「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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 頑張ってバルキリーをフル活用してみました。


本気で、飛ぼう

 モラトリアム二日目、昨日は結局あの後ホテルの部屋まで戻り、何事もなく休むことができた。ちなみにヒマリは俺のベッドで寝ていた話を掘り返して揶揄ったら顔を真っ赤にしてオーバーヒートしてしまったのでこれ以上いじるのはやめてやろう。次は自分の部屋で寝てね?まあそれはさておき、朝食のためにホテルのバイキングに顔を出した俺とヒマリ、そして最後まで見ることにしたらしいタツヤさん。俺がパンにバターを塗ってかじりついていると唐突にタツヤさんが俺に訪ねてきた。

 

 「そういえば今日のバトルイベントには出るのかい?」

 

 「んー、迷ってますね。飛べるのは魅力ですけどバルキリーを完全に公にしていいかどうか…」

 

 「それで迷ってるのなら、出るといいさ」

 

 「いいんですかね?だって、面倒くさいことになるって…」

 

 「状況が変わったんだ。カイザーさんが君の後ろ盾になると言ってくれた。それとグレコさん、チョマーさん、ルワンさんもだ。もちろん僕も。これだけのファイターが君の後ろ盾になれば、文句を言えるヤツは多くない。それに、広い空があるんだ。飛びたいんだろう?」

 

 「…じゃあ、本気で飛びます。見ててくれますか?」

 

 「ああ、勿論だとも。あれからどれだけ成長したのか、私に見せてくれ」

 

 「アルトくん大会でるの?応援するから!絶対勝ってね!」

 

 「ああ、任せとけ」

 

 こりゃかっこ悪いところは見せられないな。よぉし、度肝抜いてやる!と俺はソーセージを嚙み千切りながらそう考えるのであった。

 

 バトルイベントとは、大会の予選トーナメントを模して行われる大会で、いくつか種類があり、今日行われるのは予選2日目と同じ総当たりサバイバル戦、広大なフィールドで頼れるのは己のガンプラと操縦技術のみという過酷なものだ。一対多数という性質上不意の事故が多発するため極度の集中力が要求される。けど、自信はある。全員が世界選手権出場クラスのやつらでもない限り大丈夫だろう。少なくとも、改造をしてないようなビルダーやファイターに負ける気はしない。そんなことあったらタツヤさんに失礼だし、応援するからと両手を握って言ってくれるヒマリに申し訳が立たない。後ろ盾になってくれるっていう人たちにもだ。

 

 この大会で俺の価値をアピールするんだ。後ろ盾になってよかったと言ってもらえるように、感じるままに…飛ぶんだ。

 

 

 

 

 『さあやって参りました全国選手権のモラトリアムイベント!100機を超えるMSが鎬を削るザ・サバイバル!勝利条件は二つ!時間制限まで生き残るか!自分以外のすべてを撃破するか!』

 

 選手権のメイン司会をやってたGガンダムの審判やってそうな眼帯と髭のおっちゃんが声を張り上げる。そして、参加する人数は100を超え、その中にはきっちりと改造を済ませた機体もちらほらある。俺がYF-19を出した瞬間に観衆の目線が一気にこっちに向いた。まあ、昨日目立ってたししょうがないかな。もちろん選択装備はスーパーアーマード、昨日みたいにヒマリに付き添うわけじゃない。本気の加速、本気のマニューバだ。最初から全開、出し惜しみは、絶対しない。

 

 見ててくれ、と観客席にいるヒマリ、タツヤさん、カイザーさん、チョマーさん、グレコさん、ルワンさんにガッツポーズを向ける。ヒマリが俺を見つけて大声で頑張ってと言ってくれた。制限時間は20分、折角こんなにたくさん人がいるんだ。見せてやる、モビルスーツと可変戦闘機の差ってやつを!

 

 『さあさあ生き残れ!ガンプラバトル!』

 

 「「「「「『レディィィィゴオオオォォォ!!!!』」」」」」

 

 「さあ行くぞ!」

 

 「ドム、でます!」

 

 息を大きく吸って、吐く。さあ、見せつけてやる!

 

 「α1、出る!」

 

 広い宇宙の中、飛び出したYF-19が彗星のごとく天をかける。そのスピードは昨日クァドランと組んでた時とは別次元、そして発進直後の段階

 

 「えっ?」

 

 「うそだろ!?」

 

 「どこから!?」

 

 6機以上もたもたしてるやつらがいたので、ガンポッドでハチの巣にしてやる。撃たれた方向を見てもすでに俺はいない。腰、背中のブースター、そして足の熱核バーストタービンの莫大な推力と自由な方向転換により射撃しながら移動しているからだ。たとえ多少改造をしてあっても完全な不意打ち、反撃の隙さえ与えてやらねえ!

