「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 作:カフェイン中毒
白亜の機体、VF-1と似たようなシルエットを持ちながらよりブラッシュアップされ、黒のラインと赤のラインが入るVF-25、この機体はマクロスフロンティアシリーズの主役機であり、VF-19からさらに世代が進んだ最新鋭機なのだ。俺の個人的な見解ではこのVF-25からバルキリーは一種の完成を見たのではないかとすら思っている。ステージⅡ熱核バーストタービンによる超推力、ISCによる慣性制御によって今までの機体とは比較にならないレベルの運動性を保有しているのだ。
今回パック装備はつけてないので持っている装備はレーザー機銃、高速機関砲、ガンポッド、アサルトナイフ、そして脚部ミサイルのみだ。素組みのレイジを相手にするんだからこれ以上強化したらただの蹂躙になっちゃうし。でも機体性能差がありすぎてなあ…改造はともかく塗装ぐらいすればよかった。ごめんよセイバーガンダム…
「そりゃ飛行機ってやつか?へっ!すぐ落としてやるぜ!」
「出来るもんなら!」
接敵する。セイバーはすぐさまビームライフルと背部のビーム砲を同時に連射してくるが甘い甘い、そんな当てずっぽうな射撃に当たるほど俺は弱くないぞ。ひらりひらりとファイターで躱してセイバーが移動する予測位置にガンポッドの射撃を置きに行く。未来予知でもされたかのように必中弾が飛んでくるのを何とかシールドで防いでいるが、攻撃に転じれるレベルには至ってないらしい。
「くっ、当たらねえ!」
「ほら、避けないと穴だらけだぜ?」
「んなろ~~~!」
ダメージ覚悟で突っ込んできたセイバーが盾を投げ捨てビームサーベルを抜く。瞬時にガウォークに変形した俺は急ブレーキをかけて間合いを狂わせる。攻撃がスカったセイバーが体勢を立て直す前にバトロイドへ。アサルトナイフを抜く、破れかぶれで振りかぶられるビームサーベルを盾のピンポイントバリアで受けた後、ピンポイントバリアナイフを喉元に突き付ける。
「ほら、退屈しなかっただろ?」
「こ、こんの~~~!!もう一回だもう一回!今度は勝ってやる!」
「おっしゃかかってこいや!」
「本気で来い本気で!ぜってえ勝ってやる!」
お、ええのん本気出して?言っとくけど俺はまだ得意のミサイルを使ってないんだが?おっしゃみせてやるこれが俺式最新鋭のハイマニューバミサイルじゃああああ!!!2戦目の初手で脚部ミサイルをぶっ放す。セイバーは物量はないけどとんでもなく鋭く動くミサイルに翻弄され直撃、黒焦げになるのだった。当たったの一発でよかったー、何発か当ててたらセイバーがお釈迦になるところだった
「なんかあいつ…キャラ違くないか?」
「我慢させすぎたのかもしれん…」
「しかしまあ…新作たあ滾らせてくれるじゃねえかアルトのやつ…!フェニーチェ以外を持ってくるんだったぜ…!」
「のああああなんだそのミサイル!?」
「俺の得意分野だ!ミサイルの性能で俺を凌駕するやつはたぶんいねえ!」
「そこは曖昧なのか?!」
「世界は広いからな!」
セイバーとVF-25が交差しながら口喧嘩みたいなことをしてる俺たち、へっへー!やっぱバルキリーを飛ばすのは最高だ!レイジも素組みガンプラという圧倒的不利にあれど俺に噛みついてこれるのは相当だ。これはマジで選手権が楽しみだな!
