「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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決勝トーナメント、開始

 「まーた遅刻かあいつら…リン子さんに任せちゃったけど俺も手伝った方がよかったかなあ…」

 

 3日間のモラトリアムが終わり、今日から決勝トーナメントが開始される。一応ヒマリという朝クソザコ勢がいる俺は早起きというものがいつの間にか得意になっていたので遅刻というものには無縁なんだけど、セイは夜更かし大好きなので普通に遅刻ギリギリだしレイジに至っては夜歩き大好きときたもんだ。約束された遅刻、確定事項、類義語はヅダ=空中分解…これはツムギに毒されてるな。

 

 「…アルトはヒマリを私に預けるつもりだったの?」

 

 「無理だよな、知ってる」

 

 一度ツムギが俺より早く来てヒマリを起こしにかかったことがあるんだけど寝ぼけたヒマリによって布団の中に連れ去られ、その後俺が来るまで抱き枕になったということがあった。つまり、ヒマリの腕力に勝てる人間じゃないとヒマリを起こすことはできないのだー!いい加減一人で起きてくれないかなあ…ちなみにやってるうちにツムギも寝ちゃったようでその光景は大変可愛らしかったとここに懺悔しておきます。

 

 え?今?ヒマリなら俺の背中で寝てるよ。もう11時なんですが?起きてくれない?え?アルトくんの背中おっきい~~じゃないよ普通だよ!寝ぼけてんな絶対!落としてやろうか…?いや、ダメだな。女の子床に落とすのはこう…性別以前に人としてダメな気がする。しかも幼馴染だぜ?冗談ですまないんだよなあ。

 

 「お~~い起きろ~~ヒマリ。そろそろ起きないと…エナさん呼ぶぞ」

 

 「わあああごめんなさいおかあさあああんっ!え?あっアルトくんまた騙したね~~~!!!」

 

 「いい加減起きろっていう合図だ」

 

 ちなみにこの状態のヒマリを起こす魔法の言葉がヒマリのお母さん、エナさんが来るというワードだ。普段はおっとり優しい人なんだけどヒマリ曰く音楽のレッスンの時と怒った時はそれはもう怖いらしい。俺はその人に怒られたことないからわかんないけど。このワードを言うとヒマリは一発で目が覚めるんだけどぷりぷり怒るのでできるだけ使わないようにしてる。けど公共の場でずっとおんぶはなあ…今日は許してくれたまえ

 

 「…ん、ヒマリ。おはよぅ」

 

 「ん!おはようツムギちゃん!それとアルトくんも」

 

 「ぶすっとするなって悪かったから。それよりもほら、組み合わせ発表されんぞ」

 

 「つーんだ」

 

 ぷんぷんとなってしまったヒマリがツムギに抱き着いてうりうりやってるのを横目に俺は画面を見る。するとそこには、組み合わせの発表があった。今回1回戦目は二日に分けて行われる。俺たちの初戦は…ルワンさん、だ。他の試合はメイジンとレナート兄弟、オーストラリア代表とチョマーさん、代理を立てたイギリス代表とインド代表…そのトーナメント票の反対側、リカルドさんやレイジ、セイ、マオと当たるとしたら決勝、か…んっ!?

 

 「えっ!明日の第4試合!セイくんとレイジくんがマオくんと…?」

 

 「…いきなり、二人が戦っちゃうんだ」

 

 「今は考えてもしょうがねえ…この後すぐ試合なんだ。今はそっちに」

 

 「…うん。ルワンさん、負けないよ」

 

 すぐに始まる試合に備えるため、後ろ髪を引かれるような思いをしながら俺たちは控室へ向かうのだった。

 

 

 

 「嬉しいぜ、3人とも。どっかで戦いたいと思ってた。それがこういう形でかなうとはな」

 

 「…ルワンさん、私…あなたに勝って次に行くから」

 

 「ああ!そうだ!それがいい!お互い全力で楽しもう!」

 

 試合が始まる前、ルワンさんと挨拶したとき彼はからっとした屈託のない笑みでそういった。だが、その瞳は俺たちを侮れない敵とみなし、対等の相手として見ていた。俺たちはそれに対して、本気で答えねばならない。彼のアビゴルバインのビームと実弾を潜り抜け、その懐にヒートホークを突き刺すのだ。

 

 「ルワンさんは強い。セイとレイジに負けた後チョマーさんと同じく無敗でここまで来た。ツムギ、ヅダの事は気にするな。粉々になっても明日には元通りにしてやる」

 

 「うん、ヒマリ…ミサイル管制、任せるから」

 

 「わかった!ツムギちゃんは、前だけ見ててね!」

 

 GPベースの上にある装甲を付け直してピッカピカに磨いたヅダとそれに相対する同じく完璧な手入れを施されたアビゴルバイン。その姿はまるでカブトムシ、立派な角が目を引く甲虫の王者の姿。セイたちを2度も追い詰めた機体だ。何が飛び出てくるかわかったもんじゃない。

 

 『決勝トーナメント、第4試合!開始ですっ!』

 

