「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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本番が近づくと緊張してくるよね

 第七回ガンプラバトル世界選手権の予選が終わり3日のモラトリアムが設けられた。その3日間のあと決勝トーナメントを準決勝まで行い、そこからさらに1週間後決勝戦が行われる。どうも去年のモラトリアムの設け方に文句が出たらしく、モラトリアムを延長する方向で話がついたらしい。ある意味これはよかったともいえるかな。

 

 なんでかって?このモラトリアムでイベントの下準備ができるからだよ!やったぜ!よく考えればあと1週間かからずに本番とかちょっと緊張してきた。まずいまずい、これもすべてマクロス及び他の作品のプラモに活気を与えるため&バルキリーの宣伝のため…半分以上私欲ですね、しょうがない男だな俺も。

 

 「おいーっすセイ、あら、フェリーニさんも一緒なんだ」

 

 「あ、アルト、どうしたの?」

 

 「ようアルト。お姫様たちはどうした?」

 

 「まだ夢の中ですよ。ちょっと俺たち今日出かけるから会場にはいないんでよろしく」

 

 「え?何それどういうことなのアルト?」

 

 「ヤジマのイベント関係。リハーサルみたいなもん」

 

 昨日頑張ったツムギと朝に弱いヒマリをぐっすり寝かしてあげたかった俺はヅダのメンテナンスを行う前にセイたちの顔を見ておくことにした。すると部屋の中には朝早くなのにも関わらずフェリーニさんとセイが仲良く机の上でフェニーチェとスタービルドストライクの修理をしていた。何それ俺仲間外れ?ちょっと傷つくわー。ちなみにレイジはベッドの上で皿に山盛りになった豆大福を頬張っている。俺の方には見向きもしてない、なんかちょっとくやしい。

 

 「あー、あれか。プラモデルの交流会、チケット落ちたんだよな畜生!」

 

 「3日目でよければ関係者チケット譲りますけど?」

 

 「まじかっ!?頼む!」

 

 「か~わ~り~に~…ちょっと協力してほしいことが…」

 

 「アルト、また増やすの?」

 

 「人は多いほどいいからな。チョマーさんもルワンさんも協力してくれるっていうし」

 

 「んだよ俺は最後か~?まあ、協力しろだなんて頼まれなくてもやってやるぜ。なんだ?」

 

 「まあそれは後でメールで内容を説明しますよ。口頭だと死ぬほど長くなるんで」

 

 やったぜ。協力者が増えてくれて俺は嬉しい限りだよ~~~!イベントの3日目はかな~~り大掛かりになるハズなので腕の立つファイターが協力してくれると捗るのだ。ちなみにセイとレイジも協力してくれるって言ってる。マオはその話をしていたらワイも混ぜてください!って言ってきたので入ってる。ふっふっふ、着々と準備が進んでるぜ~~。

 

 「とまあそんな感じで。じゃあ俺ヅダの整備していってくるから、明日な~」

 

 「「待て」」

 

 「ん?」

 

 帰ろうとしたらセイに右手を、フェリーニさんに左手を掴まれて止められた。ギギギと音が出そうな感じで振り向くと、らんらんと目を輝かせた二人がそこにはいた。レイジは豆大福からシュークリームにシフトしていた。握力が強い。何が何でも逃がさないという硬い意志を感じる。頼れる仲間はみんな夢の中だし、その頼れる仲間に今こうやって拘束されているわけで…

 

 「…なに?」

 

 「ねえ、アルト。せっかくだから一緒に整備しようよ、ね?」

 

 「いや別にそういうもんじゃねーだろ」

 

 「頼むぜアルト~減るもんじゃねーだろ?仲良くしようぜ?」

 

 「…本音は?」

 

 「「ヅダをよく見せてくださいお願いします!!」」

 

 「素直でよろしい」

 

 

 

 

 「…なるほどな。あんなに速いのはこういうことだったのか…」

 

 「増加装甲がただの重りだったなんて…しかも、推進系が全部本体内蔵でバルキリーのエンジンをサブスラスター扱い…」

 

