「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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ライバルって増えても嬉しいものだよね

 学校帰りに駅前商店街で普段は買えない研究用の素材とついでに買い食いをかまそうと思いみんなと別行動してる俺である。最近ヒマリとツムギは配信が忙しいみたいでなかなか時間が合わず一緒に帰れない。それもこれも俺がマクロスの曲を提供しすぎてヒマリがハッスルしてるせいなんだけどな!最近は「トライアングラー」とか「ライオン」とかそういうのを配信してるから、デュエットである以上相方のツムギさんも引っ張りだこなのだ。俺?俺はほら、数合わせというか要らないというか…は?ハブられてる?そんなことないよ!たぶん!動画用の素材はきちんと渡してるもん!

 

 え?貧乏じゃなかったのかお前?詐欺ですか訴えてやる?まあ待ってほしい。実は今回ヤジマ商事から世界選手権出場決定ということで特別金が入ったのでお小遣いが浮いたのだ。本来のバルキリーの版権費とかビルダーとしての給料は将来のためということでお父さんとお母さんに預けているんだけど今回のお金は別。世界選手権用のガンプラと予備機に使いなさいとの事で結構なお金が手元に入ってきたのだ

 

 要はお年玉もらって浮かれる心理と一緒である。わぁい高いクリアパーツとかプラフスキー粒子に反応する塗料とかが買えるー!イオリ模型じゃ買えない素材だもんなー、仕入れと購入者の割合的に赤字になるとかで。

うわえっひゃーい!これでヅダが強くなるぅー!最近ツムギの成長が著しいのでほぼ完成したヅダ・マクロスパックのさらなる改修を図っているのでこれは嬉しいぞー!俺、あいつの本気に合わせたガンプラを作ってるけどそれ使ったあいつに勝てるのかな?わからん、最近負けることもあったし。うわぁんツムギちゃんつよスギィ!多分近接戦だったらもう勝てないかもしれない。

 

 「おーっし欲しいパーツは揃ったなー。あ、おばちゃんコロッケひとつー」

 

 「おやアルト君じゃないかい。はいよ、コロッケね」

 

 「ありがとー」

 

 サクッとホクホクのコロッケをかじりながら俺もホクホク顔で商店街を出る。鼻歌すら歌えそうだ。デカルチャーなどと言っていると後ろから声をかけられた

 

 「あの、すんません」

 

 「はいはい、なんでしょう?」

 

 「あの~ここら辺でご飯食べられる店って知りませんか?」

 

 「あー、じゃあコウサカのとこかな。案内しますよ」

 

 声をかけてきたのは帽子をかぶった糸目の少年だ。イントネーションからして関西…京都辺りの人かな?俺と同い年っぽいけどこんなところで何してるんだろ?学校は?まあ、腹減ってるみたいだし案内くらいはしてやるか。コウサカの実家のレストラン美味しいし、ついでに俺もアイスかなんか食べてみようかね。

 

 「えろうすんません。案内までしてもろうて…」

 

 「いえいえ、いいですよ。こっちには旅行ですか?」

 

 「ええ、まあそんなとこです。そんな堅苦しくしなくてええから、いつも通りにしてください」

 

 「んじゃ、お言葉に甘えて。お、ついたぞ。俺のおすすめの店だ」

 

 「ほほー!ええ店構えですやん。じゃ、失礼します~」

 

 そんな感じで俺は謎の少年と一緒に食事を取ることにした。まあ俺はアイス食うだけだけど、へえヒッチハイクで東京まで…お礼はガンプラァ?!それ買うお金で新幹線の切符買った方がよくないか?俺の突っ込みにヤサカ・マオという少年はその手があったか!と言わんばかりの愕然とした顔になった。わかったぞ、こいつセイと同じタイプのガンプラバカだ!

