「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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 書き途中での投稿がありました。ごめんなさい


強い人はいい人が多い

劇的な勝利を飾って第一ピリオドを勝ち抜けたユウキさん、彼は勝利インタビューを華麗に終えると控室に戻っていった。暫くそこで試合を見るんだろうなあと思っていると

 

 「お、いたいた。ヤナ、カイラ、それにアルトくんにスズカゼさん。席を取ってもらっててすまないね」

 

 「いえいえ、元はタツヤさんのチケットですから。まずは勝利、おめでとうございます!」

 

 「おめでとうございます!もう、すごかったですよ!ファンネルをひょいひょいってよけて!」

 

 「ありがとうヤナ、スズカゼさん。アルトくんはどうだったかな?僕のバトルは」

 

 「すごかったですよ。俺はMSであの動きはできません。それに、ガンポッド…使ってくれるなんて」

 

 「決して君へのサービスなんかじゃないぞ?僕が作ったロングライフルよりも、君の武器は凄かった。それだけの事さ」

 

 「それでもです。ありがとうございました」

 

 「礼を言うのは私の方さ!君の武器があったからファンネルに臆することなく突っ込むことができたんだ」

 

 「褒め合いはいいけどよータツヤ。まだ一戦だぜ?次は行けるのかよ」

 

 褒め合いに発展しかけた俺とユウキさんを停めたのはカイラさんだ。彼女の鋭いながらも的を射た冷静な言葉にユウキさんも瞳を鋭くする。だが彼はこの程度の事で怖気づいてしまうようなファイターじゃない。きっと俺と戦った時のように武者震いをしながら強者に挑んでいくんだ。

 

 「自信は無い、みんな自分の国を背負っている。凄いガンプラばかりだ。だからこそ…戦えることが楽しみなんだ」

 

 わくわくを隠せない表情でユウキさんはそう言い切った。そういえばアダムスさんは?と聞くとPPSEのほうに仕事に行ったのだそうだ。セコンドじゃないの?と聞いたら優先順位はあるとのこと。大人って大変なんだな、アダムスさん忙しいんだね。

 

 歓声が響いて前を向く。新しい試合が始まろうとしていた。今度はどんな試合を見ることができるのだろう。俺も胸の高鳴りを抑えることができない。正直に言えば、飛びたい。あの大きなGPベースの中の広い宇宙を、バルキリーで。脳内でバルキリーを飛ばしながら、俺は目の前の試合に目を凝らすのだった。

 

 どの試合も素晴らしい、俺は釘付けだ。いつも行っている大型店舗で行う試合なんてこれに比べたら赤ちゃんの人形遊びに等しい。それこそ歩く、飛ぶといった基本の動きからすでに一線を画している。そしてガンプラへ注がれる惜しみない愛と超絶技巧によるギミックの数々。特にやばいと思わせたのが御年77才という最高年齢の持ち主イギリス代表のマッケンジー卿と現役最強のキングオブガンプラ、カルロス・カイザーだ。特にカイザーの方は訳が分からなかった。なんで宇宙専用機のMAで地上戦演じてるんだよ。しかも改造をほとんどしてない組んで塗装しただけの機体なのに。性能がやばすぎたんだが?ユウキさんは終始興奮を隠せてなかった。カイザー出てきたときなんて立ち上がったからな。

 

 1日が終わり、俺たちはそれぞれ自分の部屋に帰った。興奮してあれやこれやと話してベッドの上でぴょんぴょん撥ねてたヒマリも眠気が限界に来たらしく寝てしまった。俺の部屋のベッドの上で。流石に寝ている女の子に勝手に触って抱き上げて移動なんてできないので俺は別の部屋のベッドを借りようとしたんだけど…眠れない。今日いろいろありすぎて、すごいものを見すぎて、俺は興奮を沈めていられなかった。しょうがない、下の売店で牛乳でも買ってホットミルクでも作ろうかな。と部屋を出て鍵をかけて、エレベーターで下に降り、エントランスに出たところで見覚えのある後ろ姿を発見した。

 

 「あれ?ユウキさん?」

 

 「アルトくん?どうしたんだいこんなところで」

 

 「ユウキさんこそ。俺は…ちょっと眠れなくて、興奮で」

 

 「タツヤでいいよ。いい加減名前で呼んでほしいな。君も一緒なんだね」

 

 「…タツヤさんもなんですか?」

 

 「恥ずかしいことにね」

 

 照れたように頭をかくタツヤさん。いや、しょうがないと思うよ。あんなの見せられたら、ファイターなら、ビルダーなら…眠れない。だって、眠るのがもったいない。あんなもの見せられたら眠っているのがもったいない。できることならすぐにGPベースに走っていきたいくらいだ。

 

 「散歩に行くつもりなんだ。良かったら眠くなるまで付き合ってもらえないかい?」

 

 「…喜んで」

 

