「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 作:カフェイン中毒
小学6年生になった。時間の流れは早いね。これまでの流れとしては学校に行き→イオリ模型か大型模型店に行ってGPベースで飛ぶ→帰ってフルスクラッチ。この無限ループを繰り返してたんだけど…延々とフルスクラッチしてて分かった。これきりないやつだ。マクロスシリーズのバルキリーはそりゃあもうたくさんあるわけなんだけど、これを俺一人で作ってたら時間が足りるわけない。当然バルキリー以外の機体だってわんさかあるし、最終目標のマクロス級を作るのなんて何年かかることやら。
そしてもう一つ、重大な問題があった。マクロスシリーズにおける重要なポイントとして3段変形するバルキリー、主人公とヒロインの三角関係、そして歌があるわけなんだが。三角関係は俺には100%無理なのでどうしようもないんだけどまだ何とかなるかもしれないのが歌だ。と思ってたんだけど…
「歌ってくれる相手もいない、俺が作曲できるわけでもない、演奏のえの字すらわからない…お手上げだぁ!」
「アルトくん急にどうしたの?」
「この世を恨んでたんだ」
「本当にどうしたの?熱でもあるんじゃない?」
俺が部屋でいきなり頭を抱えだしたのが不思議だったのか、作り途中のパーツをつんつんといじっていた女の子が不思議そうに俺に声をかけてきた。そう、女の子である。俗にいう幼馴染というやつらしい。この体の記憶によれば割と仲がいい部類に入るんではないだろうか。快活な笑顔にショートな髪、日焼け後がよく似合う俗にいう美少女という部類に入ると思う。セイのやつともよく遊ぶがこの子、スズカゼ・ヒマリとも割と遊んでいると思う。男子女子関係なく遊べるのが小学生の特権だね!なおその先は……考えないでおこう。
「それで、歌ってなに?」
「いやな?音楽やりたいなってわけじゃないんだけど。こいつをBGMに乗せて飛ばしながらPVでも作ったら面白そーだなって」
俺は半分冷や汗をかきながら必死に言い訳でごまかしにかかる。この世界にない作品を完全再現するために俺の記憶をもとに歌と音楽を再現してくれる人を探してます、なんて言えるか?俺は無理、言えない。ただでさえフルスクラッチばっかしてるせいで家族からすらアルトが壊れたとか言われてんのにさらに狂ったとか思われかねんぞ。最悪病院に叩き込まれそうだ。
「へー!面白そうだね!やってみようよ!」
「無茶言うなよ。音楽のあてすらないのに」
BGMに合わせて飛ぶのはできるけど。伊達にこの半年ガンプラバトルに入り浸ってないよ。何だったらワクチンライブばりのマニューバも見せてやんよ!VF-31はないけどな!あれ作るの相当先になるだろうなあ。フルスクラッチしてて気づいたけど後発の機体ほど機構が複雑になってくし、難しい。でもそれが燃えるのだ
「んー、じゃあ私が選ぶから!音楽!歌ってもいいよ?」
「ほーう?言ったな?いいんだな?歌ってもらうぞ?」
「うん!女に二言はありません!でも私が歌っていいの?ガンダムの歌でいい?」
「………うん」
「うわ、すっごい渋い顔。じゃあ、フリーのBGMから合いそうなやつ探そうよ。もしくは作っちゃう?」
「作れんの?」
「音楽ソフトは使えるよ?」
「…マジで?」
「言ってなかったっけ?私の家、音楽一家なの。私もそれなりに楽器は弾くし歌ったりもするよ?だから、アルトくんが音楽できなくても私ができるの。それに、そのプラモせっかく出来がいいんだから誰かに見せないと、ね?」
あんぐりと開いた口が塞がらない俺に対して彼女はVF-1を持ち上げながらそう言った。確かにそうかも。マクロスがないこの世界に3段変形するバルキリーが舞う動画をたたきつけたらどうなるか、俺としては非常に興味がある。やってみる価値はあるんじゃなかろうか。もしこれで成功出来たら歴代マクロスの名シーンを再現する動画とかも作ってみたい。
「じゃ、やってみるか。イオリ模型に行こう」
「うん。GPベースだね!」
「それもだけど、セイのやつも巻き込んでいこうかなって」
「あーイオリくん!そうだね!楽しそう!」
「というわけなんだけどさ。セイも一緒にやらない?」
「かくかくしかじかじゃ伝わらないよアルト…」
「アルトくん変なところで面倒くさがりだよねー」
「何を言う、きちんと説明しただろ。動画作ろうって」
「それだけじゃわかんないよ…」
さっそくという名の思い付きでイオリ模型に直行した俺とヒマリは店番をしていたらしいセイにかくかくしかじかまるまるうまうまと説明をしたのだがどうやら端折りすぎだようだ。まあ流石に勢いだけで来たから説明するべきこともないんだけど。
「それで、その動画って?」
「いやさ、俺のプラモってフルスクラッチじゃん?しかもガンダムというカテゴリから思いっきり外れてるし、全国公開してどんな反応が返ってくるか気にならない?」
「発案したときは渋ってたくせに調子いいんだから。私も面白そうだなって思って乗ってみることにしたの」
「へー、いいかも。僕も協力していい?」
「最初っからお前は数に入ってるぞ」
「断られるとは思ってないんだ」
「そんな浅い関係じゃないからな、親友」
「うん、断らないけどさ」
「いーなー、そういう男同士の友情ってやつ。それで、どういうのとる?」
ヒマリが若干ぶすくれるように口を尖らしながら聞いてくる。今日は思い付きだしなー、そうだなあ。
「よし、2本撮ろう。30秒から1分くらいのやつで。セイ、GPベースって戦艦の設定ってできたっけ?」
「出来るよ。デブリみたいな感じだけど」
「おっしゃ。あとガンダムレオパルドデストロイとヘビーアームズEW版組んであったよな?貸してくれ。壊さんからさ」
「いいけど、何に使うの?」
「思いついてきたね~アルトくん。BGMはまっかせといて!いいの作るからさ!」
俺は二人に思いついた構図を説明する。これなら今あるVF-1とVB-6のカッコよさを強調するような動画ができるだろう。今日が休日でよかった!丸一日撮影につぎ込める!
