「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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世の中いろんな人がいる

 セイたちは順調に2回戦まで勝ち抜いて、選手権を終えた。残りは次の休みになる。流石参加人数が多いだけあって隔週での大会とは金がかかってるねえ、んで今俺は凄い局面に遭遇している。

 

 「セイが…年上の女の人とあんなに仲良さげに…!?」

 

 「おっアルトじゃねーか。セイになんか用事かー?んお?なんだあの女また来てんのか?」

 

 「あ、知り合いなのレイジ?」

 

 「俺は知らねー、けど最近セイとやったら仲いいんだよ」

 

 イオリ模型店に買い出しに来た俺はとんでもないものを目撃していた。なんとあの女性に関しては結構奧手なことに定評のあるわがベストフレンドのイオリ・セイが年上であろう長い髪を束ねた美人(後ろ姿だからわからんが雰囲気的に)とそれはそれは仲睦まじそうに話しているからだ。おい何やってんだセイ、コウサカが見たらえらいことになるぞ。いや、コウサカがセイの事をどう思ってるかは知らないけど。

 

 「あー、そういやこの前学校であったメガネのやつが店の前で何もせずに帰っちまったなー」

 

 「嘘だろセイ…」

 

 悲報、もう遅かった。知らんぞ隣の席のあの子と仲がこじれても。んでもなー、どっかで見たことあるんだよなあの女の人…立ち姿が見覚えがある…んだけどなー?思い出せん。ま、いっか。へいへいおっじゃまーっと

 

 「いらっしゃいま…あ!アルト!今日はどうしたの?」

 

 「おーセイ、プラ板とポリキャップくれ。あとマーカーな。知り合いか?」

 

 「ううん、お客さん。でも凄いガンダムに詳しいんだ!」

 

 「ミホシっていいます。君も大会に出てるの?」

 

 「え、ええまあ。ちょっとだけ、ですが」

 

 割とぐいぐい来る人だな。そこからも2、3話したけど確かにガンダムについて詳しかった。ヅダの話になったら止まらなくなるツムギみたいな例はともかくここまでガンダムに詳しい女性に会うのは確かに初めてかもしれない。俺の心のバイブルはマクロス固定だけど別にガンダムも嫌いじゃないからな。というかこのガンダム世界でガンダム見ないってのはないっしょ?俺は好きよ、特にガンダムXとか。ティファとガロードの絡み最高だよね。

 

 おっと話が逸れた。とにかくこのミホシという女性はただ単にガンダムやガンプラが好きなだけなようだ。いやーよかった。カイザーさんあたりから外国では対戦前にガンプラに傷をつけて試合できなくするっていう手口もあるから気を付けるようにと言われてたから妙に心配性というか疑り深くなったんだよな。なんだっけ?確か第三ブロックでも不戦勝で2回勝ち上がった人がいたらしいし。詳しく知らないけどなんか疑っちゃうわそんな奴。偶然かもしれないけどね。

 

 楽しそうにガンプラ談義をするセイとミホシさんを見ながら俺はポリキャップとプラ板をひっつかんで会話に加わるのだった。セイー、いくら?え?こんな安くてええのん?悪いね何時も。

 

 

 次の日の放課後、セイは店番がどうので先に帰り、ヒマリは歌の配信、ツムギも付き合うとのことで別行動。最近マクロスの曲が沢山完成していてそれぞれ配信を進めているところである。広まれマクロスの輪!まあこれは世界選手権中に行うイベントの布石みたいなものなのでちょっと急ぎ気味かな?ツムギも歌うことに抵抗なくなってきたみたいだし最近よく配信に出てる。俺もよく見てる。お小遣い足りなくてスパチャできないけど。あと配信で俺の話するのやめない?出せコールが巻き上がるんだよ。俺歌上手くないから!

 

 で、一人寂しく帰ってたわけなんだけど近くの公園でセイとミホシさんを見つけた。あれー?何してんのー?あ、セイのやつトイレ行った。んー?ミホシさんの様子がおかしい。何をごそごそしてるんだ?あっ!?コウサカ!?なんでここに!?おいおいおいやめてくれよ空気悪くなるだろ!なんでこうもタイミングが悪い…!

