「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

11 / 62
 


お祭りって年甲斐もなくはしゃいじゃうよね

 世界大会出場。タツヤさんの挑戦はベスト16に残り、決勝トーナメントに進出することなく幕を閉じた。後にカイザーさんVSタツヤさんの戦いはこの世界選手権のベストバウトとして大きく話題になるだろうと俺は確信している。席に戻ってきたタツヤさんは何も言わない。俺たちもまた、薄っぺらい慰めの言葉をかけない。彼の横顔を見ただけで分かる。満足感、充実感、すべてを出し切った疲労…言葉は、いらなかった。

 

 そのあとの選手たちも彼らのバトルを見て何かをつかんだのだろう。気合い十分、燃える熱い勝負ばかりだった。ヒマリはハラハラと勝負を見つめ、手を振り回して応援している。こけそうになる彼女を慌てて支えながら俺も、やはり興奮を隠せないのだった。

 

 翌日、これから決勝トーナメントまで一週間のモラトリアムに入る。選手たちはこの期間に英気を養い、ガンプラを修理し、あるいは新作を作って決勝トーナメントに備えるのだ。さて、そんな一週間の貴重なモラトリアムを決勝トーナメントに出場しない俺は

 

 「アルトくん、これイケるんじゃない!?」

 

 「クッソ、この機体、なんで重心こんなに寄ってるんだよ…!インチキだろ!」

 

 「わああお客さん!それやられちゃったらうちは赤字だよ~~!」

 

 「インチキまがいなガンプラ使わせといて何言ってんだっ…っと!おっしゃああ!」

 

 「わあアルトくんさっすがー!おじさんこれもらってくねー!」

 

 この一週間、世界選手権会場の周りにはイベントが目白押しだ。ガンプラ教室、バトルイベント、ガンプラ隠し芸大会、ビルダー技術を競うアマチュア大会など、様々なイベントが催されている。で、そんな中俺とヒマリは二人して出店を回っているのだった。ちなみに今やってるのはガンプラを利用した型抜きだ。とりあえず初心者仕様のハロをやったのだが簡単すぎたので、ヒマリの言われるがまま最高難易度のデンドロビウムに挑戦した。で、俺の操作技術を見抜かれたのか絶妙にやりにくい重心が寄ったガンダムが渡されたわけであるが、器用さなら自信しかない俺は見事デンドロビウムを型ぬいたのである。ちなみに商品はこの会場限定品の髪飾りだ。出店の目玉として各店舗に渡してあるそれを初日で持ってかれた屋台のおやじ、すまんな。

 

 「どう、アルトくん、似合う!?」

 

 「お、いいな。かわいいじゃん」

 

 「かわいい、かわいい…えへへ~」

 

 さっそくいつも耳の上につけているピンを外して俺に見せてくれるヒマリ、テンションたっかいな~。崩れ落ちる親父をよそに俺はいいもの見れたとほくほく顔で屋台を後にするのだった。

 

 途中でりんご飴に舌鼓をうちながら目的の場所についた。昨日予選で使われていた会場だ。その巨大GPベース、目的はそこ。バトル大会は開かれないが、自由に使うことができる。もちろんヒマリもクァドランで参加するとのこと。サバイバルなので入場退場自由、勝ち負けはプラモぶっ壊れたら。15分ごとに1回GPベースの電源が落ちて回収タイムが挟まれる。当然、飛ぶしかないよな?

 

 ヒマリがクァドランを出してセットするのを見て俺も出すプラモを引っ張り出した。改造を済ませたYF-19だ。そして、新規製造のオリジナルパック。スーパーアーマードパックだ。この装備はスーパーパックの上から装備することを前提に設計したパックで。胸部分を覆うような装甲兼マイクロミサイルポッド、足にも同様、背中には大型バーニア兼高機動50連ミサイルポッドを二つ。ZZのバックパックをスケールダウンしたものがイメージしやすいかもしれない。肩には短いフレキシブルビームガトリングを背負い、シールドはもとのシールドの上から取り付けた大型のもので裏にはガンポッドの弾倉が仕込んである、盾を装備しないほうの腕には2連装ビーム砲を、肩、腰などにも装甲兼ミサイルポッドを山とつけている。そしてガンポッドには銃剣付きだ。そして頭にはヘッドギア装甲とセンサー類の増設をしている。

 

 ミサイルのハリネズミとでも言わんばかりの重装甲兼重火力、歴代アーマードにならって変形はできない。それを度外視して火力だけを求めた装備だ。YF-19のスーパーパックの大型バーニアが腰にあり、背中部分にはほとんど何もないからこそできた。そしてこれが重要なのだが、もはや見た目がYF-19ではない。頭部のレーザー機銃ぐらいしか残ってる部分ねーもん。まあ何でかっつったらこの機体タツヤさんとのバトルのおかげで有名だし。余計な面倒を避けるために正体を分からなくする必要があった。ガンダムナドレみてーだな。

