「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 作:カフェイン中毒
「えっ何あれ…」
「レイジくんが…知らない女の子と…?」
「…びっくり」
第二ピリオド翌日の事である。第三ピリオドの開始は午後なので割と時間に余裕があるのだ。そしてなんと今日からコウサカがセイの応援のためにわざわざこっちに来るそうだ。親戚の家に泊まりつつ毎日こっちに応援に来るのだとか。で、セイとラルさんはそれを迎えに行ってる。
俺たちも席を一緒にして色々話したいことがあるので待ち合わせをしているわけで、その待ち合わせ場所に向かったわけなんだけどそこにはなんと寝転がるレイジの隣に体育座りで座る女の子の姿があった。しかもその女の子、銀髪でレイジと並ぶとお似合いな感じでよく映える美少女だった。レイジ…お前夜な夜なセイからどっかいってるって報告されてたけどまさかそこで…?いやでもレイジって女に興味のあるタイプではないよなあ
「どうする、これ」
「邪魔したら悪いし、いったん帰る?」
「…そうしよう」
「んおっ?なんだよアルトたちじゃねーか!なあセイのやつしらね?」
「あなたたちは…っ!?」
「…どこかで会った?」
こしょこしょと内緒話をしていた俺らにレイジが気づいてしまったのでバツが悪い俺たちが顔を出す。するとレイジの隣にいた女の子が俺たち、特にツムギをみて驚いた表情をする。あれ?どっかで会った?少なくとも俺にはこんなインパクトが強い真っ白少女に心当たりはないんだけど。二人に知ってるかどうかの確認で目配せをするとフルフルと首を振るので一方的に知られてるだけのようだ。
「えっと…」
「あっ…ごめんなさい。何でもないの…昨日の事、お礼を言わせてもらうわ、それだけ」
「ああ?知らねえな、何のことだよ」
「そう、あなたがそういうならそうするわ、それじゃ」
「いっちゃった」
「レイジ、何のことだ?」
「何でもねーよ。おっセーイ!おせえよどこまで行ってやがったんだよ」
「ごめんレイジ、アルトたちもいこー!」
「あ、ああ」
少女は俺たちをまるで怖いものでも見るかのような目で見て早口にレイジにいろいろ言った後逃げるように去っていってしまった。最後に言った昨日の事が気になった俺はレイジに何のことか聞いてみるがはぐらかされた上にセイが来たことによって有耶無耶になってしまった。何か問題になるようなことが起こってないといいんだけど。
『さあ始まります第三ピリオド!本日のお題は~~~~…オリジナルウェポンバトル!くじ引きで決まった武器のみを使用して1VS1のバトルを行っていただきます!』
結局あの後コウサカやセイと合流して一緒にお昼を食べて雑談をして終了と相成った。ウェポンバトル、ねえ…つまりヅダについてる武器使っちゃだめってことね、はいはい…ん?ピンポイントバリアパンチも駄目と申すか?あー、まあそうか。そうだよねえ…くじ引きときたらマジで運頼みだな。幸いツムギならまともな武器さえ当たればオッケーだろ。
「…アルト」
「ん、どうしたツムギ」
「…ヅダの装備、はずせる?増加装甲じゃなくて後ろの対艦ライフルとかガンポッドとか、使えないならあっても邪魔だし」
「そりゃ外せるけどバランス狂って速度が上がるぞ、あの状態がお前が動かせるぎりで作ってあるからな」
「…うん、わかってる。けど今なら大丈夫だから、私を信じて」
「信じろっつったってお前…」
「大丈夫だよアルトくん、ツムギちゃんなら大丈夫」
「いや、そうだな。ヒマリのほうが正しいか。分かった、はずすぞ」
ツムギの金の髪越しにほのかに見える蒼い瞳、その真剣さに俺はツムギの言う通りヅダの装備をほとんど外すことにした。この装備たちは本体に推進関係をすべて内蔵したことにより俺ですらも試し運転ができないほどのじゃじゃ馬になってしまったヅダをツムギが扱えるレベルまで抑え込むための重りだ。外した方が速いのもそうだが制御不能になるかもしれないというのが一番怖い。だが、そこまで言うのなら外すのもいいだろう。ツムギを信じると言ったのは俺だし、ファイターの要望に応えるのもビルダー兼セコンドの務めだ。
「アルト、ツムギ、ヒマリ…ちょっといいか」