 キララの合図と共にGPベースが作り出す精巧なビル街に飛び出したヅダ。場所が悪い…!障害物が多いとヅダの加速力を活かせない。その程度の不利でどうこうなるツムギじゃないけど、ルワンさんはどうなんだろうか。閉所戦闘、つまり小回りが利いて取り回しのいい武器を持ってるかどうか。ヅダの場合は勿論ガンポッド、ヒートホークとナイフ。疑似マクロスキャノンと対艦砲は閉所戦闘で使うものじゃない。

 

 ガンポッドを一丁持って歩きでビル街を移動するヅダ。アビゴルバインは…来たっ!ビルごとビームで撃ち抜いてくる!しかも倒壊するビルの下敷きにヅダがなるように調整して…!戦場が決定してからの判断が速い!経験値ではやっぱり不利か!

 

 「…腕部徹甲ミサイル、発射!」

 

 「コース設定は3!アビゴルバインが煙に紛れて接近してるよ!」

 

 YF-19の腕部に仕込んだものの強化版で通常のミサイルよりも高威力のものを両腕から発射しビルを粉砕する。ヒマリの管制によってコースを決定したミサイルの爆炎に紛れてビームサイズを2本持ったアビゴルバインが煙を切り裂いて現れる。振り下ろされる2本を片方をヒートホークで、もう片方を盾の上に展開したピンポイントバリアで受け止める。つばぜり合いの光が両機体を照らし、モノアイが怪しく光る。

 

 唐突にアビゴルバインの肩とヅダの胸部のミサイルハッチが解放され、同時に発射される。お互いがお互いのミサイルをまともに食らって吹き飛ぶ。ヅダの胸部アーマーが完全に脱落、脚部も拉げてミサイル発射は不可能だ。誘爆対策しといてよかった。アビゴルバインも胴体が大きく陥没している。

 

 「くっ…流石だ3人とも!よし、まどろっこしいのはもうやめよう!これが俺の最後の一撃!受けてくれ!この勝負!」

 

 「…アルトっ」

 

 「好きにやれ。お前の勝負だ」

 

 「…ありがと!ルワンさん!勝負っ!」

 

 もう長くないことを悟ったルワンさんがそう持ち掛けてくる。ルワンさんの攻撃をしのげば俺たちの勝ち、しのげなければ負けというひどくシンプルなルール。このまま続ければおそらく勝てる、けどそうじゃない。ルワンさんの本気を受けきってこその勝利。勝つか負けるかが最後まで分からないのがいいんだ。ツムギの輝く瞳がそれを物語っている。

 

 「さあっ!行くぞアビゴルバイン!オォォォラホォォォン!!!」

 

 アビゴルバインの角がビームに覆われる。そのビームは分厚く、大きく、まるでアビゴルバインのすべてのエネルギーがその角に集中したかのような輝きを放っていた。まずい、あれは、あれはやばい!おそらく威力ならダイダロスアタックと同等。ピンポイントバリアで防げるものじゃない!避ける?論外だ。この勝負、まっすぐ行ってぶん殴ったやつが勝利なんだから!

 

 「…圧縮粒子全開放!マクロスキャノンに集中!」

 

 「やったらぶっ壊れるからな!後はお前次第だ!」

 

 「…もちろんっ!勝つよ!」

 

 「圧縮粒子供給完了!撃てるよ!」

 

 俺たちが選択したのはマクロスキャノンによる迎撃。それも従来の威力ではなくオーバーロード前提で機体の圧縮粒子をすべて注ぎ込むもの。撃つ前から収まりきらない粒子が漏れ出しバチバチと漏電しているマクロスキャノンが3つに分かたれエネルギーの奔流を発射する。アビゴルバインはその超威力の極光に変形し突撃、真正面から突っ込む。

 

 「いけええええええええ!!!!」

 

 「…やああああああああ!!!」

 

 光り輝く一本角でビームを切り裂いて迫るアビゴルバイン。各所が赤熱し、溶け、小規模ながら爆発が起こる。同時にマクロスキャノンも限界を迎えだしている。エネルギータンクが爆発し、キャノン自体も限界を迎え崩れた。ビームが切れる、アビゴルバインは満身創痍ながら健在、ヅダを貫かんとそのビームの角を突き立てに来る。

 

 「もらったあああ!!」

 

 「まぁだああああ!」

 

 アビゴルバインが一瞬止まる。ヅダの左拳のピンポイントバリアパンチだ。ピンポイントバリアを切り裂いた角がヅダの左拳に食い込む。

 

 「…つか、まえ、た!!」

 

 「しまっ!?」

 

 左拳を犠牲にしたヅダが無理やりアビゴルバインを捕まえる。捕まえたまま熱核バーストタービンと土星エンジンをフルスロットルに入れて加速、アビゴルバインを盾にしてビルを何棟も突き破っていく。アビゴルバインもなんとか脱出しようとスラスターを吹かすがヅダのほうが推力は上だ。為すがままに最後のビルに叩きつけられたアビゴルバインの動きが止まる。

