「今日こそ、そのスカしたLBXをぶっ壊してやるぜ!!」
「ハン!そりゃ俺の相棒に触れてから言えよな」
時は2050年。タイニーオービット(通称TO)社より発売された超高性能の小型バトルロボット玩具《LBX》は、あらゆる衝撃を吸収する《強化ダンボール》を使った
街の至る所にはLBXバトルをする為Dキューブが展開され、その中では様々な地形を再現したジオラマが立ち並び。LBXプレイヤー達は思い思いのカスタマイズや塗装を施したLBX達をジオラマの中を縦横無尽に駆け巡らせ、競い合わせる。
そんな賑わう表通り……からはちょっと離れた裏路地の一つ。ローマ時代のコロッセオを思わせる《闘技場》のDキューブを挟み、二人の男が互いを睨み合っていた。
「ぶっ壊せハカイオー!」
「駆けろ、ヴィルベル!」
LBXを操作するために必要な携帯電話のようなControl&Communication&Manipulator、通称《CCM》を展開し自身の愛機を戦場へと送り出す。
方や重厚な装甲の上の棘状の突起が特徴的なブロウラーフレームのLBX《ハカイオー》を。
反対側の彼は女性を模したバリエーションが多い高機動型のストライダーフレームでは珍しい男性的な体格のLBX《ヴィルベル》を地に降り立たせた。
「先手必勝だ! 必殺ファンクション!!」
《アタックファンクション:我王砲》
「急だなぁオイ!?」
開幕と同時にハカイオーの胸部にあるキャノン砲が赤熱を帯び、腕を開くと共に強力な必殺ファンクションが放たれる。
動転した声を出しながらも淀みなくCCMを操作しヴィルベルの身を《我王砲》の斜線から外させながらも、その細身な足からは考えられないような脚力で地を蹴りハカイオーへと肉薄しその手に持った二振りの《氷皇ブリザードエッジ》を閃かせ連撃を叩き込んだ。
「…へっ!効かねぇなッ」
「バカ装甲が……!」
しかし
装甲を捨てたストライダーフレームでは破岩刃の一撃はバカにならない為、男性はすかさずCCMを操りハカイオーの攻撃範囲を脱出させる。
(必殺ファンクションを強引に撃っても良いが。耐えられて重い一撃を喰らったら厄介だ)
「…当たらなきゃ、意味ないんだよなぁ!」
「抜かせ!!」
一瞬固まった双方だったが、歴戦のプレイヤーという事もあり直ぐ気炎を吐き接近戦を開始する。
ハカイオーの一撃は数回当てるだけもブレイクオーバーするのに十分な威力を有しているが、逆にヴィルベルの速くはあるが軽い攻撃はハカイオーの装甲を破るのにかなりの回数を有してしまう……これだけならヴィルベルの圧倒的不利だが。それを“五分”に持っていけるだけの技量を彼は持ち合わせていた。
破岩刃の一撃をスレスレで躱し普通に避けるよりも一瞬長く生まれた時間で二、三撃打ち込み。硬直から回復したハカイオーの斬撃を再び躱し、また撃ち込む。
無論通常の回避よりもリスキーな躱し方をしている関係上数十合打ち合えば破岩刃の刃が僅かに装甲を掠る場面もあるが…それでもダメージレースはヴィルベルの優勢だった。
(このまま押し込めば…!)