 

 「ごめんね?セイくんにはガンプラを見せてもらってただけなの。彼とは何でもないから、あなたの心配してるようなことではないわ。じゃ、セイくん?またお店に行くからよろしくね?」

 

 「はっはい!また…委員長?どうしたの?」

 

 「…っ!」

 

 コウサカは耐えきれなくなったように走り去ってしまった。途中顔が見えたがその目じりには雫が光っていた。あっちゃー…セイのやつ多分なんも分かってないし、コウサカも伝えてるわけじゃないだろうから俺がどうこう言うのは違うかな。でも、セイには声かけとくか。さっきまで触られてたビルドストライクの様子が気になるし。

 

 「おいセイ、店番どうした」

 

 「あっアルト!いや、途中でミホシさんと会っちゃって…」

 

 「コウサカとすれ違ったぞ。お前、何したんだ?なんか変だった」

 

 「いや、特に何も…悪いことしちゃったのかな?」

 

 「ふーん…セイ、ビルドストライク見せてもらってもいいか?」

 

 「いい、けど。どうして?」

 

 「知り合いからちょっとした注意を受けててよ。何でも対戦前にガンプラに傷つけて試合できなくさせるようなやつがいるらしい。お前が参加してる第三ブロックにも不戦勝で2回勝ち上がってる人がいる」

 

 「そんな!いくら勝ちたいからって…」

 

 「ああ、俺もそんなことするやつの考えることはわからん。あの人を疑うってわけじゃないけどな」

 

 セイから渡されたビルドストライクをざっと眺める。見た目的には問題…いや、クソ。当たってほしくない予感が当たった。右腕の肘と左足の膝関節が僅かに長い。傷の入れ方が上手いから見た目的にはほぼ違和感ないけど毎日0.1ミリ単位でフルスクラッチの素材を作ってる俺ならわかる。巧妙に傷を入れてGPベースで動かした瞬間おじゃんになる。ッチ!やってくれたなあの女…!証拠がないのがきつい。

 

 「おいセイ、見てわかるか?お前ならきちんと見ればわかるハズだ」

 

 「…右肘と左膝」

 

 「ああ、正解だ。ともかくあのミホシっつー女には気を付けろ。たとえ話が合っても、何してくるかわかんねーぞ」

 

 「そんな…ミホシさんが…」

 

 「裏を返せばそれだけ必死っつーことだ。手段を選んでほしいとは思うけどな。ある意味褒められてるんだぜ?自分の腕じゃお前のガンプラに勝てねーって言ってるようなもんさ」

 

 「…うん。それよりも、ビルドストライクを直さなくちゃ」

 

 「…手伝うよ。もう誰にも触らせんじゃねーぞ。俺にもな」

 

 「アルトは別でしょ。信じてるから」

 

 「お人よしだなーお前も」

 

 立ち上がってイオリ模型へ向かう俺たち。卑怯な手段を使うことに憤りを隠せないわけじゃないが、プラスに考えよう。セイのガンプラに真正面から太刀打ちできないと自分から言ってるようなもんなんだから、きちんと直して順当に行けば勝てるさ。

 

 

 

 

 「やるなー…やっぱりタツヤさんはとんでもねえわ」

 

 迎えた第三ブロックの三回戦当日、俺は一人で観戦に来ていた。ツムギとヒマリは家の事情である。行きたがってたけどな、俺はまあ…基本暇だから!うん、いってて悲しくなってきた。別に習い事も何もしてないしー、マクロスに集中したいっていうかー…いいわけですわ。うーんこの。

 

 で、俺が見ている三回戦第六試合、タツヤさんのザクアメイジングが相手のジャスティスガンダムを華麗にねじ伏せて終わらせたのである。いっやー、すごいったら。射撃一発のあとヒートナタでズバッて感じでな。まだまだあの人が本気を出すには至らないらしい。お、そんなことより次はセイの番か。最前列で見てやるぞー…ってんだこりゃ!?

 

 「こんにちはー!みんなのアイドル!キララだよっ☆キララン☆」

 

 「えぇ…」

 

 セイたちとはまた別の控室から出てきたのはバッチバチのアイドル衣装に身を包んだ桃色のツインテールの女性だった。まさかガンプラバトルの会場であんないろんな意味で気合の入った人を見られるとは思わなかった…まてよ?キララ…あっ!その名前って不戦勝の人の…!そうか、ファンを使って工作をしてたのか?

 

 セイのビルドストライクと相手のピンクのガーベラテトラがGPベースにセットされ、プラフスキー粒子が散布される。すぐさま動き出すビルドストライクとガーベラテトラ。ライフルとマシンガンの撃ちあいだ。だが、劣勢なのはガーベラテトラ、ビルドストライクの機動力と可変式ライフルの威力に押され気味だ。いや、何かを待ってる…?そうか!傷をつけた部分が壊れるまで防御する気だな?だが甘い、直しちまったんだよ!

