「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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第七ピリオド・蒼の流星、不穏な影

 迎えた7日目、第七ピリオド…ガンプラレースだ。そう、レース…去年の第六回世界選手権のモラトリアムでツムギと勝負したものと同じルール。俺が作ったヅダ・マクロスパックの得意分野だ。問題があるとすれば…誰と一緒になるか。10人同時のレース、全部で9レースしかない。その中で、ポイントが付くのは1位のみ、非常に厳しいルールだ。そして、モラトリアムイベントと同じではないのが妨害がありなところ。コースにトラップを仕掛けようが、銃撃しようが、ビームサーベルでバラバラにしてもいい。そういうルールだ。

 

 「ツムギ、よかったな」

 

 「…うん!思いっきり、前に出る!」

 

 「ツムギちゃんレース大好きだもんねえ」

 

 そう、ツムギはガンプラバトルよりもレースのほうが好きらしい。というかこいつの元々の目的はヅダを速く速く、遠くへ飛ばすことなんだからな。この大会に出てくれているのは…自惚れじゃなかったら俺が出られないから、というだけだ。だから、世界大会専用の超大型GPベースで行われる何でもありの妨害レースはツムギのやる気をグングンとあげている。

 

 「…はやく、はやく。順番にならないかな」

 

 「ツムギちゃん大興奮だね~」

 

 「去年俺とやった時みたいだな」

 

 それはもううきうきワクワクと、バトルでもないのに髪を留めて顔を出しているし、待ちきれなくてソワソワしてらっしゃる。サファイアのような瞳はそれそのものが宝石だと言わんばかりにキラキラと輝いている。犬の尻尾があったらそれはもう元気にぶんぶんと振っていることだろう。というか座ってる段階なのにもう体がうずうずと動いている。大丈夫かなこれ。

 

 「アルトくん、そわそわしてどうしたの?ツムギちゃんとシンクロしてるよ?」

 

 「えっマジで?いや、多分連日セコンドやってるせいかな…?」

 

 「つまり?」

 

 「…バルキリー飛ばしたい?」

 

 「身もふたもないけどソレ。会場のGPベース借りようかな」

 

 「…じゃあアルト、終わったら勝負」

 

 「VF-22でか?」

 

 「…うん、ヅダは決勝トーナメントの後で」

 

 「それもそうだな、やるか。VF-25も飛ばしてやらないとかわいそうだし」

 

 「あーずるーい!仲間外れはんた~い!私もVF-11とクァドランで参加する~~!」

 

 「おうやろうやろう。俺も暴れたいし」

 

 ワイワイと話していると、何となく視線を感じる。疑問に思った俺たちが周りを見るとどうやら他の選手たちが耳をダンボのように大きくして聞き耳を立てていたのだった。で、俺らと目が会うとちらちらと何かを言おうとしてもごついている。うん?何事?と思っていると俺の両脇にどかっと座る人たちが、チョマーさんとフェリーニさんだ

 

 「よーうアルトぉ、面白い話してんじゃねえか、なあフェリーニ?」

 

 「全くだぜ、お前この後飛ぶって?なあ俺たちも混ぜろよ」

 

 「いいですけど。なあヒマリにツムギ」

 

 「ぜひぜひ」

 

 「…かもん」

 

 「ワイも混ぜてもらえまへんか?」

 

 「マオくん!いいよ!やろやろ!」

 

 「僕たちも入れてよ!」

 

 「そうだぜ!てめーとは一度ガチでやりたかったんだよアルトォ!」

 

 「…セイ、レイジ…本戦用とは別のガンプラ持ってる?」

 

 「…よな?セイ」

 

 「…ごめん、ない」

 

 「おいこらセイィ!」

 

 「しょうがねえから素組みだなセイ」

 

 「試作品持ってくればよかったよ…」

 

 ここに来てからヅダの調整に心血注いでいたせいでバルキリーを飛ばしていなかった俺としては折角来たんだしレースの後の息抜きくらいはいいだろうと3人でGPベースを使おうとしていたのだがその話を聞いていた周りの大人や親友が乗っかってきた。世界選手権だしやることあるだろなーって思ってたんだけど生粋のガンプラバカしかいない大会だ、俺の考えが間違ってたか。

 

 「メイジン、来ますか?」

 

 「………遠慮させていただく」

 

 「そうですか…」

 

 同じ部屋にいたタツヤさんも誘ってみたのだが長い長い沈黙の末に断られた。凄い行きたそう、だけど立場でがんじがらめになってて自由に動けないのがありありとわかる。これ絶対本心は即答したかった感じだ、だってめっちゃ悩ましい顔してたもん。だから残念そうな顔で見てやるなヒマリにツムギ、タツヤさんめっちゃ顔そらして見ないふりしてるから。

 

 『第一レース、参加者は準備をお願いします』

 

 「おっ、一番じゃないの、行こうか」

 

 「…やった。レース、レースっ」

 

 「ホントにうきうきだねツムギちゃん」

 