「今回も俺の勝ちだな郷田!」
勝利を半ば確信した男はニヤリと笑う。
「――チッ、次のアングラビシダスまで取っときたかった策だが」
しかし劣勢である筈の男性…ミソラ二中の四天王筆頭にして「地獄の破壊神」の異名を取る中学3年生の郷田ハンゾウは、その鋭い双眸に強い光を纏わせ。己の愛機に
主人と同じように眼を光らせたハカイオーは右手の破岩刃を
(占めたっ、そっから振り下ろすならデカい隙が生まれるしワンチャン《ファイナルブレイク》も狙える!“策”は気になるが、この
LBXに内蔵された主観カメラ越しに男はハカイオーと徐々に己に迫る破岩刃を見据える。その思考は攻撃を避ける事だけに留まらず、走行の薄い膝裏と首元のどっちに攻撃を叩き込もうかと反撃の事まで思考が飛躍させていた。
そのまま予測通りの軌道に乗って自らに向かう破岩刃を彼は見つめ――――
「あの人との約束もある――出し渋ってる場合じゃねぇな!」
次の瞬間
破岩刃は彼の予測した軌道に途中までは乗っていたが、ハカイオーは途中でそれを手放し…剣の軌跡を見切ろうとしてが故に彼はそのままハカイオーの手を離れヴィルベルの背後へと流れていく破岩刃をそのまま目で追ってしまう形となった。
「――まさか囮かッ!?」
「気付いた所で遅ぇ!!」
ヴィルベルを操作し直ぐ様破岩刃からハカイオーへと視線を向けるが時すでに遅し。
変わらずヴィルベルの真正面にて仁王立ちしていたハカイオーの強靭な両腕が、ヴィルベルの両肩をガッチリとホールドした。
「おぉう…ハグなら生身でしないか?俺達の友好は何もLBX越しに確認する必要なんかは――」
「気色悪りぃ事言ってんじゃねぇ!?……オマエ対策だよ!!」
操作ミスを狙い彼自身もキャラではない台詞を言ってみるが多少狼狽したものの澱みなくCCMを操作し、それにより………ハカイオーの
胸部が再び赤熱を帯び始めた。
「おまっこの距離で我王砲て……これスタンドレギュレーションだよなぁ!?」
「修復費用の半分ぐらいは出してやらぁ!今は……ぶっ壊れやがれぇぇぇ!!!」
《アタックファンクション:我王砲》
「・・・・・・だったら!」
《アタックファンクション:旋風》
咄嗟に何かを思いついた様子でCCMを操作すると、ヴィルベルのツインアイが光り必殺ファンクションを行使。肩から先の自由に動く範囲の腕を用いてハカイオーの体を切りつけ始めた。
「『死なば諸共』ってヤツか?もう遅いぜ!!・・・・・・あん?」
突然の必殺ファンクションを“ただの悪あがき”と判断した郷田だったが・・・LBXのパフォーアンスを示すアプリに移されたハカイオーが、《健常》を示す青色から《異常あり》を示す黄色へと。そして赤の――
「確かにハカイオーの装甲は強靱だ。だけどもろい部分はある・・・例えば背面、例えば・・・・・・・人間でいう関節部!」
持ち主の言葉を体現するかの如く旋風の回転と風とにより強化された斬撃をハカイオーへ向け次々と振るう。
切りつけられるにつれハカイオーの両腕からスパークが発生し、ついには郷田のCCMからハカイオーの両腕が《使用不能》・・・つまり完全に沈黙したことを意味する赤色が表記された。力が無くなったハカイオーの腕を風と共に払いのけたヴィルベルは、今もチャージが続くハカイオーの胸部に攻撃を集中する。
「決めろ。ヴィルベル!」
旋風の最後の一撃である切り上げがハカイオーの胸部に大きな裂傷を刻み、それがトドメとなったのか我王砲のエネルギーによってハカイオーが爆発した。
「だあああああチックショー!!」
「………間一髪って所だな」
戦いに対する気持ちを叫んだところで、二人は一戦終えた自らの愛機を回収する。……まぁ片方はそれなりにボロボロなのだが
「見てくれは問題ねーが、コリャ内部パーツ相当傷んでるな…オヤジに頭下げるしかねぇか」
「すまん。オヤジさんには一緒に謝りに……」
「いらねぇよ…勝負の結果だ。勝った奴も頭下げるなんてチャンチャラ可笑しいぜ」
バツの悪そうな彼とは対照的にサバサバとした様子の郷田はハカイオーを仕舞い、その後大きなため息を吐いた。
「仕方ねぇ。約束は約束だからな……」
「おう。早く吐け」
「このっ勝ったからって…!」
ミソラ二中には「二柱の神」がいる。
一人はグレーな
そうしてもう一人…ミソラ二中現
校内ではライバル同士として「会えば噴火と竜巻が同時に起こる」とさえ言われる二人がなぜこんな人目のつかない路地裏で戦っているかというと…時は少しだけ遡る。
・
・
・
・
・
「……という訳で《各アーマーフレームの長所と短所》の講義は終わり、じゃあみんな。楽しいLBXライフを」
「「「ありがとうございましたー!!」」」
コスプレのように白衣を着て伊達メガネを装着した風崎はそう締めくくり“講義”を終えた。
生徒である数十人の小学生程度の子供達はテキストと自分のLBXを持ち、思い思いに風崎へ向かってお礼の挨拶を述べてから教室から出て行った。
「………ふう。」
「お疲れ様です。風崎さん」
襟の部分で汗を拭うと共に、バックドアから入ってきた黒スーツ姿(胸ポケットには会社のイニシャルなのか円で囲まれたKの字が輝いている)の男性からスポーツドリンクが渡される。
「大丈夫です。みんな素直ないい子ですし…給料も出てますからね」
「『我が社テストプレイヤーとLBX教室臨時教師の兼業にしては少ない位です』…と社長は仰っていましたがね」