「準備大丈夫かー?」
「私はいいよー」
「僕も大丈夫!」
起動したGPベースの上、宇宙の中に大きな戦艦のデブリが漂う中、VB-6が浮いている。さっき確認した流れ通りにいけば結構よさげなものができるハズ!カメラ係のヒマリとジムに乗り込んだセイが頷いたので俺は合図をする。
「じゃあいくぞ!」
俺の合図とともにVB-6が動き出し、宇宙をかける。周りには適当に仕掛けた地雷が炸裂し、爆発の中を縫うように重厚なVB-6を俺は動かしていく。爆発で照らされるボディがイカすぜ!爆発をやり過ごすとどこからともなく機関銃の弾が降り注いできた。ちなみにこれは撮影用に威力を最低も最低、弾が出るくらいの出来にあえて3分くらいで超適当に作ったマシンガンによるものだ。だからカンカンとVB-6のエネルギー転換装甲にあっさり弾かれる。これも計算通り、機首を上げ、戦艦デブリの上に出た瞬間、ドカン!としかけてあった地雷にわざとあたりに行く。
もちろんこれも見せかけの爆発だ。VB-6を爆発の煙が覆い隠すが、それを切り裂くように変形しながら戦艦デブリに豪快に着地する。火花と金属がひしゃげる音を盛大に立ててデブリに降り立つガウォークのモンスター。ペイントされたモンスターの顔が煙で煤けているのがポイントだ。
そこからレールキャノンをジムがいる方向に向け、発射。固定板で固定されたのでVB-6は揺らがなかったが反動で立っているデブリが見事に凹んだ。デブリに隠れたジム(実際はもう撤退済み)をデブリごとレールキャノンがえぐり大爆発。その後、さらに変形してデストロイドへ、人型になったことで自由な方向へ向けるようになった両腕の機関砲とミサイルランチャーを四方八方へ撃ち、デブリをあらかた粉砕して道を無理やり作り、ブーストをふかして大ジャンプ。そのままシャトルに変形して飛び去る。
「おっしゃ!完璧!どうだ?撮れた!?」
「いいんじゃない!?かっこよかったよ!」
「撮れたよ~!GPベースのカメラ機能ってやっぱり優秀だね!全方位から録画されてるや」
そう、GPベースには試合のリプレイ機能が搭載されている。全方位を完全に録画しカメラ位置も自由自在、パソコンに移せば編集も可能と至れり尽くせりである。というかそれを利用してガンプラバトルを配信する人とかも結構いる。俺みたいにPV作ろうってやつは見たことないけど。商業商品だもんね、ただで使えるほうが珍しいか。イオリ模型のGPベースこんな借りていいかと思ってたけどセイのお母さんは「いいわよ~」と言っていたのでありがたく借りることにした。優しいお母さんだ、おやつくれたし(単純)
「よし、じゃあ本命!こっちでやるぞ!」
「それで、レオパルドとヘビーアームズは持ってきたけど…どうするの?」
「おう、ヒマリも協力してくれよ?こいつに向かってミサイルを山と浴びせてくれ。迎撃しながら飛ぶから」
「私あんまり操縦得意じゃないよ?」
「僕も…それにアルトくんが武器部分作ったでしょ?相当性能高くなってるけど…」
「動かずミサイルだけ撃ってくれれば大丈夫!そっちに関しても大丈夫だから!俺に任せろ!」
今からやるのはいわゆる無数のミサイルをぐりぐりと動くカメラワークで映しながら回避あるいは迎撃するさまを魅せる「板野サーカス」と呼ばれるアニメ手法をVF-1のプラモで再現しようというものだ。デブリを消した宇宙を飛ぶVF-1。パック装備はストライクパック、背中に背負っているマイクロミサイルポッド兼ロケットエンジンの片方をビームキャノン付きのロケットエンジンに換装したものだ。選択装備はすべてマイクロミサイルポッドになっている。上にはヘビーアームズ、下にはレオパルドがスタンバイ済み。
「よし、来てくれ!」
「いくよ~!それっ!」
「こっちもいくよ!よけてねアルト!」
「任せとけって!」
合図とともに上下からミサイルが襲い来る。まずは加速してミサイルを振りきる。もちろん俺が作ったミサイルなので追尾性能がゴリゴリに半端ない。マニューバで振り切るのは至難の業だけど!それをやるのがかっこいい!
