「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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ドイツの征嵐

 ジェスタキャノン、MSのフルスクラッチを苦手としているチョマーさんが本気で作った機体だ。その完成度はとても苦手なんだよと苦笑いして言っていたとは考えられないレベルのもの。赤と青の機影がジャングルに射出されブーストをふかしてダッシュする。相手のジムストライカーと同じタイミングでチョマーさんは武装コンテナを発見し中身を取り出す。

 

 「ビームライフルショーティー…悪くないんじゃないか?」

 

 「ええ、チョマーさんのあの機体なら十全に扱えるかと」

 

 「…チョマーさんは私と張り合える、だから大丈夫」

 

 「すげえ自信だな。ツムギさんよ」

 

 「…フェリーニさんは、自信ない?」

 

 「いいや、俺が一番さ」

 

 「…そういうこと」

 

 画面の中では2丁のビームライフルを構えたジェスタキャノンがあらゆるところを警戒している。レナート兄弟は狡猾な策謀家として通っている。トラップの専門家だ。今回は使う武器が指定されてる以上トラップは使えないけどどんな作戦で来るかわからない。しかも塗装だ、ジムストライカーは森に溶け込む迷彩柄の塗装を施している。まさに戦争とでも言わんばかりの徹底っぷり。

 

 「っ!動きました!」

 

 マオの声で画面を注視する。ギリギリだがジェスタキャノンの背後にカメラアイが見える。ジムストライカーはそのまま背後からジェスタキャノンに向かって大型のナイフを持って斬りかかってくる。ヒマリが危ない!と聞こえもしないのに叫んでしまうがチョマーさんは冷静だった。

 

 『なっ!?』

 

 『そこかぁっ!!』

 

 半歩体をずらして避けたジェスタキャノンはその状態のまま足払いをかけ、ジムストライカーを転ばせると同時にビームライフルショーティーの銃底でバックパックを思いっきりぶっ叩いたのだ。巧い!スラスターとは露出してる内部構造に等しい、つまり装甲で覆えない弱点の一つなのだ。ランドセルのスラスター半分が拉げたジムストライカーが何とかもう片方のスラスターを吹かして離脱していく。ビームライフルショーティーの追撃が何発か当たるがジムストライカーの強靭な装甲の作りこみのせいで表面が溶ける程度で済んでいる。何とかジャングルの中へ逃げ込めたジムストライカーがまた身を隠した。

 

 『おいレナート兄弟さんよぉ!お得意のトラップが使えなきゃこの程度かぁ!?』

 

 『あいつ…!』

 

 『熱くなるな、挑発だ。接近戦は分が悪いのがわかった。奇襲に徹しろ』

 

 『…っ!了解っ!』

 

 分が悪いのはレナート兄弟、遠距離武器のビームライフルショーティー、しかもチョマーさんは今の通り近接格闘のほうが得意だ。それに対して本来の戦い方を封じられたレナート兄弟と驕りを封じ、前だけを見つめて本来の実力を発揮しているチョマーさんでは確かに相手が悪いかもしれない。チョマーさんは動き回ると不利なのを悟ってかその場から動かない。

 

 今一度の奇襲、今度は対応しづらい真上から、ビームライフルショーティーの銃撃を装甲で耐えながら一刀両断を狙う構えだ。だがチョマーさんもさるもの、止まらないと悟った彼は両手の武器を手放した。降参?いやありえない。まさかっ!?

 

 『ばかなっ!?』

 

 『ここまでするか…ライナー・チョマー!』

 

 『負けられねぇんだよ!俺はぁ!』

 

 「真剣…白刃取り…!そんなっキラ・ヤマトじゃあるまいし!」

 

 「あのおっさん…あんなに強かったのか…!?」

 

 すげえ、すげえよチョマーさん!セイとレイジの驚きの通り、チョマーさんは眼前に迫る刃を両のマニピュレータで挟み取り、己から背後に倒れ込んだ状態で相手を蹴り上げて投げる巴投げでジムストライカーを宙に躍らせた。落とした武器を拾い上げたチョマーさんの銃撃がジムストライカーに突き刺さる。装甲はほぼ融解し無残になっている。迷彩柄もほとんど効果を為していない。決着は近い…!

 

 「あの、フェリーニはん」

 

 「…どうした、マオ」

 

 「あのお人…チョマーはんって去年あんなに強かったですか?」

 

 「…正直別人だ。強さも、ビルダーとしての実力も。だけどあいつは間違いなく俺のライバルの一人の、チョマーだ」

 

 フェリーニさんの言葉には喜びが溢れている。去年しのぎを削ったライバルがより強くなって自分の目の前に現れてくれたことに。噛み締めるような実感がこもったその言葉を聞いたマオはより顔を引き締めて画面にかぶりつく。ツムギもヒマリも、言葉を発さずに画面を見続けている。チョマーさんの戦いのレベルは、それほどまでに高い。

 

 『くっ…兄貴!』

 

 『やむを得ん!使えっ!』

 