 思わぬ誘いに面食らってしまったが、体を動かせば眠気も来るんじゃないかと思い、承諾することにした。タツヤさんと街灯が照らす夜の歩道を歩く。星がきれいだ、ヒマリが起きてたら連れてこればよかったかな?明日このことを話したら頬を膨らませそうだ。タツヤさんが歩きながら話してくれたのはカイザーさんの娘らしき人物にあったという話だ。聞けば聞くほど気難しい感じが伝わってくるがそんな娘さんがいるカイザーさんが何だか身近に感じてしまった。暫く談笑しながら歩くと…

 

 「おっ日本チャンプじゃねえか!」

 

 英語訛りの日本語が聞こえた。ん?とタツヤさんと一緒に振り返るとそこには、今日の選手権に出ていた選手、グレコさん、チョマーさん、ルワンさんの姿が。世界の強豪たちとの突然の邂逅に背筋がピン、と伸びた。肩をポンと叩いてくれたタツヤさんのおかげで平静を取り戻した俺だが、彼らの用事はタツヤさんだ、一歩下がっておこう。

 

 「はじめまして!まさか覚えていただいてるなんて…恐縮です」

 

 「おいおい難しい日本語は俺らわからないぜ?それに学生の出場者は珍しいからな。俺たち年がいってるやつらは話したくてうずうずしてるのさ」

 

 難しい日本語分からないという割に滅茶苦茶流暢なんですけど?訛り以外完璧だぜグレコさん。余談だけどガンダムは日本アニメなので世界選手権の選手たちは基本的に日本語が話せるらしい。聖地を探索したいとかもあるとか?聖地って何?ガンプラ工場?

 

 「それでどうしたんだこんな時間に?もしかして眠れないのか?」

 

 「…お恥ずかしながら」

 

 「はっはっは!無理もない!なんせ俺たちも同じだ!」

 

 呵々大笑するルワンさん。すると俺に気づいたチョマーさんが話しかけてきた。その声があまりにも熱気バサラに似てるもんだからびっくりしたが。是非とも「俺の歌を聞けぇ!」と言ってほしい。

 

 「そういえばこの坊主は誰だ?ユウキ、お前の弟子か何かか?」

 

 「ああ、いえ彼は…」

 

 タツヤさんが言いよどむ。俺の事をどう紹介したものか迷ってるのだろう。俺の身を案じて嘘をつくか、世界の強豪を信じて真実を話し、コネを作るか。彼が視線を俺に向けてくるので、頷いておく。別に俺は隠すつもりはさらさらないし。危ないから隠そうか~くらいな感じ。別にばれてもええや、ぐらい。

 

 「彼は、僕が招待したビルダーです。この動画、ご存じですか?」

 

 「…ああ、見たぜ。謎のビルダーが作った恐ろしく精巧で性能が高い可変モビルスーツ、その動画以外は情報がない」

 

 「全く罪なもん作るよなあ…」

 

 「世界中の強豪たちが今やその動画で同じものを作ろうとしてマッシュポテトみてーにつぶれていってるぜ」

 

 タツヤさんが見せた動画、俺が投稿したVF-1の動画だ。話の流れが見えなかった3人がハッとして俺を見る。非常に居心地が悪い、いい大人が子供を穴が開くほど見つめないでくださる?何も出ないよ。しかも今はバルキリー持ってきてないし。

 

 「っておい、まさか…」

 

 「ええ、彼が、そのビルダーでファイターです。一度バトルをした縁で、彼をこの大会に招待しました」

 

 「オー・マイ・ゴッド…」

 

 「ってまさかおめー今日試合で使ったライフルって」

 

 「ええ、彼の作品です。試合をしたとき、もらいました。マウント部分以外は無改造です」

 

 話がポンポン進んでいく。俺は正直、驚いている。この人たちが今の話をタツヤさんの悪い冗談じゃなく真実として受け止めているところに。疑わないということに。ずんずんと俺のほうに進んでくるのはチョマーさんだ。彼はその高い背で俺を見下ろして

 

 「すっげーじゃねえか坊主!なあ、俺が優勝した後でいいからバトルしてくれねーか!?」

 

 「へっ!?」

 

 「あっおいふざけんなチョマー!すまん、俺もバトルさせてくれ!」

 

 「つーかなんで優勝するとか簡単に言ってんだてめー!」

 

 破顔一笑して俺の頭をぐりぐりと撫でながらそう言った、それにあっけを取られているとチョマーさんの言葉にカチンときたのか残りの二人も加わって口喧嘩を始めてしまった。俺を蚊帳の外にしてワイワイやってる3人に思わず

 

 「疑わないんですか?」

 

 「「「そんなもん目と手を見りゃわかる」」」

 

 異口同音に返されてしまった。目を白黒させているとタツヤさんが腹を抱えて笑い出した。あーっ!こうなるの分かってたなーっ!?道理でカイラさんも疑わなかったんだ!一流のガンプラビルダーorファイターってうそ発見器か何かなの!?

