「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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計画って実行するより考えてるほうが楽しい時もある

 俺のガンプラ世界選手権への実質的な出禁が決まってから数日、PPSE社によって正式にルールの改定が発表された。まあ荒れるよね。そりゃあもう盛大に。納得する人も半分くらいいたけど。だけどPPSEはどれだけ燃えようが文句が出ようが頑として聞かなかった。あくまでガンプラ世界選手権はガンプラの祭典であって、他作品、あるいはガンダムではないオリジナルを宣伝する場ではないとのこと。世界大会は出ちゃだめだけどモラトリアムイベントや野良試合はこっちじゃ関知しないからお好きにどうぞだそうだ。

 

 そこで俺はピンときた。実質的な締め出しを食らったバルキリーであるが、これはいいチャンスではないだろうか?前回の世界大会で俺とヒマリがやらかしたように、もういっそ腹くくって出禁覚悟で世界選手権を利用しつくしてやろうじゃないかと思ったのである。それには協力者が沢山必要なので、俺は早速心当たりに連絡を取ることにした。

 

 『もしもし!?アルト君かい!?』

 

 「あ、どうもタツヤさん、お久しぶりです」

 

 『ああ、久しぶり…ではないだろう!?ルール変更の事は聞いているはずだ!君は実質出場不可能になったんだぞ!?』

 

 電話をしたのは我らが日本チャンピオン、紅の彗星ことタツヤさんである。俺の事を気遣ってなのか彼や他の知り合いの世界ランカーたちは俺に連絡を取ってこなかった。おそらく俺が立ち直るまでほっておいてくれるつもりだったのだろう。電話口でのこのタツヤさんの慌てようを見るに相当気が気でなかったようだ。

 

 「ええ、わかってますし…もう割り切りました。タツヤさんとあの舞台で戦えないのは残念ですが俺は俺のやりたいようにやります」

 

 『いや、しかし…』

 

 「間違っても抗議なんてやめてくださいよ?PPSEにタツヤさんをマークさせたりするのは本意ではないです。それにPPSEがいってることも100%でたらめじゃないですから。それよりも、ちょっと手伝ってほしいことがあるんですが…」

 

 『なんだい?こうして何もしてやれない身だ。私にできることであれば喜んで手伝わせてもらうよ』

 

 「ありがとうございます!実は、モラトリアムイベントでですね…」

 

 俺はタツヤさんにモラトリアムイベントで行おうと思っているとんでもイベントを話した。既にヤジマ商事の方に話を通してあって、全面協力の承諾をもらっている。ヤジマ商事も今回のPPSEのやり口に不満を持っていたらしくむしろ盛大にぶっ壊せというお墨付きをもらった。まあ大会自体はぶっ壊れるどころか盛り上がるだろうから大丈夫だろうけど、PPSEさんには一回煮え湯を飲んでもらいたいので俺もやめる気はない

 

 『なるほど…アルト君らしい、と言えばいいのかな?もちろん協力させてもらおう。必ずその場に、駆け付ける』

 

 「感謝します。タツヤさん、俺と一緒にプラモデルの裾野を広げましょう!」

 

 その後もカイザーさん、グレコさん、チョマーさんなど前回の世界選手権で連絡先をもらった人達にそれぞれ連絡を入れ、心配の言葉と協力の快諾をもらった。なんかチョマーさんがやたらとフェリーニさんに攻撃的だったのは何かあったのだろうか?俺は詳しく知らないけど仲良くして欲しいと思う。それとカイザーさんが静かに怒ってたのめっちゃ怖かった…。

 

 

 

 

 

 そして季節は巡る。俺は小学校を卒業し、聖鳳学園中等部1年生になった。結局あの炎上騒ぎはPPSE社の思惑通りと言っていいのか鎮火し、話題になることも少なくなっている。これは俺の知り合いの世界ランカーたちが表立って声明を発表しなかったからだ。今俺がこれ以上注目されても動きにくくなるだけなので、曖昧な返答や残念ですの一言で済ませてもらったのだ。当然、彼らにも言い分があってファンにも言ってほしい言葉があったかもしれない。けど、それを飲み込んでくれた彼らには頭が下がる思いだ。

 

 俺もヒマリもツムギもセイも、誰も欠けることなく聖鳳学園に入ることができたのは嬉しい。これで誰か欠けてたら俺は泣いてたぞ!…まあ俺だけクラス別だけどな!寂しいわ~~。なんなんこの仕打ち?ガンプラでもハブられてクラスからもハブられてますやん。どう思うヒマリ?