 ジムストライカーの動きが変わる。バックパックが破損しているとは思えないほど速くなり、動きの機敏さが増した。振るわれるナイフを捌くチョマーさんだが、射撃が一発も当たらなくなった。これは…

 

 「EXAMシステムだ…ゴーグルの色が緑から赤に変わってる!」

 

 「んだそれ…?」

 

 「MSの性能を強化するものだと思え。ここで隠してたものを切らせたのか…!」

 

 縦横無尽にジェスタキャノンにヒットアンドアウェイをかけるジムストライカー、徐々にジェスタキャノンを追い詰めていく。レナート兄弟もさすがという戦闘の運び方だ。逆転のカギを最後まで残していた、普通のファイターならここでさらに逆転はない、けど相手は普通のファイターじゃない。世界選手権の出場者で、さらには強豪として名をとどろかせる男だ。

 

 『掴まれた!?EXAMシステム起動中だぞ!?ジェスタだからって…!』

 

 『なんでもいい!脱出しろっ!』

 

 『言ったはずだぜ?速いだけじゃチョマー様は倒せねえってなあ!』

 

 振るわれたナイフを片方のビームライフルショーティーの銃身を犠牲にすることで食い止め、腕を掴んで行動を封じる。前蹴りがまともにジムストライカーに突き刺さり手を離さなかったせいで片腕がもげる。木に叩きつけられ片腕を失ったジムストライカー、最後まで油断をしなかったチョマーさんは残ったビームライフルショーティーをジムの赤いゴーグルに突き付け

 

 『あばよ』

 

 その一言で引き金を引いてフルオート射撃を容赦なく食らわせた。頭を撃ち抜かれて全身にビームを浴びたジムストライカーは機能を停止、GPベースが勝者と敗者を分ける。完勝だ。いくらチョマーさん有利だったとはいえレナート兄弟もファイターとして正面から戦った場合の実力は相当高い。ただトラップと策謀だけのファイターじゃない。裏打ちされた実力があってこそ策謀が生きるのだ。それをチョマーさんは上からねじ伏せた。

 

 にやりと笑って歓声に手を振って返す男を控室のファイターたちは鋭い瞳で見つめ続けていた。

 

 

 

 

 「ああああああ~~~連日キッツいよなあ~~~。ツムギとヒマリは大丈夫か?」

 

 「…うん、大丈夫。でも今日は凄い楽しかった」

 

 「ね~~!チョマーさんと一緒に戦えるなんて!」

 

 「ああ、ジェスタキャノンチョマーSP、侮れない機体だった。砲撃戦用の機体なのに接近戦も完全に両立させてるときたもんだ。レイジたちもお疲れさんだな」

 

 「素晴らしいな、第六ピリオドまで無敗、レイジ君の怪我があっても勝利を重ねることができるとは」

 

 「いや~えへへ~」

 

 「実力だぜ?俺と、セイのな」

 

 日は飛び、現在第六ピリオドが終了したところになる。いやー今まで大変だった。第4ピリオドは射撃勝負、支給されたライフルを使ってどれだけ正確に的を撃ち抜けるかという勝負なのだがツムギの目はスコープ要らずなので普通に最小弾数で全弾命中で突破、レイジの怪我が予想以上に悪かったため三角巾で片腕を吊ってはいたがそこはセイがメインとなって操縦することで解決。バトルしなきゃ操作はうまいんだよな、セイ。それに段々と操縦の技量も高くなってきた。レイジに触発されたか?

 

 そしてその次の日、玉入れ。銃に弾を込めて遅かった方を撃っていいっていう弾入れじゃないよ?運動会でやるアレ、籠の中に玉をたくさん入れたほうが勝ちっていうあれさ。もちろん飛行禁止、チーム戦みたいな感じで赤白10人で別れての勝負だった。接戦だったけど何とか勝利、無敗を貫くことができたのだ。バトルとは…?となったけど正直ちょっと楽しかった。ガンプラ運動会とか小規模で開催したら面白いかもしれない。

 

 今俺たちはコウサカやラルさんと一緒に食事をしているのだが話題になるのは専ら世界選手権の出場者たちだ。当たり前の話だけどな。

 

 「今現在君たちを含めて無敗で勝ち残ってきているのは11組…ガンプラ心形流のヤサカ・マオ、イタリアのリカルド・フェリーニ…正体不明のアイラ・ユルキアイネン、他にも強豪ばかりだ」

 

 「イオリくん、大丈夫?」

 

 「ありがと委員長、絶対勝つから応援よろしくね」

 

 「…それだけじゃねーだろ、ラルのおっさん」

 

 「ああ、タイ代表のルワン・ダラーラ、アルゼンチン代表のレナート兄弟…そして」

 

 「ドイツのライナー・チョマー…」

 

 「そうだ。私も彼の変わりようには驚かされた。ファイターとしての研ぎ澄まされ方はある意味で完成に至っているだろう」

 