「中坊に大金渡されても困るんで。今でも多過ぎるぐらいですよ」
苦笑いを浮かべながらもスポーツドリンクを一気に呷る。一時間喋りっぱなしだったのもあるが元気100%の子供達の熱気に当てられ疲れたのもあるのだろう。
「《ヴィルベル》の調子はどうですか?」
「大分良いですよ。データは前送ったんで知ってると思いますけど、連戦連勝で有難い限りです!」
「ハハハ…社長と開発部が深夜テンションで作ったあの
風崎と社員の男性は講義に使った見本のLBXや電子機器。実践のため使われたDキューブなどの片付けを行いながらも談笑していた。
説明された通り風崎は黒スーツの男性が務める工業系企業のLBXテストプレイヤーであり、今回はその一環として定期的に行っているLBXについて学ぶ教室の臨時教師として教鞭を振るっていた。
「よし…後片付けも手伝って貰ってありがとうございます。クレジットは後で振り込んでおくので、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。自分も楽しかったです!」
一通りの清掃を終えた風崎は社員の男性に別れを告げ、会社の表口から出て行った。
「やっぱ小さい子と触れ合うのはいいな。アイデアは突飛だしデメリットの方が強いのもあるけど…面白いし、興味深い」
『速いストライダーフレームの足に爆弾付けて吹っ飛んだらもっと速くなれるよな!?』といった少年を思い出し、実演として実験用のアマゾネスを一体吹き飛ばした際の彼の顔を思い出し含み笑いを浮かべながら彼は順調に帰路を進み、やがて馴染みの模型店である《キタジマ模型店》の横を通り過ぎ――
「…郷田?」
店近くの路地裏でなにやら怪しげな挙動をしている郷田ハンゾウを発見し、問い詰めている形で「俺たちはLBXプレイヤーだ!聞きてえなら俺に勝ってからにしな!」という流れとなり、先程のバトルへと発展したという訳である。
「…で。理由も依頼人も明かせないけどとある人から渡されたニセ金であの店に今日入荷されたナイトフレームのアーマーフレーム《アキレス》を違法購入もとい窃盗しにきたと?」
「そうだ。というかヤケに説明口調だな」
「声出すのは大事だぞ、英語の勉強と一緒だ」
そう言いながらも、風崎は郷田を呆れ半分好奇心半分といった目をして見た。
「フツーだったら「子供が悪い子になっちゃいけないのは本当の悪人の格好の餌になる方式」で止めるが…話聞く限り手段はともかく頼んだ人はマトモそうだな。まぁ、分かった」
「ホントか!ありがてぇじゃあ早速――」
「いや待てや」
「グェエ!?」
すぐさまバトル会場であった路地裏から飛び出そうとする郷田を風崎はそのコートの襟部分を引っ掴んで引き留める。郷田の口から潰れたカエルのような声が出たのはご愛嬌である。
「〜〜ッ!テンメッ何すんだ!?」
「不良だからってウチの学校から窃盗犯なんて出せるか。俺が出すよ…“ハカイオーの詫び”だ」
「ムッ…そーゆうことなら、頼むぜ」
「よし来た。んじゃあ行こうか」
普通に言っても郷田が聞き入れないことを知っていた風崎が郷田の重んじる“義理人情”を例えに出し承認させ、二人はキタジマ模型店へと入店した。
「おっ風崎じゃないか。珍しいな」
「ハァイ店長。奥さん元気?」
「元気すぎて困るぐらいだな!多分すぐにでも来るんじゃないか?」
特徴的なツンツン頭に髭を生やし、水色の作業用エプロンを掛けた模型店の店長《北島小次郎》に挨拶すると、店のバックドアからドタドタという音と共に黒のチューブトップ一枚と工業用のズボンに身を包んだ少々目にやり場の困る女性が現れた。
「風崎じゃないか!相変わらず生意気な面してるね〜!」
「ハロー沙希さん。儲かりまっか?」
「ボチボチでんな!…ってそうじゃないよ、最近店に顔出さないじゃないか。メンテナンス品は足りてるのかい?」
「あぁ確かに、じゃあ買い「オイ」――違う違うそうじゃなかった。サンキュー郷田」
ついつい会話に夢中になっていた風崎の意識を郷田が引き戻し、「やっちまった」とばかりに顔に手を当てて店長の奥さんである《北島紗希》との会話を打ち切り、カウンターに肘を置いた。
「店長。新しいアーマーフレームある?」
「新しいフレームってんなら…アキレスだな。ちょっと待ってろ」
そう言い店の奥へと引っ込んでいく店長。
「そういえば、そちらの連れは誰だい?あんまり見ない顔だね」
「友達兼ライバルってとこ。名前は郷田」
「紹介に預かった郷田だ…風崎のヤツはよくここに来るのか?」
多少手持ち無沙汰になり暇になった三人は会話を始めた。
「よく来るっていうか、お得意様だね。最近は遠のいてるようだけどさ」
「個人経営だけど、品揃えがいいからな。痒い所に手が届くってヤツだな。郷田も使うか」
「そりゃあいい…って言いたいが、肝心のオレのハカイオーは誰かさんに破壊されたからな」
「わ、悪かったって」
ニヤニヤと悪どい笑みを浮かべる郷田に対して、事実しか言われていない風崎はバツが悪そうに視線を逸らした。
それを見ていた沙希はパチンを指を鳴らし合点がいったという様子をする。
「読めたよ?差し詰めその友達への埋め合わせって訳だ。粋だねぇ〜」ウンウン
「バレたか。その通りですよ」
「そうゆう事だな」ウンウン
(二人揃って腕組んで頷いてる…根っこが似てるからか?)