 

 「まさかと思うけどこの店でもガンプラで払う気じゃないだろうな」

 

 「そのつもりですけど?」

 

 マジかこいつ。んー、確かによくできたガンプラが金になるのは事実だけどそれが通貨代わりになるかと言ったら…なるのか?ガンプラ払い、ありなのか?いやでもこいつそれでここまで来たっていうしありなんだろう。世の中って広いなー。だからと言って俺のバルキリーを売ろうっていう気にはまるでならないけど。

 

 届いた食事を幸せそうに食べるヤサカ。うーん、俺のパフェもうまい。何というか幸せの味だなー。お小遣いで買い食いできるなんてまさかまさかだよ。だからといってフルスクラッチはやめねーけどな!と食べ終わってひと心地ついてると。唐突にヤサカがガンプラのパッケージを取り出した。エクストリームガンダムのHGだ。手に持ってるのはニッパーとやすり。ゴミは外箱に放り込む感じでいくのか

 

 「う、うまい」

 

 「大したもんでしょ?」

 

 ヤサカの言葉を否定できない。速く正確だ。この速さで組み上げができる人といえばセイとか俺、それこそ世界選手権参加者と同様のレベルに達しているだろう。すさまじい速さでバリ取りも含めて作業が進んでいく。物の1時間もかからずにそこにはピッカピカのエクストリームガンダムが出来上がっていた。うぉぉ素組みなのにこの完成度、やっばいな。

 

 「すげえなヤサカ、こんな手早くやってここまでやれんのか」

 

 「マオでいいですー。いややわそんなまじまじと見んといてください。あらが多くてかなわんわー…」

 

 謙遜しているがこれ結構やばいぞ!?マオは何でもないことのように言ってるけど確かにこれなら通貨代わりにもなるわ。いいもん見せてもらったわー。あ、コウサカのお父さん?これ結構やばいもんですよ。ぶっちゃけ売ったら5万くらいします。素組みなのに。きちんと塗装したら10万行きますよ。何だったら選手権に殴りこんでも予選3回戦くらいまでなら勝てるくらい。あ、俺の方は現金でオナシャス。

 

 なんとかコウサカのお父さんに納得してもらって払って店を出る。マオはとりなしたことに頻りにお礼を言ってくれるけどむしろいいもん見させてもらったわ。

 

 「そういえば、マオはなんで京都から東京のここに来たんだ?」

 

 「会いたい人が二人と、行きたい場所があるんです。せやけどワイはどうも方向音痴でなあ…」

 

 「ふーん、でどこ行きたいの?会いたい人も知ってたら教えるよ」

 

 「本当!?えーとイオリ模型っていう模型屋さんと、イオリ・セイとサオトメ・アルトっていうですけど…」

 

 「俺か?」

 

 「俺って?」

 

 「いや俺、サオトメ・アルト。同名の間違いじゃなかったら多分俺。あとイオリ・セイは俺の親友で、イオリ模型はやつの実家だから知ってる」

 

 「うぇっ!?うぇえええええええ!?あんさんあのサオトメ・アルトはんなんか!?」

 

 「あのってどの?」

 

 「いやいやいやあの可変機と動画!ワイも見せてもろたんやけどホンマに一目惚れしたで!?」

 

 「ああ、バルキリーの事か」

 

 へー、わざわざセイと俺に会いにはるばる東京まで…いろんな意味で凄いやつだなあ。バイタリティー溢れるというかなんというか…まあセイに用事があるなら早い。イオリ模型に案内してやろう。そういえば俺って機体自体は有名だけど本人はそんなでもないのかな?まあ配信は全部バルキリーだけだし顔晒してないもんな!ヒマリもツムギもそうだし。去年の選手権に来た人は知っててもおかしくないだろうけど

 

 「セイに用事もあるんだったよな?じゃあ先にイオリ模型行こうぜ。多分今なら店番してるはずだから」

 

 「あ、お願いします~あの~できればアルトはんの機体も…」

 

 「ああ、まあそれは後でっつーことで。ほらいくぞ~」

 