 

 「でも部活は一緒でしょ?イオリくんだけ違うけど」

 

 「なんで一緒じゃないんだよセイ~~!」

 

 「…セイ、音楽できないから」

 

 そう、部活は模型部か軽音楽部、あるいは美術部で絞ってたんだけどセイだけ見事に別部活に行ってしまった。タツヤ先輩がいる模型部も魅力的だったんだけど最近音楽も楽しくなってきた身としてはこっちをやるのもありかなと思ってるわけで。ヒマリから借りてるギターをジャァアァンと鳴らしながら愚痴ってるわけなのだ。

 

 ベースの音を確認するヒマリとキーボードの前で指のストレッチをするツムギ。ここでセイがドラムでもやってくれればFIER BOMBER再現できたのになー。とうじうじ文句垂れててもしょうがないので今日も練習をすることにする。これもすべてはPPSEに一泡吹かせるため…!ところでなんで俺ボーカルなん?俺じゃあヒマリやツムギの歌唱力と張り合えないんですが?というか演奏しながら歌うの難しすぎない?操縦しながら演奏して歌唱してたバサラさん化け物やったんやなって。

 

 音楽を学べば学ぶほどわかる。ヒマリの才能がどれほどのものなのか。俺なんかに付き合わせていいのかとかな。そんなこと言ったら怒って口きいてくれなさそうだし絶対言わないけど。

 

 「あーあ、セイのやつ店番あるからって先に帰っちまったし、帰りにイオリ模型行って冷やかすか」

 

 「さーんせー!最近イオリくん働きづめだもんねー。誘って遊びにいこーよ!」

 

 「…セイ、ガンプラ作り、頑張ってる。私も順調、アルトは?」

 

 「おいおい、俺をなめてもらっちゃ困る。本戦用のヅダは必ず間に合わせる。それまでの予選で使うのはお前のヅダだ。頑張ろうな」

 

 「う~~~!やる気上がってきた!イオリくん誘ってカラオケいこー!」

 

 「お、いいねえ。配信者様はやる気が違う」

 

 「…いい加減アルトも出るべき。私は出たのに」

 

 「流石にかすむんだよおまえらと歌うと…俺はそこらへん凡庸なんだから」

 

 駄弁りながら片づけを終えて先輩方に挨拶して教室を出た後そのまま下駄箱に行って靴を履き替える。人気配信者に数えられるようになったヒマリ、ツムギともすっかり仲良しでこの前なんとデュエットの動画を投稿していた。もう一人は誰だ!?ってめっちゃ騒がれてたけど。というかツムギも歌が上手い。何でもそつなくこなすとは思ってたけどほんとに何でもできるな。これでお母さんに吹き込まれたことに疑いを持ってくれればなあ…と俺はツムギバレンタインデー事件を思い出して目を細めるのだった。あんな事件は2度と起こってはいけない。そう固く誓うのであった。

 

 

 「ってすっかり遅くなっちまったな…」

 

 「もう真っ暗じゃんー!カラオケ~」

 

 「…流石に無理、イオリ模型に行ってセイの様子だけ見て帰ろ?」

 

 完全に夜のとばりが落ちてしまい、電灯が道を明るく照らしている。ヴぇ~~とヒマリが未練がましくカラオケ~と呻いているのをBGMにしてそれぞれの楽器を背負った俺たちはえっちらおっちらとイオリ模型に向かうのだった。おーいヒマリ、肉屋のコロッケはうまいけど買い食いはほどほどにしとけよ~。え?俺?そんな金ないよ!できるのなら俺もしたいわ!

