「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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隠し芸ってだいたい隠れてない気がする

 だぁ~~~~疲れた!だけど、思う存分に飛ぶことができた俺は凄い満足だ!スーパーアーマードは完全に壊れてしまったけど、YF-19はほとんど傷はない。当日中に補修が済むだろう。なんかすれ違う人が俺を見るたびにおかしなものを見る目をしてるのはなんで?あ、そうか。YF-19ってタツヤさんと試合した動画が配信されてるからアーマードで正体隠してないスーパーパックの状態は割と有名なんだっけ。ええやろ俺のバルキリー?どやあ?くれって言ってもやらねーけどな!自分で作れ!あ、でもガンプラは大事にしろよ!

 

 「ア~~ル~~~ト~~~く~~~ん!!!」

 

 「ヒマリ!?おわっ!?」

 

 大声で俺を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、出口から逆走してヒマリが走ってきており、俺に飛びついてきた。その瞳は潤み、ほろりと雫が落ちている。すわなんかやらかしたか!?と俺は混乱したが続く言葉でそうではないことに気づく。

 

 「信じてた!アルトくんなら勝ってくれるって!凄いよ!アルトくんはやっぱりつよいんだね!」

 

 そう捲し立てるように言った後彼女は俺をぎゅうっと抱きしめる。というか苦しい、やりすぎだから離れろヒマリ。いい匂いがしてなんかドギマギしてくる。とりあえずヒマリをくっつけたまま出口まで行くとそこにはさっき観客席で観戦していたメンツが全員かけることなくそこに立っていた。というかほぼ全員にやにやしてる。何その顔?

 

 「…やっぱり君も隅に置けないんじゃないかな?」

 

 「どういう意味ですか!?」

 

 「わかってねーのかよこの色男。フェリーニみてーになるなよ」

 

 「チョマーさん実はケンカ売ってたりします?」

 

 「お?わかる?買ってくれてもいーぜ?バトルだ、ほれほれ」

 

 「いいですよノシつけて返してあげます」

 

 「待て待てチョマー、アルトも。決勝トーナメント進出者はモラトリアムにおける野良バトルは禁止だ」

 

 「めんどくせールールだよなあ」

 

 「仕方ないさ。そんなことすれば観戦者で収拾がつかなくなる」

 

 さっそくいじってくるチョマーさんに言い返しているとルワンさんがそう言ってなだめてくれた。そして、一歩先に出たのはカイザーさんだ。彼は俺を見下ろして口を開く。

 

 「素晴らしいバトルだった。ますます君とバトルをしたくなった、君のその可変機はこれからのガンプラを変えるだろう。もしも、理不尽なことがあったらいつでも頼ってくれ。少なくとも俺は、君の味方だ」

 

 「…ありがとうございます。…タツヤさんも、最後はあなたの武器がなければ勝てませんでした」

 

 「…お互い様さ。君のガンポッドに見合うものだったかどうかは、おいておいてね」

 

 「最高の武器ですよ、手放したくないですね」

 

 そういって頭を下げる。タツヤさんは俺の頭を2,3度撫でると肩をポンと叩いた。俺はそれで頭を上げて、にっかりと笑う。そうして全員に笑顔が広がった後、みんな揃ってホテルに向かうのだった。

 

 ちなみにヒマリは全員がにやにやしてたのを見て一気に恥ずかしくなったらしく真っ赤になってずっと俺の後ろに隠れてた。俺の幼馴染はかわいいなあ。

 

 

 

 「ガンプラ隠し芸大会ぃ?ですか?」

 

 「ああ、明日のモラトリアムイベントなんだけど、お前出るか?」

 

 大人数でホテルに帰って俺の部屋でバルキリー披露大会をしていると、唐突にVF-1のアーマードパックを付けたり外したりしていたグレコさんがそう言った。え?何そのイベント…バトルじゃねえの?