「いやーやったやった。連勝!」
「だーくっそ!勝てねえ!なんでお前そんなに強いのに大会でないんだよ!ルールってなんだ!?」
「あー、それな。俺が使ってるこいつはガンプラじゃないから。ガンプラ選手権には出れんのよ。それに俺は今の立場で満足してるからな」
「おいアルト、お前のそれ前に使ってたやつより随分と動きのキレがいいじゃねえか。なんか秘密でもあんのか?」
「フェリーニさんからそう言われるのは嬉しいですね。なのでちょっとだけ秘密を教えちゃいます」
俺はVF-25の足を取り外してカバーを開ける。モノコック装甲の中、本来は伽藍洞であるはずの底には、いくつかの機械的なデティールの中に紫の水晶が鎮座していた。俺がこのメサイアを再現するにあたって必要なことといえばまずステージⅡ熱核バーストタービンの再現とそして慣性制御ができるISCの再現であった。
「これが、秘密です。何がどうしてそうなるかは内緒ですけどねー」
「へぇ…中身までか。よくやってるなお前」
「まあ、本気で飛んでないとはいえあの速さの理由はこれです」
「あってめ!本気出せっつったろーが!」
「舐めんな。俺のバルキリーが本気で飛んだんなら素組みのガンプラで追いつけるわけないだろうが。勝負にならねーよ」
そんだけ手間をかけて苦労して作ったのが作者同じとはいえ素組みのガンプラに性能で負けてたら俺は泣くぞ。とまあ再現の道は遠かったんだけど、助けてくれたのもまた俺だった。まずステージⅡ熱核バーストタービン。これは俺が作ったオリジナルパックのYF-22フルブーストパックで乗っけたシステム…プラフスキー粒子を圧縮して噴射するシステム「プラフスキーバースト」を小型高性能化して標準システムとして搭載した。これにより爆発的な推力を得ることができたのだ。
で、ISCの方。ぶっちゃけ詳しくはわからん。分かってるのはフォールドクォーツが使われていて、慣性を別の空間に待機させたうえで徐々に戻すというシステムということだけ。で、劇中で出てきたクォーツに一番近い色をしていたのが紫水晶、まあつまりアメジストである。宝石として売ってるものには手が出ないけど水晶としてならまだ俺の小遣いでも手が出るからそれを加工して乗っけたのだ。で、あとはプラフスキー粒子様様というわけ。別に実際の慣性が消えるわけじゃないけど機体の敏捷性は飛躍的に上がったので成功と言えるだろう。
とまあこんな感じで俺は何とかVF-25の再現に成功したのである。もうマジでできたときは七転八倒してお母さんにめっちゃ叱られた。すまん、でも好きな機体なんです。
「ま、そんなところだ坊主。悔しかったらお前も自分の機体で挑むんだな。あるんだろ?本気のやつが」
「…あるよ。でも今は出来てねえ。俺のパートナーが今も頑張って作ってる」
「ふーん…」
「ちなみにそれは俺の親友です。ビルダー力だったら俺にも負けてないですよ」
「へえ…そりゃますます面白い。よっし坊主、まだやるか?それとも終わりか?」
「!やるに決まってんだろ!アルト!その飛行機俺に貸してくれ!」
「言うと思ったけどダメだ。こいつは俺の魂だぜ?いくらセイのパートナーと言えどもちょっとな、セイバーで我慢してくれ」
流石にレイジといえどもVF-25を貸すわけにはいかない。というか多分ラルさんがここに連れてきた理由って性能の高いガンプラに頼らずやれるようになるために連れてきたのであって俺のフルスクラッチ品使ったら意味ないんじゃね?頑張ってセイバー使ってくれよ。素組みとはいえそこらのやつが作った素組みよりは性能高いから。
「ほら坊主、こっちにこい。また遊んでやるぜ」
「ちぇ~。でもまだまだやるからな!アルト!後でまた相手しろよ!」
「おうさ。何回でもやってやるよ」
そういった俺に満足したのかニカッと笑ったレイジがまたフェリーニさんと対戦しだした。ギャラリーも盛り上がってるし、これは長くなりそうだなあ…ところでいつまでいればいいの?
「ふあ~~、ねっむ…」
「アルトくん最近寝不足さんだね~」
「…珍しい」
「ん、まあ最近ちょっと夜遊びを覚えてな」
「よよよ夜遊び!?」
「…アルトが汚れちゃった」
「言い方よ言い方。ちょっと夜にラルさんとレイジに付き合ってガンプラバトルをな」
今日が予選第三ブロックの開催日、あのあとレイジとラルさんに連日付き合ったせいで学校でも居眠りが増えたし寝坊しかけることもあった。それはしょうがないし日に日に成長するレイジとやるのが楽しかったからもある。なんだったらフェリーニさんが一番面倒見てた。あの人凄い面倒見いいな…通算200戦だぜ?最後の方とか指にテーピングしてたのに付き合ってたんだから相当だよ。やっぱいい人だ。