 

 イオリ模型は知る人ぞ知る、というレベルの店舗だ。大型模型店に押されてはいるが確かにコアな人気を持っている優良店舗という感じ。だから玄人はイオリ模型に行くなんてこの近辺じゃ言われてる。あとセイが作った展示用のガンプラの完成度の高さ、かっこよさ。秘かにセイ自身にもファンがいるのだ。例えばタツヤさんとか、あの人が褒めて目を付けるってことはセイは相当気に入られてるぞー、なんてな。セイのビルダーとしての力は世界選手権に通用するということの証左だろう。さすがはマイベストフレンド、やってくれるぜ!

 

 「おーいセイ…ってあら?」

 

 「リンコさんとラルさん?GPベースの方で何してるんだろ?」

 

 「…バトル?」

 

 「セイが?確かにあいつなら煽りに煽られたら受けるような気はするけど…」

 

 そう言いながら3人そろってGPベースの部屋に設置されている観戦用の窓の方に歩を進める。途中で見ていたリンコさんとラルさんが振り返って俺たちに気づいた。軽く挨拶をして3人そろって窓を覗き込む、やっぱりセイだ。操縦スペース内で光の球を握って必死に操縦している。相手は…

 

 「サザキか…」

 

 「知ってるの?」

 

 「…あまりいい噂を聞かない。この近辺じゃ強いほうらしいけど」

 

 「最近セイの周りに出没してるってのは聞いてたんだけどなあ、強引に迫ったか。あのビルドストライクを使いたかったから」

 

 ビルドストライク、セイが世界選手権用に作成した本気の機体。俺も見せてもらったが完成度が非常に高いし、それに伴ってGPベース内の性能もびっくりするほど強いのだ。今対戦しているギャンの少年、サザキ・ススムはそれが欲しくなった。こいつ節操ねえな。

 

 このサザキという少年、たしかに操作技術は高いのだけどガンプラ界隈ではあんまり評価は高くない。理由は単純、ガンプラを大事にしてないから。要は勝つための道具としてしか見てないし、壊すことにも全くためらいがない。勝利に貪欲と聞けば聞こえはいいけどファイター連中ならともかくビルダー連中としては面白くはないだろう。特にガンプラを大事に大事にしてるセイには猶更。

 

 だからコンビを組む相手としては除外されていたはずなのだが、サザキもやはり強いファイター、強いガンプラが欲しくなった彼はセイに目を付けてここ1週間くらい付きまとっているという話なのだ。俺がいるときとかは追い払ってたんだけどいないときも来ていたんだな。俺にも声かけた癖に。アホらし。

 

 「しかし、あのサザキという少年…確かにファイターとしての技量はあるようだ」

 

 「そりゃあ、腐っても店舗大会とはいえ優勝してますからね…セイは、どうするんだ?まじめにやっても勝てる相手じゃないぞ」

 

 ギャンが装備を捨てて、ビルドストライクに向かっていく。装備がないビルドストライクへ条件を合わせたかそれとも、なくてもお前くらいなら余裕だという嘲りなのか…腹立つななんか。こいつホントに節操なくて、強いと思ったビルダーのほとんどに声をかけてすげなく断られてもなお諦めない、そこら辺はファイターとしていいと思うんだけど、言動が高飛車でプライド高いから敬遠されてるんだ。あれさえなければ組むって言ってるヤツ結構いるんだけど。

 

 必死にギャンのパンチやキックを躱し続けるビルドストライク、武装の類が完成してないのが痛いな。セイも必死に頑張っているみたいだけどやはり分が悪い。ビルドストライクの性能がすさまじいから躱せているが、その性能にセイがついていけてない。一歩間違えればこけたりしてまともに攻撃が当たる。

 

 「イオリくん…」

 

 「…セイ、このままじゃジリ貧、乱入する?」

 

 「ダメだ。セイがバトルを受けたんだ。俺たちが助けてどうする。けど、どうする気だあいつ…」

 

 くそ、負けるぞあいつ!せっかく作った新しい愛機の初陣で!目を背けたくなるが、そんなことしたら俺はセイに顔向けできん。ヒマリはもう見てられないとばかりの表情だし、ツムギは思いっきり不機嫌になってる。一瞬そっちに気を取られた瞬間、装甲がぶつかり合う音が響いた。すぐさまビルドストライクの方に目を向ける。