 

 で、飛べるのかという話なんだけど、飛べます。重量より増えたバーニアの推力のほうが上だし、元からのスーパーパックの大推力も合わせてそこらの高機動型モビルスーツにも引けを取らない。ぐりんぐりん動きミサイルをばらまいてくる。自分が作っていながらおっそろしい機体だな~。

 

 「アルトくん準備できた?お~いつみてもかっこいいね!」

 

 「だろ~?変形できねーのが残念だけどな!」

 

 そう言ってクァドランと一緒に空に出る。今回は宇宙だ。まだ初心者が抜けないヒマリを一人にして自由に飛んでくるとか俺にはできないので。護衛みたいな感じで、一緒にとんでいるとさっそく接敵ってビグロぉ!?絶対、カイザーさん見ただろお前!かぶれるのはいいことだけどな!出会い頭に撃ってくるのはメガ粒子砲、俺はそれを容易くよけようとするが、ヒマリの反応が間に合わなかった。

 

 「うわわわわっ!?」

 

 「任せろ!」

 

 慌てるヒマリの前に出て、メガ粒子砲を盾と()()()()()()()()()で受ける。そう、ピンポイントバリアだ。ついに再現に成功した。俺の推論は間違ってなかったようで、機体内部をこれでもかと作りこんだ結果、使用できるようになったのだ。機体どころか盾すら傷つくことなく受けきった無傷の俺たちにビグロは動揺している。

 

 「ヒマリ、大丈夫!練習通りに!」

 

 「うん!お返し~!」

 

 クァドランの背部からミサイルが発射される。俺はそのミサイルの中を縫うようにして、同速度でビグロに近づいていく。ミサイルの雨だって俺は平気さ!ビグロもミサイルを打ち出してくるが、そのミサイルだけを俺がガンポッドで次々と撃ち落とす。そしてクァドランのミサイルはほぼすべてがビグロに直撃、満身創痍といった様子のやつは近くにいた俺を捕まえようとクローアームを伸ばしてくる。こういう時はアレしかないだろ!

 

 盾を持つ手にガンポッドを持ち直し、右手を握りこんで構える。ピンポイントバリアが拳を覆い、エネルギーが渦巻く。そのまままっすぐ突っ込んだ俺はその拳でクローアームを粉砕し、勢いのままビグロをぶん殴った。拳が装甲にめり込んだのを確認し、そのまま2連装ビームガンを連射、ついに耐え切れなくなったビグロが沈黙した。ふっふーう!ピンポイントバリアパンチはやっぱり最高やな!

 

 「ヒマリ!ナイスミサイル!」

 

 「アルトくんも、かっこよかったよ~!」

 

 クァドランとYF-19がハイタッチして、飛行を再開する。ビグロをあっさり撃破したのを見た周りのやつらはこいつらやべえ!ってなったらしく、徒党を組んで俺たちに仕掛けてくる。総計20機以上!

 

 「ヒマリ!こういう時は!?」

 

 「弾幕を張って近づけない!」

 

 「よくできました!」

 

 クァドランが両手のレーザーガトリングと顔のカノン砲、そしてミサイルを山と発射して弾幕を張る。俺も、ミサイルハッチをすべて開放、頭部レーザー機銃、肩部ビームガトリング、腰部レーザー機銃、右腕2連装ビームガン、左腕のガンポッドをすべて連射する。圧倒的な弾幕とクァドランと合わせて300発はくだらない変態機動のミサイルとビームと実弾の嵐に次々と相手を撃墜していく。やっぱマクロスと言えばミサイルやな!この推進煙が残す軌跡が気持ちいいわー!

 

 と、思ったところで戦闘行動中止のアラームが。15分すぎたらしい、俺とヒマリはブーストをふかして自分の機体を自分の近くまでもっていく。電源が落ちたあと5分間の回収タイムが挟まれる。あとが閊えているし、一回交代しようかな、と思ってると会場がざわついた。見るとそこには、カイザーさんの姿が。

 

 「サオトメ・アルト、だったかな?プリンセスが話していたよ、娘と仲良くしてくれると嬉しい」

 

 「はい、そうです。カイザーさんはなぜここに?」

 

 「日本のチャンプから聞いてな。それが君の機体か?」

 

 「ええ、これが俺のプラモデルです」

 

 「…いい機体だ。作りこみ、塗装、可動域…どれをとっても申し分ない。しかも、モデル機すら存在しないフルスクラッチ。狂気すら感じる、その装甲の中に一体いくつのミサイルを隠している?先の軌道を見る限り、一つ一つ独立して成型し、塗装をし、装甲の中に収めているのだろう?今、バトルを申し込めないのが残念でならない」

 