 

 「いや知ってはいますけど、具体的に何するんですかそれ」

 

 「まあガンプラでの特技披露大会みたいなもんだよ。例えば俺はガンプラでリカルドのやつと闘牛をすることになってる」

 

 「…???」

 

 「まあガンプラを使ってバトル以外で人を楽しませようってやつだ。出てみないか?」

 

 「…俺そんな特技ないんですけど」

 

 「あの飛行技術で曲芸飛行でもしたらいい。お前の操縦技術はそこいらのやつじゃ相手にならないからな」

 

 そう言うのはYF-19の変形機構を観察しているチョマーさんだ。隠し芸大会ねえ…驚くほど俺なんもないな。え?もしかしてマクロス以外俺取柄ない?衝撃の事実に気づいてしまった俺だが、折角誘ってくれたんだし出ないという選択肢を選ぶのはちょっと。うーんこの、何とかならないもんか…

 

 「無理する必要はない。こういったものは楽しむのが前提、半端な気持ちで出ても楽しくないだろう。出たければ出る、出たくなければ出ない。それでいい」

 

 スッとフォローを入れてくれたVB-6のシャトルモードが気に入ったらしいカイザーさん。「すまないが、プリンセスのノーズアート作れないか?」と聞かれたので作りますと言っておいた。あとで書いてデータ送ろっと。

 

 「まあ、楽しむのが一番だよ。アルト君も自由でいいからね」

 

 ザクアメイジングを修理していたタツヤさんがそう言って、その場はお開きになるのだった。

 

 

 「うーむ…ガンプラ隠し芸大会かぁ…」

 

 「やっぱり、気になるの?アルトくんはでたい?」

 

 「まあ出たいか出たくないかで言えば出たいかなあ?またあのGPベースで飛べるってことだし。でも俺ができることって飛ぶ以外ないんだよ。少なくともガンプラ闘牛には勝てないな。インパクトとかその他もろもろ」

 

 「うーん、そうなんだ」

 

 俺がベッドの上で悩んでいるとお風呂から上がってほっかほかのヒマリが少し濡れた髪をタオルで拭きながらそう言ってきた。彼女は俺の隣に腰を下ろした。ベッドがぎしりと音を立て、少し沈む。彼女は顎に手を当てて思案し、ポンと手を叩いて思ついたように言った。

 

 「あ、動画と同じことやれば?私、歌うよ?」

 

 「ってーとVF-1のやつか?同じネタこすっても面白くないだろ」

 

 「ううん、この前新しく作った曲で」

 

 「ほんとにか?いいのか?あの曲、相当恥ずかしがってたじゃないか」

 

 「うん、今日のアルトくんを見て、やりたくなっちゃった。恥ずかしくないわけじゃないけど…挑戦してみたいの」

 

 「わかった。お前がやってくれるなら俺もとびっきりを考えないとな。折角、3機のバルキリーとモンスターがあるんだ」

 

 「じゃ、明日頑張ろうね!」

 

 「おう、頼んだぜ」

 

 すっとベッドから立ち上がって自分の部屋に戻るヒマリ。その後ろ姿から頼もしさのようなものを感じてしまい、俺は苦笑いするのだった。

 

 

 

 『素晴らしい!ひらめくビームマントが次々と突進を躱していく!流石は決勝トーナメント進出者です!華麗なガンプラ捌きだ!』

 

 「すっげー…」

 

 「流石だね~」

 

 なんでイタリアなのに闘牛?というのはさておいてグレコさんとフェリーニさんの息の合った闘牛は観客に大受けしてる。待機室、いろんな人がガンプラを最終調整する中、これこれこうと運営に話したら快諾された俺たちの隠し芸の出番はもうすぐだ。つーか子供の言ってることをそのまま通すとか凄いなここの人たち、肝が据わってるわー。

 

 『さあ次は何と小学生二人組だ。昨日のサバイバルで驚異的な成果を叩き出したサオトメ・アルトとガールフレンドのスズカゼ・ヒマリのコンビです!どうぞ!』

 

 「いこ、アルトくん!」

 

 「おっし、やってやろうぜ!」

 

 今持ってきている中で一番のお気に入りだという真っ白なワンピースを着て、屋台でとった髪飾りを身に着けたヒマリの手を取って控室から会場へ移動する。胸を張れ、俺のために歌ってくれるヒマリに恥をかかせるな。堂々と、自信をもって、演じきれ。バルキリーのパイロットという役を!

