「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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オリジナル入ります。次次回で原作に戻ります


やろうと思えば案外何とかなる

 「…アルト、怒ってる?」

 

 「怒ってはないけど、どうしようかなと思ってる」

 

 「…ご、ごめんなさい」

 

 「アルトくんいい加減許してあげたら~?」

 

 「いやホントに怒ってるわけじゃないぞ?ただ今日どうしようかなと思ってるだけで」

 

 「…あうあう…」

 

 「少年、ねちっこい男は嫌われるぞ。過ぎたことなのだ、ドンと受け入れたまえ」

 

 セイ&レイジコンビがタツヤさんに敗北を喫してからすでに何日か経ち、現在俺たちはラルさんと新幹線の中にいる。何をしているかというと日本選手権予選の第一ブロックである東北に向かっているのだ。で、新幹線の机の上でヅダの修理をしている。そう、修理である。ツムギのやつやりやがったのだ。タツヤさんといい勝負をしていたんだけど一瞬のスキを突かれて敗北、したんだけどそこで悪い癖が出た。いつも通りの空中分解である。ギャラリーは騒然、セイは白目をむき、レイジは疑問符を浮かべ、俺は崩れ落ちた。当の本人はとても満足そうであったとここに記しておく

 

 やりやがったこいつ、選手権用のフルスクラッチヅダで選手権直前に空中分解しやがった。このヅダは機体性能を極限まで高めるためにツムギが新しく作ったもので、空中分解機能がついてないのだ。それを無理やり自爆なんてさせて空中分解したもんだから変な壊れ方して修理が長引いているのだ。

 

いいよ普段なら直す時間があるから。だけど時間がねぇんだよ!いくら急いでも間に合わんぞこれ!くっそー、微妙に重要パーツにまで破損が及んでやがる…!ちなみにツムギも涙目であうあう言いながら一緒に修理している。予備機持ってきてるけどただの改造ヅダなんだよなあ…んもー、やめろって言ったのに

 

 「えー、残念なお知らせがあります」

 

 「…はい」

 

 「これ、間に合いません。選手権会場について俺がフルで頑張ってもおそらく3回戦くらいまでは間に合いません。なのでツムギさん?」

 

 「…はい、何でも言ってください」

 

 「女の子がそんなこと言うな。修理するまでこのヅダで頑張ってもらうことになるんだけど…予備ないんだから間違っても空中分解するなよ?」

 

 「…いや、その」

 

 「するなよ?」

 

 「…はひ、うぅ…」

 

 有無を言わせぬ俺の口調に瞳を涙で飽和させているのが髪のカーテン越しに見えるツムギが答える。流石に言い返せないのかラルさんもヒマリも苦笑するばかりだ。手を止めずに繰り返される問答が一段落したところで新幹線が目的の駅についた。いまだに冷える青森県である。もこもことしたジャケットに身を包んだ俺たちは早速と言わんばかりに選手権会場へ向かう。

 

 「本当だったらセイのやつも来るはずだったんだけどなー」

 

 「しょーがないでしょアルトくん。ユウキさんとのバトルで燃えちゃったみたいだし。「ビルドストライクを完璧にするんだ!」って」

 

 「…セイに吉報を持って帰る」

 

 「ま、ツムギなら問題ないでしょ。俺はそう信じてる」

 

 「…うん。頑張る」

 

 セイは今日来てない。ビルドストライクが未完成なのもあるし、バディのレイジの経験不足もあるからだ。ガンプラバトル世界選手権の日本代表決定予選は日本をいくつかのブロックに分け、そのブロックごとの優勝者が代表者ということになる。で、ここからが重要なんだけど日程が全部ずれてるのだ。しかも居住地域は関係なくどこの大会に、何回でも出場可能というスタイルだ。

 

 で、俺たちはいの一番に日本代表になるべく、この日のために作ったヅダを携え…てきたんだけどなあ。不安だ。ツムギならよっぽどの強者と当たらなければ改造ヅダで余裕だと思うんだけど、勝てば勝つほど強者と対戦する機会が多いからなあ。マジで会場ついたら急ピッチで直さなきゃ。

 

 「ついたぞ、ここだ」

 

 「思ったよりも普通、というか小さい?」 

 

 「アルトくんどんなの想像してたの?」

 

 「ドーム、前行ったとこみたいな」

 

 「さすがにそこまでいかないがビル一棟会場なのだ、十分だろうに」

 

 「…わくわくしてきた」

 

 意外と静かだ。GPベースがある個室に分かれて淡々と試合をする形式らしい。ネットで登録したファイター情報を受け付けに伝えて作業スペースを借りてヅダの修理を進めていく。開始時間まであと30分もない…!やっぱり間に合わんぞこれ!ああ、もう!この装甲は交換して、あーここも交換…やっべしくった!ピンセットどこやったっけ…

 

 「すさまじい速度だな…」

 

 「アルトくん集中してるみたいだし、静かにしておこうかな」

 

