「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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仕事が忙しいので2日に1回更新になるのを許してください。悪気はないんです…書きためがないだけで。


他人がやってるのを見ると羨ましくなる

 「まったく、どうなってるんだか!」

 

 「おー何時になく不機嫌だな親友。バディに何か不満でもあるのか?」

 

 「お~はよ~イ~オリく~ん」

 

 「…セイ、おはよ。昨日のバトル、すごかった」

 

 「あ、みんな。おはよう。バディって…レイジには断られたよ」

 

 「断られたのか!?あんな熱烈ラブコールしといて!?」

 

 朝、登校中の事である、ぷりぷりと怒るセイを見つけた俺とツムギ。ヒマリは8割寝てるので仕方なく俺がおんぶしているが、何とか挨拶をしてくれた。よしよし偉いぞー。でもそろそろ起きようなー?いくら何でも最近俺に頼りすぎだお前。俺いなかったら毎日遅刻じゃねえか。ツムギも起こしに来てるんだぞ~。

 

 「待ってよアルト。もしかして昨日見てたの!?僕の部屋にいた!?」

 

 「バトルは見てたけどお前飛び出して帰ってこなかったからな。普通に帰ったよ。へ~、お前の新しい想い人はレイジっていうのか~、なるほど~」

 

 「ねえアルト、なんでそんなに揶揄ってくるの?」

 

 「昨日無視された腹いせ」

 

 「それは、悪かったけど…でもレイジはガンプラバトルに出る気はないみたい。だから、僕がやらなきゃ」

 

 「あらら…」

 

 これ悪いループに突入しかかってんな。俺はやっと目が覚めたヒマリを下ろしてぷりぷりと怒るセイに向き直る。むきになってきてるなこいつ。俺がこれどうこう言って解決するかー?どうしたもんか…

 

 「それにレイジったら凄い変な奴なんだ!常識ないし、勝手に泊っていくし…」

 

 「長くなるな、こりゃ」

 

 ぐちぐちモードに突入したセイを見ながら俺は朝からいろいろありそうで面倒だなあと…苦笑いするのであった。あー、聞いてる聞いてる。大変だったな親友。え?おざなり?そんなまっさかー。

 

 

 

 俺のスマホがメールの到着を知らせた。時刻はすでに授業をすべて終え、部活に向かう人もいるくらいの隙間時間。当然、俺もクラスを出て軽音部に向かうところだったのだが…とりあえずスマホを見ると、あれ?タツヤさんだ。電話じゃなくてメールなんて珍しいな。件名は…「イオリ君とガンプラバトルをすることになったので良ければ体育館に来てほしい」…えええっ!?セイが?昨日の今日で!?ガンプラバトルを受けた!?しかも紅の彗星として名をはせているタツヤさん相手に!?

 

 「えらいこっちゃ…」

 

 「ねえアルトくん!メール見た!?イオリくんが…」

 

 「…ガンプラバトル、するって。昨日の赤い人と一緒に」

 

 「バトルの件はタツヤさんから聞いたけどレイジってやつが一緒なのは初耳だな。この学校にそんな奴いたか?あんな目立つ奴なのに」

 

 「とりあえずいこ!」

 

 「…無理やりやらされてるなら、止めないと」

 

 「タツヤさんに限ってそれはないだろうけど…いや、あの人割と我慢弱いタイプだったな…いくか!急いで!」

 

 駆け込んできたヒマリとツムギと一緒になって体育館へ走る。廊下は走るなと怒られそうではあるが今は見逃してほしい。急いで駆け込んだ体育館にはタツヤさん目当てと思われる沢山の女子と、GPベース、そしてセイと一緒にいるレイジ、相手は…タツヤさんじゃない?

