「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

2 / 62
 2話目です。テンポ速くポンポンといきたいと思います。


行くぞバルキリー!何とでもなるはずだ!

 イオリ模型への道をつったかたーと軽い足取りでひた走る。今日が日曜日でよかったー!セイのやつも多分いるでしょ。いなくてもGPベース借りるけどさ。俺はそのままイオリ模型の扉をくぐって中に入る。するとそこにはやはり、セイのお母さんの姿があった。俺は軽く挨拶をするために彼女のほうに歩を進めると彼女の方から話しかけてくれた。

 

 「あら~!アルトくんじゃない!セイに用事かしら?」

 

 「はい、セイのやついますか?」

 

 「いるわよ~もちろん!セイ~?アルトくん来てるわよ~!」

 

 「わかった~!」

 

 とたとたと音がして呼ばれたセイがやってきた。俺はセイのお母さんに一礼してセイに駆け寄る。セイも嬉しそうにはにかんで俺を迎えてくれた。俺はバッグの中からバルキリーを入れたケースを見せる。するとセイは驚いたように目を見開いた。

 

 「アルト…もしかして!?」

 

 「ああ!できたんだよ!お前がいろいろ教えてくれたおかげだ!ありがとな!」

 

 「ほんと!?見せてもらってもいい!?」

 

 「ああ!机借りるぜ」

 

 俺は作業机を一つ借りてケースの中からバルキリーとモンスターを取り出した。布の上にそれを置くとセイは初めて見るそれを歓声を上げながらみる。

 

 「わぁ!かっこいいね!ガンプラじゃないから何かって思ってたけど戦闘機か~それは確かにキットないもんね」

 

 「ふっふ~それだけじゃないんだけどな。GPベース借りていい?動かしたいんだ」

 

 「いいよ!設定はどうする?」

 

 「とりあえず宇宙で。まずはこっちからっと」

 

 俺はバトルシステムにファイター、つまり戦闘機の状態のVF-1をセットする。機械音声が響いてプラフスキー粒子が散布されると同時に俺の周りの景色も変わり、コンソール代わりの光の玉とコクピットの風景に、そして周りが宇宙に切り替わってふわりと浮いたVF-1をおっかなびっくり操作してみる。ガンプラバトルで受けたダメージはそのまま機体にフィードバックするため地面などにぶつけたらえらいことになる。スラスターの残光を残しながら宇宙をかけるVF-1に俺も興奮が有頂天。マクロスの主人公たちのように航空理論やらなんやらを理解する必要もなく、イメージで操縦するに等しいこの操縦方法なら俺でもバルキリーを飛ばすことができるようだ。

 

 インメルマンターン、バレルロールなど思いつく限りの曲芸飛行を試してみるがすんなりと、思った通りに動いてくれる。まあ装備するべき追加装備やパック装備を装備してない。いわば抜身の剣のような状態だから癖がないのかもしれない。しかもプラモの出来で性能も変わるというのだから不思議なものだ。

 

 『すごい…!塗装もないのにこんなに軽やかに動くなんてよっぽど完成度が高くないと無理だよ!』

 

 「驚くのはまだ早いんじゃないか?こいつを見て心臓止まるなよ!」

 

 俺はそう言ってコンソールをいじる。するとVF-1の双発エンジンが機体から外れ下に展開して噴射しブレーキをかけつつ変形し、そのまま鳥のような足となる。尾翼が折りたたまれ、腕が展開した。右腕には機体下部に取り付けてあったガトリングガンポッドを持っている。戦闘機に手足がついたこの形はガウォーク。ファイターの速度と、腕や足によるアンバックと自由な方向を向くスラスターによってファイターではできない機動と自由な射角を得るための形態だ。

 

 『腕と足!?ってことはこれって…可変モビルスーツ!?』

 

 「まあ細部は違うけどご明察!」

 

 直線軌道ではなくジグザグの軌道を腕の振りによるアンバックによる姿勢制御と足のバーニアで強引にカーブを描いて飛ぶ。マクロス世界でやったら間違いなくGで俺の体はペシャンコだ。でも、アニメのような頭が狂ってるとしか思えない軌道で宇宙を飛んでいる実感がわいてくる。取り憑かれそうだ。さらにコンソールを操作する。さらに変形を開始するVF-1、足の起点部が折りたたまれ胴体へ、背部も変形して中からレーザー機銃を搭載したゴーグル型のカメラが特徴的な頭部がせりあがる。鳥の足のようだった足が股関節を伸ばし人間の足の形へ、可変式の主翼を閉じて、変形完了。このガンダムの世界に、バルキリーが降り立った瞬間だ。この形態はバトロイド、完全に人型になったことにより、様々な作業を行うことを想定している、巨大ロボットだ。

 

