ゴールドシップとの3年間 in アオハル杯 作:あぬびすびすこ
アオハル杯でギリギリの勝利を経て、チームの順位を上げることができた。
みんなで祝勝会兼忘年会ということで大いに盛り上がったのがつい先日の話。
忘年会があるということはつまり、すぐ後には正月ということだ。
「あけましてセンキュー! 去年のゴルシちゃんから生まれ変わった新生ゴルシちゃんだぜ!」
いつものように突撃してきた自宅にて新年のあいさつをしたところ、うきうきで踊り出した。
特に何も違わないがゴールドシップ的にはなにかしら変わったのだろう。
つまり、いつも通りのハジケリストということ。
「おいおいつまんねー顔すんなよな。宇宙がビッグバンしてなかったらトレーナーもアタシも誕生してねーんだ。奇跡なんだぜ、今の状況は」
神妙な面持ちで話される。内容としては確かに……! となるものだが、それってこんな何もない時に発するセリフなのだろうか。
「つーわけで、今年は万物に感謝する1年だ。大地に感謝、海に感謝、空に感謝、そして目の前のオマエに感謝」
南無南無と手を合わせて拝み始めたゴールドシップ。
こちらこそありがとうと手を合わせて感謝する。
「お、南無南無返しだな! ノリがいいじゃねーか、バンド組むか?」
どこからともなくバラライカを取り出してきたのでノーセンキューと断る。
マックイーンにも断られたんだよなーと不満そうに片付けたと思いきやマイクを取り出した。
「それでは聴いてください。『謹賀新年~雪解けと春の木漏れ日~』」
突然演歌を歌い出した。しかも曲まで流れている……!
まあ、ゴールドシップは歌上手だし楽しんで聞こう。椅子に腰かけ、じっくり聞くことにした。
しっかりとこぶしをきかせて歌い切ったゴールドシップに拍手すると、満足したのかうんうんと頷く。
「ご清聴センキューですわよ。んじゃ、飯食いにいこーぜ」
オホホと笑いながらコートを手に取り着始める。
全てが突飛だが慣れたものだ。おかげでゴールドシップが来そうだなという時は休みの日でも部屋着から着替えるし。
自分のコートを引っ張り出して着込み、2人で出かけることにした。
◆ ◆ ◆
「おー、随分賑わってんなー」
ゴールドシップお勧めの和食店でたらふくおせちを食べてから神社へとやってきた。
正月元日ということもあり、お参りに来た人たちが大勢いる。
トレセン学園が近いこともあってか、ウマ娘の姿も多く見られる。
「やや! トレーナーさんじゃないですか! あけましておめでとうございます!」
「あん? ビックリドッキリ占い卿ことフクキタルじゃねーか」
「私のことそう思ってたんですか!?」
いつも通りのニコニコ笑顔で現れたフクキタル。
ゴールドシップにからかわれてガーン! と耳と尻尾をはね上げている。
相変わらず感情表現が激しい娘だなぁ。
「なにしてんだフク。おめーの神様はここにはいねーだろ」
「いいんですよ~、ここはパワースポットなんですから!」
私のお墨付きです! と嬉しそうにそう話す。
特に聞いたことはないのでフクキタル的パワースポットなのだろう。
商店街の置物を幸運パワーのあるものだって拝んでいたと噂に聞くからな。
「あ、トレーナーだ! あけましておめでとー!」
「ウララさん、急に走ると転ぶわよ!」
ウララもたまたま来ていたらしく、こちらに突撃してきた。
あいさつを返していると、見たことのあるウマ娘が。
黄金世代の1人、キングヘイローだ。
「もう、しょうがないんだから……あけましておめでとうございます」
丁寧にあいさつされたので、こちらも丁寧に返した。
話に聞く通り、品のあるお嬢さんだこと。
「今日はキングちゃんたちといっしょにお参りにきたんだー!」
「おーい! ウララちゃーん! キングちゃーん!」
遠くで手を振っているのはスペシャルウィークだ。
セイウンスカイとエルコンドルパサー、グラスワンダーも一緒にいる。
黄金世代で初詣に来ているみたいだ。いい関係だな。
「なになにー? どうしたのスペちゃーん!」
「あ、またっ! もう!」
申し訳なさそうに俺を見て、走っていくウララを追いかけていくキングヘイロー。
ううむ、なんというか……。
「お母さんですね~」
「クリークと勝負させたら面白そうだな。アタシはクリークに100アルゼンチン・ペソを賭けるぜ!」