 

 「ゴリラみてえ…」

 

 「誰がゴリラだそこの1年!」

 

 「うわっ聞こえてた」

 

 なんつー地獄耳だよ。ドアから距離結構あるのに。あ、タツヤさんだ。手招きしてるし行ってみるか。うっわー「誰だあの1年、タツヤさんに近づくんじゃねえよ」っていう視線が怖い。後ろのヒマリとツムギなんて縮こまってるしやめてくんない?両袖掴まれると歩きにくいんだよ。

 

 「やあ、アルトくん。メール、読んでくれたかな?」

 

 「何ですかこれは。タツヤさんにしては強引ですね。セイが何かしましたか?」

 

 「何もしてないさ。赤毛の彼は、少し悶着したけどね。モンタが吹っ掛けた勝負を彼が買った。それだけのことさ」

 

 つまり、この人自身は場を整えただけで勝負を吹っ掛けたわけじゃないと。セイがビルドストライクを出してセットした瞬間タツヤさんは感嘆の息を吐いた。

 

 「素晴らしいガンプラだ…さすがはイオリ君といったところか。だが…」

 

 「ええ、そうですね。未完成です」

 

 そう、ビルドストライクは未完成だ。ストライクの名を関するあの機体には装備すべきストライカーパックがまだないし、基本装備であるはずのビームライフルやシールドすらない。バルカンとビームサーベルだけの未完成。だけどその性能は並のガンプラを軽々と凌駕する。対するゴリラ先輩は…ゴールドカラーのスモー?また珍しいもん使うなあ。

 

 バトルが始まる。ビームサーベルを抜いてバーニアを噴かして距離を詰めるビルドストライク。スモーのビームガンを紙一重の距離で余裕を持って躱している。振りかぶられるビームサーベルをヒートホークで受けるスモー。

 

 「速いな…予想以上だ」

 

 「そりゃあ、俺の親友の作品ですから」

 

 「…それだけじゃないだろう?バーニア、君の模倣じゃないかな?」

 

 …鋭い。そう、ビルドストライクのスラスター関連は俺の技術のエッセンスをセイが独自のアプローチで取り入れている。ビルダーにはそれぞれ得意なものがあって、例えばセイなら機体、主に中身をいじるのが得意。タツヤさんなら武器制作が得意。俺の場合は3つ、可変機構、ミサイル、そして高機動を可能にするスラスターだ。特に一番自信があるのがスラスター関連。熱核タービンエンジンに代表されるマクロスの技術を再現するために誰にも負けないようそこだけは鍛えぬいたからだ。

 

 そして、そんな俺を近くで見続けていたセイはそれを己の形に落とし込んでビルドストライクに搭載した。だからあの機体は、追加装備なんて無くても並の機体の数倍は速い!

 

 「あれよりまだ速度が上がるのか!?」

 

 「よくやる…あれ相当なじゃじゃ馬だろうに。ツムギのヅダといい勝負だ」

 

 「…私のヅダのほうが速いもん」

 

 「比べるところそこなんだツムギちゃん…」

 

 残像を残しそうなスピードでスモーを翻弄するビルドストライク。バルカンでビームガンを破壊し、ヒートホークを両断する。ゴリラ先輩のスモーもさすが模型部というべき完成度ではあるが今回は相手が悪い、日の半分をガンプラに注ぎ込む生粋のガンプラバカが本気で作った作品だ。同じくらい狂気にかられたガンプラでもない限り拮抗なんてしない。

 

 「こんのおおお!!!」

 

 「おせえ!」

 

 左腕の大型ビーム砲を放つスモー、建物を盾にして躱したビルドストライクだが、ここで風向きが変わった。ステージ設定がコロニー内であったため、今のスモーのビームでコロニーに穴が開いたと判断されてステージ内を乱気流が襲ったのだ。通常のガンプラであれば身動きすらできない。現にスモーも改造で付けたと思しき足裏のスパイクを使って耐えている。風上を取られてるからどうにか風上を取り返して攻める、と思いきや

 

 「レイジ!ビルドストライクならこのまま進める!前へ出るんだ!」

 

 「おっもしれえ!やってやる!」

 

 「なにぃ!?なんだあの推力は!?」

 

 ゴリラ先輩が驚いてるように、ビルドストライクは向かい風を全く物ともせず、風下からそのままスラスターを噴射してビームサーベルで攻めていったのだ。さすがはセイ、その作りこみならあの程度どうともなかったな。連射が利かないらしい大型ビーム砲を発射前に腕ごと切り捨て、そのままの勢いでスモーを両断するビルドストライク、システムがバトル終了を…終わらない!?あれ!?