 

 持ってきたものはVF-1、VB-6、YF-19、YF-21、いずれもスーパーパック。舞台は特殊設定の宇宙。どこからともなくビームやミサイルが飛んでくる本来なら回避の練習に使う戦場というステージ、設定は最高難易度。俺はこれから、ヒマリの歌に合わせて4機のバルキリーを同時操作しながらドッグファイトをする。それくらいしなければ、ヒマリに申し訳がたたない。彼女の歌を、最高の状態で観客に届けるんだ。ヤックデカルチャー、って飛び上がるくらいにな!

 

 音楽が始まる。しっとりしたバラード。戦場には似つかわしくないほどの曲に観客がざわつく。マイクを持ったヒマリに動揺は一切なく、完璧なタイミングで歌唱を始めた

 

 『今あなたの声が聞こえる ここにおいでと 寂しさに 負けそうな わたしに』

 

 「全機、発進」

 

 歌を邪魔しないようにボソッと呟いた後、機体を動かし始める。組んでるのは編隊飛行、大きなVB-6を中心に、前にVF-1、左にYF-21、右にYF-19という感じだ。そして、襲い掛かるビームとミサイル。全機、ブレイク。散会するように散った4機がそれぞれ別のマニューバで回避行動を始める

 

 『今あなたの姿が見える 歩いてくる 目を閉じて待っている わたしに』

 

 シンと静かになってしまった会場にヒマリの歌が響いていく。VB-6の直撃コースだったミサイルをVF-1が撃墜し、競い合うようにお互いに向かうミサイルとビームを無力化してるYF-19とYF-21。同時操作、難しい。こんなことをカイザーさんはやっているのか!だけど、俺にだって、できないわけじゃない!

 

 『昨日まで、涙で曇ってた 心は今…』

 

 サビだ。全機、ガウォークへ!全機が一斉に腕と足を展開し、VB-6がデブリの甲板へ降り立つ。衝撃、轟音、火花に照らされる昨日書き換えたヒマリのノーズアート。重い音を立てて動き出す4連装レールキャノン。

 

 『おぼえていますか 目と目が会った時を おぼえていますか 手と手が触れあった時』

 

 タイミングを合わせてレールキャノンを発射、デブリが消し飛ぶ。そしてそこを突き抜けるように降ってくる大型メガ粒子砲と思しき太いビーム。前に出るのはYF-19とYF-21。バトロイドに変形してピンポイントバリアで迫りくるビームを完璧に防ぐ。そして防ぎ切ったあとに先陣を切って飛ぶVF-1、背部のマイクロミサイルをばらまき、一発残らず向かってくるミサイルにぶつける。

 

 『それは初めての 愛の旅立ちでした I love you so…』

 

 Aメロが終わり間奏へ。こっちを見てタイミングをうかがうヒマリに頷いて、ミサイルの雨を捌ききる。後方支援役のVB-6のレールキャノンがミサイルの弾幕に穴をあけ、そこを通るバルキリーたち。後ろにぴったりついてくるミサイルをレーザー機銃で正確に撃墜しながらの曲芸飛行。もうすぐ間奏が終わる。いいぞヒマリ!最高だぜ!見ろよ!観客全員、お前の歌に聞きほれて、歓声の一つだってあげちゃいない!