 「速すぎるから速度調整用の重りだったんだよな~。ついでだからほとんどミサイル入りにしたけど」

 

 「ついででやることじゃねーよそれ…」

 

 「アルトホントにミサイル好きだよね…」

 

 「ミサイルは文化だぞ。あればハッピー、見てて楽しい当てて楽しい」

 

 逃げられないことを本能で感じ取った俺はしょうがなしにヅダを持ってきてバラバラになった増加装甲を組みなおす。フェリーニさんにセイは増加装甲がないまっさらなヅダの姿に興味津々だ。ちらっとスタービルドストライクの内部フレームを見たが流石セイ、細かすぎるパーツ分割だ。しかも強度計算もばっちり、自分が操縦するのではなくレイジ専用に作ってるのがよくわかる、システムは複雑すぎてざっと見ただけでは理解できそうにはないけど。それは俺のヅダに対しても同じ。熱核バーストタービンの内部は俺以外理解できないブラックボックスだ。

 

 発売するバルキリーの熱核バーストタービンは一般用にデチューンされたもので内部はほぼ別物。いやほんとはそのまんま発売しようとしたんだけどパーツ数が異様なほど多いし細かすぎて金型での大量生産ができないと言われてしまい泣く泣く廉価版というか簡易版とでもいうべきものに変わったのである。性能は俺が頑張ったおかげで3割減である。頑張らなかったら7割減だった。大変だったんだよ熱核バーストタービン内部構造の再設計&簡易化。ゆくゆくは俺のフルスクラッチバルキリーと同等の性能のエンジンを発売してやるからな…!

 

 「しかしまあ…ツムギはよくこんな暴走MSを制御してるもんだ。アルト、お前これ乗れるのか?」

 

 「無理ですよ。俺じゃ試運転すらできません。装甲を外した状態でツムギが制御したのだって、俺としては想定外なんですから」

 

 「アルト、これファイターの事考えてないよね?」

 

 「うん。性能しか求めてないし、ツムギが乗って乗り切れない!って言わないと多分大会途中で機体が追い付かなくなると思ったから」

 

 「で、お姫様はそれを乗りこなしちまったわけだ」

 

 「流石にこれ以上は性能のあげようがないので剛性強化くらいですかね。難しいもんです」

 

 素の姿のヅダをいろんなところから見ている二人が唸っている。正直一体のガンプラをずっと補修し続けて一線級の機体に仕上げているフェリーニさんと俺でも理解に苦しむ粒子使用システムをくみ上げたセイにおかしいものを見る目をされる筋合いはないと思う。なんだったら二人のほうが変態ではないだろうか。ほら、俺は別のもん作った際の副産物のようなもんであってだな。おい首を振るな、おかしいだろうが!

 

 「な~アルト、セイ」

 

 「なんだレイジ、よ~食うなお前」

 

 「んなことよりもよぉ。ガンプラ作るのってそんなに楽しいのか?」

 

 「楽しいよ!レイジもやってみたら!?」

 

 「楽しいぞ?自分で作った機体を動かすっていうのはひとしおだ。ねえフェリーニさん」

 

 「全くその通りだな」

 

 「そういうんもんなのかあ?」

 

 「「「そういうんもんなんだよ」」」

 

 わからない、という顔をするレイジに向かって俺たちは全く同じ言葉を全く同じタイミングで言い放つのだった。

 

 

 

 「お~~~!!!すっごいおっきい!広い!こんなところで歌えるなんて~~!」

 

 「…ちょっと、緊張してきた」

 

 「こんな広い会場なのは予想外だな…」

 

 世界選手権の会場から離れること少し、というか選手権会場は出島なのでモノレールに乗って本土に戻った俺たちは送られてきたマップに従ってイベントに使う予定の会場にやってきた。本当にプラモデルのイベントに使う会場か?と思うほど滅茶苦茶でかいし、ヤジマが持ってるGPベース全投入は伊達じゃないらしく、GPベースに至っては現在世界選手権で使用されてるものよりでかい。GPベースの連結機能で全部つながったそれの中でバルキリーを飛ばせたらどれほど気持ちいいだろうか。