で、ガンプラ選手権の会場に…やっぱでかいな。しかも割と日にちかけて行うらしい。そういうのも俺たちが参加した第一ブロックの数倍参加者がいるからだ。何といっても第三ブロックは日本の首都を起点にした数県だから、参加者や猛者を求めてあえてここに出るという人もいるのだとか。第一ブロックは様子見かまだ機体が未完成な人が多く参加者があまり増えない傾向になるのだとか。ちなみに一番激戦区なのが第三ブロックらしい。
「…なんで私も誘ってくれなかった」
「女子を夜遅くに連れ歩く趣味はねえ」
「…む~~~~!!!」
「あれ?チナちゃんじゃない?あそこ!」
ぽこぽことツムギに叩かれながらヒマリが差した方を見ると確かにセイやツムギ、ヒマリと同じクラスで委員長をしているコウサカ・チナの姿がそこにはあった。彼女は落ち着かなさそうにきょろきょろとしながら中へ入ろうとしてるので声をかけることにした。
「おっすコウサカ。もしかしてセイの応援か?か~あいつも隅におけないねえ」
「さ、サオトメくんっ!?スズカゼさんにイロハさんまで!う、うん。イオリくんが今日出場するって言ってたから…」
「私たちもそうなんだ!ねね、折角会えたんだし一緒に応援しようよ!」
「え、いいの?」
「…大歓迎。コウサカも一緒にガンプラしよ?」
「えーと、それはまだ…あはは」
雑談を挟みつつ試合会場の中へ入る。するとそこには何台かのGPベースが常にフル稼働して試合を続けていた。爆発する機体、飛び交うビーム、つばぜり合いをするビームサーベル…やはりこうじゃなくちゃな。そしてその中には今まさに試合を始めたタツヤさんの姿もある
ガナーザクウォーリアの砲撃をするりと躱したザクアメイジングが照準部を射撃して潰し、ヒートナタを突き付けて終わらせた。うっわはや。あーでもこれタツヤさん不完全燃焼だろうなー燃えてすらいないかも。あ、タツヤさんがこっちに気づいた。どうやらこっちに来てくれるようだ。
「やあ!コウサカくんにアルト君、スズカゼくん、イロハくん!セイ君の応援かい?」
「あなたも、ですよタツヤさん。決勝でセイと戦うの楽しみにしてますから」
「はは、君は焚きつけるのが上手だね」
「あの、会長。聞きたいことがあるんですけど…サオトメくんたちも」
「ん、なんだい?」
コウサカが何か聞きたいことがあるらしいので聞く態勢に入る。そういえばコウサカってセイと部活おんなじなんだっけ?でもガンプラバトルに来るようなタイプには見えなかったから意外だな~。まあ、セイのやつの人徳ってとこか。
「皆さん、頑張ってロボットを作ってここに参加してるんですよね?どうして壊れるかもしれないのにそんなことを…?」
「一番になりたいから、かな?自分が作った作品が、一番であることを証明したいから。たとえ傷ついても、証明したいんだと思うよ」
「そうですね。好きだから、好きなことで一番になりたい。多分一緒だよ、美術コンクールとかで金賞を取りたいっていう気持ちと、ガンプラバトルで一番になりたいっていうのは」
「そう、なんですね…」
「お、セイとレイジの野郎がきたぞ。ギリギリまでじらしやがって…」
会場の方に視線を戻すとセイとレイジが揃って控室から出てくるところだった。レイジのやつ遅刻しそうだから無理やりラルさんにパスしてきたおかげで遅刻するようなことはなかったようだ。対戦相手と挨拶をかわし、セイがガンプラを出す。完成したんだな、ビルドストライクフルパッケージ!背部のストライカーパックはオオトリパックを参考に作り上げたものだろう。やはりというか周囲のガンプラとは一味もふた味も違う完成度だ。タツヤさんの目の色も変わっている。
「なんて完成度のガンプラだ…!流石はイオリ君、それでこそだ!」
「やってくれるなセイ…!気合入るだろそんなもん見せられちゃ!」
会場中がセイのビルドストライクに釘付けになっている。相手すらもだ。セイがレイジにビルドストライクを手渡し、テーピングだらけの手でそれを大切に受け取るレイジ、お互いにセットされたガンプラを確認してバトルシステムが稼働を開始し、プラフスキー粒子が命を吹き込んでいく。
バトルスタート、の合図とともにぶっ飛んだビルドストライクが一瞬で相手へと接近する。速い、相手は反応すら出来てない速度だ。セイのガンプラの完成度による性能もさることながら、それに振り回されずに完璧に操縦しきっているレイジもよくやる
「速い!?うわあああ?!」
「おっせえ!こんなもんかあ!?」
ビームサーベルの一閃、相手は真っ二つになった。システムがバトル終了を告げる。一撃だ、それも相手に何もさせずに。シンと静かになる会場、あまりのインパクトにため息すら出てこないのだろう。セイとレイジはそんなことを気にせずにビルドストライクを回収した後、パァン!とハイタッチをしていた。
隣の武者震いがすごいけど、とりあえず一回戦突破おめでとさん。
おっし何とか原作の流れに乗っかったな!もっとうまいことISCの言い訳考えることができたらなあ…