「待たせたな。持ってきたぞ」
そうしている内に北島店長がプラモデルと同程度の大きさの箱を持ってきて、カウンターに置く。
そこにあったのは既存のモノとは明らかに違う、グラディエーターやスパルタをモチーフとしたような意匠の純白のLBXだった。
「ナイトフレームの《アキレス》。
「これで合ってるのか郷田 …“たぶん”?」
「あぁ。このフレーム、何故かどの情報媒体にも載ってなくてな。問屋からも新発売のフレームとしか聞かされてないんだ」
「あぁ、これで間違いねぇ へぇ、奇妙なものもあったもんだな」
「まぁ商品として売れてくれれば構わないけどな。で買うのか?」
「買います。面白そうだ」
「これナイトフレームだぞ?ストライダーフレーム好きのお前には――」
「まぁまぁアンタ!買って貰いましょうよ。店の売り上げが増えるんだからいいじゃないか!!」
「そうだぜ店長さん!風崎の奴が買いたいって言ってんだ。買わせてやってくれよ!」
「そ、そうか?…いや確かにそうか。変な事言って悪かったな」
訝しげに尋ねた北島店長の声を無理矢理に遮る形で郷田と沙希の二人が割り込み、強引に丸め込んだ。
「いえいえ。んじゃあこれで」
「ひいふうみいよ……丁度だな。ホレ受け取れ、領収書はいるかい?」
「サンキュー……あー、いや個人の買い物だからな。いらないよ」
「そうか。他になんかいるかい?早めに買ってくれたから多少勉強させて貰うぞ?」
アキレスを渡した店長は、これ見よがしに店のラインナップを載せたカタログを見せる。
「商売上手ですねぇ…じゃあ折角だから――と言いたいけど、
肩をすくめサイドバックからヴィルベルを取り出し、カウンターに置く。
「……成る程、確かにそれならしょうがないな。じゃあまたのご来店をってとこだな」
「そゆこと。行こうぜ郷田」
「おう…世話になったな」
「あいよ。またいつでも来な!!」
北島夫婦に見送られ、二人は店から出る。そしてバトルをしていた路地裏へと入り。風崎は郷田に手提げ袋に入ったアキレスのアーマーフレームを手渡した。
「これで貸し借りなしだ。何にためかは知らないけどな」
「悪いようにはしないしねぇさ、感謝するぜ。……あと、次は負けないぜ!」
「上等。返り討ちにするさ!」
風崎と郷田は互いのCCMをコツンとぶつけ、それぞれ表通り裏通りと別々の居場所へとその足を向けた。
(さて、明日も普通に学校だな。半ば推薦が決まっているとはいえ早めに…ん?)