 俺はマオをイオリ模型に案内することにした。なんか面白そうだしセイに会わしても問題はなさそうだ。なんでも京都にあるガンプラ心形流というガンプラ組み立て術の後継者を目指して頑張ってるのだとか。へー、そんなもんあるんか。組み立て方に流派とか、極意とか奥義とかそういうのが。すげえなこの世界、俺の知らないことばっかりだ。と思いつつも案内を続けてると前方におそらく帰る途中であろうセイとコウサカを発見した。あーそういえばセイのやつ今日美術部に行かなきゃいけないんだったっけ。忘れてたわ。でも会えたから結果オーラーイ!

 

 「おーい!セイ、コウサカ!」

 

 「あ、サオトメくん…と誰?」

 

 「あ、アルト…と誰?」

 

 「ん、ああこいつはヤサカ・マオ。お前とイオリ模型に用があるんだと。とりあえず案内してやってくれ。俺はいったん帰る」

 

 「ええ!?あの~アルトはんにも用が…」

 

 「分かってるって。お前が見たいもん取ってくるだけだから。イオリ模型に俺も行くよ」

 

 「あっちょっアルト!事情を…」

 

 セイが追いすがってくるがとりあえず片手をひらひらとあげてその場を去る。割とセイの家から遠目なんだよね俺の家。急がないとさーてすたこらさっさ~。正直あそこまでできるやつに俺のバルキリーを見せたらどうなるかめっちゃ気になるんだよ。全くの同年代で俺やセイを上回るかもしれないビルダーに会うのは初めてだから、俺も舞い上がってるのかもしれない。多分セイも、マオの事絶対気に入るからな。

 

 後ろでマオがセイ相手に大仰な自己紹介をするのを聞き流しながら俺は走って自分の家に帰るのだった。へー第五ブロック代表…マジでっ!?ってことは関西圏代表!?なるほど、それならあのビルダー力も納得…話気になるしとりあえず急げ俺!

 

 

 「お邪魔しまーす、待たせたな…ナニコレ?」

 

 「あっアルトくんじゃな~い。そうなのよ、セイとマオくんったらお互いのガンプラを見せて止まっちゃってね~」

 

 「あ~、イマジネーションぶつけてんのかな?」

 

 俺が勝手知ったる(めちゃ失礼)イオリ家に上がらせてもらうとリビングでお互いの愛機、ビルドストライクと頭ぶったまげるくらい完成度の高いガンダムX素体と思われる改造機が置いてあり、それを挟んでうなり合う二人の姿があった。一瞬何してんのかと思ったんだけどこれあれだ、想像上でガンプラバトルしてんだ。お互いの愛機の性能を見抜いたうえで同じ想像ができるからこそ交わされる組手みたいなもん。はー、やっぱマオすげえわ。

 

 「そこまでっ!これほどまでのバトル、想像上だけで終わらせるには惜しい!残りは世界でぶつけるといい!」

 

 「ラルさんっ!?いつの間に…」

 

 「あ、アルト戻ってきたんだ」

 

 「お、おう。ラルさんどこから湧いて出たの?さっきまで影も形もなかったんだけど」

 

 俺の疑問をよそに二人のイマジネーションバトルを止めたラルさんは、言うことは言ったとばかりにどっかに行った。えぇ…何しに来たんだあの人…マオもぽかんとしている。しかしまあ、凄いなあのガンダムX、クリアパーツ多めの造形も改修されたと思しきサテライトシステムも非常に高い完成度がある。関西圏を制したというのは伊達じゃないようだ。それに弁えてもいるようだ。おそらくビルドストライクには触れてない。見るだけで性能がわかるほど腕がたつのとビルダーとしての心構えがきちんとある証拠だ

 

 「ああっ!アルトはん戻ってきはったんですね!あの~それで可変機の方を~…」

 

 「ん、まあそれはいいんだけど…なんでそんなに気になるんだ?フルスクラッチ品のオリジナルだからガンプラじゃないんだぞこれ。大会にも出られないからな」

 

