゴールドシップも思わず目を合わせた。

 俺とゴールドシップは面白そうだからという理由だけでアオハル杯に参加している。もちろんトゥインクル・シリーズだって手を抜く気はない。

 だが、先輩たちはチームを作っている。そこにアオハル杯まで担当が参加するとなるとケアの量とかが膨大になるだろう。

 苦労した末に得られる実績は非公式レースの勝利。確かに割に合わないし、ウマ娘自体の負担もあるから渋るのはわかる。

 

「ノー! ワタシは走りたいんデス!」

「でもね、タイキ。あなたはトゥインクル・シリーズで、いえ、日本で有数のマイラーなのよ? これからもっと活躍できるのに、負担をかけたくないの」

 

 言い争っていたのはタイキシャトルとメガネをかけた女性の先輩トレーナーだ。

 若くしてベテランと言われるすごい人で、他にも多数GⅠウマ娘を抱えている。ウィニングライブの指導までできる超敏腕トレーナーというわけ。

 

 先輩はベテランの手腕があるからこそ、あまり無理をさせたくないし活躍の場をわざわざ減らしたくないのだろう。

 でも、このぐらいの説得で折れるようなら理事長室に突撃なんてしないんだよなぁ。

 それをわかっているのか、2人のトレーナーは困った様子で腕を組んでいる。

 

「でもでも! トレーナーさんは、他のウマ娘が管理されてもいいんデスカ?」

「……自由も大事だけど、管理も必要なのよ、タイキ。あなたのためなの、わかってちょうだい」

「ノー! いやデス! ワタシはアオハル杯に出たいんデス! お願いしマス~!」

 

 眉尻を下げて両手をすりすり合わせ頼み込んでいる。

 先輩も困った様子で顔に手を当てため息を吐く。

 どうしたものかと視線をさまよわせたところで、俺とゴールドシップの姿を発見した。

 

 目が合って、ため息を吐かれて手招きされる。

 近寄っていくとタイキが増援が来たとばかりに目を輝かせた。

 

「ハイ! トレーナーさん! ゴールドシップ!」

「おっす! 今日も地球は青いぜ!」

「外から見ないとわからないんじゃないかしら……」

 

 謎のあいさつをする2人をよそに、メガネの先輩は恨めし気な視線を俺に向けてくる。

 

「どうしてくれるのかしら、新人くん」

 

 そう言われましても……思わず頭をかく。

 これに関してはタイキと先輩がどうにかしてもらわないと、俺たちも困ってしまう。

 

 タイキは管理教育プログラムに徹底抗戦の構えだ。俺もそれはわかる。

 先輩はそもそもアオハル杯の参加に消極的だ。これもわかる。

 つまり、平行線上での話し合いだから、どちらかが折れるまで終わらないんだ。

 

「はぁ……貴方に当たってもしょうがないわね。まったく余計なことをしてくれるわ、理事長代理」

「そのぐらいにしておこうぜ。こいつも困っちまうだろ」

 

 ポンポンと肩を叩かれる。

 メガネの先輩は癖毛の先輩をじろっと睨みつけると、眉間をもみほぐしながらまたため息を吐いた。

 

「貴方はいいの? スズカ、ようやく走れるようになったんでしょう」

「ああ。アオハル杯のレース自体は半年に一度だ。いいリハビリになるだろ。それに、俺たちも若いやつらを育てないとな」

 

 ニッと笑いながらこちらを見る。

 カッコイイ……これで勝手にトモを触るクセさえなければイケメンなのに……。

 同じことを思ったのか、メガネの先輩もやれやれと苦笑いで首を振った。

 

「はぁ、仕方がないか。タイキ」

「ハイ!」

「無理しないこと、トゥインクル・シリーズのレースにも手を抜かないこと。約束できるわね」

「モチロン! ワタシ、トレーナーと約束しマス!」

 

 グッと拳を握って宣言するタイキを見て、うんと頷く。

 

「新人くん。タイキを貸してあげる。代わりに、しっかりと見なさい」

 

 わかりました!