 

 そこには、ブーストを噴射してギャンに向かってタックルを決めるビルドストライクの姿があった。けど、直感で分かった、セイの操縦じゃない!動きが違う、慣れ親しんだ慎重さのかけらもない思い切りのいい操縦に思わず操縦スペースの方に弾かれたように目が行った。

 

 「誰だ…!?あいつ」

 

 「…知らない。見たことない!」

 

 「イオリ君の知り合い…?」

 

 「お友達かしら…?」

 

 そこにいたのは赤い髪をした勝気そうな少年、年の頃は俺たちと同じくらいだろうか?そんなことより、どこから入った!?まるで瞬間移動でもしたかのように忽然と現れたぞ!?セイの様子から知ってる人物のようだけど、強引に操縦を変わった少年はぐりぐりと光の球をいじっている。ビルドストライクが珍妙な動きをするが、多分あいつ初心者だぞ!?

 

 「おいセイ!ギャンが来るぞ!構えろ!」

 

 聞こえないとわかっているが思わず声が出た。ビームサーベルを構えてビルドストライクに突進してくるギャン、振りかぶられるビームサーベルを、あっさりと躱した。そのままの連撃を躱し、反撃で蹴りとパンチを入れる余裕っぷり…!こいつさっきまで操縦すら分かってなかったヤツか!?あらは多いけど様になってるぞ!?

 

 「うそ…」

 

 「…信じられない、さっきまでの動きと全然違う」

 

 舌を巻く、確かに操縦出来ている、タツヤさんやツムギとかと比べたらそりゃあ劣るけどサザキ相手なら余裕とも思えるくらい、できている。慌てて捨てた装備を取りに戻るギャンを迷うことなく追うビルドストライク、装備を取り戻したギャンのミサイルとビームライフルを鮮やかに躱してビームサーベルを抜いた。

 

 もはや混乱の極致にあるであろうサザキは動きを止めてビームライフルを連射する。それすらも意に介することなく、全力でブーストをふかせ加速したビルドストライクはそのままギャンを一刀両断、システムがバトルの終了を宣言した。嘘だろ…?

 

 「勝っちゃった…」

 

 「…でも、あれありなの?」

 

 「サザキが文句言わなかったらあり…あれっ!?いない!?」

 

 崩れ落ちるサザキ、呆然とするセイがいるバトルスペースの中にいるべきもう一人、赤毛の少年がまた瞬間移動したように忽然と姿を消していた。思わず3人そろってきょろきょろと周りを見てしまうが見当たらない。セイも少年を探したいらしく乱暴にドアを開けてこっちに出てきた

 

 「あっイオリくん!さっきの…?」

 

 「…行っちゃった。セイに初めて無視された」

 

 「ははあ、あいつ…惚れたな?」

 

 セイは俺たちの事は眼中にないとでも言わんばかりに店のドアを開けて外へ走っていってしまった。あいつがここまで必死になるってことは…見つけたんだな?自分の相棒になるべき人物を。

 

 「惚れ…?うぇっ!?イオリくんってまさか…!?」

 

 「…びっくり」

 

 「いやそっちじゃねえよ?ビルダーとして惚れたんだ、きっと。自分のガンプラを託すことができるって思ったんだろうさ。さて、ツムギ、ヒマリ」

 

 「なんだ、よかったー。なにかなアルトくん」

 

 「…なに?」

 

 「多分これからセイのやつは滅茶苦茶に強くなる。あの赤毛のやつとコンビを組めたらの話だけどな。俺たちもうかうかしてられないってことさ。気合い入れて、あのガンプラに勝てるようにならないとな」

 

 「そうだね。イオリくん、すごく嬉しそうだったし」

 

 「…わくわくしてきた。ヅダであのガンダムに挑みたい」

 

 言うまでもなかったかな。気合いを入れなおす二人を見て、俺も気を引き締めて大会用のヅダを作り上げないといけないだろう。今日はいいものを見れた。ああ、あと…よかったな、親友。




 やっと原作はいれた~~、長かった…
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