 

 「…なんでっ?何ともないの!?」

 

 「あぁ?何言ってんだ!?」

 

 「やっぱり、あなただったんですね…ミホシさん。僕の親友が教えてくれました。ほっとくほど僕はガンプラに対して適当にはなれません!」

 

 「くっ…それでも!」

 

 ミホシ…ってあの女と目の前にいるアイドルが同一人物だってか!?彼女が語るには、ガンダムにもガンプラにも興味はなく夢のための道具であると。事務所の方針でアキバ系ガンプラアイドルとして売り出すためにすべてのガンダム作品を見て、機体を覚え、プラモデルの腕すらも磨いた。全てはトップアイドルという夢のため。今乗ってるガンプラですらファンに作ってもらったものだという。

 

 「…こういう、人もいるのか」

 

 俺は圧倒されていた。ただなりたい自分のためにここまで努力できる人がいるのかと。たとえその方向があってはならないところに向いていても、楽しいという感情だけで突き進むことのできない苦い苦い大人としての言葉に。セイやレイジが負けられない理由があるように、彼女にもどんなことをしたって勝ち進む覚悟と不退転の意思があった。

 

 「知ったことかよぉ!」

 

 「っ!?なんですって!?」

 

 「あんたがどんだけ勝ちたいかっていうのはわかった。そのためにセイのガンプラを傷つけたのもな!俺もあんたみたいななりふり構わず勝ちに来るやつは嫌いじゃねえ!けどな!俺たちにも負けられねえ理由があるんだよぉ!」

 

 レイジがそう叫んだ瞬間、ビルドストライクからバックパックが分離、飛行機に変わったそれがレイジの同時操作でビルドストライクと舞い上がる。ビルドブースターの高出力ビーム砲とビルドストライク本体のビームライフルによる四方八方からの射撃。そうだよな、負けられない理由なんて人それぞれで、セイとレイジにだってあるんだ!

 

 慌てて躱すガーベラテトラ、持っていたビームマシンガンを撃ち抜かれ、両腕の機関砲での応戦を試みるが、機動性が多少落ちたとはいえビルドストライク単体でもびっくりするほど速いのだ。さらにビルドブースターには俺のバルキリーのエッセンスが多分に含まれている。スラスターの偏向技術とか、マイクロミサイルとかな!

 

 ビルドブースターの各所が開き、仕込まれていたマイクロミサイルが顔を出した。発射されるセイオリジナルのミサイルは俺ほどじゃなくても通常のミサイルとは比較にならない機動性を有している。機関砲での迎撃も意味をほとんどなさず周りに直撃し、退路を断った。

 

 「くっ!まだ!まだああああ!!!」

 

 「おわりだああああ!」

 

 ビルドブースターのビーム砲がガーベラテトラの足を撃ち抜き、ビルドストライクのビームサーベルがガーベラテトラを上下に分断する。システムがバトル終了を宣言し、勝者が決まった。がっくりと膝を落とすキララに駆け寄るファンらしき男性二人。ついには大泣きしてしまった彼女であるが、それはそれだけ彼女がこの舞台に打ち込んでいたという証だろう。どっちも凄かった。俺はそんな思いを込めて周りと共に拍手を送るのだった

 

 

 「あーあ、これでミホシさんとガンプラ談議できなくなるのかあ」

 

 「お前、あんなことあってもそれかよ」

 

 「だってーあんなに詳しい人なかなかいないよー?」

 

 「それと、よかったな。コウサカと仲直りできて」

 

 そう、あの後会場にラルさんとコウサカがやってきて、コウサカの方から、買ったガンプラの作り方がわからないから教えてほしいとお願いしていたのだ。俺もおめでとうくらい言いに行こうと思ったのだが、あのあとイオリ模型に一緒に行くようだったので俺がいても邪魔になると思ってメールだけ入れておいた。で、今は登校中。セイからあれこれ聞いているわけだ。ツムギも一緒だしヒマリはいまだ夢の中で俺の背中にいるけど。

 

 「そういやセイ、よくミサイル積んだなーアレに。スペースなかったろ?」

 

 「それアルトが言う~?アルトのバルキリーの積載量見てるとビルドブースターのミサイルの量なんて雀の涙だよ。でも、アルトのバルキリー見てなかったら確かに積めなかったかも」

 

 「…アルトのミサイル愛はおかしい」

 

 「ひどくね?確かに俺ミサイル作るの得意だけどさ。だってさー、避けるのも楽しいし撃つのも楽しいじゃんミサイル」

 

 「そうかなあ?僕はビームのほうが好きだけど」

 

 「…ちょっとわかる」

 

 「ま、とにかくおめでとさん。また一歩世界に近づいたな」

 

 「…戦える時をまってる」

 

 「…うん!こっちこそ!」

 




 ミホシさんって一歩間違えればガンプラ界隈から干されてもおかしくないようなことしてますよね…この小説では破滅ルートなんて書きませんけど。

 よく考えればあんだけガンプラを愛しているセイが細工に気づけないのもおかしい気がしたのでアホ主人公に出張ってもらいました。その結果ミホシさん惨敗してるけどな!

 ビルドストライクの強化点その2

 ビルドブースターにマイクロミサイル追加、弾数は8発×2くらいあとビルドブースターの機動力向上。これにて強化点は終わり!閉廷!
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