 

 『おおっとさっそく大金星を挙げた機体がいるぞ!機体名は「YF-19 スーパーアーマード」!とんでもないガンプラだ!』

 

 さあ、この機体はミサイルだけじゃないって教えてやる!加速しろ、俺なら操縦しきれる!ガンポッドの銃剣ですれ違いざまに、相手のガンプラを切り刻んでいく。そんな俺に臆することなく向かってくるのは、おおすげえ、作りこまれたゲルググだ。ビームナギナタを振り回して、素組みとは一線を画する加速力で俺に向かって突進してくる。受けてやろうじゃねえかこの野郎!

 

 「くらぇえええ!!!」

 

 「甘い!」

 

 ビームナギナタをピンポイントバリアを張ったシールドで防御、肩のビームガトリングをノーモーションで斉射し、相手がひるんだところで右手のガンポッドを放し、ピンポイントバリアパンチ、胴体を殴りつぶしてガンポッドを手に取りその場を離脱する。この付近の敵は一掃!次!

 

 宙域を離脱し、ビーム飛び交う戦場を飛ぶ。レーダーを確認して、一番敵が多い宙域へ。ビームサーベルでつばぜり合いをし、時にはライフルで撃ちあい、シールドで防御している。さあ弾幕のプレゼントだ!避けてみな!ミサイルハッチをフルオープン!YF-19がミサイルの煙で隠されてしまうほどのロケットと高機動ミサイル、マイクロミサイルのパーティーだ!

 

 「さ、避けられない!?うわあああ!?」

 

 「きゃああああ!?」

 

 「なんでこんな追ってくる、わああ!?」

 

 「何発あるんだ!ヘビーアームズじゃあるまいし!」

 

 避けてもおってくる、撃墜しても次のミサイルが追ってくる。逃げ場はない。最低限バルキリーと同じ機動ができなきゃ逃げ切れない。爆発が宇宙のいたるところで起きる。バラバラになるガンプラ、未だ俺は無傷だ。上方からビームの奔流が俺を襲う、そこには2体のモビルスーツの姿が。Ξガンダムとペーネロペーだ。しかも塗装を済ませている。いいね、ミサイルだけで終わってもらっちゃつまらない!

 

 「いけよ!」

 

 「ファンネルミサイル!」

 

 操作可能なサイコミュ兵器、ファンネルミサイルが俺をとらえようと群体を組んでこちらに迫る。内蔵量を増やしたのかは知らないが、両機合わせて40発、いい数だ。スロットルを全開、弾幕を張りつつ逃げに入る。右、左、一回転。YF-19は誘導されて殺到してくるファンネルミサイルの網を次々潜り抜け、ガンポッド、レーザー機銃、2連装ビームを使い次々とファンネルミサイルを落としていく。落とすたびに包囲網に穴が開き、俺の回避運動がやりやすくなっている。

 

 「終わりか?」

 

 「舐めんなガキぃ!!」

 

 「待てよ!無策に突っ込むな!」

 

 ペーネロペーがビームバリアーを張って突っ込んでくる。俺はビームサーベルを紙一重で避け、盾にピンポイントバリアを纏わせて強引にビームバリアーに突っ込み、こじ開ける。ブーストを全開でふかし、瞬間的に加速、構えたガンポッドの銃剣で串刺しにしてやり、そのままガンポッドのゼロ距離射撃、ペーネロペーは沈黙した。あとはΞガンダムのみ。狙いを定めたところでアラート、長大な光がΞガンダムごと俺を焼きにかかる、回避が間に合わない!ピンポイントバリアとシールドで防御!だめだ!持ちこたえられない!

 

 俺はシールド裏の爆発反応装甲を起動、同時にスーパーアーマードを破棄する。爆発によって一瞬ビームが途切れた瞬間を狙い、ファイターに変形、ビームを脱出する。いまのは、サテライトキャノン!莫大なエネルギーを抜け出したスーパーパック装備のYF-19、鎧に覆い隠された真の姿、戦闘機の状態を晒した姿に会場中に動揺が走りシンと静かになる。さあ、本番だ!

 

 『可変機です!アルト選手が駆るYF-19、鎧を脱ぎ捨てたその姿は正しく可変MS!対するは軍団の魔術師と呼ばれるファイター!残り時間はあとわずか!』

 

 軍団の魔術師って確かタツヤさんが日本代表を決める時に戦ったっていうガンダムXと12体のGビットを扱う人だったっけ?そんな人もいるのか!と今まで以上の加速を見せつけるYF-19に対して降り注ぐビームの弾幕、ファイター、ガウォーク、時にはバトロイドによるピンポイントバリアですべてを躱して防ぎ、肉薄する。いたな、Gビットとその後ろにいるガンダムX!挨拶だもってけ!とマイクロミサイルを30発ぶっ放す。12体のGビットとメイン操作であろうガンダムXは躱しにかかるが、驚異的なホーミング性能を誇る俺が作ったミサイルだ。13体の同時操作で躱せるものじゃない。まあカイザーさんなら華麗に躱しそうな気がするけど。