 「…ありがと、アルト」

 

 んもー、修理する項目が多いったら。でもこれもツムギのため。彼女が楽しく、それでいて確実にガンプラバトルに勝てるようにするのが今の俺の役目。この程度の事なんざ苦労のうちには入らんね。ついでに改造加えてより強くしてやれ。今の俺ならそれができる。さすがはツムギのフルスクラッチという感じだし、これをサポートする感じで行ってみよう。

 

 

 「んー、これであと少し、ってあれっ!?今何時だ!?」

 

 「あー、やっとアルトくん気づいた。もう2時間たってるよ。ツムギちゃん2回戦突破して今3回戦行ってるよ?もー、アルトくん集中しすぎ」

 

 「…まじで!?試合3つも見逃したの!?うぁぁぁぁごめんよツムギぃぃぃ…」

 

 ふっと集中が途切れて意識が覚醒した俺に律儀にあれこれ教えてくれるのはずっと俺に付き合って一緒にいてくれたらしいヒマリだ。確かに俺はヅダを何とかしようと極度の集中状態の中にいたけどばっちりしっかり試合は見る気でいたのでツムギには土下座してもし足りないような不義理をしてしまったことになるのだ。というかまず応援できなかった事実に打ちひしがれてる。うぉぉぉん…

 

 「んーん、アルトくん頑張ってるからツムギちゃんも気合入れなおしたみたいだよ?それに、ヅダないと困るでしょ?」

 

 「そうだけど…そうだけどぉぉぉ…見たかったんだよぉぉ…」

 

 「ありゃりゃ、大丈夫だよーアルトくん、次の試合から見ればいいじゃない」

 

 机に突っ伏して号泣する俺をよしよしと撫でてくれるヒマリ、これ客観的に見たら物凄いダメ男なのでは?凹むわー、と考えてると自動ドアが開く音がした。入ってきたのはラルさんとツムギ…慌ててスライディング土下座の態勢に入ろうとした俺だがツムギの雰囲気を見て思い直した。様子がおかしい…

 

 「あ、ツムギちゃん!どう!?勝てた」

 

 「勝利はした…が、問題があってな」

 

 「…どうしよう、アルト…」

 

 「何があった…ってんだこりゃ!?」

 

 ツムギが見せてくれたのは、腰から上下に砕かれて分断されたヅダの姿。これ…簡易的な修理じゃ無理だ。完全に分解して中身を変える必要がある。この壊れ方だったら新しくキットで作り直した方が速いくらいの壊れ方…

 

 「勝った…んだよな?相手の攻撃か?」

 

 「…うん、えっと、ね…」

 

 ツムギが言うには対戦相手には勝てたんだけど、相手がガンプラ界の強豪の一人、ガンダムハンマーを主武器とする通称「怒涛の鉄槌」と呼ばれる人だったのだが、ツムギがヅダで相手を両断したところまではよかったんだけど、直後に相手が放ったハンマーがヅダを直撃しこうなってしまったらしい。バトルシステムと審判は先に致命傷を入れたツムギを勝者としたんだけどヅダは木っ端微塵、どうしましょうかというわけだ。一応こういう時は破損がひどい順に試合を後回しにしてくれるそうなのでそこで何とかしろという話らしい

 

 「無茶言うなよ…」

 

 「儂は係員の方にもっと時間が取れないか話してこよう。誰も悪気がない事故だ。こういうこともある」

 

 ラルさんがドアを開けて出ていった。次試合があと30分後…仮にラルさんが引き延ばして50分というところだろう。修理途中のヅダを見る。まだ実戦に出せるレベルまで修理を終えているわけじゃない…どうする?諦めるのは論外だ…なら…

 

 「やるか…!20分でやるぞ」

 

 「…20分って、アルトでも…!」

 

 「ツムギが頑張ってるんだから俺も頑張るんだよ!機体不備で試合できませんなんてセコンドじゃねえだろ!待ってろ、超特急で何とかするから!」

 

 時間が惜しい、ツムギに言った言葉は自分に言い聞かせるためでもある。やってやる、試合まで30分?10分余裕持たせてやろうじゃねえか。どうせ修理しなきゃいけないんだ。時間前倒しにして先に終わらせたっていいだろ?それに、ここから先は強い機体が必要だろうから。あと少しなんだ、すぐに終わらせてやる。

 

 

 

 

 「すまん、やはり時間は伸ばせないと…むぅっ!?」

 

 「あ、ラルさん。もう大丈夫みたい、ね?ツムギちゃん」

 

 「うん…!アルト、ありがとう。勝ってくるから、みてて」

 

 「おう、今回ばかりは最高に疲れたわ。ま、これで解決だな」

 