 「いやいや、そんなの関係あらしまへん。ガンプラ心形流の教えである「型に囚われない」「己の心のままに」この二つを完璧に実践している作品をワイは師匠以外に見たことない。だから、どうしても直接見たくなったんです」

 

 「よくわからんけどそんな褒められると照れるわ。いいぜ、見せてやるよ」

 

 そう言って俺は持ってきたVF-1、VB-6、YF-19、YF-22、VF-25をマオの前にずらっと出す。すると彼は歓声を上げて四方八方からバルキリーを見分しだした。

 

 「うわあ、塗装も一級、しかも筆!?完成されたフォルムやあ…こ、これはまさか…!?」

 

 「おう、新作。多分一番完成度高いと思う」

 

 「変形は!?変形ってしますのん!?」

 

 「そりゃするよ。ほらこんな感じで」

 

 VF-1をガウォークに、VF-25をバトロイドへ変形させる、目を皿のようにして変形の過程を見るマオ。よくよく考えてみたらほぼ完ぺきな飛行機状態からロボットになれるってすごいよなあ。俺がマクロスに出会ったときはもうそれは凄い衝撃だった。あ、ミサイルハッチ開くよ。ここね。あと実はガンポッドも回ったりするよ。ガトリングだからね。弾倉もちゃんと外れるし冷却ギミックも動くんだぜー?シールド裏のナイフイカスっしょー?

 

 「こら、師匠が目を付けるわけですわ…アルトはん、あんさんとんでもないな」

 

 「誉め言葉として受け取っとくよ。しかしまあ、お前さんのガンダムXもやばいな!なんだそのサテライトシステム!かっこいいじゃん!」

 

 「ガンダムX魔王です!くぅ~~!あんさんと大会で戦えないのが残念ですわ~~!」

 

 「んー、俺とは無理だろうけど俺の作品とは戦えるかもよ?」

 

 「どういうことです?」

 

 「俺が組んでるバディ、第一ブロックの代表者だから。今世界用のガンプラ制作中。俺の最新作と同じくらいかそれ以上の完成度に持っていくつもりだから。当たったら、よろしくな」

 

 「第一ブロックていうたら…「疾風」を破ったヅダ!?あの作品の作者アルトはんなんか!?」

 

 「あの作品自体はバディの。俺は修理して調整しただけ。だから、今度の大会用では自分の動きで壊れるようなことはねえよ」

 

 「…ますます楽しみになりました。師匠へのいいお土産になりますわ」

 

 そういうマオの糸目が開き鋭い眼光を見せつけてくる。俺たちと同い年でここまでやれる奴がいる。その事実が俺とセイには嬉しくてたまらない。超える壁は多いほど、高いほど燃え上がるからな!ヤサカ・マオ…完璧に覚えた。ツムギにも伝えてやんねーと。ああ、でもまたツムギに叩かれそうだ。

 

 「あっそうだ。お前さんバルキリー知ってたってことは去年のガンプラ隠し芸大会見たの?」

 

 「もちろん!リアルタイムではないですけど見させてもらいました!いやーあんなことやるとはアルトはんはすごいです~」

 

 「ふーん、じゃあこのチャンネル。あの時歌ったやつのチャンネルだから教えとくわ。今度の動画はこのVF-25が出る予定なんでよろしく!」

 

 「あっやっぱりそうなんですの!?これは楽しみになってきましたわ~」

 

 「アルト、そういうところ抜け目ないよね」

 

 「草の根活動は大事なんだよ親友」

 

 俺はチャンネル自体は知っていたらしいマオに今後の宣伝をして地元に帰るマオを見送るのだった。まさかとは思うけどまたヒッチハイクじゃないよな!?…あっいっちまった…。

 

 

 




 なかなか進まないでござるの巻。これでまだ原作5話消費ってマ?先が長すぎるやろ…オリジナル含めたらあと何話になるかなあ…
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