 やる気十分満点のツムギがルンルンと俺とヒマリの手を引っ張って会場に一番に乗り込んでいく。後ろから感じる生暖かい視線に見送られながら他の選手と一緒になってGPベースにヅダをセットする。他の選手がドダイやらなんやらと移動用のものを装備する中俺たちのヅダは素の状態だ。だって要らねーもん、ヅダにそんな追加装備。本体がすでにバチクソに速いのにこれ以上速くしてもドラッグマシンみたいになる。曲がれねーよ、爆発炎上だよ。ツムギに言わせたら様式美だけど大会では要らねーんだよそんなの。

 

 『シグナルが…青に変わりました!』

 

 「…いこっ!ヅダ!」

 

 シグナルが赤から青に変わった瞬間、他の選手がブーストを吹かし始めた段階で土星エンジンと熱核バーストタービンを爆発させてかっとんだヅダ、当然現在一位、らんらんと光るモノアイの軌跡と青い残像が市街地のコースを駆け抜けていく。実況のキララさんが速いっ!と言ってくれているがそれ目的の機体だから早くて当然。後ろから迫るビームや長距離砲の狙撃を躱しつつ縦横無尽に飛んでいく。

 

 「くそっ!わかってたけど速い!」

 

 「まだだ!諦めんぞ!」

 

 レース用の機体を作ってた人たちは速度が乗ってきたことで追いすがってきている。特にドダイやベースジャバーを利用している人や可変機体の人は攻撃する余裕があるようで、ミサイルやらビームやら実弾がヅダに向かって飛んでくる。

 

 「…ミサイル、腕部、脚部、胸部、腰部、全弾発射!」

 

 「大盤振る舞いだな!」

 

 「ツムギちゃん!第二チェックポイントまであと少しっ!」

 

 「…ん!」

 

 反転して後ろを向いたヅダの追加装甲が次々とオープンしてミサイルが発射される。狙いは機体本体…ではなく地面や側面のビル。無数の爆発が咲き、スピードが乗ってたせいでブレーキが利かなかった機体が次々に爆炎に飲まれる。その隙に加速し、チェックポイントをくぐっていく。このレースは3周ある、一周はそれなりに短いが3周となるとそれなりの長さで集中力が要求されるわけだ。

 

 「…アルト、もっと差をつける。ISCを全開にして?」

 

 「…60秒だぞ」

 

 「カウント始めるよー、1、2、3…」

 

 「…行くよっ!ヅダ!」

 

 1周目を早々に終了させたツムギのお願いを聞いた俺がリミッターを外し、プラフスキーバーストを全開にする。熱核バーストタービンから吐き出される圧縮粒子の青色の爆炎と土星エンジンから噴きだす白い炎の後押しでさらに加速していく。ツムギの操作とヅダの圧倒的な速度が後続をどんどん切り離していく。全力で操縦桿を押し込むツムギとそれに答えてどんどんと加速していくヅダ。

 

 『速い!速すぎるぞヅダ!これがツィマッド社の底力かっ!?』

 

 「…キララさん、わかってる!ヅダっ!ラスト!頑張るよ!」

 

 2周目をあっという間に終わらせ、3周目に入る。1周目はまだ理解できる軌道で飛んでいたがISCを使用し始めてから観客には理解不能な軌跡を描いているだろう。直角に曲がり、攻撃に対して真横にスライドして躱す、ピンポイントバリアの光に包まれて流星と変わったヅダが圧倒的優位を保ちつつ3周目のゴールテープを切った。第七ピリオドも完勝、だな。

 

 その後、フェリーニさん、チョマーさん、マオ、メイジンは問題なく1位を取り、ラストのレースでセイとレイジの番になった。湖畔のステージで1周目、2周目の時点でディスチャージシステムを使って1位をキープしていたスタービルドストライクだったが、3周目の序盤に、湖の中から伸びてきた腕に捕まって引きずりこまれてしまったのだ。

 

 「なんだっ!?妨害か!?明らかにMSの腕だったぞ!?」

 

 「…でもおかしい、走ってる機体は減ってない」

 

 「ええ、ワイらの時にはあんな露骨なトラップなんてありませんでした」

 

 すぐさま脱出したスタービルドストライクであったが一位は入れ替わりレナート兄弟に。残りの粒子を使ってのディスチャージでもう一度詰めるスタービルドストライク、だがレナート兄弟が一瞬、ほんの一瞬だけ先にゴールをくぐり、セイとレイジに大会初の黒星がつくことが決まってしまった。

 

 「だーーーーー!くっそ!何だったんだよアレ!」

 

 「うん、ホントに…訳が分からないや…」

 

 「ああ、あれはおかしい、一度大会本部の方に連絡を入れよう」

 

 帰ってきた二人をツムギとヒマリが慰めながら俺は端末から大会本部の方へ連絡を入れる。同時にチョマーさん、フェリーニさん、マオもだ。メイジンは試合が終わった直後に荒々しくドアを開けて出ていってしまった。メールでの連絡は10分ほどですぐ返ってきて内容は…