 

 「…私たちの勝ちっ!!」

 

 「…ああ!俺の負けだ!」

 

 片腕を失ったヅダが振り下ろしたヒートホークがアビゴルバインを両断する。試合が終了してシステムが勝者を判定する。勝ったのは、ツムギだ。爆発と言われても違和感がないほどの喝采が降り注がれる。ルワンさんは機体も回収せずに俺たちに向かって歩いてきて、熱い握手をくれた。一言も発さなかったけど、俺たちは彼の気持ちを理解できた。賞賛と激励、悔しさをおくびにも出さないルワンさんの強さを俺たちは改めて知るのだった。

 

 

 

 

 「あー…いいなあ…俺もやっぱり自分でバトルしてーわ…野良バトル、んー、カイザーさん誘ってどっかで…おろ?」

 

 試合後、ヒマリとツムギは汗を流してくるとか言ってホテルの大浴場に向かうとのこと。俺は部屋の風呂で十分なのでちょっと別行動と相成った。ヅダの修理は左腕丸々交換、脚はギリギリ無傷だけどエンジンに微妙な傷が入ったのでそれの交換、というか脚部全とっかえが早いかな。増加装甲はまあ予備出していけばいいや。ちょっと外の風に当たりたかった俺がホテルを出てのんべんだらりと歩いていると会場近くの広場に見知った影を見つけた。

 

 芝生の上で寝転んで帽子を顔の上にかぶせているが背格好と服装からしてマオだ。近くに寄ってみると俺に気づかないくらいうんうん唸っている。というか今真夏だぞ?服もじっとりと汗で湿ってるっぽいしよろしくないわ、といったん離れて自販機でスポーツドリンクを買って、戻ってくる。それでもまだ何かを唸ってるので帽子を取って頬にスポドリをくっつけてやった。

 

 「ちべたっ!?何しはるんですかって…アルトはんやないですか。一回戦突破おめでとうございます」

 

 「ありがとさん。それやるよ、何時間ここにいたかは知らないけど喉乾いてるだろ」

 

 「…ありがたくもらいます」

 

 「当ててやろうか」

 

 「な、何をです?」

 

 「セイとレイジに勝てるかわかんなくて悩んでたんだろ」

 

 「…お見通しですか」

 

 「見りゃわかる。ディスチャージをどう攻略して、RGシステムをぶち破るかが思いつかないってところか。で、今思いついてる最善はとにかく使わせないことって感じ?」

 

 「…そうです。あのアルトはんなら、どう攻略します?」

 

 渡したスポドリを一息に飲み干したマオが真剣な顔でそう言ってくる。俺か~、俺だったらミサイルで翻弄…こりゃバルキリーの話だ。ヅダだったら…ツムギだったらどうするか…そうだな、多分

 

 「マクロスキャノンをディスチャージさせた上で全力勝負、かね」

 

 「あの、聞いてはりました?スタービルドストライクに勝ちに行く方法を聞いてるんです」

 

 「そうだけど?いや、ユウキ・タツヤっていう人いるだろ?あの人のバトルとおんなじだよ。自分と相手のすべてを出し切った上で勝つ。そりゃあ装備を使わせないのは立派な戦術だけど、俺たちは勝つよりも大切なことがあるもんでな」

 

 「勝つよりも大事なこと?」

 

 そう、マオが不思議な顔をして訪ねてくる。勝ちたくないわけじゃない、勝負する以上勝敗は絶対に絡んでくる。だから勝たなければいけない、っていうのはちょっと違うかな。忘れがちだし世界選手権にまで来ていておかしいかもしれないけどガンプラバトルはあくまで遊びなんだ。遊びである以上…

 

 「楽しむことだよ。相手とのバトルを楽しむ。相手の行動を封じて、弱くなったライバルに勝って嬉しいか?相手と自分が全部出し切って、その上で勝てたほうが面白いだろ。だから、俺が二人と戦うとしたら真正面からガチンコ、それ以外ない」

 

 「楽しむこと…」

 

 「お前が一番分かってる気がしてたんだけどな。ガンプラ心形流ってのは「己の心のままに」ある流派なんだろ?じゃあ、心のままに好き勝手したらいいんじゃね?」

 

 俺がそう言った途端、マオの顔が引き締まった。勢いよく立ち上がったマオはありがとうございましたと俺に一言言った後、走ってどこかに行ってしまった。まあ、マオの曇った心が今ので晴れたならいいんだけど。セイとレイジの勝負で迷ったまま来てほしくないし。いつもの明るくて人懐っこい、それでいて自信にあふれたいつものマオが、二人が一番戦いたがってた姿なんだから。




 トーナメント戦ですがちょっと原作とは変えます(断言

 まあチョマーさんがいる時点でだいぶ違うか(自己解決)次回はまた時間が空いたら書いていきます~

プラモデル大交流会の時他作品ネタを出してもいいか

  • どんなネタでも出していいよ
  • 機体のみにしておけ
  • やはりガンダムに限る
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