 ビシッと敬礼すると、ゴールドシップも隣で敬礼した。ティアドロップサングラスをかけながら。

 その光景を見て愉快そうに笑う癖毛の先輩と、大丈夫かしら……と頭を抱えるメガネの先輩。

 責任重大だなと思いながら、がんばるぞと改めて決意するのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 タイキとスズカの許可が得られたこともあり、フクキタルとウララもそれなら……と許可が下りた。

 ゴールドシップ以外はトゥインクル・シリーズでのレース出走が少なくなっているからなんとかなったわけだが。

 出走が少ない理由はケガや海外挑戦のためのトレーニング、あとはドリームトロフィー・リーグ参戦を予定しているからなどなど。

 

 そのため、先輩たち全員から、能力が落ちているだろうということ、ルール上チーム戦だから全く別物になるということを教えられた。

 確かに各距離で最大3人エントリーしてのレースだ。みんなで足を引っ張り合うなんてことのないように作戦を考えなければならない。

 

 ともあれ、それはレースが近くなってから考えることにする。

 流石に俺の担当じゃないメンバーは、常にトレーニングを共にするなんてできないからな。今のうちにみんなの能力を調べたりしないといけない。

 

「じゃ、今日はこれでいくぜ!」

「そ、それは! ゲームセンターで常に眠り続けているぱかプチッ!」

 

 ゴールドシップが取り出したぱかプチを見て、デジタルが興奮し始めた。

 俺と2人で遊びに行った時にUFOキャッチャーで乱獲してきたわけだが、どうやらこれらはゲームセンター限定品らしい。

 

「これでなにをするんデスカ?」

「トレーニングになるのかしら……?」

 

 不思議そうにしている2人の目の前で紐を取り出し、ぱかプチの体に結び付ける。

 そして反対側の紐をゴールドシップのお腹にくくりつけて完了。

 

「まさか……」

「トレーナーさん? くくりつけてなにするんです?」

 

 こうするんだよ。

 ゴールドシップ! GO!

 

「おっしぇええーーーいっ!!!」

 

 声をかけたゴールドシップが勢いよく飛び出して走っていく。

 紐で結ばれたぱかプチは引っ張られることで地面に落ちず、そのまま宙に浮きながらゴールドシップと共に進む。

 俺が水泳のトレーニング方法を参考に編み出した平地でのトレーニング。通称ぱかプチダッシュ!

 元は飽き性なゴールドシップのために考えたトレーニングだったが、割と効果的な気がするのでまずはこれをやってもらう。

 

「すごーい! いっしょに走ってるー!」

「お、落ちちゃわないかな」

「ああぁぁ~!? 限定ぱかプチがぁー! でも走っているウマ娘ちゃんを止める事なんてできないッッッ」

 

 コーナーを回る際流石に減速するため、後方のぱかプチが地面スレスレで進行する。

 ライスは心配そうに見ているが、ゴールドシップはこのトレーニングをしてから落としたことがないし、大丈夫だと答える。

 大丈夫だからさ、デジタルは俺の腕を掴んで振り回すのをやめていただけないだろうか。肩から千切れそうだ。

 

「グレイト! ファンタスティックなトレーニングデス!」

「個性的ですね~! ですが、面白そうです! 今日のラッキーアイテムはぬいぐるみでしたからね、期待は大です!」

「……私、このチームで大丈夫かしら」

 

 タイキとフクキタルはお気に召した様子。こちらに走ってくるゴールドシップを楽しそうに見ている。

 一方スズカは見た目の奇抜さで困惑しているようだ。

 まあ、うん。外から見るとアレなのはね、許してほしいね。

 

「隊員、無事か! 無事だな! ヨシ!」

 

 1周駆け抜けたゴールドシップはブレーキをかけたことで後ろから飛んできたぱかプチをキャッチ。

 汚れていないことを確認すると、ビシッとポーズを決めて指さす。

 相変わらず器用に走るなぁ。

 

「ゴルシちゃんはなんでもできっからなー。ほら、ライスもやってみろよ」

「ええぇ~!? ら、ライスが最初にやるの?」

「スタミナあるやつが失敗しねーんだ。おら! ブルボンつけてやるからな!」

 

 ものすごく不安そうにしているライスシャワーにぱかプチをくくりつけて送り出すゴールドシップ。

 

「トレーナーさん! ワタシにもつけてくだサイ!」

「私も行きます!」

「わたしも行くよー!」

 

 心臓に悪いですぅ……と胸を抑えるデジタルとうーんと唸っているスズカ以外はやる気満々だ。

 この調子で頑張っていくぞ!