 ラルさんが戻ってきて驚嘆の声をあげた。ツムギが胸に抱く青い機体、ツムギが作成し俺が修理と調整を施したフルスクラッチのヅダが新品同様の姿でそこにあった。な、なんとかなった…!予め家で作っておいた交換用の塗装済みパーツがなかったら間に合わないところだった…!だけど、これでツムギは万全になった。機体性能が足りなくてツムギの操縦についてこれないということはとりあえずないだろう。おかしいと思ったんだ、いくら普通のキットのヅダを改造したものとはいえ撃破直後の相手の攻撃に当たるへまをツムギがするとは思えない。

 

 なぜそれが起こったか?ツムギの操縦に機体の性能が追いついてなかったのだ。それだけツムギの操縦は速いし正確だ。調整出来てない機体で追いつけないのなら対応できる機体に変えればいい、それだけでこの子はずっと強くなれる。なにせ、モビルスーツでバルキリーと張り合える子だ。少なくとも予選で落ちるわけないと俺は信じている。

 

 卓上を片付けて試合会場へ向かう。俺は今日初めて入るGPベースがある試合会場。すでに相手がスタンバイしている…って相手どっかで見たことあるな…あ!思い出した!セイの部屋のプラモ雑誌で特集組まれてた人だ!確かMA使いの人で二つ名が「鋏角」だったかな。ザムザザーを愛機にしてた人だ。ザムザザーが苦手なはずの近接戦で多くの勝ち星を挙げている人だったはずだ。

 

 「これよりイロハ・ツムギとウチガネ・シンとのガンプラバトルを開始します!両者ガンプラをセットしてください!」

 

 「年下が相手でも手加減する気はないよ。正々堂々、楽しもうじゃないか」

 

 「…アルト、近くで見てて。あなたが直したヅダの凄さを私が証明するから。よろしくお願いします」

 

 ツムギに促されて俺はGPベースのセコンド、つまり副操縦者の席に着く。顔を露出したツムギと相手が操縦コンソールを握りシステムが試合開始を告げる。木星エンジンを噴射して空を飛ぶヅダとどっしりと待ち構えるザムザザー、ヅダのザクマシンガンによる牽制を躱す、あるいは陽電子シールドで受けながら、4本の腕のうち2本分の大型ビーム砲で撃ち返してくる。けど、撃った瞬間にはヅダはいない。鋭角に曲がるというバルキリー顔負けのマニューバで接近するヅダがヒートホークを振り上げる。

 

 「甘い!捕まえ、なにっ!?」

 

 「…遅い!止まって見えるよ!」

 

 片腕を変形させてクラッシャーを展開してヅダを掴もうとするザムザザーだが、ヅダはさらに加速、クラッシャーを躱してすれ違いざまにヒートホークで切り落としたのだ。反転してこっちに戻ってくるヅダがザクマシンガンを投げ捨て腰にマウントしていたザクバズーカを連射する。慌てて陽電子シールドで防御するザムザザー、足が止まったな。これはツムギに対しては最高の悪手だ。これを好機と見たヅダがザクバズーカをザムザザーに向かってぶん投げて直撃させ、シュツルムファウストで狙い撃った。ザクバズーカの残りの弾倉に誘爆し爆炎がザムザザーを包み込んだ。

 

 「くっ視界が…!」

 

 「…ありがとう、楽しかった。でもやっぱり、ヅダが最強」

 

 そう呟いたツムギのヅダが瞬間移動と見まごう程の加速を見せ、ヒートホークを振りかぶり、そのままザムザザーを両断した。バトルエンドの音声と共に審判が状況を判定する。

 

 「ザムザザー大破により終了。イロハ・ツムギの勝利とします!両者ガンプラを回収して退出してください。残りの試合は明日になります」

 

 「やれやれ、負けたよ。ありがとう、いい勝負だった。君が代表になれるよう、応援している」

 

 「…ありがとうございました。頑張ります」

 

 「うん、頑張ってね。それじゃ」

 

 言うことだけ言って握手したウチガネさんはささっと出ていってしまった。引きずらないいい人だ。ラルさんとヒマリが観戦室からこっちに入ってくる。ツムギもヅダを回収してケースに収めている。機体を変えたとはいえあそこまで余裕を持って勝てるようになるとは思わなかった。だって無被弾だぜ?なかなかできることじゃない。

 

 「…アルト、さすが、完璧。ん!」

 

 「おう、ありがとよ。ほい!」

 

 とてとてと笑顔で駆け寄ってきたツムギが手を挙げたので俺も手をあげてパン!とハイタッチをして、笑い合ってるとヒマリが羨ましかったのか二人まとめて抱き着かれた。団子みたいになってわちゃわちゃしてる俺たちを、本来なら追い出すべき審判さんは見ないふりして見逃してくれるのだった。ラルさんも腕を組んでがははと笑っている。とりあえず、1日目は乗り切った。あとは、明日の後半戦だ。




 日本は第何ブロック代表みたいな感じで地区ごとの代表者が世界選手権にに出れるみたいな感じっぽいのでセイたちとは別ブロックに参加するみたいな感じにしてます。

 次回まで予選編で、それ以降原作合流で行きますね
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