 もともと、飛行機による支援と設計時には明らかになってなかった巨人族ゼンドラーディとの交戦を視野に入れた「変形する戦闘機」というコンセプトがバルキリーだ。この機体を起点に、様々な後継機が開発された始祖の始祖、それがこのVF-1。正直、感無量だ。涙すら出てきそうだけど、まだ操縦の途中だし、何より、楽しい。オプションパックも選択式の装備もまだつけてない、ガンポッドとレーザー機銃だけを搭載した何の塗装もしてない真っ白なバルキリーは、この半年あらゆる媒体で見てきたガンダムを凌駕しているように俺は思えてならない。

 

 「人型…!しかも従来のMSの簡易的な変形じゃなくて完全な飛行形態から人型、ううん…中間の形態を挟んでの3段変形…!すごい、とんでもないよ!アルト!」

 

 「ああ、すげえだろ!ほんと、ありがとな!お前が教えてくれた技術がなかったら、できなかったよ!」

 

 思わずといった感じでGPベースのある部屋に乱入してきたセイが俺の手をぶんぶん振りながら興奮したように話しかけてくる。俺もそれに破顔して一緒になって飛び上がって喜んだ。コンソールを掴んだままだったのでバトロイドのVF-1がすさまじい飛行をしているのを見て慌てた俺が急いで安定軌道に戻して事なきを得る。たははと顔をかくセイを軽く小突いて、それでもどちらからともなくにししと笑った。

 

 プラフスキー粒子によるプラモデルの操作はある程度ファンタジーが入る。それこそカタログスペックの無視だったり、一時的な弾切れはあれど弾薬が無くならないとか、ミサイルの軌道とかそういうの。だから俺のVF-1の変形もある程度ファンタジーが介入してるはずだ。変形プロセス自体は全く問題じゃない、現実でも可能だ。けどはめ込むために作ったヒンジや固定するための穴、その他もろもろの変形するための機構が人の手を受けずひとりでに勝手に動いて変形してくれた。どうなっているかはわからないけど、俺の心はこの世界にマクロスを再現できる可能性があるという事実でいっぱいになっている。

 

 「素晴らしいな、少年」

 

 「え?誰ぇ!?」

 

 「あ!ラルさん!」

 

 「え?ランバ・ラル?コスプレじゃなくてマジもん?」

 

 いきなり俺の後ろから声をかけてきたのはまさしく初代ガンダムに登場する渋いおっさんことランバ・ラル…にそっくりな顔と声と話し方をするおじさんだった。というかもはやランバ・ラルだわ。

 

 「ううん、僕も名前は知らないけど、ラルさんって呼んでるんだ。うちの常連なんだよ。最近きてなかったけど」

 

 「はは、少し用事があったのだよ。それで少年、君のそれは…もしやフルスクラッチか?」

 

 「アルトです。サオトメ・アルト。確かにこのプラモは僕とセイが一から作ったものです。今日できたばっかりなんですよ」

 

 「なんと!素晴らしいな、アルト少年!君はもしや、ファイターになりたいのか?」

 

 ファイターになりたい…ファイター…うーん、違うのかな?この半年、VF-1とVB-6を作っているときは戦うのもいいかも、と思っていた。けど、今動かして疑問が確信に変わった。俺はこいつたちで戦いたいんじゃないんだ。

 

 「俺は…こいつらに乗って()()()()。うん、飛びたいんだ。仮初の宇宙でも、限りある空でも。無限の推進剤と、無限の寿命が得られるとしたら…いつまでもこの作られた空を飛んでいたい。今日動かしてみて初めて分かった。戦うんじゃないんだ。飛べれば満足…なんだと思う」

 

 GPベースの電源を切り、バトロイドのまま動かなくなったVF-1を手に取りながら俺はラルさんの目を見つめてそう言い切った。

 

 「いい目標だ。それに、いい目をしている。ならばこそだ少年、このラルとバトルをしてみないか?」

 

 「ラルさん話聞いてた?」

 

 「聞いていたぞ。飛びたいのだろう?」

 

 「…そうだけど、戦う理由は?」

 

 「少年が駆ける空は戦場だ。慣れておくに越したことはない、そうだろう?」

 

 否定は…できないかな?今でこそイオリ模型のGPベースを借りれるけどそれは知り合いだからだし、商売道具をいつまでもタダで借りれない。必然的に俺は別のGPベースを借りて飛ぶことになるけどその場合は当然ガンプラバトルになるだろう。つまり飛びながら戦うことになる。結局はバトルから逃れられない、のかも。そういうならここでいったんバトルの予習も悪くない…んだろうけどなあ…

 

 「うーん…」

 

 「どうしたのアルト?」

 

 「受けたいんだけどさ…予備パーツないんだよ。フルスクラッチだから。壊れたら俺は泣くよ」

 

 「安心しろ少年、寸止めで終わらせる。その白い機体に傷などつけんさ。もちろん君は自由に攻撃するといい」

 