 「僕も、あなたと飛べないのは残念です。いつか、挑みに行きます」

 

 「待っている。それとスズカゼ・ヒマリ」

 

 「はっはい!なんでしょう!?」

 

 「そう緊張しないでくれ。プリンセスが君のことを楽しそうに話していた。「歌がとっても上手で楽しい人なの!」と。あの子には同年代の友達が少ない。できれば仲良くしてあげてほしい」

 

 「はい!もちろんです!こっちからお願いしたいくらい!」

 

 「…そうか。君たちが、世界の壁を登ってくることを楽しみにしている」

 

 仏頂面ともいうべき無表情を軽く和らげながらほほ笑んだカイザーさんは軽く手を振りながら帰って行った。これ、ようは「娘をよろしく」って挨拶に来ただけ?意外と親ばかなのかなカイザーさん。プリンセスは可愛いからわからんでもないけど。

 

 で、問題なのはカイザーさんに話しかけられた俺たち。好奇の目線が体中を貫いて痛いので急いでクァドランとYF-19を回収して会場を後にした。うーん、もうちょっと飛んでいたかった!そんでできればアーマーパージからの変形とかやって群衆を沸かせたかった!まあ正体ばれしちゃうので最後の手段だけど。でも、あの大きな舞台で飛べてよかったあ!

 

 

 

 

 「むむむ…作るのって難しいんだねえ」

 

 「ん、まあ慣れれば簡単さ。つっても俺キット組み立てた経験ないんだけど」

 

 逃走した俺たちがいるのはガンプラの組み立てを教えてくれるガンプラ教室。ヒマリもこの世界選手権をみてガンプラというものに興味が出たらしい。そんな彼女が組み立てているのはシャア専用ズゴック、チョイスがまたアレだな!?曰く「ゴリゴリ」らしいけど。ちなみに俺が組み立ててるのはムラサメ、講師の人が席をそれぞれ回りながらアドバイスをくれている。まあヒマリには俺がいるから要らないけどな!

 

 「えー、こんなのでいいの変形ー…」

 

 「アルトくんはこだわりすぎじゃない?」

 

 ムラサメの変形機構の余りのシンプルさに物足りない気持ちになる俺、手遊びで装甲を分割したりしてもっと滑らかに変形するようにしてやろ。あとこの部品切ってー、つなげてー、磨いてー、ほい完成!急いで突貫工事だから若干完成度は低いけどそこらの素組みガンプラには負けないぞ!余ったランナーとプラ板で足につけるミサイルポッド作ってやろ。あとはビームライフルを基部で切り分けてー、ロングライフルに改造、んー、まだプラ板あるなあ…増加スラスター作るか、ほいほいっと。はい、提出!変形機構に支障なし!ロングライフルはお腹に接続できるようにした。ガンポッド方式である。ふっふーん~。

 

 「ん、なにヒマリ?」

 

 「アルトくん、すごすぎて気持ち悪いよ…」

 

 「今俺はそこはかとなく傷ついたんだが?」

 

 「だって、手が早すぎてほとんどよくわかんなかったし…」

 

 「えーだってセイも大体似た感じだぜ?」

 

 「類は友を呼ぶ…?」

 

 「おう、その通りだな!」

 

 「褒めてないよ?」

 

 「えー…」

 

 あんまりにもなヒマリのお言葉にがっくり肩を落とす俺。というか講師の目が「なんでここまでやれるのに初心者教室にいるんだこいつ」という目をしている。うん、なんかごめんなさい。逃げる途中でたまたま目に入っただけなんです。もういこっかな?ヒマリもくみ上げたみたいだし、初心者にしては悪くない出来じゃないかあ。

 

 「んー、いろいろイベントあって楽しかったなあ~」

 

 「でもホントは、もっと飛びたいんでしょ?」

 

 「ご明察。まだまだ飛び足りなかったし、こいつも試せなかったし」

 

 そういいながら、俺はケースの中にある新しいパックを装備させたYF-21をポンと示す。YF-19スーパーアーマードがバトロイド特化ならこっちはファイター特化といったところかな?どんな装備があるかはまだ内緒だけど。

 

 「あ、アルトくん、あれやっていかない?」

 

 「あれ?ああ、あのガンプラ射的?」

 

 「そうそう、自分のガンプラ使っていいって!」

 

 「ま~じ~で~?」

 

 そのあと俺はYF-19のミサイルを効率的に利用して使って的をすべて完全撃墜判定を下し、的屋のおやじに土下座されたのだった。バルキリーに数で挑むとは無策な。いや想定外だろうけど。YF-19見た瞬間親父の顔硬直してたもんな。まあヒマリが欲しいといったハロのぬいぐるみだけもらって残りは返そう。ヒマリは嬉しそうだし、俺も嬉しいや。




 これって実質デートなのでは?ボブは訝しんだ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。