「…チョマーさん、どうしたの?」
「ああ、昨日は負けちまったからな、言っておきたいことがある」
「言いたいことって何ですか?」
「もう俺は負けねえ。たとえ何があっても食らいついて、決勝トーナメントに参加してお前らと全力で戦う。このピリオドでその覚悟を見せてやる。だから、よく見とけ」
「チョマーさん、分かってます。俺も、ツムギも、ヒマリも。本気のあなたと本気の真剣勝負をしたい。だから俺たちは、あなたの覚悟に応えます」
チョマーさんの静かに燃え滾る目をしっかり見返しながら3人を代表して俺が答える。チョマーさんは満足げに頷いて、俺たち3人を順繰りにぐしゃぐしゃと撫でまわした後、片手をあげて去っていった。俺たちは強力なライバルがもっと強くなったであろうことに嬉しさを隠せず3人で笑い合う。その様子を見ていたフェリーニさんの意外なものを見たという顔が何とも印象的だった。
「おう、お疲れレイジ、セイ。あんな隠し玉があったなんてな…度肝抜かれたよ」
「ああ~もっと秘密にしておくはずだったんだよ~」
「もうレイジ!それよりも腕!ほら出して!」
「なっレイジお前これ何やったんだ!?ヒマリ!バッグの中から救急箱取ってくれ!」
「うん!はいっ!」
「なんでアルトこんなもの持ってるの…?」
「…フルスクラッチやってると関節痛くなったりとか間違えて指切ったりとかあるだろ?それ対策」
「それはアルトの作業量のせいだと思うんだけど…」
うるせえやい。現在くじ引きを終えて試合が半分進んだところだ。一番手のメイジン、続くマオにフェリーニさんは順調に勝ちをあげて試合を終わらせている。そして今セイたちも試合を終わらせていた。野球勝負というバトルとはと疑問を覚えるような勝負であったがセイたちが何とか勝利を収めたのだ。相手はバトルロワイアル中に交戦していたルワンさん。ルワンさんは元プロ野球選手という経歴を持ちバッター側で勝負を受けたのだがその圧倒的な有利を覆したのがスタービルドストライクの奥の手中の奥の手、吸収した粒子を機体のムーバブルフレームに浸透させることにより機体性能を爆発的に向上させるシステムだ。
俺のプラフスキーバーストを応用した機体の強化に似てはいるがあっちの方が完成度は高いだろう。俺のはあくまで速度や自分の動きに耐えられるように補助をするシステムなのだが、あっちは設計思想から違う。ムーバブルフレームを強化することを前提に設計しているだろうから機体性能の強化という点において俺は後塵を拝しているのだ。だが、俺のヅダは負けない。機体の一部が不利だからなんだ?求めていた能力が誰にも負けてない、それだけでヅダのファイターであるツムギが乗る以上、俺は負けないと信じるぞ。
何をやったか知らないが赤く腫れているレイジの腕を手当てをしながら俺は自分たちの番を待つ。試合を終えたフェリーニさんはいつもだったら自分に突っかかってくるチョマーさんが静かに会場の中継をしている画面を見つめているのを見て今までとは違うものを感じ取っているようだ。チョマーさんのその姿は、圧倒的な強者を想像させるものだった。
「さて、ツムギ、お求めのヅダだ。これでいいな?」
「…うん、ありがと。私とヒマリ、アルトのヅダは誰にも負けないから、しっかり見てて」
「ツムギちゃん、ファイトだよ!私の運の良さを信じて!」
俺たちの順番が来た。ツムギに渡すのは偽装シールド、背部疑似マクロスキャノン、対艦ライフル、ヒートホーク、ガンポッドを外したヅダ。重量の大半は増加装甲が占めているとはいえこれでも抑え込める重量を超過してるはずだ。だけどあのツムギの自信はなんなんだろう。相手が真っ赤に塗装したゲルズゲーをGPベースに置いてプラフスキー粒子が散布される。バトルの開始だ。
加速するヅダ、やはり加速力が段違いに上がっている、ツムギも振り回されて…ない?操れている、こっちに来る前はまともに飛ばせもしなかった増加装甲のみの状態での行動を完全に掌握しきっている。なぜ?と思ったがヒマリだ、ヒマリのサポート、ヒマリのカウントによってタイミングを計っている。どこで、どのタイミングで何をするべきかの時間把握をヒマリが担ってるんだ。ヒマリのリズム感はどの状態であっても正確に時間を図ることができる、それを利用したサポートだな。流石だ。