そうして暫く歩き見覚えのある住宅街に差し掛かった。とある一軒家の前を横切る際に、ふと耳に聞き慣れた音が聞こえ足を止めた。
「…片手銃でこの連射音……スキャッターガン?」
LBXが扱う片手銃の中では連射性と装弾数に優れたモノを見て、家の標識を見て眉を顰める。
「山野…あぁ淳一郎氏か。にしてもその息子さんは確かにLBXはレンタル以外でやってなかった筈だが……」
疑問に思った風崎は、山野家の庭先へと向かい塀に手を掛け家の中の様子を覗き込んだ。
窓ガラスを隔てた山野家のリビングでは、多くのLBXを見てきた風崎をしても一切見た事がない単眼が特徴的なデザートカラーの
(なんだありゃ?つーか色々と傷付いてるけど…なんかヤバそうだな)
「――オイ!なんのつもりかは知らないけどLBXでの物質破損は持主の責任になるぞっ?もっと言うとDキューブ外でのLBXの戦闘行為は市内ルール違反だ!!」
塀から顔を出してそう警告した風崎はだったが…直後自身へ向けて放たれたスキャッターガンのマズルフラッシュを見て急いで身を屈めた。
「カチコミかよっ…おい誰かいるか!?いるなら返事ィ!!」
「……っ、うんいるよ!山野バンです!!」
「風崎リンドウだ!この状況身に覚えは!?」
「ない!知らない人から渡された箱からLBX取り出した瞬間に来たんだ!」
「了解!取り敢えず手伝うぞ……駆けろヴィルベルッ!」
サイドバックから取り出したヴィルベルを塀を通り越すように投擲。機体速度が速いヴィルベルに万が一にも操作にラグが発生しないよう改良されたCCMは壁越しでも問題なく動作し、翡翠色のツインアイを光らせ山野宅のリビングへ向け疾駆する。放たれるスキャッターガンの銃撃を避けすれ違いざまに氷皇ブリザードエッジの刃を輝かせた。
(見た目からプロウラーフレームだな。確かに装甲はちと厚いが…)
「ハカイオーには負ける!」
勢いをつけた斬り付けはデクーの装甲に大きな傷跡を刻みつけ、続け様に隣で固まっていた一体を蹴り付け姿勢を崩させ順手に持ち替えた氷皇ブリザードエッジを胸部に突き立て深々と突き刺した。
「よし、じゃあ一緒に…ってカバーパッド?」
「渡されたばかりだからしょうがないだろ!?」
「遠距離武器は…なさそうだな。じゃあ頑張ってついてこい!!」
「えぇ〜〜!!?」
凹凸のないシンプルな《コアスケルトン》保護用の青色のカバーパットと鉄棍を携えたバンのLBXを一瞥し注意するようにだけいって再び突貫する。
現在の戦場はリビングの卓上。残り
「一体行ったぞ!」
「分かってる!…うおおおおおっ!」
三体一斉に放たれるスキャッターガンの銃撃をコップや卓上調味料といった障害物で避けながらも距離を詰めようとする。
しかしその弾幕は厚く中々分厚く、隠れていたマグカップの取ってがヴィルベルの背後へと吹っ飛んでいった。
「これ以上の損害出されるとヤバいな…悪いが速攻で決める!」
《アタックファンクション:紫電手裏剣》
マグカップの縁を蹴り付け大きく跳躍。先程の戦闘とも呼べない瞬殺行為によって溜まった《Gゲージ》を吐き、両手で精製し敵に向かって紫電の手裏剣を放つアタックファンクション《紫電手裏剣》を放つ。
放たれる銃弾すらも切り裂いて進む紫の飛翔体はそのまま三体のデクーを両断した。
『ッ!?』
「!……今だっ」
すぐさまブレイクオーバーした他の仲間達に驚愕したのかAX-00から目を離した最後のデクーの隙を見逃さなかったバンはCCMを操作。鉄棍の乱打にてデクーを滅多打ちにしそのモノアイから光を消失させた。
「やった!」
「ナイスアタック!一応これで全員倒せたな」
しばし待ち増援がないことを確認してから風崎は塀を乗り越え家へと入った。
「ありがとう!……って生徒会長さん!?」
「お。もしかしてウチの生徒か?助太刀に入れてよかったよ」
靴を脱ぎリビングへ上がった風崎はヴィルベルを持ち上げ目立った外傷がないことを確認してサイドバックへとしまった。
「改めて、風崎リンドウだ。確かに学校じゃ生徒会長で通ってるけど、あんなバトルを一緒にやったんだ。風崎でも、はたまたリンドウでもいい」
「俺こそバンでいいよ!よろしくリンドウ!」
「遠慮がないのはいいことだ。にしても…ハデにやられたな」
あたりを見回すと山野家のリビングは中々に悲惨だった。床や壁にはスキャッターガンによる銃撃の傷がそこかしこに散見され、机のコップ類は一部を除き粉々に。ソファーに至ってはもうそうゆうコンセプトアートだと言った方がウケがいいのではと思う程穴だらけだった。
「災害保険ってLBX対応してたかなぁ…?」
「どちらかっつーと災害じゃないくて人災だけどな…まぁ警察に届け出るぐらいしかないんじゃないか?」
「そっかぁ……」
「一先ず、割れたカップの掃除だ。踏んだら一大事だからか。ホラ家主が帰ってくる前に「ただいまー」……」
「…リンドウ」
「あ〜…取り敢えず俺が不法侵入者じゃないことを証明してくれ。手伝うから」
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