 

 「ステージギミックだぁ!?そんなんで本当に通ると思ってるのかよ!?」

 

 「こっちも同じ返答です。あくまで各ステージに一つ仕掛けられたトラップだと」

 

 「たまたま他の試合では誰も踏まなかっただけで今回偶々スタービルドストライクが引っ掛かった?んなわけねえだろうが!」

 

 「しかもありゃあ、どう見てもMSだ。つまり操縦者がいたはず…狙ってるのか?セイとレイジを?でけえザクの時もそうだ、執拗にスタービルドストライクだけ狙ってたしな。おかしくねーか?」

 

 恣意的すぎる、何が俺の親友とそのパートナーにある?そんなもんは心当たりはねえ、だとすれば勝ち上がらせたくない何かがあるとしか思えない。誰の思惑だ?何の目的で?セイとレイジに一体何があるというのだ。ギリギリと歯が鳴ってしまう。くい、と袖が引かれた。そっちを見ると心配そうな顔をしたヒマリ。ふう、と息を吐いて顎の力を抜く。

 

 「セイ、レイジ…どうする?」

 

 「勝つしか…ないよ。これで次のピリオドを落としたら僕たちはもう、決勝トーナメントに参加できない」

 

 「ああ…次は何が起こっても負けねー…アルト、発散に付き合ってくれよ」

 

 「アレがあっても、気持ちは冷めてねーみたいだな。付き合ってやるよ、いくらでもな」

 

 ショックを受けたが折れないセイと逆に燃え上がっているレイジを見て、要らない心配だったかと思ったが…どうにも嫌な予感が拭えない。とにかく明日には何もないといいんだけど。

 

 

 

 

 「さあアルト!今日こそお前の飛行機撃ち落としてやるぜぇ!」

 

 「アルトはん!一手お付き合い願います!」

 

 「チョマー様のお通りだぁ!」

 

 「アルト、悪いな」

 

 「…アルト、覚悟」

 

 「アルトくん!今日こそ当てるからね!」

 

 「待て待て待て待て!なんで6vs1になってるんだよ!?おかしいだろ!」

 

 「だってみんながみんなアルトくんと戦いたいから!」

 

 「じゃあ順番に一人づつでいいだろうが!」

 

 「えーだって待てないもん!」

 

 「…待ちきれない」

 

 「…ヒマリ&ツムギ、ステイ!」

 

 「…いやだ、わん?」

 

 「いやだニャー!」

 

 「おらいくぞアルトォ!」

 

 「ちくしょうがあああああ!!!」

 

 ところ変わって現在会場にある試運転用のGPベースを借りているわけなんだけど、なんでか知らんが全員まとめて俺にかかってきた。おかしくない?

 

 VF-25スーパーパックを操る俺の前に現れたのはセイがさっき組み立てレイジが操るエールストライクガンダム、マオのダブルエックス、チョマーさんのウォドム、フェリーニさんのEW版ゼロカスタム、ツムギのVF-22スーパーパック、ヒマリのクァドラン。なんで俺に味方がいないの?クソァ!もう知らんぞ俺は!何が何でも被弾ゼロで切り抜けてやる!いや?ならばこそこれで行こう!

 

 「お前らがそれなら俺はこうしてやる!いくぞおおおおおおお!!」

 

 「ああっ!そりゃ汚ねーぞ!」

 

 「うるせえ!一機でこの強者たちとやり合えるか!」

 

 「アルト!そう来なくっちゃ!」

 

 セイの嬉しそうな声をよそにどう考えてもやばいと思った俺は持ってきていたVF-1、VB-6、VF-11、YF-19、YF-21も全て投入することを決意。これで数は6機!釣り合った!カイザーさんにレクチャーを受けて抜群に上達した同時操作の腕前を見せてやる!バルキリーに乗れば俺は負けねえんだよおおお!!!行くぞ全機同時操作!突撃ラブハァァァァァトォ!

 

 俺は全力のやけくそでミサイルとビームの嵐にバルキリー5機を突っ込ませ、デブリ上で変形させたモンスターによる超長距離砲撃を撃たれると厄介ことゼロカスタムとダブルエックスに浴びせてやるのだった。わいわいぎゃあぎゃあと楽しむ俺たち。迫るミサイルとビーム、弾幕の嵐を縫って反撃を叩き込むバルキリーたちとそれをやすやすと躱していくライバルたち。今が大会中だということを忘れて、俺たちは存分にバトルを楽しむのだった。

 

 

 

 「いまだ!食らえフェリーニィ!」

 

 「あっチョマーお前っ!そりゃ無しだろうが!」

 

 「ナイス仲間割れぇ!食らえマオォ!」

 

 「あぶなっ!?やりましたねアルトはん!」

 

 「俺を忘れんなよアルトォ!」




もうすぐ…もうすぐ予選が終わる…!決勝トーナメントを書ききれば後は例のあのイベントをかける…!

 完結まであともう少しなんだ…!

 え?トライ?知らんな(魔王並感
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