右へ左へ、ミサイルを攪乱しながら当たらないように進路をとり、そのまま武装選択でチャフをばらまき後続についたミサイルが巻き込まれて爆発、安心感を覚える間もなく、次のミサイルがこっちにやってきた。インメルマンターン、上下逆さの状態でミサイルに相対し、ガンポッドとレーザー機銃を連射して対処、次!
今度は10発以上襲ってきた。大丈夫だけど!マニューバでかわしながらガウォークに変形して直線起動だったのに鋭角的なカーブを入れたりしてミサイルを混乱させる。その隙に20発のマイクロミサイルをこちらも発射し相手のミサイルと衝突させて処理する。すべて処理できるようなものでもなかったのでうち漏らしたものは手に持ったガンポッドと背中のビームキャノンを当てることで対処、次だ次!
「すっごー!残り全部一気に行くから!」
「信じてるよアルト!これでラスト!」
「おっしゃあ!ラストスパートだ!」
襲い来るのは総計50発以上のミサイルの雨!ガウォーク、ファイターの変形を繰り返しながらガンポッドとレーザー機銃、ビームキャノン、マイクロミサイルを併用して次々に迎撃していく、数を減らしつつ追ってくるミサイルに対し俺はガウォークで急ブレーキをかける。すると急な動きに対応できなかったミサイルが俺を通り過ぎていく。その隙にバトロイドに変形した俺は全選択した武装でマルチロック。装備の各所が開き、マイクロミサイルを山と吐き出したあとすぐさまガンポッド、レーザー機銃を連射する。ビームキャノンは射角が取れないのでなしで!すべて迎撃し終えた後、後ろを向いてバトロイド状態のまま敬礼をし、見せつけるようにファイターに変形して飛び去る。やってみたかったんだよな、バルキリーでの敬礼!
「おっしゃああああ!やってやったぜ!どうだ!?みてたか!?」
「見てたよアルトくん!ほんっとびっくりした!イメージ沸いたし、いい曲作れそう!」
「流石だねアルト!あぁ、僕もこれだけ操縦出来たらなぁ」
「何言ってんだよ辛気臭い。練習ならいくらでも付き合うって!それよりも。早く録画したやつ見ようぜ!」
「うん!そうだね!」
「おっほお…結構伸びるじゃん…」
1週間後、そこには完成した動画の視聴回数が昇っていくことに対してニヤニヤを隠せない俺の姿がそこにはあった。俺の机の上には完成して塗装を済ませた新しいバルキリーが二つ、鎮座していた。動画の方もなかなか好感触らしく、コメントでの反応が心地いい。いいだろこれ?今んとこ俺しか持ってないんだぜ?とニマニマしてると俺の部屋のドアが開いた。何事?と思っていると父さんだ。しかも何か大きいものを持っている。
「アルト、ちょっといいか?」
「うん。大丈夫だけど何それ?」
「後の楽しみだよ。お父さん、アルトがプラモデルに興味を持ってくれたのが嬉しくてな。だけどフルスクラッチっていうのは意外だったなお父さんは。時間かかって大変だろ?」
「うん。だけどこのプラモは俺しか作れないから。それに、やってて楽しいんだ」
「そうか。そんなアルトにお父さんからプレゼントだ。開けてみな」
父さんが下した大きい箱を言われるがままに開けるとそこには、もう一つパッケージされた機械が鎮座していた。商品名は…プラモデル加工用3Dプリンター?えっ3Dプリンター!?とんでもないものが出てきたぞ!?転生前の世界にも3Dプリンターはあったがこの世界のそれは次元が違う性能をしている。俺の今いる世界はおそらく設定上未来として設定されてるからか技術レベルの進歩がすごいのだ。ガンプラバトル用に開発された3Dプリンターがあるくらい。で、その性能というのは、早い、静か、省電力の3つを備えたまさにパーツを作るのにうってつけの機械だ。その分お高いんだけど…
「父さんこれって…いいの?」
「ああ、いい。その年でそれだけ夢中になれるんなら大したもんだ。夢中になれるんなら親としても応援したいからな?その代わり、ちゃんと勉強も両立するんだぞ?」
「もちろん!ありがとう!」
フルスクラッチする関係上PCで設計図を作ったりする俺としてはこいつがあれば作業が何倍も早くなる!ありがたいことこの上ない。約束はちゃんと守らないと。次のテストで100点目指してみるか!
とりあえず次回は掲示板回やります!お楽しみに!