 

 

 

 

 

「いぎゃあ~~~!! 音が! 後ろで擦ってる音が聞こえますぅ~~!」

「わあー!? ぬいぐるみがころんじゃったー!」

 

 ぱかプチを落としたり擦ったりしながらもトレーニングに励むメンバーたち。

 俺はそれを見ながら、コーナーの曲がり方やフォームについてのデータをとっていく。

 ぬいぐるみを擦ったところとかどのぐらい宙に浮いてるかとか。それで現状の能力を測っているのだ。

 まあ、1年目の新人だから後で先輩に聞きにいくんだけどね。

 

「………………」

「ふふ、みなさん楽しそうですね」

 

 そして俺の隣には、このトレーニングを見てからビシッと固まっている樫本代理の姿が。

 代理を探しに来たたづなさんもぱかプチダッシュを楽しそうに見ている。

 

 今のところウララ以外は全員成功だ。

 デジタルは死ぬ気で走るせいで最初のチャレンジから常に宙に浮きっぱなしになっている。すごいんだけどデータはとりにくい。

 他の4人は何度か走ってコツを掴み、3度目のトライから成功し始めた。フクキタルは今失敗したけど。

 

 問題はやっぱりウララだろうか。

 スピードもスタミナもフォームもなんというか……うん。崩れやすい。

 最初はちゃんと走っているんだが、疲れるとバタバタするところがあるのだ。

 でも最後まで諦めずしっかり走っているし、やる気は十分なわけだが。

 知ってはいたけど、先輩が困る理由と担当している理由がよーくわかった。

 

「…………なんですか、これは」

 

 手元の用紙にみんなのデータを書き終えると、ようやく樫本代理が再起動した。

 俺を見る目がものすごい厳しいんですけど!

 

 トレーニングですと普通に答えたら、これがですかとメンバーを見て、刺すように俺を睨む。

 

「ふざけたトレーニングで、私たちに勝てると。そう思っているわけですか」

 

 かなり怒っているようだ。

 しかし、俺だってふざけているわけじゃない。真剣にあのトレーニングがいいと思ってやっているんだ。

 樫本代理に手元のデータを押し付け、見てくださいと話す。

 

 代理とたづなさんが書きこんでいた用紙に目を通すと、少し驚いた様子で練習場のメンバーを見た。

 丁度ゴールドシップが走り出し、その後ろでぱかプチも風を切って追いかけていく。

 データと走りを見比べ、たづなさんは感心したように頷いた。

 

「常に同じペースで走る、コーナーで正しいフォームを崩さない。そういうトレーニングなんですね」

 

 そうですと頷き、改めてゴールドシップを見る。

 ゴールドシップはいい脚を長く保つこととコーナーリングの巧さが武器だ。

 そしてそれを十全にこなせた場合、くくりつけてある後方のぱかプチは決して落ちないというわけ。

 

「トレーナーさんが考えたんですか? とってもいいですね!」

 

 両手を合わせて笑うたづなさんに胸を張る。

 考えたものの中では結構いいと思うんだ。見た目はちょっとアレだけど。

 

「……なるほど。先ほどの言葉を撤回します。知らずに言ったのは軽率でした、すみません」

 

 俺にデータを返して謝ってくる樫本代理。

 見た目が悪いですからね、仕方ないですよと言うと、そうですねと言われてしまった。

 

「奇抜ですが、理に適ってはいます。奇抜ですが」

 

 2回も言われた!

 肩を落とすと、たづなさんがふふっと笑う。

 

「水泳のトレーニングでも、スポンジを紐でくくって重りにするというものはあります。平地で行う発想はありませんでした」

 

 それを参考にしたんですよ。俺の答えに、いい発想ですねと頷かれた。

 

「私のプログラムに反対した貴方が、どのようなチームに育てるのかと思っていました。ウマ娘たちのよい成長を期待します」

 

 フッと薄く笑う樫本代理。

 3人で笑いながら、なんだかんだウマ娘のことを考えているんだなと思うのだった。




 コミュニケーション能力が高いトレーナー
 研修生の時からゴールドシップに揉まれた男は伊達じゃないぜ!
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