 

 「どういうことですかタツヤさん…いないんだけど」

 

 「あ、GPベースのほうにいるよ」

 

 「…乱入?それはありなの?」

 

 「あり、なのか?いやタツヤさんが我慢きかなかっただけか…」

 

 さっきまで俺の隣でバトルを見守っていたはずのタツヤさんの姿はいつの間にか体育館中央に設置されたGPベースの前にあった。ゴンダ先輩というらしいスモーの操縦者と入れ替わるように操縦スペースに立っている。当然、GPベースの中にあるのは愛機であるザクアメイジング、トレードマークの長いライフルは持たされず最初からヒートナタを2本持っているようだ。

 

 「流石に大人気ないぜタツヤさん…」

 

 「アルトくんがそれ言う?」

 

 「少なくとも乱入したことはねーよ!?」

 

 「…いいな。私も」

 

 「ちょっ!?ツムギさん!?」

 

 ツムギがうきうきと乱入しようとしてるので襟元を掴んで引き留めつつ様子をうかがう。

 

 「少しばかり早く勝負がつきすぎたようだ。これでは集まってくれたギャラリーに申し訳が立たないと思わないか?少なくとも私はそう思う!」

 

 「自分が戦いたいだけでしょタツヤさん…」

 

 「実はアルトくんも戦いたかったりして」

 

 「…そんなことないよ?」

 

 「…嘘つき」

 

 ハイその通りです。ぶっちゃけ今すぐ乱入してタツヤさんとバトりたいところだけど、多分戦いだしたらどっちかの機体が大破するまで続くだろうから今の大事な時期にそれはと思って自重してるんです。いいなーセイにレイジ。タツヤさんがあんなわくわく顔で戦いに赴くんだから相当気に入られたぞー。

 

 乱入を受け入れたセイたち。風上から攻めてくるザクアメイジングに対してビームサーベルの二刀流で対抗する、凄まじい推力を活かして乱気流を無視するビルドストライクに対し、追い風を受けることで必要最小限の動作でコンパクトに攻めてくるザクアメイジングの衝突。

 

 「速い…だが、それだけだ!」

 

 「追いつけない!?どうして!?」

 

 「にゃろぉ…やってくれるじゃねえか」

 

 ビルドストライクは完全に翻弄されている。答えは単純、タツヤさんがそれだけ巧いのだ。ビルドストライクは言うなれば機体の能力のごり押しだが、タツヤさんはザクアメイジングの性能とそこに百戦錬磨の技量をのせて動いている。いくらレイジが適性が高いとはいえ始めてから2日で勝てるような相手じゃない。しかも手心加えまくりだ。ヒートナタしか使ってないもん。

 

 バルカンの弾幕をすり抜けるように躱し、蹴りでビームサーベルをはじいた後、ヒートナタの峰で殴り飛ばす。たたらを踏んだビルドストライクの斬撃を身をかがめてよけ、またヒートナタの峰で足払いをかけ、転ばせる。そのまま急所であるコクピット部分にヒートナタを突き付け、チェックメイト。勝ったのはタツヤさんだ。

 

 「いいガンプラだ。未完成なのが口惜しいが…イオリ君。選手権には出るんだろう?」

 

 「えっはい!」

 

 「なら、選手権までにそのガンプラを完成させてくれ。私が戦いたいのは君が本気で作ったガンプラ…本当の決着は選手権が相応しいだろう」

 

 「ユウキ先輩…どうしてそこまで?」

 

 「君のファンだから…と言いたいが本当の理由は私に勝ったら教えよう。決着は、そこで…むっ!?」

 