アルゼンチン・ペソは日本円とそんなに変わらないのでおおよそ110円ぐらいだ。
つまり、そんなに高くない。
「普段はああいう風にわいわいしてますけど、キングヘイローさんたちは強いんです。アオハル杯では強敵として立ちはだかりますよ!」
真面目な表情で話すフクキタルの言う通り、彼女たちのチーム『ジ・エイペックス』は非常に強い。
というか黄金世代と言われているライバル関係なのに、それぞれの得意距離がわかれているのが恐ろしいのだ。
短距離はキングヘイロー、マイルはグラスワンダー、中長距離はスペシャルウィークとセイウンスカイ、ダートはエルコンドルパサー。
今のところアオハル杯で1、2を争うほどに強いチームだと思っている。対戦する時はしっかり対策しないと。
「そうですね~。しっかり作戦を考えておかないといけません」
とはいえ、こっちのチームも実力的に負けてないと思うんだけど。
みんなぶっちぎりで強いし、ゴールドシップもこの前のアオハル杯でクラシック級以上のウマ娘たちと競ってクビ差3着。
これで成長途中なのだから手に負えない。実力のある破天荒はもうトリックスターなんだよなぁ。
「ふぃ~、餡子にはやっぱ抹茶だよな」
「おや! いいですね~、私も買ってきます!」
気づいたらゴールドシップが餡子がかかった団子とお茶を持って帰ってきた。
フクキタルと少し話していた間にふらりと買いに行ったらしい。
「ほれ、300万円な」
団子を差し出されたので1つ受け取り口にする。
うん、とっても甘いが優しい甘さだ。和菓子特有のふんわりした甘味が口全体に広がる。
ゴールドシップに300円を手渡す。
「ゴゴゴ、ウケトリマシタ。コレ、ヤル」
カクカクした動きでお茶も渡された。
飲んでみると、うーん抹茶。団子の甘さが抹茶の苦みで際立つ。
和って感じだ。
「買ってきました! あれ、トレーナーさんも食べてるんですね」
ゴールドシップにもらったんだよと話すと、なるほど! と言って団子を食べ始める。
うまうまと目を輝かせていたが、みんなで1本食べ終わるとフクキタルがそういえばと俺たちを見た。
「お2人はお参りしました? つい呼び止めてしまっていましたけど」
「あ? そういや鈴でアスレチックしてなかったな」
丁度来たところでフクキタルに声をかけられたからなぁと話す。
なんと~! 耳と尻尾がビョンと跳ねる。
「すみません~! つい見かけてテンションが上がってしまいまして! さあさあお参りしてきましょう!」
「おお、河童の川流れか?」
串を片付けたフクキタルが俺とゴールドシップの手を掴んでグイグイ引っ張る。
流されるがままに連れていかれ、あれよあれよと順番に。
ささ! と促されたゴールドシップが鈴をからんからんと……いや随分鳴らすなぁ!
ドラムのシンバルぐらいの勢いで鳴っている。
「ゴールドシップさん!? 鳴らしすぎですよ~! 罰が当たります!」
「ゴルゴル星のニューゴッドことゴルシちゃんは神になんか止めらんねーぜ!」
楽しそうにガシャガシャやっているが、流石に周りに迷惑だからな。後頭部にチョップを叩きこむ。
ぐへっと膝崩れになるゴールドシップの頭に5円玉を置き、自分は先に賽銭箱へお金を入れてお参りする。
――みんながケガなく走れますように。
「アタシに盾突くたぁいい度胸じゃねーか! オラァ!」
頭を振って5円玉を賽銭箱に叩きこみ、静かに祈るゴールドシップ。
言葉と行動が乖離しすぎてフクキタルがオロオロしているし、周りから大丈夫だろうかと様子を見られている。
「アタシの時代が来ますよーに。トレーナーの右ひざのホクロから毛が30本生えますよーに……その他もろもろ」
とんでもない呪いをかけられそうになっている……!
そもそも右ひざにホクロないけど。
「うっし! 終わったことだし、おやつ食いにいこーぜ。お汁粉食いてー」
「ならいいお店を知っていますよ! 私のおすすめです!」
「じゃあそこで。食って幸運にならなかったらフクの幸運グッズを大福に詰め込むからな」
「ぎゃぼーん! こ、これは責任重大ですよ……!」
わいわい話しながらお参りを済ませて神社を後にする。
新年早々騒がしいなぁと思うのであった。
因みに幸運グッズ大福詰込みは回避された。
お汁粉はおいしゅうございます。
なぜだろう……とりあえずウマ娘出そうとするとフクキタルが出てきてしまう。
やっぱりね、書きやすいからね!