 

 「あっ!アルトくんあの人!カイザーさん!」

 

 「…ほんとだ。これないかもって言ってたのに」

 

 「えっ!?どうして!?プリンセスは大丈夫なのかな…?カイザーさーん!お久しぶりです!」

 

 会場のGPベースを見ていた俺たちは本来なら自国にいるハズの前年度世界最強の男、カルロス・カイザーの姿を見つけた。彼にはイベントの開催が決まった時から協力を依頼していたのだけれど愛娘のプリンセスが病気になってしまい臓器移植が必要になったとのことで絶対にそっちを優先してください、大丈夫ですから!と言っていたんだけど…一応、ドナーは見つかって手術も成功したというのは聞いた。けどそのあとカイザーさんはアイラ・ユルキアイネンに負けてしまったのだ。

 

 いろいろあったから来るとは思ってはいなかったし聞いてもいなかった。ヤジマの会場にいるということはヤジマのオファーを正式に受けたということになるんだろうけど今は大事な時期なはずだ。どうして…?

 

 彼は俺の声に気づいてヤジマの作業員との会話を中断しこっちに向いた。声の主が俺だとわかると一言二言断って作業員と別れ此方に歩いてくる。

 

 「アルト、直接会うのは久しぶりだな。参加の返事がギリギリになってすまない。連絡はいっているか?」

 

 「いえ、聞いてなかったので驚きました。それに、今は大変なのでは…?」

 

 「そ、そうですよ!プリンセスちゃんは…?」

 

 「…心配してました」

 

 「大丈夫だ。もうすでに自分の足で歩けるまでに回復しているし、退院の日取りも相談しているところだ。それに、そのプリンセスに言われてしまってな」

 

 クールな無表情ながら、何となく嬉しそうに見えるカイザーさんが軽い動作で頭をかく。プリンセスに言われた?言っちゃ悪いがファザコンのケがあるプリンセスが自分からカイザーさんを遠くにやるようなことを言うとは思えない。それに、親としても今は傍についていてあげたいはず。俺としても、それに文句なんか言えるはずもない。だから、カイザーさんの参加はないものだと思っていて、今この状況が信じられないんだ。

 

 「『約束を破るお父様なんか、お父様じゃありませんわ!』とな。よほど、アルトが開くイベントが楽しみだったらしい。そのイベントに出る私をどうしても見たいと言っていた」

 

 「プリンセスちゃんらしい、かな?やっぱりカイザーさんが大好きなんですね~」

 

 「ああ、嬉しいことだ。それに、私自身気になっていてな。あの、大型プラモデルの使い道を」

 

 「その節はお世話になりました。おかげで完成まで持って行けましたよ。マクロスとマクロスクォーターを」

 

 「私自身は2,3口を挟んだに過ぎない。あれらを完成させたのは君だ。ヤジマの方でも一つ完成させたんだったか?」

 

 「ええ、まあ。クォーターは俺が全部作りましたけどマクロスともう一つ、マクロス・ハルプはヤジマの方で。ヤジマが全主導したのはハルプの方ですね」

 

 「変形する戦艦とは相変わらずとがったものを作る、ビルダーとしては君以上を探すのはなかなか難しいだろう」

 

 「そうでもないですよ、特に今回の大会では」

 

 「…君の親友だという子か」

 

 「そうです」

 

 何度かテレビ通話でのやり取りはしていたものの直接会うのは去年の世界選手権ぶりだ。話のタネは尽きない。特にカイザーさんは大型MAの操作とスクラッチに関しては文字通り世界最高だ。転生してからの目標だったマクロスのフルスクラッチにおいて何度も彼に意見を仰いでアドバイスをもらった。このイベントまでに製作が間に合ったのはやはり彼の存在が大きいだろう。話をする俺たちにヤジマの社員さん、今回のイベントの責任者の人が声をかけてきた

 

 「おっアルト君きたね。もう組み立てすんでるから確認してもらえないかな?壊してしまっていたら一大事だからね」

 