 

 Gビットに次々当たるマイクロミサイル、腕をもがれ、足が消し飛び行動できなくなるGビット、かろうじて無事なのはサテライトキャノンを失った2機とガンダムXのみ。

 

 「驚いた、まだこんなファイターが、ユウキ・タツヤ以外にいたとは」

 

 「そのタツヤさんが見てるんで、通らせてもらいます」

 

 「いいファイターだ!応えよう!」

 

 ガンダムXがビームソードを抜き、シールドバスターライフルを投げ捨てて全力でブーストをふかす。俺はファイターからガウォークに変形して同じようにガンダムXに向けて突撃する。振りかぶったビームソードが振り下ろされる刹那、バトロイドに変形、威力が乗り切る前のビームソードをシールドとピンポイントバリアで受ける。ガンポッドは近すぎる。選ぶなら、こいつだ!

 

 「見事だ!少年!」

 

 ジャコッと腕が展開してタツヤさんの時にも使った陸戦パックの内蔵ミサイルが発射される。足の熱核バーストタービンを噴射して離れる。閃光と爆発、動かなくなったのはガンダムXの方。タツヤさんには及ばないまでも強い人だった。

 

 気づけば、周りには誰もいない。いや、残っていた。一機、緑色の粒子を振りまきながら空を飛ぶオレンジの可変機が。MS形態に変化して俺に相対するそいつは…!

 

 『なんとなんと制限時間を目前にして残ったのは2体のMS「ガンダムキュリオスガスト」と「YF-19 スーパーアーマード」だああああ!!!制限時間は近いぞ!』

 

 「動画、見たよ。タツヤさんと戦った君の機体と、僕のキュリオス…どっちが速いか勝負といこうじゃないか!」

 

 「!のったああ!!」

 

 相手の誘いに乗って、ファイターに変形、相手に尻を向けて逃げ出す。追いかけっこだ、一歩間違えば機体が粉々になるけどな!相手のキュリオスも察したのか変形、GNロングバレルキャノンを連射しながら追ってくる。スーパーパックのブースターと足の熱核バーストタービンをフルに活用する。ビームが機体をかすめる、追いつかせない、絶対に!お前の高速形態は一つしかないだろうけどなあ、こっちは2段階あるんだよ!機動力でバルキリーに勝てると思うな!

 

 腕と足を出してガウォークへ、ほぼ直角の軌道で曲がりながらガンポッドとレーザー機銃で狙い撃つ。数瞬後にマイクロミサイルを全弾斉射、これでもう空っぽだ。あとはガンポッドとレーザー機銃のみ!

 

 「くぅ!なんて高性能なミサイル…っ!でも!トランザム!」

 

 「そうきたか!」

 

 圧縮粒子による赤い輝きを放ちながらさらに加速するキュリオス。なめんな、ゴーストにだって通用するミサイルは、速度だけじゃ振り切れるもんじゃないぞ。それに、俺を忘れるな!

 

 「ふり、きれない!?トランザムだぞ!?」

 

 「お前の飛び方はなっちゃいないんだよおおおお!!」

 

 「なっ、しまっ!?」

 

 回り込むように前へ、トランザムの輝きを塗りつぶすような爆発。片方の翼がもげたキュリオスが爆発の中から飛び出してくる。やつが片手に握ったビームサーベルを俺に振り下ろす。ガンポッドを投げ捨て、シールドで防ぐ。ピンポイントバリアとビームサーベルのつばぜり合い。にらみ合いを先に終わらせたのは俺だ。シールド裏からあるものを取り出す。赤熱するナタを。

 

 「そ、それは!?」

 

 「もらいもんで悪いけど、これで終わりだ!」

 

 ヒートナタで切り捨てられたキュリオスは爆破し四散。システムがバトル終了を宣言して、勝者が俺へと決まる。残り制限時間は約2分と19秒。達成感が体を包み込んだ。

 

 『なんと死闘を制したのは「YF-19 スーパーアーマード」!ただ一人生き残りました!これにて第一試合は終了です!続けて別のエントリー者による第2試合を開始します!勝利したアルト選手に大きな拍手をお願いします!』

 

 「…やりましたよ、タツヤさん」

 

 そう呟きながら汗だくの顔で観客席を見ると飛び跳ねて喜んでいるヒマリの隣で、大きく手を叩くタツヤさんの姿を見つけた。俺はそれを見て、期待に応えることができたと、強く感じるのだった。

 




 いやー書いてて楽しかったです。そういえば今日3話も更新しているんですね。やる気パワーってすんごい
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