 

 『今あなたの視線感じる 離れてても 体中が 暖かくなるの』

  

 2番が始まると同時に、バトロイドに変形して四方八方から迫りくるミサイルをガンポッドを用いて破壊する。視界の邪魔になる戦艦デブリを消し飛ばすレールキャノン、隕石を爆風で押すマイクロミサイル。爆炎で照らされるバルキリーの顔。観客の視線を釘付けにしていく。

 

 『今あなたの愛信じます どうぞ私を 遠くから見守ってください』

 

 いまだ被弾はなし、ミスなんかしてやるもんか!ここで失敗してみろ!俺だけならともかくヒマリはどうなる!全部を操縦に集中させろ!バルキリーの凄さは、こんなもんじゃない!

 

 『昨日まで 涙で曇ってた 世界は今…』

 

 サビだ。ランダム回避を取っていたバルキリーを編隊飛行に戻し、そこに大推力で合流したVB-6、当たるものはVB-6のピンポイントバリア、ミサイルはバルキリーたちがそれぞれ担当する。脳が沸騰しそうだ、まだまだ!

 

 『おぼえていますか 目と目が会った時を おぼえていますか 手と手が触れあった時』

 

 サビに入った瞬間、スーパーパックを廃棄。爆砕ボルトで吹き飛ばされた装備が宇宙に消え、何も身に着けない抜身の剣のようなバルキリーが、姿を現す。

 

 『それは初めての 愛の旅立ちでした I love you so…』

 

 外された3つのスーパーパックからマイクロミサイルが全て発射され、目の前の戦艦デブリを藻屑に変える。本来のデザインに戻ったバルキリー、スピードは落ちつつも飛行のキレは落とさない。さあ、さらにきつくなるぞ…!

 

 『もう ひとりぼっちじゃない あなたがいるから』

 

 ラストサビ!VB-6をバトロイドへ!ミサイルをばらまいて厳しくなってきた弾幕に対抗する。さすがは最高難易度、けど。タツヤさんの射撃に比べたらハエが止まるくらいだ!世界選手権出場選手の操縦を見た俺からしたらこんな機械的な弾幕躱せて当然なんだよ!

 

 『おぼえていますか 目と目が会った時を おぼえていますか 手と手が触れあった時』

 

 全方位から打ち込まれるビーム、逃げ場はほとんどない。普通だったら!VB-6を突っ込ませ、ピンポイントバリアで押しとどめる。開いた隙間からバルキリーは脱出。押し込められたVB-6をデブリに着地させ、ガウォークに変形してレールキャノン、ミサイル、機関銃を一斉発射。目の前のすべてが爆炎に飲まれる。そして、ラスト!

 

 『それは初めての 愛の旅立ちでした I love you so…』

 

 爆炎を切り裂いて現れたバルキリー3機、それらの翼下のミサイルが全て発射され、ミサイルの軌跡が空に後を刻む。反転するように飛び去ったYF-19とYF-21、そしてそれを追うVB-6。一機だけ残ったVF-1はバトロイドに変形。ヒマリに向かって敬礼をし、変形して後を追う。音楽が終わり、GPベースのシステムが終了した。

 

 息を切らしたヒマリと俺、やり切った。完全に。俺にミスはなかったし、ヒマリの歌は完璧以上だった。マクロス世界における伝説の曲は、どう受け止められるのだろうか。

 

 司会すら、何も言わない中突如わぁっ!!と会場が爆発したかと思わんばかりの歓声と拍手が、いきなり沸き起こった。よかった、楽しんでくれたみたいだな。俺とヒマリは顔を見合わせて笑顔となった。

 

 『言葉が見つかりません。GPベースを使ってのミュージックビデオ!まさに完璧、最高のファイターと歌姫に惜しみない拍手を!』

 

 司会がそういうと元から爆音だった拍手の音がもっと大きくなる。バルキリーを回収した俺は、来たときと同じようにヒマリの手を取って、歓声が響く中、会場を後にするのだった。

 

 




 掲示板よりこっちを先に投稿したかったのですが、諸事情(ジャスラックのメンテナンス)により遅れました。
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