 「…チョマーさん、すごく強くなってた。バトルロイヤルの時から何かを掴んだんだと思う」

 

 「今日の3VS3バトルで確信に変わった。チョマーさんの中でピースが噛み合いだしたんだ」

 

 多分、そのピースというのが、俺たちだ。フェリーニさんへの一方的な嫉妬じみたものではなく純粋な…ただ純粋に勝ちたいと俺たちにその思いを向けてくれてるんだ。チョマーさんの実力は当然高い、だから明確な格上なんて数えるほどしかいない。俺たちがそうだとは思えないけどチョマーさんは俺たちをターゲットにしてくれた。執念をすべて俺たちと全力で戦い合うために向けだしたんだ。

 

 今日の第六ピリオド、3VS3のチームバトルで俺たちはチョマーさんとチームを組むことになった。そして、彼が作ったジェスタキャノンの真の性能を目の当たりにした。ビームキャノンは出力調整でビームガトリングに変わり、左肩のマルチランチャーはミサイルポッドへ変更、脚部の3連装グレネードランチャーはオミットされ、分厚い装甲に置き換わっていた。腕部の装甲に変更が為され内部にビームソードを内蔵し、腰にも2本のビームソードが装備されている。ビームライフルはビームサブマシンガンへ変更され、シールドとの複合武装へ変わっている。そして、俺のバルキリーから学んだのであろう偏向ノズルによる高い運動性と、装甲内部に内蔵されたマイクロミサイル…間違いない、元になってるのはYF-19のスーパーアーマードパック…それをチョマーさんなりの回答で形にしたものだろう。

 

 今日のバトル、俺たちと組んだチョマーさんともう一人、エジプト代表の人だったが、スコアが違う。チョマーさんが2機撃墜、そして俺たちが1機だ。速度を活かして索敵を担当した俺たちをビームキャノンとミサイルで援護した際にシールド上から敵機を蒸発させ、背後から迫ったゴッドガンダムを格闘戦で圧倒、ゴッドフィンガーをカウンターで切り捨て、相手が放った起死回生のもう片方の腕でのゴッドフィンガーを腕を掴んで一本背負いして無力化、ビームソードを突き刺して終わらせた。

 

 その戦いの中、チョマーさんに動揺はなく常に冷静だった。滾ってる、燃えているのはわかるがそれを全く表に出すことなく最善の選択肢を判断し続ける。チョマーさんの強みは判断力にある、と俺は考えている。ツムギが操縦するヅダと対等に渡り合ったのは、チョマーさんの咄嗟の判断、いわば勘がそれだけ優れていたからではないかということだ。

 

 俺が作り、ツムギが操縦するヅダは速い、バルキリーの圧倒的な加速を生み出すエンジンをそのまま搭載し、さらにメインエンジンはカリッカリにチューンアップした土星エンジン、目にもとまらぬとはこのことと断言できるくらいには速度に自信がある。チョマーさんは格闘戦が一番得意だ。ヅダの超速度ヒットアンドアウェイを簡単に対処してくるくらいにはチョマーさんはできる。初見殺しともいうべき武器封じと至近距離マイクロミサイルという奇策で一度は勝利したもののツムギが言うにはあのまま接近戦を続けても負けはしないが勝てもしなかったとのこと。

 

 チョマーさんが言っていた「速いだけでは俺は倒せない」という言葉が絶対的な真実だったのだ。ヅダの一番の武器が彼には通用しない。その事実は俺とツムギ、ヒマリを燃え上がらせるには十分だった。絶対に彼に勝つ、目標はたくさんあったけどその中でもひときわ大きな壁としてチョマーさんは立ちふさがってくれた。

 

 フェリーニさんもマオも今のチョマーさんを大きく警戒している。そして、彼は俺たちやセイ、マオと違ってマルチファイター、多数の機体を使い分けてくる。正直あのジェスタキャノンが全てなんてとても思えない。まだ何かあるはずだ。

 

 「…楽しいね。こんなにも悩んでるのに」

 

 「うん!不思議、何にも思いつかない!」

 

 「ああ、なんていう無理難題だろうな。なのに、これ以上ないほど楽しい」

 

 壁が高ければ高いほど燃える。勝ちたい相手が一人増えた、それだけのことなはずなのにどうやってそいつに勝つか考えて、悩んで…それを面倒だなんて思えないし思わない。いくらだって悩んでいたい気分だ。マオやフェリーニさん…それにタツヤさん、セイとレイジ、誰の事を思ってもそうなる。そして、その中に一人が追加された。ワクワクしてドキドキする。強敵が出現するっていうのはやっぱり一大イベントだな。




 これが作者の考えるチョマーさんです。原作ではギャグキャラ&負け癖がつくというありさまでしたがこの作品においてチョマーさんはフェリーニさんと並ぶ、あるいは凌駕するかもしれない超強キャラになっております。

 というかフルスクラッチジェスタキャノンの性能予想なんでみんな当ててくるの?作者ってそんなにわかりやすいかな。
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