ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯   作:あぬびすびすこ

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これにて終わり!


50,エピローグ

「……いい空ですね。日差しも暖かくて、気持ちがいい」

 

 そうですね。樫本トレーナーと共に空を見る。

 明日予定が空いてますかと言われ、連れてこられたのは街を見渡せる高台だった。

 

 しかしどうしたのだろうか。聞いてみると、少し困った様子で俺を見る。

 

「その、胸の内を話すなら、壁のない広い場所がよい、と」

 

 胸の内?

 首をかしげると、ぽつぽつと語りだした。

 

「……時々、考えるんです。もし私が、あなたと出会うことがなかったら」

「リトルココンやビターグラッセたち、チーム<ファースト>の子たちに考えを変えてもらわなかったら、と」

 

 そう言って、腕を組み俯く。

 それは……と声を漏らすが、何も言えない。

 

「管理することこそが、ウマ娘たちを守る唯一の方法だ。私はそう思っていました」

「しかし、私は一方的に道を押しつけていただけだった……そんなもの管理ではない、支配だ」

 

 過去のことを悔やむように、きゅっと拳を握る樫本トレーナー。

 

「教育者として、トレーナーとして、失格でした」

 

 そんなことはないですと俺は強く否定した。

 だって樫本トレーナーのおかげで、リトルココンたちは成長し、強くなれたんだから。

 

「……ええ、ありがとうございます。しかし、それに気づかせてくれたのは、貴方と……かけがえのないウマ娘たちです」

 

 そう言って、樫本トレーナーは俺を見つめた。

 

「貴方は、昔の私に似ている。いえ、練習等の考えというわけではありませんが……」

「情熱的で真っすぐで、ウマ娘を信じている」

 

 俺を見て、フッと笑う。

 

「だから私は貴方を認められませんでした……しかし、今は認めなくてはならないでしょう」

「私は、よきライバルと出会えました」

 

 こちらこそ、樫本トレーナーに会えてよかったです。

 管理もまた、ウマ娘を強くするものなんだってわかりましたから。

 

「ふふ……そうですか」

 

 そう言ってお互いに笑いあう。

 こうして笑いあって話せるようになったことが本当に嬉しい。

 今度はたづなさんも誘ってウマ娘の話でもしましょうね。

 

「はい。楽しそうです。彼女はウマ娘の知識が豊富ですからね」

 

 次は、いつでも。

 

 しばし雑談を楽しんでいると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「おーい! どこ行ったんだトレーナー! 今日は海老で鯛を釣るって300年前に言っただろ!」

「うっさ! でもどこだろ。ここに向かったって聞いたけど……」

「おっと、2人ともどいてもらおう! 先に樫本トレーナーを見つけるのは私だからな! はっはっはっー!」

「はぁ? まっ……アタシの方が先だしっ!

 

 スドドドドという足音がこちらへと近づいてきた。

 

「あの声は……ゴールドシップに、リトルココンとビターグラッセ? まったく、公共の場で大声を……」

 

 そういって頬に手を当てる樫本トレーナーの表情は嬉しそうだ。

 

「さあ、行きましょう。大人の語らいはここまでです」

 

 そう言って、音が聞こえる方へと向いて笑みを浮かべる。

 

「かけがえのない存在が待っていますから」

 

 そうですね。

 2人で笑いあいながら、ゴールドシップたちの元へ向かうのだった。

 

 なお、出会った直後にリトルココンとビターグラッセから詰め寄られ、ゴールドシップにドロップキックを受けた。

 かけがえのない存在とは……ぐふっ。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「いやー、美味かったな」

 

 そうだなと相槌を打って車に乗り込む。

 ゴールドシップとのアオハル杯とトゥインクル・シリーズでの大切な3年間を終えた。

 お祝いということで、馴染みのラーメン屋で乾杯してきたのだ。

 

 思えばあっという間だったなぁ。

 初めてゴールドシップと出会ってから激動の日々だったが、実際に担当してからの3年間は、それはもう大変だったと思う。

 

 トレーナー1年目で理事長代理に張りあってチームを組んで。

 ゴールドシップのトゥインクル・シリーズとアオハル杯を並行してトレーニングやら日程やらを考えて。

 チームメンバーたちのケアだったり、先輩たちへの報告やミーティングをやって。

 

 正直新人がやる事じゃなかったなと今でも思う。

 ちょっとね、仕事の量が多すぎるよね!

 

 何とかこなせたのはひとえにみんながいい子たちで接するのが楽しかったこと。

 あとはゴールドシップが気をつかってくれていたことだ。

 

「ん?」

 

 見つめていたら助手席でくつろいでいたゴールドシップがこちらを見る。

 ベロンと舌を出して変顔をしてくるので、苦笑してデコピンをする。

 

「お、なんだやんのかぁー?」

 

 笑いながら俺の左腕を指でつつきまくってくる。

 今はこんな感じだが、アオハル杯リーダーとして動いていたゴールドシップは、物凄く気をつかっていた。

 

 チームメンバーの士気を保たせたり、ケガの心配があればそのケアを率先してやっていたり。

 破天荒な言動ばかり見られがちだが、彼女はとても優しくて周りを見れる器の大きい娘なのだ。

 俺が仕事で手一杯だった時にはあまりちょっかいをかけてこない代わりに、メンバーや自分のリフレッシュと称して俺を連れまわしてくれていた。

 樫本トレーナーやライスと牧場に行った時もチーム全員休みにしたのにゴールドシップがジョーダンを連れて来て行くぞ! と引率させた結果なわけだし。

 

 正直ゴールドシップがいなかったら、チーム<STAY GOLD>はうまくいかなかった。

 彼女がリーダーだったからここまでこれたなと思うところがある。

 このどつきまくってくるこのウマ娘のおかげだよ、本当に。

 

 

 

 

 

 

 そういえばと。信号待ちしながらふと気づいた。

 お礼とか言ってないなと。

 

「どうしたんだ? ヒラメかカレイみたいな顔して」

 

 ゴールドシップ。

 

「ん?」

 

 ありがとうね。

 

「……なんだ急に? 驚き桃の木だな」

 

 目を丸くして素直に驚いている。

 いや、ほら。ゴールドシップがいたからここまでこれたなーと思ってさ。

 

「ふーん?」

 

 ゴールドシップが担当で良かったよ。それだけ。

 

「そっか」

 

 うん。

 

 アクセルを踏み、車が動き出す。

 しばらく道路を走る揺れとエンジン音だけ聞こえてくる。

 

「なあトレーナー」

 

 ふと、ゴールドシップが話しかけてきた。

 どうした?

 

「100年後ヒマ? 空いてたら宇宙行こーぜ」

 

 コールドスリープしないとなぁと呟くと、へへっと優しく笑うのだった。




 さらっとした終わりもまたいいよね!

 というわけで終わりました。
 次回作はまだ決めていないので、作品が決まるまでこちらの日常グルメ小説をお楽しみください。
 まだまだ書いていきますのでよろしくお願いします。

・ゴルシのグルメ
https://syosetu.org/novel/277062/
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