 

 「まあなんだ、坊主。俺たちは黙ってるけど気を付けろよ?お前さんがやったことは革命と言ってもいいからな。なんか困ったら言え、手伝ってやるよ」

 

 「おう、悪い大人に捕まんじゃねーぞ。まあユウキが一緒なら大丈夫だろーけどよ!」

 

 「しっかしフェリーニのやつはおっしいことをしたなあ!明日自慢してやろー!」

 

 「子供みたいなことすんじゃねーよ!あっまた明日な!いい試合しようぜー!」

 

 そう言った3人は嵐のように去っていった。

 

 

 

 翌日からの日々は怒涛のようだった。2日目のサバイバルではカイザーさんに挑み見事に生き残り、3日目の川下りでは得意の紅の彗星の加速力で水の中を進むという奇策で2位にこぎつけ、4日目の射撃も難なくこなし5日目、6日目の競技も好成績で突破していったタツヤさん。彼の持ちポイントは26ポイント、決勝トーナメント進出確定じゃない。上位に行くにはこの最終日で2ポイント以上取る必要がある。つまり、タイマン勝負での引き分け以上を。そして相手は

 

 「運が悪い、カイザーが相手だなんて」

 

 「お父様ー!頑張ってくださいましー!」

 

 なぜかいるカイザーの娘さん、通称プリンセスと一緒に応援している。なんでいるの?あとコシナさんにすげえ懐いてるけど、まあいい子なんじゃない?4日目は楽しかったなあ…まさかひとりでに動くガンプラが見られるなんて。ケースでガッチガチに保管していた俺はともかく、クァドランが動き出したときはいいもんを見れたと感じたもんだ。

 

 さて、状況を整理しよう 、現在タツヤさんと相対してるのは今大会の優勝候補筆頭であり、複数の機体を一気に操作できるほどの操作技術を持ちながら天才的なビルダーでもある超人、カイザーさんだ。文字にするほどに弱点はどこと言いたいレベルの強さだな。

 

 新型のザクアメイジング・Rで挑むタツヤさんだがカイザーさんはその上を行った。ガチガチに対策を組んでいたのだ。まずタツヤさんの得意の高速機動によるヒットアンドアウェイを防ぐために機雷をばらまき、さらに設定画にしか存在しない艦載機としてモビルスーツを使用したビグ・ラングとかいう大型MAを使用してきたのだ。そしてそれに搭載されたザクの数は10を超える。それを完璧に操りながらタツヤさんを攻め立てる。

 

 だがタツヤさんもその程度であっさりと落ちるほど甘くない。ガンポッドの射撃がザクを壊し、ロケット弾が機雷を誘爆させ、極めつけには紅の彗星のマニューバで機雷の中を進んでいったのだ。爆発によって傷ついていく機体を気に留めることもなく、1体、また1体と艦載機のザクを確実に落としていく。凄い、俺があんなことされたらどう対処するだろう。今は、わからないけど。

 

 気が付けば、会場は二人への応援で燃え上がっていた。敵も味方もなく二人を同時に応援している状態。艦載機をほとんど潰し、ビグ・ラングに肉薄するザクアメイジング、そして振り下ろされたヒートナタを受け止める同じく赤いカラーのザク。シャアザクだ。ビグ・ラングを捨ててそのシャアザクにメイン操作を移したらしい。それを見たタツヤさんは獰猛に笑い、推力が低下したすべてのパーツをパージして片手にガンポッド、片手にヒートナタの変則二刀流でヒートホークを持つシャアザクに挑む。

 

 あらゆるところに傷を負い、武装のほとんどを失ったザクアメイジング。動くのは頑丈なガンポッドとヒートナタ一本のみ。そして、カイザーさんはモビルスーツでも超一流だった。ガンダムにおけるシャアの技術、デブリや小惑星を足場にしてとんでもない速度を出す隠し玉。五艘飛びという技術をもってザクアメイジングを切り裂いていく。ガンポッドの射撃はかするだけに終わる。残りはもう5秒もない。持ちこたえればトーナメントに進めるがタツヤさんには引き分けなんて見えてない。勝つか、負けるかなんだ。

 

 最後の1秒、ヒートナタが砕け、さらにヒートホークを振りかぶるシャアザク。そして、構えたガンポッドごと、ヒートホークが全てを両断した。シン、と静まり返る会場、一瞬おいて、爆発と聞こえ間違えるような歓声が轟く。凄いバトルだった。俺があそこまで行けるかどうかすらわからない。人機一体のその先にある領域だ。そして、負けてしまったタツヤさんは、満足げな顔をしながら、静かに涙を流していた。

 

 俺はその姿を見て、あらん限りの声で二人をたたえるのだった。




 今回で予選が終わります。この後オリジナル展開として1週間のモラトリアムの後、決勝トーナメントということにします
 はい、ここでアルトくんにやらかしてもらいます
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