 ヒートナタを突き付けたまま会話していたザクアメイジングに対して弾幕が降り注いだ。余裕を持って飛びずさったザクアメイジングと弾幕を放った張本人、木星エンジンから爆炎を噴き上げ宙に浮かぶザクマシンガンを携えたヅダの視線が交差する…ってツムギ!?さっきまでそこに…って上着脱いで乱入していきやがった!?ツムギの上着を持って呆然とする俺とあっけにとられるセイ、レイジペア。のほほんとしてるヒマリ、隠してる顔を出して瞳を輝かせるツムギ、武者震いしちゃってるタツヤさん…まずいぞこれ!?どっちかぶっ壊れるまでやるやつだ!

 

 「おいセイ!巻き込まれる前にビルドストライク引っ込めろ!巻き添えで壊したくねーだろ!」

 

 「えっアルト!?わ、わかった!」

 

 「あっセイてめー!まだ終わってないぞ!」

 

 「今回は僕らの負けだよレイジ、それに…この戦い、見逃したくないからさ」

 

 「んだとぉ…」

 

 「ま、見てみたら?案外面白いと思うよ。俺はサオトメ・アルト、セイの友達だ。レイジ、でいいか?」

 

 「あ、ああ。名前長ったらしいからレイジでいい。クッソ、俺がこんな玩具で…」

 

 睨み合うヅダとザク、正式主力量産機と欠陥機の烙印を押された機体。設定上なら因縁の対決だけど、こっちで見たらただ我慢できなかった同士のじゃれ合いなんだよなあ…あんまり機体ぶっ壊しそうなら俺も乱入するか?ツムギに至っては次の休みがすでに選手権本番なのに。もー、いいなー。いかんいかん本音が。

 

 爆炎を吐き出して加速するヅダのヒートホークをヒートナタを2本重ねて受けるザクアメイジング。だがヅダの余りの勢いに足が滑り押し込まれている。ヒートホークを滑らせて受け流すザク、すれ違いざまの一閃はヅダがヒートナタの側面を殴りつけるという奇策によって防がれた。ビームサーベル相手じゃできない芸当だ。

 

 「面白い!」

 

 「…ずるい。あんなの見せられたら我慢できない!」

 

 スラスターの軌跡が交差し、ザクとヅダがぶつかり合う。誘導ロケット弾を余すところなくザクマシンガンで撃墜し、ヒートナタとヒートホークがぶつかり合う。乱気流の中で戦ってるとは思えないほどの操縦の安定感が生み出す舞踏を見て盛り上がるギャラリーたち。これいつ止めたらいいんだ…?

 

 「なんだ、これ…?すっげえ…」

 

 「だろ?玩具だからって言うけどさ。遊びだから本気になれるんだよ。全力で、相手にぶつかるっていうのは気持ちのいいことだと思うんだよね」

 

 「現にアルトはうずうずしてるもんね。乱入したいんでしょ?」

 

 「そうだけど!?でも俺が突撃したらもう誰かの機体がぶっ壊れるまで続くんだよ!特にツムギのほう!選手権も近いのに…!」

 

 「アルトくん乱入したら~?」

 

 「ヒマリが悪魔の言葉を投げかけてくる…!」

 

 口をポカンと開けたレイジが思わずという感じで漏らした言葉を嬉しく思いながら勝手なことを言う二人に突っ込む。変わらずGPベースの中では、ヅダとザクが激しい攻防を続けているのだった。模型部の人たちも、周りにいるギャラリーも、なぜかいるラルさんも一緒になって盛り上がっている。やっぱりガンプラバトルはこうでなくっちゃな、と俺は笑いながらそう思うのだった。




 現状にビルドストライクの原作との乖離点

 スラスターが超強化されてる。原作では逆らって走るがせいぜいだった乱気流の中を当たり前のように風に逆らってブーストをキメてくる。大体アホ主人公がスラスターの研究にセイ君を巻き込んだ結果。

 あと1つくらい違いを入れようかなとは思っております
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