 ちょっとむっとした。仕方ないとはいえ侮られてる。完全にタマゴ野郎扱いだ。いいさ、設計図はあるし、腕もそれなりに上がった。胴体がお釈迦にならない限りだいたい直せるはずだ。受けてやる。でもその前に…俺はケースの中から4つのパーツを出してバトロイドからファイターに変形させたVF-1の翼下のハードポイント全てくっつける。選択式装備の対空対地ミサイルを二つとマイクロミサイルポッド2つだ。それぞれ対空対地ミサイルを内側、マイクロミサイルポッドを外側につければ、準備完了だ。パック装備はまだ作ってないのでない。でも、素の状態のフル装備だ。反応弾なんてとんでも装備は再現できなかったけど。

 

 「では少年、この青い巨星が戦場の何たるかを叩き込んでやる!グフ、でるぞ!」

 

 「ご指導お願いします!スカル4!発進します!」

 

 起動したGPベースが戦場を映し出す。今回は地上のようだ。ラルさんの操るグフ、どう見ても素組みだけど完成度半端ない。強そう、っつーか俺初心者だし、ほんとに胸を借りないと。俺はファイターのままのVF-1を操って戦場のど真ん中にいるグフめがけてミサイルを放つ。盛大に内側の対空対地ミサイルをすべてだ。様々な軌道を描いてとびながらグフに迫るミサイル。

 

 「まっすぐな攻撃だ!甘いぞ!」

 

 「うっそだろ!?」

 

 片手のバルカンで密集した部分を一瞬で見抜いてミサイルを射撃、周りのミサイルを巻き込んで一気に誘爆させてあっさりとミサイルの雨をしのいだラルさん。ついでとばかりに俺の方にも射撃が飛んでくるが、本当に手加減しているらしくちょっとずれれば当たらないものばかり。ちょっと機首を上げて上昇して躱す。そこからグフを過ぎ去りターンを決めて、もう一度相対し、今度はガンポッドによる火線で弾幕を張ってみるがこれも躱され、すれ違いざまにヒートロッドを伸ばされる。

 

 「あっぶな!?」

 

 「ぬう、やるな!?」

 

 ガウォークに変形して急ブレーキをかけるどころか後ろへバックし、片手に持ったガンポッドとレーザー機銃を速射、ラルさんは頭部やコクピットのような重要部位をシールドで守るが手足に当たった弾が装甲を貫いてひしゃげさせる。さらにバック宙を足のブーストを利用して決め、マイクロミサイルポッドから10発ほど地面に向けてミサイルを斉射する。巻き上げた砂ぼこりが盾になってるうちにガウォークからバトロイドに変形してガンポッドを構える。

 

 「もらった!」

 

 「しまっ!?」

 

 砂埃が俺の目も塞いだのが仇となり、伸びてきたヒートロッドに片腕をからめとられる。思わず足のエンジンをふかしてグフごと引っ張ろうと推力を上げて飛びずさろうとするがそれを許すほど目の前の巨星は優しくなかった。逃がさんとばかりに背部のスラスターを全力でふかしてとびかかってくる。片手にはヒートソードを掲げて。こなくそ!いくら寸止めしてくれるとは言ってもこの圧は怖すぎる。それに一泡くらい吹かせたい!

 

 「なめんなあああ!!!」

 

 「なにぃ!?」

 

 俺は瞬間的にガウォークに変形する。すると翼に接続されているマイクロミサイルポッドが正面を向く、そう、正面。今まさにとびかかってくるグフとちょうど向かい合う形に。ミサイルを使うには近すぎる距離だけど、何もしないよりはましだ!残っているすべてのマイクロミサイルを斉射、爆発があたりを包み込みGPベースのシステム音声がバトル終了を告げた。

 

 「あっ!よかったああああ!!!これならなおせるううう!」

 

 「見事だ少年。戦場を教わったのは私のほうかもしれんな」

 

 俺の方にあるのはWINの文字と、羽がもげただけのVF-1の姿。可変式とはいえこれならすぐ直せる。曲線を描く必要がないからホントにすぐだ。対してラルさんのグフは手足がもげてえげつない姿になっている。いかにバトルの結果とはいえ、ちくりと心が痛む。ラルさんは気にするなとばかりに俺の頭をポンポンと撫でて慰めてくれた。器がでかい、いい人だ。セイもバトルが終わったと同時に駆け寄ってきて凄い凄いと言っている。俺も正直ここまでできるとは思えなかったけど、思ってた通り、飛ぶ次くらいにはバトルは楽しいものだった。けど機体壊れるからやっぱ飛ぶだけでいいかも、とへタレている俺にラルさんが声をかけてくる。

 

 「ところで少年、さっきから気になっていたんだが、その機体。名は何という?」

 

 「バルキリー!こいつの名前はVF-1 バルキリーだ!」

 

 俺は翼が折れてもなお輝く機体をラルさんに突き付けて、そう宣言するのだった。




 次話は少し開けます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。