そして武装を収めたコンテナにたどり着き、コンテナを開ける、そこには
「なにこれ?」
「…ドリル?」
「ドリルハンマーか…なんちゅうゲテモノを」
そこにはガンダムハンマーをドリルにしたような武器が鎮座していた。あるんだよなこの武器、どっかのスカッドでハンマーズなゲームに実際にある。手に取ると…でかい、ヅダの全長くらいある超大型のハンマーだ。いやこれほぼドリルだけど。ぎゅるんぎゅるんと回る鎖付きドリルを不思議なものを見る目で見つめるヒマリ、こういうのが好きなロマン大好きツムギはちょっと嬉しそう。
「…面白そう、アルト、ねえ」
「作らんぞ。作れるけど」
「…まだ何も言ってないけど、残念」
「あっ!敵機接近!来るよ!」
「…ちょっと使いにくいかも」
ゲルズゲーがその多脚をわしゃわしゃ動かしながら与えられた武器らしい対艦刀を二刀流してこちらに迫ってくる。なんかそっちはまともな武器が当たっていいなあ、ドリルは俺も好きだけどこれどうすんべ?投げてぶつければいいの?普通にふるっても地面から動く気配ないよ。
「…あっ、いいこと思いついた。ヒマリ、5カウントお願い」
「えっ!うん分かった!5!」
カウントが始まった瞬間爆速で後方に飛びずさるヅダ、鎖を持ったままなので引っ張られてドリルハンマーが浮き始める。ツムギの目配せで察した俺はISCのロックを解除する
「4!」
「んーーー!」
ツムギの掛け声とともにヅダが大きく円を描いて反転、浮いたハンマーの遠心力をスラスターの鬼の推力で抑え込みながらまっすぐゲルズゲーに向かって加速
「3!」
「ISCの対象範囲にハンマーも指定!!」
「2!」
「ドリル回転開始!」
ギャルルルルル!とヅダの後ろについたドリルハンマーが回りだしてその螺旋が全てをぶち抜けそうなくらいの気迫を見せる
「1!」
「いっちゃええええ!」
ヅダがISCを利用して急停止、ドリルハンマーは慣性の法則に従ってヅダの前に出る。鎖がピン、と張る前にヅダは手を離し、ヅダの超加速で砲弾と化したドリルハンマーが突っ込んでくるゲルズゲーに対してまっすぐに飛ぶ、普通なら避けられるはずだが逃げてたヅダを追って本気で移動していたゲルズゲー、車は急に止まれないというように、MSも急には止まれないのである。
ドリルを何とか防御しようと差し込まれた対艦刀をあっさりとへし折り、ゲルズゲーを粉々にするレベルで貫いたドリルハンマー、ロマンの一撃は、ここに勝者を決めたのである。ツムギの満足そうなむふんという顔とがっくりと肩を落とす対戦相手の構図でこの勝負は終了と相成った。
「フェリーニ」
「なんだよ、チョマー」
「よく見とけ」
「…ああ、わかってるよ」
控室に戻った時入れ替わるようにチョマーさんがフェリーニさんにそう言って出ていった。チョマーさんの相手は、アルゼンチン代表のレナート兄弟、グレコさんやフェリーニさんに並ぶ強豪として称えられているファイターたちだ。相手にとって不足はないとでも言わんばかりの態度ではあるが、今のチョマーさんなら何かしてくれるのではないかと俺は思っている。
『よーうチョマー!よろしくなぁ?』
『ああ、頼むぜ』
『…兄貴』
『ああ、何かが違うらしい』
対戦相手のレナート兄弟も挨拶の時点でそれを感じ取ったようで警戒を高めている。GPベースに機体が置かれる。レナート兄弟はジムストライカー、チョマーさんは…
「ジェスタキャノン!?しかもフルスクラッチ…!」
「あいつが…チョマーがフルスクラッチでMSを作るだと…!?」
チョマーさんがセットしたのは赤と青、チョマーさんのパーソナルカラーに塗装されたジェスタキャノンだ。しかも、見ればわかる、フルスクラッチ。何を思ってこの機体を使ったのかはわからないけどチョマーさんが本気なのだということ自体はわかる。チョマーさんは大型機体をフルスクラッチするのが得意な反面、通常サイズのMSのフルスクラッチは苦手だと言っていた。それがあの完成度…!?どこまで本気なのだろう。
次回、チョマーの本気を刮目せよ!この作品のチョマーさんは超強いのでご期待ください。