 「あっすいません。お疲れ様です。もう組み立てすんでるんですか!?じゃ、じゃあ確認させてもらいますね」

 

 「…わくわく。アルト、よかったね」

 

 というわけで案内されたのはGPベースの脇にある仮設テント。その中には…あった!俺がまさに夢にまで見て実現へと至った戦艦が!約8mというプラモデルとしては極限の超ビッグサイズの戦艦!SDF-1「マクロス」!俺の設計図では1mほどで作る予定だったんだがヤジマのファイターとなったことで事情が変わった。ヤジマの大型工作機械を使えるようになったことでおおよそ1200mという超巨大艦、まさに超時空要塞であるマクロスを144分の1という縮尺で作れるようになったのだ!俺の家に入りきらないから俺がヤジマに入り浸ってこういう感じなんです!と説明したのを職人さんが頑張って形にしてくれた!ああ、感無量だ。

 

 もちろん強行型への変形もできるしプロメテウスもダイダロスも接続している。中からバルキリーやデストロイドを出撃させる機構も組んで設計した。俺とヤジマの執念の作だ。そして、その隣にある2つの戦艦。そう、2つだ。一つは俺がせこせこ頑張って一人で作った「マクロス・クォーター」。全長約2.7mで同じく144分の1サイズ。バルキリーも搭載可能だけど5機しか入らない。うん、スペース足りない。でもちゃんと5つの艦艇に分離するし変形するしマクロス・アタックもできるよ!フォーメーション・ビッグウェンズデーだってできる!(多分)

 

 そして最後がちょうどマクロスのざっくり半分、約4.1mのマクロス艦だ。これは原作にないオリジナルのもので、設計図は俺作なんだけど材料の加工から何から何まで全部ヤジマだけで作り上げた戦艦「マクロス・ハルプ」だ。基本的な形はSDF-1に準じているが違いはプロメテウスとダイダロスは元からあるものとして接舷ではなく分離できない仕様であることだ。ヤジマの人が「もう一個作りたいんだけどいい?」って聞いてきて徹夜テンションだった俺が「やりましょう!」ってなったのが誕生の経緯である。俺もおかしかったんだろうけどヤジマのワークスチームもだいぶきてたんだと思う。気づいたら設計図書いてて後戻りできなかったし。

 

 「…完璧です。多分どこも壊れてませんね…ありがとうございます」

 

 「いえ、絶対に成功させましょうね。いいイベントになりますよ、きっと」

 

 そうして担当の人が去っていき、俺たちは完成したマクロス級たちを思う存分眺めた。ついでに写真撮影もした。帰ったらセイとかに自慢してやろ。これが俺の戦艦だっ!って

 

 「さて、アルト、ヒマリにツムギ…まずは決勝トーナメント進出におめでとうと言わせてもらう。試合はすべて見せてもらった。よく…成長したと思う。だからといっては何だが…私にそれを見せてはくれまいか?」

 

 「…それは、バトルのお誘いで?」

 

 「そう言っている。アルト、勝手な話だが今私は君とバトルをしたくて仕方がない」

 

 「俺もです。タツヤさんとあなたの戦いを見てから、ずっと俺のバルキリーであなたを打ち破るのを夢見てきた」

 

 「ふっ。言ってくれる。言葉はこれ以上不要か」

 

 「はい…ヒマリ、ツムギ…タイマンでやらしてもらってもいいか?」

 

 「うん、そういうって思ってた。頑張ってね、アルトくん」

 

 「…今回は、譲る。でも次は、私も戦うから」

 

 「ありがとう。GPベースのテストってことで、やりましょうか。カイザーさん」

 

 お互いに愛機のケースを取り出しながら、俺とカイザーさんはGPベースを起動させに向かうのだった。

 

 




 はい、次回はVSカイザーさんです。

 マクロスでかすぎィ!!って作者も思ってますけどやはりマクロスといえば巨大艦ですから、大きくないとダメですよね!大丈夫第八回世界大会でカイザーさんも同サイズのカイラス・ギリーを持ち込んでるので合法です!

 次回でイベントの大まかな内容も明かしたいと思います!こうご期待!
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